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マーケティングオートメーションツールとは?失敗する原因や運用のポイントをわかりやすく解説!

マーケティング

目次

マーケティングオートメーション、皆さんの企業ではすでに導入していますか?それとも、今まさに導入を検討中でしょうか?マーケティングオートメーションは1990年代にアメリカで発祥したと言われており、日本でも徐々に浸透してきています。その一方で、「導入したけど思うように効果が出ていない」といった声が多いのも事実です。

本記事では、マーケティングオートメーションの導入に失敗する原因や効果的に運用するためのポイントについて解説していきます。

マーケティングオートメーション(MA)とは?

マーケティングオートメーション MA

マーケティングオートメーションとは、収益向上と業務の効率化を目的としてマーケティング活動を自動化・効率化するための方法論や技術です。英語のMarketing Automationの接頭語を取り、しばしば「MA」と呼称されます。本記事においても、「マーケティングオートメーション」を「MA」と表現しています。
オートメーションという言葉が含まれているため作業を自動化するツールと捉えられがちですが、それは数あるメリットの中の1つでしかありません。また「MA=メールを送ること」と勘違いされている方もいらっしゃるかもしれません。MAによる最大のメリットは、日々刻々と変化していく市場や顧客ニーズに寄り添ったマーケティング活動を可能にし、ビジネス拡大に寄与することです。

マーケティングオートメーション(MA)が注目される理由

MA市場は年々拡大が続いており、矢野経済研究所の調査によると2023年時点では約700億円規模になると言われています。この数字をみると「日本ではすでにMAが普及している」と思われるかもしれません。しかし、世界的に見てみるとまだまだ浸透しきっていないのが現状です。マーケティング先進国であるアメリカでは早くからMAの必要性が謳われており、その要因として大きく2つが挙げられます。

顧客の購買行動の変化

特にBtoBにおいて、製品やサービスの認知・検討・購入に至るまでのプロセスが変化してきています。アメリカのJeffrey L. Josephsonが発表した論文によると、「一般的な顧客が取引先の営業担当者に直接関与する前に、購買に至るプロセスのうち57%は完了している」とされています。インターネットが普及した現在、顧客はかんたんに情報を入手し比較することが可能です。営業担当者を介せず、オンラインで購入まで行ってしまう場合もあります。
このような購買行動の変化に対応し効果的なマーケティング活動を行うために、MAツールの必要性が高まってきています。

パーソナライズされた顧客体験の提供が求められている

顧客は必要な情報をかんたんに手に入れられるようになりましたが、その一方で情報過多になってきています。インターネット上には多くの情報が掲載されており、ぱっと見では違いがわからないこともあるかもしれません。
そうした状況でより効果的なマーケティング活動を行うためには、パーソナライズされた顧客体験の提供が重要になってきます。「この情報は自分にとって有益なものだ」と瞬時に判断してもらうには、その人向けに用意されたコンテンツを届ける1to1アプローチが必要です。たくさんの顧客に対して活動していく場合、人の力で1to1アプローチをしていくことは現実的ではありません。ここで、MAツールの必要性がでてきます。MAツールは顧客情報の管理や分析を自動で行うことができるため、多くの企業に重宝されています。

マーケティングオートメーション(MA)の主な機能とメリット

MAはひとつの機能で成り立っているわけではなく、さまざまな機能によって構成されています。ここでは、BtoBにおけるデマンドジェネレーション(需要創出)のステージごとに、MAで活用される主な機能をご紹介していきます。

デマンドジェネレーション MA

リードジェネレーション(見込み顧客の創出)向けの機能

リードジェネレーション(見込み顧客の創出)は、「ひょっとしたら自社の顧客になるかもしれない顧客」の情報を獲得するステージです。情報を獲得する手段として展示会やセミナー、資料請求や問い合わせのWebフォームなどが挙げられます。このステージでは、いかに効率よく見込み顧客情報を獲得できるかが肝要です。

マーケティング業務の効率化

MAツールには、マーケティング業務を効率化する機能が備わっています。例えばWebフォームについて、フォームの作成や自動返信メールの設定が可能です。問い合わせがあった際にわざわざ人が返信する必要はなく、事前に設定した文面で機械的にメールを送信できます。たくさんのフォームを用意する場合はあらかじめテンプレートを用意しておくことで、日々の作業を効率的に行うことができます。

リードナーチャリング(見込み顧客の購買意欲醸成)向けの機能

リードナーチャリング(見込み顧客の購買意欲醸成)は、見込み顧客にさまざまな情報を届けることで商談化に近づけるためのステージです。購買意欲を醸成するためには、顧客とコミュニケーションを発生させることが肝要です。

見込み顧客のニーズに合わせたコンテンツ提供

顧客とのコミュニケーション手段のひとつに、メールがあります。しかし、ただメールを送っても、それが顧客にとって興味のない内容であればメールを開いてもらえません。MAツールを活用すると「顧客が興味を示している情報は〇〇に関係するもの」といったデータを蓄積することができるため、顧客それぞれに適したメールを送ることが可能です。また、送ったメールを開封したのか(開封率)、本文に含まれるリンクをクリックしたのか(クリック率)などのデータを即時に集計できます。それらを活用することで顧客が欲している情報がどんどん明らかになり、より精度の高いマーケティング活動に繋げられます。

リードクオリフィケーション(見込み顧客の選別・絞り込み)向けの機能

リードクオリフィケーション(見込み顧客の選別・絞り込み)は、見込み顧客とコミュニケーションをとった結果、「この顧客は商談に繋がる可能性が高い(もしくは低い)」と判断をつけるステージです。これまでのコミュニケーション履歴を蓄積・分析し、総合的に判断する必要があります。

スコアリング

見込み顧客の行動(Webページ訪問やセミナー参加など)やリアクション(メール開封、アンケート回答など)の情報をもとにして、自社の製品やサービスにどの程度興味・関心を抱いているか数値化することができます。例えば、Webページを訪問したら1点、資料をダウンロードしたら5点、問い合わせをしたら10点といった具合に重み付けをします。一定以上のスコアに到達した見込み顧客は購買意欲が高いと判断し、その人に向けて特別なコンテンツ(キャンペーンの案内など)を送ることで、商談化しやすくなります。

スコアリング MA

営業生産性の向上

さまざまなマーケティング活動を通してナーチャリングした後は、商談・受注へとつなげていきます。MAツールを活用することで、「なんとなくこの顧客は商談化しそう」といった曖昧な判断ではなく、「過去に〇〇関連のコンテンツに反応があり、スコアも閾値を超えているから確度が高そう」と客観的に判断してから営業にパスすることが可能です。マーケティング部門の担当者による属人的な判断ではなく、たしかなデータを元にした根拠ある判断であれば、営業部門としても活動しやすくなります。

マーケティングオートメーション(MA)の活用が上手くいかない原因

良いことだらけのMAツールですが、導入してみたけど思うように効果が出ていないと感じている方も多いのではないでしょうか。MAツールは、導入すれば何でも解決できる魔法のようなものではありません。実際のところ、先ほど触れたデマンドジェネレーションの考え方が浸透しきっておらず、マーケティング活動が噛み合っていないことがほとんどです。デマンドジェネレーションの考え方が浸透しきっていないとどんなことが起こるのか、ありがちなことをいくつかご紹介していきます。

ユーザーが求めるコンテンツを提供できていない

MAツールは、マーケティング活動を自動化するツールと見なされることが多々あります。そのため、やみくもにコンテンツを配信するだけのアプローチに陥ってしまうケースが散見されます。企業側は「従来よりも活動数が増えたから、きっとこれで売上アップに繋がるだろう」と考えてしまいますが、顧客目線に立って考えてみるといかがでしょうか。自分に関係ない情報ばかり送られてきたらメールは見なくなるでしょうし、たくさんの情報を目にしてしまうと混乱してしまいます。そうなると、せっかく獲得した見込み顧客の情報が無駄になってしまいます。

リードが不足している

MAツール導入にあたって、「まずはメール配信を始めたい」と考える企業も多いはずです。しかし、仮にその企業が所持している見込み顧客の情報が100件だった場合、MAツールによって効果が出るでしょうか?MAツールの導入には、時間・人・お金といったコストが発生します。これらのコストに見合った効果が見込めないのであれば、MAツールを導入するべきではありません。少なくとも1,000件以上の見込み顧客情報を保持している(もしくは獲得できる目処がたっている)状態になってはじめて、MAツールの導入を検討することが有効になると言えるでしょう。

WEBサイトやコンテンツ制作の不足

MAを上手に活用するためには、コンテンツの充実が必要不可欠です。ここでいうコンテンツとは、サービスページ・ホワイトペーパー・ブログやコラム・セミナー・導入事例などを指します。基本的にMAはオンライン上のコンテンツを活用して行われます。見込み顧客が興味を持ちそうなコンテンツが自社Webサイト上になければ、MAツールを導入しても効果は見込めないでしょう。また、仮に現時点でコンテンツが充足していたとしても、既存コンテンツの改修や新規コンテンツを創出するためのリソースが確保されていない場合は注意が必要です。

営業部門との連携不足

MAツールはマーケティング活動の自動化だけでなく、収益向上のために活用していくべきものです。そうなると自ずと、最終的に売上を作る営業部門との連携が必要不可欠です。しかし実際のところ、MAツールの導入をマーケティング部門だけで進めてしまい、営業部門には後から共有(場合によっては共有なし)ということも起こりがちです。見込み顧客を獲得して時間をかけて育成したにも関わらず、営業にパスした途端にアプローチされなくなってしまい無駄になってしまうことが多いです。

MA MAツール マーケティングオートメーション

運用リソースやデジタル人材の不足

「メール送信」や「フォーム作成」などの機能を切り取ってみると、MAツールは容易に扱えそうだと考える人も多いかもしれません。ですが蓋を開けてみると、社内のさまざまなシステムとの連携が必要だったり、Web関連の知識を有していないとやりたいことを実現できなかったり、MAツールの導入・運用には専門的な知識を必要とします。導入してみたはいいものの運用する人手が足りず、ただメールを送るツールと化してしまうケースもあります。また、マーケティング部門の担当者だけでなく、経営陣や他部門社員のリテラシー不足により、MAツール導入がうまく進まないこともあります。
例えば、マーケティング部門はMAツールを使って見込み顧客の創出を行っても、それを受け取る営業部門がリテラシー不足のためツールの使い方がわからない、となってしまっては元も子もありません。

マーケティングオートメーション(MA)の活用を成功させるポイント

MA活用がうまくいかない原因をいくつか紹介してきました。「MAってなんだか難しそう」と思われた方が多いかもしれませんが、ご安心ください。ここでは、MA活用を成功させるためのポイントを3つご紹介します。

製品特性や顧客像から必要となる機能を明確にしておく

先に触れた通り、MAツールはひとつの機能で成り立っているわけではありません。だからといって全ての機能を使いこなす必要はなく、自社製品・サービスの特性や顧客の企業規模(エンタープライズが多いのか、中小企業が多いのか)に応じて取捨選択することが重要です。市場にはさまざまなMAツールが溢れています。
自社にとって必要な機能はなにか、そもそもMAツールを導入する必要があるのかなど、あらかじめリサーチしたうえでツールの選定をする必要があります。

ペルソナ・カスタマージャーニーマップを作成する

カスタマージャーニーマップ MA

ペルソナやカスタマージャーニーマップを作成し、誰に、いつ、どんなコンテンツを提供すれば良いのか事前に明確にし、ターゲットの顧客にとって魅力的なコンテンツを発信することが重要です。また、ペルソナやカスタマージャーニーを作成することで、営業部門との認識合わせが容易になります。マーケティング部門はどういう見込み顧客を獲得・育成すべきなのか、それを受け取った営業部門はどうコミュニケーションをとるべきなのか、事前に両者のやるべきことをすり合わせしておきましょう。

カスタマージャーニーマップについては、こちらの記事でも詳しく解説しています。

デジタルとビジネス・業務知見を有した推進組織をつくる

MAツールはマーケティング部門だけで完結するものではありません。顧客情報を扱うという点で、営業部門はもちろん情報システム部門や法務部門などとのコミュニケーションも発生します。昨今では、改正個人情報保護法やGDPR対応など、細かくケアをしなければならないことが増えてきています。社内にITリテラシーが高い人材が揃っていれば、関係部門横断で推進組織を作ることが望ましいですが、社内のリソースだけでそのような組織を設けることは難しいのが実態です。その場合は、社外リソースの利用を検討することが重要です。
MAツールの設計・実装といった工程のみならず、戦略・企画立案などの上流工程から伴走支援するような企業も増えてきています。また、そういった企業と中長期的に組むことで、社内リソースにスキルやノウハウを蓄積することも可能です。

おわりに

日々変化の激しい顧客のニーズを捉え効果的なマーケティング活動を行うために、マーケティングオートメーションは必要不可欠です。しかし、導入すれば一朝一夕に課題が解決するような代物ではありません。本記事でご紹介したようなポイントを押さえつつ、ツール頼りになりすぎないことが大切です。また、MAツールはマーケティング部門だけで完結するようなものではありません。より高い効果を得るために、会社全体でMAを推進していけるようにしましょう。

著者情報
小泉 健太(こいずみ けんた)
Kenta Koizumi
早稲田大学基幹理工学部を卒業後、2015年にソフトバンク入社。コンシューマ向けモバイル事業の代理店営業に従事。2018年、ソフトバンクとアリババのジョイントベンチャーであるSBクラウドに出向。営業企画マネージャーとマーケティングマネージャーを歴任し、SFAやMAなどの企画・導入・運用を担う。現在はソフトバンクにて法人向けクラウド事業のマーケティング活動を推進する傍ら、会社全体のマーケティングオペレーションにも携わっている。