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法人営業とは?業務の特徴と近年の変化、組織改革の方法を解説

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目次

国策として掲げる企業のデジタル活用の推進や、コロナ禍の影響などから企業活動全般でのオンライン化が進みました。それに伴い、企業内の組織においてもあ部門とマーケティング部門が連携しながら営業活動を行い、顧客獲得や案件化、成約を効率的に進める企業が多くなっています。営業組織内のプロセスの見直しを行い、営業活動の効率化を図りながら法人営業力の向上を行うことで、一定の生産性が上がり、結果的に売上に反映されることが想定されます。しかし、その理論はある程度理解し、実際に部門間で連携しながら営業活動を行うにもうまくいかない、結果が出ないと課題を抱える企業もいるかもしれません。また、自社の営業組織課題を受け、これから組織改革を行おうとしている方は、何から始めるべきか、法人営業力の具体的な強化方法とは何か、と導入段階で悩む企業もいるでしょう。

この記事では、まずは法人営業の基礎概要や市場課題をお伝えし、その上で行うべき法人営業組織の改革や具体的な方法について解説します。漠然とした営業組織課題をより具体化し、法人営業強化に繋がる最適な方法を知りたいという方は、ぜひ参考にしてください。

法人営業とは

法人営業とは、株式会社や合同会社などの法人を対象にして営業活動を行う職種です。「Business to Business」を意味するBtoB営業とも言われます。ここでは、法人営業と個人営業の違いや、法人営業の種類、求人動向について詳しく解説します。

個人営業との違い

まず法人営業と個人営業は主に「営業担当者の報酬」「営業対象となるターゲット顧客」「購買プロセス」の3つの特徴の違いがあります。当然のことながら、営業対象となるターゲット顧客が個人と法人で異なり、法人営業では法人や企業を顧客としてターゲットにし、個人営業は一般消費者を対象としています。対象顧客が違うため、営業の目的も紐づいて異なります。法人営業は、企業や法人顧客に対し自社のサービスや製品を提案し契約を獲得することが主目的であるのに対し、個人は消費者に対し自社製品やサービスを販売することになりますので、営業アプローチも違いが出てきます。

法人営業の種類

法人営業は、「営業スタイル」と「販売商品」によって業務内容が大きく異なります。業務内容ごとの法人営業の種類について解説します。法人営業の営業スタイルは大きく「新規開拓営業」と「ルート営業」に二分されます。新規開拓営業とは、今まで取引のない顧客を対象とした営業です。飛び込み営業やテレアポ、展示会やセミナーなどで接点を持ち初回訪問につなげ、その後商談にて受注を獲得してから、新規の取引を開始するのが特徴です。営業手法はさまざまで、オフライン・オンラインの両方を含め、あらゆる手段を使って新規顧客を獲得し、売り上げにつなげます。

 一方でルート営業は、既存顧客を対象とした営業です。顧客の順番に沿って巡回するルートが決まっているため、ルート営業と呼ばれています。現在検討している商材の使い心地や、追加購入商品のヒアリング、新商品の紹介など、フォローアップのほかアップセル、クロスセルの提案も行います。既存の顧客の解約や取引停止を防ぎ、安定した売上を維持するのがルート営業の目的です。また、法人営業の業務内容は取り扱う商材が「有形商材」か「無形商材」かによっても異なります。有形商材とは形があり、実際に目にしたり触れたりできる商材を指し、たとえば製造業へ卸す原材料や不動産物件、自動車、業務用の機材などが該当します。顧客の目の前に商材を提示できるため、顧客が購入後のイメージをしやすく、無形商材よりも購買プロセスがシンプルな傾向があります。反対に無形商材は、形がないものやサービスを指し、たとえば証券や保険、ソフトウェアやアプリなどのITサービス、コンサルティングなどが該当します。商材が目に見えず、顧客が具体的なイメージを持ちにくい特長から、顧客の興味度合いが高まるように顧客課題やニーズに沿った的確な提案アプローチが必要です。

法人営業の求人動向

現在、営業職は人手不足の傾向が続いています。厚生労働省の2023年5月の有効求人倍率推移の調査では、営業職の求人倍率は2.12倍と全職種の中で3番目に高く、2020年に比べ募集数は1.6倍に伸びました。

有効求人倍率 推移

出典:type「営業採用が難しい!採用成功のノウハウやコツ、事例をご紹介」

法人営業は、前述したように商品やサービスが高額金額である、また購買プロセスが複雑などの特徴から、営業力に特化した高いスキルや能力が必要となります。その素質の高い、スキルを持つ優秀な人材を採用することは市場でみても非常に難しく、企業にとっての大きな課題と言えるでしょう。

法人営業の変化と課題

法人営業の活動環境は、新型コロナウィルスによる外出自粛や非対面非接触の推奨などの影響を受けて、大きく変化しました。これまで対面で法人営業活動を行ってきた企業の多くが、変化に対応できず売上に課題を抱えています。現在コロナは終息に向かいつつありますが、コロナという影響が、法人営業を取り巻く環境をどのように変化させたのか、ここで具体的に解説します。

法人営業をとりまく環境の変化

新型コロナウイルスの影響により外出を避けた行動を制限され、テレワークをはじめとしたデジタルツールを駆使し、非対面での働き方を実践する企業が多くなりました。実際に、アイティメディア株式会社の「BtoBマーケターに聞いた、コロナ禍の勤務環境とマーケティング施策に関するアンケート調査」(図1)によると、2021年3月時点で「商談の延期・中止・オンライン化」を決めた企業は全体の約76%となっており、デジタルツールを活用しテレワークの勤務環境を整えた企業が多いと推測できます。

コロナ 勤務環境 マーケティング施策 マーケ施策

出典:PRTIMES「BtoBマーケターに聞いた、コロナ禍の勤務環境とマーケティング施策に関するアンケート調査」

翌年の2022年4月には「商談の延期・中止・オンライン化」を決めた企業は全体の約40%に減り、コロナ禍後法人営業ではリモートと対面のハイブリッドスタイルが定着するようになりました。成長中の企業は新たな営業デジタルツールを導入し、ツールを活用できる担当者の育成に力を入れ、売上を更に最大化させる動きを進めています。マッキンゼー「B2B Pulse survey 2023」によれば、コロナ禍を経て新しくマーケティング戦略含め営業活動の改革を行うBtoB企業は、市場シェアを年間10%以上拡大させているようです。ただしこれらのデジタルの導入や組織改革に対応できている企業はごくわずかです。国の課題とも言われる「2025年の壁」にもあるように、多くのBtoB企業ではデジタル化への対応が遅れており、その影響で顧客接点の減少、売上減少などの課題を抱えているのが実態です。

近年の法人営業の課題

コロナ禍によって法人営業をとりまく環境が変化したことにより、法人営業組織の多くは「人材育成」「人の採用」に関する新たな課題に直面しています。Hubspot社の「日本の営業に関する意識・実態調査2023データ集」は、日本の法人営業組織の課題が「人材育成」(48%)ともっとも高く、また次に「営業ノウハウ属人化」(35%)という結果です。

日本 営業 実態

出典:Hubspot「日本の営業に関する意識・実態調査2023データ集

この結果から、法人営業を取り巻く変化に対応するため、オンライン化した営業組織を運用する人材の確保とその人材への育成、そして営業活動のオンライン化のための組織再構築に苦労している企業が多いことが分かります。

法人営業組織を改革する方法

上記のような課題に対して、従来の法人営業の業務プロセスや組織体制を見直すことで成功している企業もあります。ここではそうした企業の多くが取り組んでいる代表的な改革手法を紹介します。

組織体制の見直し

法人営業組織を改革する方法として注目されているのが「THE MODEL」です。THE MODELとは、BtoBマーケティングや営業活動プロセスに関する分業体制組織のことを指します。セールスフォース社など欧米企業で導入され、近年日本でも浸透しつつあります。THE MODELでは、これまで営業担当者が一貫して一人で行っていたリスト作成からアポイント獲得、商談実行やアフターフォローまでの業務を分業化することで、営業活動の属人化、営業リソース不足といった課題を解決し、また営業生産性向上にともなう売り上げ向上効果にも期待ができます。

THE MODELについて詳しくはこちらの記事をご覧ください。

また、非対面での営業活動への対応として、内勤型の営業手法「インサイドセールス」の導入も有効です。インサイドセールスは、CRMやSFA、MAなどの営業支援ツールを活用しながら顧客との接点を第一目的に見込み顧客を育成していく専門部隊です。インサイドセールスを取り入れることで、マーケティングと営業の分業による業務効率化や生産性の向上、コストや時間の削減にもつながります。さらに、こうした分業化を進める際に、各部門が連携するために有効なのが、「レベニューオペレーション」です。レベニューオペレーションとは、マーケティング、セールス、カスタマー・サクセスなどの収益向上に影響を与える部門が連携し、シームレスで一貫性のある高品質な顧客体験を提供することで、ビジネスの収益を最大化するプロセスを指します。レベニューオペレーションを取り入れることで、収益を拡大化するほか、競合への競争力を高めることで営業組織の強化にもつながります。

レベニューオペレーションのメリットや導入事例、取り組みポイントについてはこちらを参考にしてください。

ここまで、既存部門で担当領域を分けて営業活動を行う分業型組織体制のことをお伝えしましたが、それ以外にも営業企画部門を新たに立ち上げて見直しを行う方法もあります。営業企画とは一般的には、効果的な営業活動を実施するため、潜在的な見込み顧客へのアプローチを目的として営業戦略の策定から実行営業プロセスの改善、市場調査や競合分析などの役割を果たす部門です。営業企画部門を立ち上げることで、マーケティングと営業部門間での意見や認識のすり合わせを行ったり、営業活動の効率化や利益の最大につながる戦略を実行できるというメリットが得られることもあります。

営業企画部門のミッションや他部門との関わり方、事例についてはこちらでくわしく解説しています。

営業活動での営業担当者の業務負担が大きい、属人的な営業が行われていて売り上げが上がらない、部門連携がうまくいかない、などの組織課題に対しては、抜本的な組織の見直しが必要です。現状の課題に応じて、組織体制の見直しのための有効手段は多数ありますので参考にしてみてください。

マネジメント手法の見直し

直近の売上目標の達成が危ぶまれているなら、営業マネジメントの見直しと強化が必須です。営業マネージャーが担う業務には、「戦略策定」「目標管理」「案件管理」「行動管理」「モチベーション管理」「人材の強化」の6つの領域があります。

営業マネジメントの役割やおもな業務内容については、こちらの記事を参考にしてください。

これらの中でも、非対面での営業活動で課題になりがちなのが案件管理と行動管理であり、それを解決するための手法が「パイプライン管理」です。パイプライン管理とは、営業組織での営業活動における一連の営業プロセスをパイプに見立て、分析や改善を行うマネジメント手法です。受注までの各プロセスで問題が発生している箇所を把握できるため、ピンポイントに改善を行い、効率的に売上を上げられるようになります。パイプライン管理で営業活動を見直す場合は、営業活動で重要視すべき「新規見込み顧客数」「アプローチ数」「商談獲得数」「受注数」などの設定が重要です。また、KPIを設定する際のポイントは、課題解決のために営業チームが関与できるようにすることです。営業活動のプロセスごとの課題や目標までの進捗状況がチーム全体で可視化でき、目標達成のための具体的なアクションを組織全体で把握できる状態にしましょう。

パイプライン管理の概要や実行手段については、こちらの記事を参考にしてください。

また、そのほかの営業活動におけるKPI設定の重要性や設定方法、設定するポイントについては、こちらの記事もぜひ参考にしてください。

ITツールの導入

ここまで述べた組織改変やマネジメント強化をより効果的に実践するためには、ITツールの導入も検討する必要があるでしょう。営業デジタルツールと呼ばれるCRMやSFA、MAなどのツールを導入済みの企業は増加傾向にあり、ClieXito株式会社の「営業DX実態調査」では、CRMやSFA、MAなどの基盤整備に着手している企業の割合は全体の30%以上を占めています。

営業DX 取り組み

出典:BRIDGE「営業DX実態調査結果から見えた3つの成功要因」

なぜ、多くの企業がこうしたツールの導入を行うのでしょうか?その理由は、SFAやMAを導入することで、顧客データを一元管理し営業活動の効率や生産性を高められるといった効果に直結するからです。デジタルツールを導入すれば営業組織力の強化にもつながり、オンライン化した営業活動においても成果が得られる可能性が高くなります。

SFAの機能や導入方法、活用方法についてはこちら、MAの機能、メリット、導入ポイントについてはこちらでくわしく解説しています。

営業スキルの強化

先に触れたとおり、日本の営業組織の課題のトップは人材育成となっています。労働人口が減る中で、今いる人材が新しい手法やツールを駆使できるスキルを身に付けるために「リスキリング」などの育成制度を設ける企業もいますが、実際のところ、多くの企業が個人の営業職に対して教育改革に取り組めない状況です。Hubspotの「日本の営業に関する意識・実態調査2023データ集」の結果では、リスキリングに取り組んでいる企業は全体のわずか11%です。その理由は「どのスキルを獲得したら良いか分からないから」「時間がないから」などの理由が挙げられています。

日本営業 意識調査 営業

出典:Hubspot「日本の営業に関する意識・実態調査2023データ集」

どのようなスキルを取得すべきかが分からないから学ばない、スキルが身に付かないことから属人化が進む、という悪循環のサイクルに至らないためには、個人の努力だけではなく組織の取組として、営業活動のベースとなる知識やスキルの底上げを図るべきでしょつ。

営業力強化を成功へ導くためのノウハウはこちら、営業が属人化しないために取り組むべきことはこちらでくわしく解説しています。

組織でスキルを上げるため、また営業活動においてどこに課題があるかを見つけ出すために、見るべき判断軸が「成約率」です。成約率を算出し、数字に基づいた分析を行うことで課題が発生しているプロセスを見出すことができます。また営業パフォーマンスの高いメンバーの手法を共通化する対策を行うことで、組織全体の営業スキルの強化につながるでしょう。

チームで成果を上げるためのポイントについてはこちら、成約率の測定方法や高める方法についてはこちらでくわしく解説しています。

おわりに

法人営業の特徴および近年の変化と課題、法人営業組織を改革する方法を解説しました。法人営業は、クライアントの経営課題解決と自社の成長の両方に直接的に貢献できる重要な仕事です。デジタルシフト化などの市場の変化、また競合企業との差別化を行うためにも、従来の営業組織から改革を行う重要性は今後増してくるでしょう。

 営業組織を改革する方法は本記事にも記載の通り多数あります。その中から、優先順位をつけて、自社の持つ課題に合わせた方法が何かの見極めを行ってください。自社の課題に合った変革方法や具体的な施策が分からない、施策として営業支援ツールを導入するもうまく運用できないといったケースもあるかもしれません。そのような際は、外部支援を活用することも一つの選択肢です。ゼンフォースでは、企業様の営業組織力強化のための支援サービスをご提供しています。ぜひご相談ください。

著者情報
柳本 瑠衣 (やなぎもと るい)
Rui Yanagimoto
米国の州立大学卒業後、米国にて就労経験を経て帰国。国内のIT企業へ入社後、新規開拓営業と経営企画を経験。パーソルホールディングス株式会社(旧インテリジェンス)にてデジタルマーケティング領域を経験した後に、MAツール開発会社へ入社、インサイドセールス部門責任者として従事。2人目の出産を機に働き方を見直し2022年にフリーランスに転身。現在は営業DX領域のコンサルティングとマーケティング業務支援等を行う。