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営業企画とは?主なミッションから営業・マーケティング部門との上手な関わり方まで解説

マーケティング セールス

目次

営業企画とは、組織の営業戦略を策定・遂行し、営業部門をバックアップする役割を担います。営業活動の業務効率化が求められる中、近年では営業企画部門を立ち上げる企業が増えています。しかし、営業企画部門を立ち上げる際に、具体的なミッションや体制をどのようにすべきかイメージがわかない方もいるでしょう。

そこで本記事では、営業企画の役割から他部門との関わり方まで解説します。営業企画部門の立ち上げを検討されている方は、ぜひ参考にしてください。

営業企画とは?

営業企画とは、組織に売上や利益を生み出し、潜在的な見込み顧客に対してアプローチするための営業戦略の策定から実行を担う部門のことです。効果的な営業活動を実施するために、営業プロセスの改善、市場調査や競合分析などの役割を担います。営業企画は組織の成長を支えるために、他部門と連携を図りながら、戦略的な取り組みや効率的な営業活動を実施することが求められます。主に営業部門やマーケティング部門と協力しながら目標達成を目指すため、営業企画部門ではコミュニケーション力や分析力、企画力が重要な要素となります。

また営業企画は、営業部門のように予算や業績目標を持つことはありません。顧客と商談をし、売上を作ること自体は営業部門が行うため、営業企画はそのサポートを担うことになります。しかしながら、単に営業部門を支援する機能に留まるわけではありません。営業企画の本来の役割は、緻密なマーケティング分析に基づき営業戦略を考え、日々の営業活動に落とし込みながら推進することです。営業企画は組織の営業活動の舵取り役を担う重要な機能であると認識することが重要です。

営業企画の主なミッション

営業企画部門のミッションは、「営業戦略を考えること」「考えた営業戦略を遂行させること」の大きく2つに分けられます。それぞれのミッションで具体的にどういったことを行うのか、詳しく見ていきましょう。営業企画 ミッション

営業戦略を考える

営業企画のミッションの1つ目は、「営業戦略を考えること」です。緻密な営業戦略を策定し、立てた戦略の実現を果たすためには、詳細な調査・分析などが必要です。主な業務内容としては次のようなものが挙げられます。

・ 市場調査
・ 競合分析
・ ターゲット選定・顧客分析
・ アクションプランの策定
・ 実績の評価と改善

続いて、それぞれの業務内容を詳しく解説します。

市場調査

市場の規模や成長性などの動向や、顧客がどういったサービスを求めているかニーズを調査します。それによって、自社の商品やサービスが市場でどのようなポジションに位置するかを把握します。

競合分析

市場における競合企業の情報を収集したり、強みを分析したりすることで、自社の商品やサービスが市場内で競争力を持つかをリサーチします。競合分析の際は、SWOT分析などのフレームワークを用いて、自社の競争優位性を把握します。

ターゲット選定・顧客分析

自社の商品やサービスを買ってもらいたいターゲット層の選定を行います。顧客アンケートや購買データをもとに、業界・業種・企業規模・売上・所在地・担当部署・役職などの観点でセグメントを分類し、ターゲットを絞り込んでいきます。

アクションプランの策定

営業戦略を具体的な行動に落とし込むためのアクションプランを策定し、営業部門に伝達します。状況に応じて効果的な販売チャネルの選択や、営業チームの構成、営業リストの管理方法についても検討していきます。

実績の評価と改善

営業戦略の実行状況を評価し、目標の達成進捗や問題点を把握します。その結果に基づき、改善策を考えたり、営業戦略を更新したりします。

考えた営業戦略を遂行させる

営業企画の主なミッションの2つ目は、「考えた営業戦略を遂行させること」です。単に営業戦略を立てるだけでは、「絵に描いた餅」になりかねません。営業企画は、営業部門とコミュニケーションを取りながら、営業部門に戦略を実践してもらうことが重要です。具体的な役割は次のとおりです。

・ 営業戦略の伝達
・ 営業資料や営業ツールの導入
・ セールスキャンペーンの企画・実施
・ 売上目標達成のためのサポート
・ KPIの設定
・ 市場動向の収集・共有

続いて、それぞれの業務内容を詳しく解説します。

営業戦略の伝達

営業部門に対して考えた営業戦略や目標(KGI)を明確に伝達し、理解を深めるための研修やミーティングを開催します。何をどうやるかを伝える前に、「そもそもなぜやる必要があるのか」といった目的を明確に伝え、営業部門の理解を得ることが大切です。

営業資料や営業ツールの導入

営業活動を効果的に行うための営業資料や営業ツールを提供し、活用方法のレクチャーを含めて営業現場での活用を促します。導入後も営業部門と定例ミーティングを実施したり、利用シーンを確認したりしながら、活用上のネックポイントを把握し、仕様や機能の変更を行います。主な営業ツールには、SFA(営業支援ツール)、CRM(顧客関係管理)、営業日報ツール、社内チャットツール、オンラインミーティングツールなどがあります。

SFAについてはこちらの記事で紹介しているので、ぜひご参考ください。

セールスキャンペーンの企画・実施

セールスキャンペーンの企画・実施を図ることで、新規顧客獲得や既存顧客のリピート購入を促進します。ターゲット顧客に対する魅力的なキャンペーン内容の設計や実施期間の設定、キャンペーンの目的を明確にし、営業部門への伝達まで担います。また、目標達成インセンティブの設計を行うことで営業部門のモチベーションアップを促進し、組織全体の売上向上を図ります。

売上目標達成のためのサポート

営業部門の目標達成に向けた進捗状況を定期的にチェックし、達成が難しい場合には戦略の見直しや追加支援を行います。また、営業プロセスを整理し、無駄な業務を削減することで、各営業担当者が商談や顧客関係づくりに専念できるようにサポートします。
その他、営業部門からの報告をリアルタイムに受け取るために、営業進捗の共有を効率化するSFA(営業支援システム)や営業進捗ボードの導入を検討します。

KPIの設定

KPI(Key Performance Indicator=重要業績評価指標)は、営業部門のパフォーマンスを評価・改善するための重要な指標です。適切なKPIを設定することで、営業部門の目標達成に向けた進捗を把握し、効率的な営業活動を促進します。営業企画は、営業活動を定量的に評価するためのKPIを設定し、その達成状況を分析して改善策を提案します。KPIの達成進捗が遅れている場合、原因をすみやかに特定し、軌道修正に向けた営業サポートなどを行います。

KPI設定についてはこちらの記事で紹介しているので、ぜひご参考ください。

市場動向の収集・共有

市場全体の動向や競合他社の活動状況、顧客ニーズなどの情報を調査します。企業が適切な戦略を立案し効果的な意思決定を行うには、過去の経験や勘に頼るのではなく事実ベースの情報が欠かせません。マーケティング部門と協業しながら、得られた情報を営業部門にタイムリーに共有することで、戦略の修正や迅速な対応が出来るようになります。

営業企画と、営業部門・マーケティング部門の上手な関わり方

営業企画の役割は、営業戦略立案、進捗管理、ツール導入、営業育成など多岐に渡ります。しかしながら、実際に立てた戦略を実行するのは営業部門やマーケティング部門であるため、営業企画は舵取り役を担うことになります。場合によっては他部門との意見の食い違いや、認識の相違による衝突が発生する可能性もあるため注意が必要です。ここでは、営業部門とマーケティング部門との上手な関わり方について解説します。

営業企画 マーケティング 営業 関わり方

営業部門

営業企画が立てた戦略は、戦術やアクションプランとして落とし込み、日々の営業活動の中で実践していくことが求められます。営業企画は営業部門と関わる中で、営業担当者が行き詰まっている部分を察知し、その問題を解消することで営業活動に専念してもらうためのサポートを行います。ただし、営業企画は単に営業部門をサポートするだけではなく、本来の役割は上位部門として営業部門をコントロールすることです。営業部門にとっては予算の達成が評価の対象になるため、「営業企画が立てた営業戦略を行えば予算達成につながる」ということを示せなければ理解は得られないでしょう。
そこで営業部門と関わる際は、営業本部長と対等に話すことができ、各営業マネージャーに対して営業戦略の方向性を正しくプレゼンする能力が求められます。ゆえに営業部門のエース社員など、営業部門からも一目置かれるような人材を配置することが望ましいでしょう。

マーケティング部門

営業企画は、営業戦略の立案や企画などを担います。質の高い営業戦略を立てるには市場調査や競合分析などが欠かせませんが、一方で営業企画はマーケティングの専門ではありません。そこで営業部門はマーケティング部門と連携を図り、営業企画が立案した戦略や企画に対して、マーケティング部門に市場調査やデータ分析を担ってもらいます。また、マーケティング部門はWeb広告出稿やセミナー開催、展示会の出展などさまざまなプロモーションおよびマーケティング施策を熟知していますので、営業戦略に基づいた施策を実行していくことが可能です。
とりわけ近年では、マーケティング部門と営業部門が協業して、見込み顧客の獲得からナーチャリング、商談化へと繋げる組織作りが求められています。営業企画部門・営業部門・マーケティング部門が三位一体となって企業に売上・利益向上に寄与していくことは、強固な営業組織作りにおいて一層求められるでしょう。

営業企画部門の活動事例

ここまで営業企画部門の主な役割から、他部門との関わり方まで解説してきました。しかし、実際に営業企画部門を社内に立ち上げようとした場合、経営層や営業部門をはじめとした社内の理解を得ることが大きな壁になります。どのように納得してもらうか、進め方に悩む方も多いでしょう。そうした場合には、成功企業の事例が参考になります。ここでは営業企画部門の活用により、営業効率化の向上を実現した企業事例を紹介します。

営業効率化の成功を阻む要因と解決策についてはこちらの記事でも紹介しているので、あわせてご覧ください。

NTTコミュニケーションズ

通信業界大手のエヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社では、テクノロジーを活用した営業組織改革にチャレンジし続けてきました。2017年には社内にセールス・イネーブルメントを立ち上げ、営業パーソンを巻き込みながら、顧客に対して営業価値を発揮する仕組みづくりを開始しています。同社では、売上や営業パーソン一人あたりの生産性などのデータを収集・分析し、成果に直結させるためのイネーブルメント施策を打っていく仕組みを考案。その実現に向けて「統合された組織能力向上施策」の展開を検討しました。しかし施策を推進する上うえで、いきなり社内で市民権を得ることは難易度が高いと感じたことから、まずは営業フロント・営業推進・事業企画が三位一体となった横断型の「バーチャル組織」を構築するところから始めました。

バーチャル体制 NTTドコモ ドコモ

出典:SalesZine

バーチャル組織の具体的な取り組みとしては、ハイパフォーマーのインタビューや受注分析、提案書の収集などが挙げられます。それらの結果をもとに研修や勉強会、トレーニングなどの施策を打ち出していきました。その後も、「Data.Camp(データドットキャンプ)」と呼ばれる組織を立ち上げ、あらゆるデータを1ヵ所に集め、施策を打っていくプロセスを構築。構成メンバーとして、データ収集・分析を行うメンバー、マーケターなど提案ツールを企画するメンバー、フロントでコーチングする営業メンバーの混合組織を組成するまでに至りました。

SmartHR

労務管理クラウドサービスを開発・提供する株式会社SmartHRでは、オペレーション部門をSalesOpsチームとしてスタートし、各部門との連携の強化に乗り出しました。しかし、当初はCRMの構築がメイン業務となっており、営業部門からは「ツールの便利屋さん」という認識をされていたことに課題を感じていたそうです。
そこで、「SalesOpsチーム」から「セールスプランニング」へと名称を変更し、オペレーションもイネーブルメントも取り組む組織であることを社内に強くメッセージしていきました。同社のセールスプランニングを担う工藤氏は、「組織を変革する際は営業部門からどう見られているかという視点が重要である」と語っています。
そのうえでセールスプランニング部門では、オペレーション機能を「ツール・テクノロジー管理」戦略立案(プランニング)」の2つに整理し、ツールを活用した全社的な効率化は全社Opsチームへと移管しました。そこで新たな時間が生まれた分、営業力強化と施策・戦略立案に注力しています。

また、世の中的にセールスオペレーション業務は営業企画部門が担っているケースが散見される中、オペレーション業務のあり方について疑問を投げかけています。例えば、本来着手すべき課題になかなか取り組めていないケース、あるいは着手すべき課題を着手しなくてよいものとして仕分けてしまっているケースは往々にして起きがちです。そうした中で工藤氏は「現状の組織の状態を俯瞰し、何が必要なのかを立ち止まって考えることが重要である」と述べています。

おわりに

企業は継続的な売上・利益を確保するために営業部門の強化は欠かせません。とりわけデジタルツールの導入やマーケティング部門との協業が求められる中、従来の営業体制から脱却し抜本的な改革が求められています。その実現のためにも、営業企画部門の存在は必要不可欠です。営業企画部門は、単に営業部門をサポートする役割を担うのではなく、営業戦略の策定や市場調査・競合分析、アクションプランの計画など営業活動の舵取り役といった重要なポジションを担います。
さらに営業部門やマーケティング部門などの部門間の連携を高め、営業組織の基盤を強固にすることで、結果として売上・利益向上がもたらされるでしょう。ただし、営業企画部門がやるべきことを正しく行うためには、社内の理解や協力があってこそです。本記事で紹介した成功企業の例も参考にしていただきながら、営業企画部門の立ち上げに取り組んでみてはいかがでしょうか。

著者情報
高橋 洋介(たかはし ようすけ)
Yosuke Takahashi
2010年リクルート入社。アルバイト・中途採用領域の求人広告営業に従事し。在職中にMVP5度受賞などの実績を上げ、業界・業種・企業規模問わず多くのクライアントからの信頼を獲得。その後人材系広告代理店を経て、2020年よりフリーランスとして活動を開始。現在では法人向けに採用支援、営業支援、SaaS導入支援など幅広く対応。