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営業担当の評価基準とは?注意点とパフォーマンスを高めるためのポイントを解説

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目次

営業部門におけるマネージャーは自社の営業担当者をどのように評価しているでしょうか。営業は組織の売上に貢献することがその役割ですが、各担当者は日々あらゆる手段や考え方を通じて営業活動を行っています。マネジメント層にとって営業担当者の評価を適切に行うことは重要な業務です。

本記事では、営業部門において適切な評価制度を設けることのメリットと具体的な評価の項目を詳しく説明します。また、設定上での注意点や各個人の能力を最大限に生かすため評価時における要点を解説していきます。

営業担当者の評価とは

営業担当の評価では売上達成度、業務への貢献度、日頃の勤務態度などを総合的に評価します。個々が出した結果や努力が適切な基準のもとで評価されれば、個人と組織の成長や生産性の向上につながります。反対に、不公平な評価は社員の不平不満のもとになり、個人やチームの目標も未達成に終わる可能性が高いでしょう。評価のサイクルですが、まず年度や一事業決算期に基づいて、期首に営業担当が目標を設定します。さらにその目標が個人と自社の成長にふさわしいものであるか、面談を通して内容を確認する時間が設けられることが一般的です。そして期末には、目標の達成度を振り返り、自己評価とマネージャーや役員による客観的な評価によって総合的に評価が決定します。

人事評価との関係

営業の評価軸は企業の人事評価制度に則って定められることが一般的です。人事評価制度とは、従業員のそれぞれの位置付けを定め、業績や能力を評価することで公正な処遇を実現させる仕組みのことです。人事評価制度は、主に次の3つから成り立ちます。

・「等級制度」
従業員の経験やスキル、職務遂行力などに応じて等級に分ける制度。職位や役職に基づいて階層的にランクが存在する。上位の等級に位置する従業員はより高い給与や責任を持つことが期待される。

・「評価制度」
従業員の業績やパフォーマンスを定量的または定性的な方法で評価する制度。能力や行動、貢献度などが評価され、フィードバックや改善のためのアクションプランが策定される。

・「報酬制度」
従業員の評価結果に基づいて与えられる報酬や給与の体系。報酬額や昇進幅が結果によって決定され、基本給やインセンティブ、福利厚生などの要素を含む場合がある。

一方で、営業担当の評価基準には一般的に次のような項目が挙げられます。

・売上高
・新規顧客獲得数
・既存顧客の維持、拡大
・提案の精度
・業務への姿勢
・個別の目標達成度

人事評価と並べてみると、売上にいかに貢献しているかがベースとなっていることが伺えます。しかし、数値ばかりが重視されると、顧客満足度や長期的な関係構築の重要性が見過ごされることがあります。とはいえ、営業にもかかわらず抽象度が高い評価の比重が増えると、実際に利益を出した社員が評価に対して報われていないと感じてしまう原因になりえます。営業担当者でもはたらくことに報酬という経済的欲求を求める人もいれば、より高い役職に挑戦して能力を試したいという社会心理的な欲求を求める人もいます。個人のそれぞれの思いを尊重しつつも、組織の成長戦略に基づく適切な評価軸をマネジメント層が定めていく努力が不可欠です。

営業の評価が重要な理由

評価の目的とは、営業担当者の能力を最大限に引き出し、企業の成長が促進されることです。この章では「人材」という視点をもとに、営業担当への評価がなぜ重要かを具体的に解説していきます。

離職の防止

優秀な営業人材が組織を離れてしまっては、営業部門が機能せず売上や経営に影響を及ぼします。日本労働調査組合によると、営業職で「退職を検討したことがある」という回答は80%以上にのぼったという結果でした。営業職は「ノルマがある」や「残業が多そう」といったハードな印象がなかなか拭えないポジションです。社員は自らの努力が報われていないと感じてしまうと、業務自体に取り組む意欲を喪失します。

出典:PRTIMES「営業 辞めたい、つらい。」6割弱の営業が現在、退職を検討しているという結果に。会社を支える営業職の退職動機に関するアンケート結果発表」

また、同調査において、営業職を辞めたくなった理由の第一位は「給料が安い」でした。もし成果に対して十分な報酬を得られていないと感じると、優秀な営業担当者ほど、他社の同じようなポジションへ移籍するリスクも高まります。また、成果や能力以上の報酬が個人に与えられることも、他の社員から不平不満が生まれ、チームの協調性や信頼関係が崩れる原因となります。問題は社員がそうした不満を表に出さないことや、評価に対する疑問を解消できないまま再び業務に臨むことです。最終的に社員が離職するという判断に至らないためにも、マネージャーや経営陣は、社員とのコミュニケーションの中で、なぜその評価軸が設定されているか背景や理由を説明し、評価の重要性と組織として自分たちが何を目指しているのかを伝えていくことが重要です。

生産性の向上

努力の分をきちんと評価される基準があると理解できていれば、営業担当は自身の役割と目標に納得感をもつことができるでしょう。それぞれが効率よく成果に対してアプローチできれば、組織としての生産性も向上します。生産性が上がることで業務がよりスムーズに進行し、個人が自信をつけてさらなる成果を追求すれば、結果として企業の利益を増加させることも期待できるでしょう。

成長の促進

良い評価軸とは、最終的に個人やチーム・組織の成長に影響する評価軸です。そのためには個人の実力や過去の実績に対して適度にストレッチさせた目標を設定することが大切です。すぐに到達できる目標では、本質的な成長につながりません。努力と工夫で達成可能なレベルを設定をし、達成した先にどのような成長が遂げられるかイメージすることです。高いパフォーマンスを出した営業担当者は、リーダー職やマネジメント層へ挑戦する機会が与えられる環境も設定すべきでしょう。

営業の評価基準

ここまで評価基準の重要性を見てきましたが、マネジメント層にとっては営業の評価制度を正しく運用することが本来の目的でしょう。以下は営業の具体的な評価基準です。

成果

成果での評価は定量的な指標に基づくため、誰が評価しても大きな差が生まれにくい明確さがメリットです。営業の成果評価に広く用いられる項目としては以下などがあります。

・売上額
営業担当者の一人当たりの売上額は、最もわかりやすい指標といえるでしょう。売上は企業の成長と競争力の源泉であり、それに対して直接的に貢献するのが営業担当の最も重要な役割であるため、多くの企業で最重視する評価指標とされています。

・利益額/率
利益は売上から経費や費用を差し引いた実際の収益です。高い利益率は効果的な営業活動や適切な価格での販売ができていることを示すため、こちらも営業担当が注力して追うべき指標です。

・受注率
受注率は、提案や商談の成功率と言い換えることができます。受注率が高ければ、受注確度の高い見込み客を営業担当が見極められていたり、顧客の購買をかきたてる説得力のある提案ができていると評価することができます。

・新規顧客獲得数
営業は新しい販路を拡大していくことも求められています。受注した全ての顧客が自社の商品やサービスを継続的に利用するとは限りません。新規顧客を獲得することは既存顧客にリピートしてもらうことより難しく戦略策定や実行、そして結果に至るまでの時間と努力が要されます。営業担当の頑張りを正当に評価できる項目でしょう。

・LTV
LTV(Life Time Value)とは顧客生涯価値とも呼ばれ、いち顧客が取引開始から終了までの期間内にもたらされた収益の合計額のことです。高いLTVは顧客満足度や顧客ロイヤルティが向上していることの反映であり、営業の顧客関係構築力を評価する基準となります。

・解約率
特にBtoB向けのSaaSツールを販売する組織は、どんなに受注率や新規顧客獲得数が多くても、一定数の解約が発生します。解約率を営業担当の評価軸に設けることは、営業担当が自社の商品やサービスを本当に必要とする顧客を見極めて販売できているかを測る指標になります。

これらは営業の評価軸の基本であり、同時に組織の売上利益に直結する指標です。

プロセス

近年では営業活動の分業化が進んでおり、従来重要視されていた「販売」だけが営業のゴールではなくなりました。たとえば「インサイドセールス」のように、成約に至るまでの途中過程を担う担当者もいます。よって営業の役割の多様化に基づき、担当が目標達成までにどのようなプロセスを経て成果を出したか定性的に評価する必要があります。具体的に設定される基準は次のような項目です。

合わせて読みたいインサイドセールスに関する記事はこちらです。

・架電回数
顧客と何回接点を持つことができたか、最初の架電から何日以内で商談化できたかなどが指標とされます。ただし架電回数の多さ・少なさがそのまま評価に反映されるわけではありません。架電の中で顧客の課題や要望に対して、要点をついたヒアリングや回答ができているかログや顧客の反応からも判断します。結果として商談につなげられているかを評価することが重要です。

・商談件数
商談は新規受注の確率が高まるタイミングです。商談件数が多いことは、購買意欲のより高い顧客を囲い、具体的な提案と契約を促す機会が多いということです。一方で、訪問商談はweb商談よりも、時間を設定するまでに工数がかかります。オンラインかオフラインかによって、目標とする商談件数も柔軟に設定しましょう。

・デモ実施件数
デモとは、商品やサービスを実際に利用することを想定し、その操作方法や手順を顧客へ見せる機会です。利用方法が具体的にイメージできれば、顧客は期待できる効果をより実感することで契約を検討するでしょう。デモ実施件数や申し込み数は評価として設定できる項目です。

能力

営業として求められる能力をいかに高めることができたかも評価の基準です。一般的な例としては以下の項目があります。

・課題設定能力
「インサイト営業」は、顧客自身もまだ気づいていない企業の潜在的なニーズや課題を発見し、その課題を認識してもらった上で自社のサービスを提案する営業手法です。

インサイト営業の解説に関する記事はこちらです。

また「ソリューション営業」は、顧客との対話を通して課題やニーズを引き出し、解決策提案のアプローチを行う営業プロセスです。

ソリューション営業の解説に関する記事はこちらです。

いずれもヒアリングに基づく仮説構築や分析が重要であり、解決すべき課題を設定する力をいかに高められるかが評価の指標となります。

・企画力
技術の向上により優れた商品やサービスは市場に溢れています。従って単に自社のサービスや商品が良いと打ち出すだけでは類似するサービスとの差別化は難しいでしょう。契約の先にどのようなメリットと収益が期待できるかをプロジェクトとして企画する力が必要です。企画の質が高いほど、顧客はより深い興味を示し納得感のある契約につながるでしょう。

・交渉・折衝能力
どんなにサービスや商品が素晴らしくても、契約に至らなければ売上は立ちません。競合他社ではなくなぜ自社こそが契約するにふさわしいかを様々な観点から裏付けて説得することが求められます。顧客の予算、期待収益、満足値の向上など相手の求める結果を捉えたうえで、ロジカルな提案を商談時にできるかが大切です。また提案書やプレゼン資料などをわかりやすく作成したり、ビジネスマナーを兼ね備え、顧客が安心感と納得感をもってコミュニケーションできるかどうかも交渉能力に含まれます。

・自社商品や業界に関する知識
顧客は営業こそが自社商品やサービスに関するプロだと認識しています。商材に関する知識を日頃から高め、わかりやすい提案や質問への切り返しができるかどうかは評価の指標となります。
また、売上の向上には自社や顧客の業界に求められることを理解する必要があります。競合と差別化を図るためにも、顧客の企業情報や他社の商材の特徴と比較して何が自社の強みであるか言語化できることは大切です。

姿勢

日頃から営業担当が結果を出すためにどのように業務へ取り組むかその姿勢も評価の対象です。上長は顧客に対する姿勢と社内に対する姿勢から総合的に評価をすべきでしょう。たとえば、商談後も顧客との関係が途切れぬよう、継続的に課題や状況を把握するコミュニケーションは大切です。積極的な営業担当は、顧客側の決裁権をもつ人物を確かめたり、必要な情報を必要なタイミングで提示するために顧客の動向を常に追っています。また社内でも、チームや他部署と協力体制を築くために関わっているかは大切です。会議での発言や意見交換といった積極性、トラブルの発生時でも自分ごと捉えて対処する責任感は社内の信頼を集めます。一見当たり前の姿勢かもしれませんが、こうした協調性や使命感は、組織全体の一体感や相互扶助の文化を築く上でも重要であり、評価軸にすべき項目です。

営業評価の注意点

ここまで営業担当の評価項目を紹介しましたが、同じ評価制度であっても、評価者がいかに運用するかでその効果は全く異なります。ここでは営業の評価を実際に行う際の注意点を解説します。

評価基準の公平性 

日本の営業実態調査2019」によれば、調査に参加した半数以上の営業担当者が評価に不満を感じていると回答しました。なかでも「評価基準が曖昧」や「上司の好き嫌いが評価に関わる」という不公平感が最も多い声として挙げられています。

評価制度 不満

出典:Attax Sales Associates「日本の営業実態調査2019」

個人の能力やスキルの差があることは自然です。しかし、評価者の違いによる総合評価のズレや判断の不一致は、営業担当のモチベーションが大きく損なわれる原因になります。売上という観点から数値は公平性を保ちますが、チームとしても数値以外の共通の達成基準を設けておくことが大切です。

目標設定への納得感

営業職はいかに売上に貢献できるかが重要に思えますが、そもそも目標の質が営業担当のパフォーマンスに関わることがあります。設定した目標が明らかに達成不能な場合、営業担当は自らコントロールできる要素が少ないだろうと諦めの気持ちで業務に取り組むことになります。効果的な目標設定をするためにも、「SMARTの法則」を参考にしてみましょう。

SMART SMART法則

「目標を達成できるかは設定した時点で決まる」とも言われます。「SMARTの法則」を参考に「成果目標」と「行動目標」のそれぞれを設定してみてください。

報酬と適切な連動

基本的に評価と報酬は、連動するのが一般的です。ただ、営業職には売上という明確な評価指標があります。もし期待値以上の成果を出し、かつ組織に著しく貢献したと判断できる社員には、昇給やインセンティブを通じて還元する制度も設けるべきでしょう。一方でインセンティブの比率が極端に高い場合は、営業担当も目先の利益を優先とし、顧客との関係を蔑ろにしてしまう可能性が生まれます。また自分の成果の向上のみに集中し、チームとしての業務に協力的ではなくなったり、自社への帰属意識が薄れる場合があります。インセンティブの額にも明確な理由づけが必要といえます。

営業評価のポイント

上記のような注意点を踏まえて、営業担当者のパフォーマンスを高めるための評価のポイントを解説します。

営業成果・プロセスの可視化

公平感のある評価を行うためにも、まず自社の営業オペレーションの全体図を把握することが大切です。一連の業務において営業担当者の貢献度合いを数値として割り出します。ポイントは、タイムリーなフィードバックです。営業活動の成果やプロセスを可視化するためには、「SFA(Sales Force Automation)」の活用がおすすめです。SFAとは、営業管理ツールと呼ばれ、営業活動における記録を蓄積するシステムです。営業プロセスの最適化を実現するために導入を検討すると良いでしょう。

SFAに関するくわしい内容の記事はこちらです。

目標設定への本人の関与

目標がどれだけ本人の意思と決定に基づいて設定されているかという点も重要です。結果を出すことでチームからの賞賛や金銭的報酬が与えられることをモチベーションにする社員もいます。しかしこうした外発的動機による目標ばかりでは、他人に行動をコントロールされている感覚が生じ、行動への意欲も低下してしまうことがあります。より高く困難な目標でも、誰かに定められたのではなく、自ら考えて設定したと実感できれば、挑戦心や主体性をもって行動ができるでしょう。営業担当の場合、売上目標などの成果指標は事業計画から逆算してトップダウンで決めざるを得ないこともありますが、他のメンバーの育成や、成功事例の創出などのチームへの貢献に関する目標設定は担当者個々人の意思に任せるといった方法もあります。ポジティブな思考のサイクルの中で業務へ取り組むためにも、目標が内発的動機と自己決定によって設計できているかは極めて重要です。

定期的なフィードバック

評価とフィードバックの機会が年に一度や期末のみであるという頻度では、担当者のモチベーション向上や成長を促すことはできません。素晴らしい実績を残したり改善すべき点が見えたら適宜フィードバックの時間を設け振り返りをしましょう。上司が定期的に1on1ミーティングを設けて現状の小さな疑問や不安を解消することも大切です。営業担当者が自分の強みに焦点を当て、目的意識を持って業務に取り組めば、営業部門や組織全体の成長も促進されます。

おわりに

営業部門のマネージャーや経営層に向けて、営業担当をどのように評価するか、制度を構築するための考え方や具体的な指標を解説してきました。自社にとって優秀な営業人材が他社へ流出することなく、やりがいと成長を感じながら力を発揮できることは業績の安定やさらなる利益の創出に不可欠です。本記事をもとに営業の評価制度における要点を押さえ、自社での振り返りと改善を通じて適切な運用へ役立ててみてください。

著者情報
原 千裕(はら ちひろ)
Chihiro Hara
成蹊大学文学部英米文学科卒。新卒でホテル事業のフロントCS業務を経て2018年にオーストラリア・メルボルンに留学。帰国後、カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社でBook&Cafeをコンセプトとした店舗の運営マネージャーを経験。現在はSaaS型POSシステムの開発・提供を行う企業でインサイドセールス職に従事している。