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営業マネジメントの役割とは?最新トレンドと改善事例も解説

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目次

営業組織の目標を達成する上で、部門を統括し、チームのパフォーマンスを最大化する営業マネジメントは必要不可欠です。しかし「マネジメント」という言葉は聞いたことあるものの、営業組織にどう活かすべきか、課題に感じている方も多いのではないでしょうか。

この記事では、営業マネージャーが担うべき主要な業務や近年のトレンドについて解説し、営業マネジメントの改善事例も紹介します。

営業マネジメントとは

20世紀を代表する経営思想家のピーター・ドラッカー(以下ドラッカー)氏は、マネジメントの役割を「組織に成果を上げさせるための道具、機能、機関」と定義しています。一方、マネージャーを「組織内で特定の職務を担当し、その組織の成果に責任を持つ者」としています。これらを営業に当てはめると、営業マネジメントは営業目標を達成するための活動全般を指し、その責任を負うのが営業マネージャーであると言えるでしょう。

営業マネジメントの役割

ドラッカー氏は、マネジメントの主な仕事として「目標設定」「動機付け」「チーム作り」「評価とフィードバック」「人材の育成」の5つを挙げています。営業マネジメントは、企業の売上目標を達成するために不可欠なものであり、営業マネージャーの仕事はこれらに対応するものとなります。

まず、営業マネージャーは営業戦略の策定とそれに基づく売上目標の設定を行います。市場動向や競合状況、自社の強みや弱みを考慮し向かうべき方向性と目標を決定します。また、営業組織の人員計画や採用も営業マネージャーの重要な業務の1つです。適切な人員配置と採用によって、チームのパフォーマンスを最大化させます。さらに、営業KPIの設定、可視化、報酬制度への反映を行います。KPIは営業活動の成果や進捗状況を数値化し、定量的に評価するための指標であり、それを報酬に反映することでチームメンバーのモチベーション向上にもつながります。

最後に営業マネージャーの重要なタスクとして、メンバーへのフィードバックや指導が挙げられます。適切なフィードバックによって、チームメンバーの能力向上を促し、売上目標の達成に貢献することができます。

営業マネジメントの主要業務

営業マネジメントの役割について解説しましたが、その役割を果たすために、営業マネージャーが行う一般的な日々の業務を紹介していきます。

戦略策定

営業マネージャーは、限られた人員、予算、期間の中で売上目標を達成するための戦略を策定します。戦略策定では、市場や自社、顧客の情報を整理し、最も効果的な戦略を考えることが必要です。
ここでは、自社の立ち位置を知る上で役に立つ「3C分析」と「SWOT分析」を紹介します。

3C分析とは、市場(Customers)・競合(Competitors)・自社(Company)の3つの要素を分析することで、市場環境を正確に把握し、適切な戦略を策定する手法です。顧客ニーズや購買パターン、競合の戦略や差別化点、自社の強みと弱みなどを洗い出します。こうして自社の強みや提供できる価値、市場における差別化点を見出し、適切な戦略を立てていきます。

3C 3C分析

出典:123RF

SWOT分析は、自社を取り巻く環境を「内部環境」と「外部環境」に区分し、さらに内部環境を「強み(Strength)」と「弱み(Weakness)」、外部環境を「機会(Opportunity)」と「脅威(Threat)」の4つに振り分けて分析する手法です。自社の強みや弱みを洗い出し、それを活かした戦略を策定します。また、市場や競合の状況を把握し、自社がコントロールできるものとできないものに切り分け、施策の中で注力するべきポイントを明確にすることができます。

SWOTanalysis SWOT分析

出典:Capital.com

これらのフレームワークををうまく活用して、自社の「立ち位置」を正確に把握し、目標達成のために最も効果的な戦略と、それを実行するための具体的な戦術を定めましょう。

目標管理

チームが売上目標を達成するためには、目標管理を適切に行うことが必要不可欠です。目標管理を行う上で、適切な目標設定と可視化が重要となります。実現不可能な目標や簡単すぎる目標はメンバーのモチベーションを削いでしまいます。チャレンジングな目標を設定して、その達成を通じてスキルアップや成長を実感してもらい、モチベーションの向上につなげましょう。
目標を伝える際は、事業全体の目標との関連性を明示することが重要です。目標達成がチームや会社全体の目的と一致することを伝えましょう。

また、売上目標を商品や市場、チームやメンバーごとにブレイクダウンしたKPIを設定し、定期的に進捗状況を確認することが重要です。KPIの達成状況を可視化し、達成までに必要なことを洗い出しましょう。

案件管理

営業担当者が進める案件を管理し、将来の売上予測をすることは、営業マネージャーの重要な業務の1つです。案件の状況を正確に把握することで、目標と現在の状況のギャップを把握し、売上予測を行うことができます。商談回数や、営業担当の主観的な成約見込み、提案金額などを案件ごとに管理するためには、CRM(Customer Relationship Managemanagement)などのITツールが有効です。CRMを利用することで、情報を整理することができ、業務の効率化につながります。また、パイプライン管理と呼ばれる手法を用いて、商談の進捗状況や成約率などを可視化し、各営業担当者の目標達成に必要な提案数や商談回数を見える化することもできます。

パイプライン管理については、当ブログのこちらの記事で詳しく解説しております。あわせてご覧ください。

行動管理

営業マネジメントでは目標達成に向けた行動管理が重要です。営業活動において、コール数や商談数などの行動指標を可視化することで、目標達成に向けた進捗状況や課題を把握することができます。
指標の例として、アポイント数やアポイント獲得率、新規訪問数や新規訪問率、商談数や商談化率、受注件数などが挙げられます。これらの数値をSFAやCRMなどで記録・管理することで、チーム全体の活動状況をリアルタイムで可視化することができます。行動管理は、目標達成に向けた具体的なアクションを実現するための重要なプロセスです。行動を可視化して定期的に目標と現状を振り返り、業務効率の向上や課題の特定、スキルアップに向けたアクションプランの提示を行いましょう。

モチベーション管理

モチベーション管理は営業マネジメントの中でも非常に重要な要素です。時に目標達成への強いプレッシャーにさらされる営業担当に対しては、モチベーション低下を予防する必要があります。先述の行動管理で、行動指標が明らかに低下しているメンバーがいる場合は、至急対応しなければなりません。ヒアリングや指導を通じて、担当者の士気を高める必要があります。また、高パフォーマンスの担当者への賞与や表彰、チーム内での相互交流なども、モチベーションを高めるために重要な手段です。これらの取り組みにより、担当者は自信を持って仕事に取り組み、成果を上げることができます。それによって、チーム全体のパフォーマンスの向上にもつながります。

採用・育成

営業マネジメントにおける採用・育成は、戦略と現在の組織能力にギャップがある場合には欠かせない活動となります。採用においては、戦略に基づいた適切な人材を採用することが重要です。特に中途採用の場合は、採用したい人物像やスキルを明らかにし、それをもとに採用活動を進めましょう。育成は、中長期的な目標達成のためには非常に重要な活動です。個々人の能力のばらつきを埋めながら、メンバーの能力を底上げします。組織全体としての能力を高めていくために、定期的な研修やトレーニングを行うことが必要です。また、上司や先輩社員からのフィードバックやコーチングを行い、自己啓発やスキルアップを促しましょう。

近年の営業マネジメントのトレンド

近年の顧客の購買行動の変化や営業組織のDX化を受けて、営業マネジメントの手法も変化しています。ここでは、営業マネジメントに必要とされている手法や考え方について近年のトレンドを解説します。

顧客体験の重視

近年の営業マネジメントにおける大きなトレンドは、顧客体験の重視です。インターネットを通じての情報収集が容易になったことにより、顧客は製品やサービスの選択権を強め、顧客の購買体験が重視されるようになりました。また、サブスクリプション型サービスの普及により、継続的な関係構築の重要性が高まったこともその理由の1つです。こうした状況の中、SNS等を活用したソーシャルセリングや、より顧客のニーズや課題解決にフォーカスしたバリューベースセリングといった営業手法が注目を集めています。ソーシャルセリングは、SNSやコミュニケーションツールを活用して顧客とのコミュニケーションを深め、信頼関係を構築することに重点を置く手法です。顧客の投稿に対してコメントやリアクションを行うことで、顧客との関係を深めることができます。また、SNSの情報を活用して、顧客の興味や関心を把握し、それに合わせた提案を行うことも可能となります。

一方、バリューベースセリングは、製品やサービスの機能や性能を説明するのではなく、それが顧客にどのような価値や利益をもたらすかを重視する手法です。顧客が抱える課題や問題を解決するために、製品やサービスがどのように役立つのかを説明することで、顧客にとって魅力的な提案を行うことが可能となります。以上のように、顧客体験の重視は営業マネジメントにおいても重要なトレンドであり、バリューベースセリングやソーシャルセリングといった手法が注目を集めています。これらの手法を取り入れることで、より顧客のニーズに合わせた提案ができるようになり、長期的な顧客関係の構築につながります。

テクノロジーの活用

近年、営業マネジメントにおいて重要なトレンドの1つが、テクノロジーの活用です。顧客の行動変化に迅速に対応するため、営業支援ツールの導入が進んでいます。SFA、CRM、MAツールなどは、営業担当者が個々の顧客に最適化されたアプローチを行うことを可能にするためのツールです。これらのツールにより、顧客とのコミュニケーションやセールスプロセスを効率化し、顧客の購買体験の向上につなげることができます。

また、AI技術の進化により、インサイドセールスでの通話音声の分析や、チャットボットでの顧客対応なども浸透しつつあります。これにより営業活動における多くの作業が自動化され、営業担当者はより多くの時間を顧客とのコミュニケーションやビジネス成果の獲得に費やすことができるようになりました。さらに、IoTやビッグデータ解析を活用したデータドリブンな営業活動も進んでいます。営業担当者は事前に多くの情報を持って顧客と接触することができ、顧客との信頼関係を構築し、売り上げの増加につなげることができます。このようにテクノロジーを活用することで、営業活動の効率を高めることができるのです。

セールスイネーブルメントへの注目

近年、営業プロセスの高度化・複雑化やデジタルツールの浸透を受け、営業組織の強化を行う「セールスイネーブルメント」が注目されています。セールスイネーブルメントは、CRM等に蓄積される顧客や営業活動のデータを活用したアプローチに特徴があり、営業活動の属人化を防ぎ、再現性を高めることができます。

セールスイネーブルメントについては、当ブログのこちらの記事で詳しく解説しておりますので、こちらも合わせてご覧ください。

また、バイヤー側から見た営業活動をシンプルで一貫性のあるものにするための「バイヤーイネーブルメント」という概念も近年提唱されています。バイヤーイネーブルメントは、顧客に必要な情報を提供することで、顧客が自分たちの課題を理解し、解決策を見つけるためのプロセスを支援するアプローチです。両者のアプローチを組み合わせることで、顧客のニーズを正確に理解し、効果的にアプローチすることができます。

営業マネジメントの改善事例

最後に、営業マネジメントを改善した事例を紹介します。

富士通 SFAで案件管理を効率化

富士通株式会社は、「OneCRM」というプロジェクトを通じて、ビジネス全体の見える化や、分業・協業モデルへの移行による対応効率の向上に成功しました。このプロジェクトは、CRMの活用とグローバルでのパイプラインの標準化、顧客との接点強化などに取り組むものでした。プロジェクトの開始前は、下記のような課題を抱えていました。

・国や地方でパイプラインステージ定義が異なり、グローバル全体で商談状況や進捗を正確に把握するの困難
・受け身の営業スタイルで、顧客の潜在的な課題を発見できなかった
・ファーストコンタクトから受注後の保守までを1人の営業が担当していて、データに基づく分業制変革が急務

これらの課題を解決するため、CRMの導入やパイプラインの標準化、インサイドセールスの強化に取り組みました。システムへの情報入力やパイプラインの標準化には、多くの時間と人員を要し、大変な作業だったと言います。しかし「入力したデータがどう活用されるのか」「なぜ、パイプラインの標準化が必要なのか」と目的や狙いを丁寧に説明することで、会社全体で納得感を持って取り組むことに成功しました。また、インサイドセールス部門を立ち上げる際には、インサイドセールスの重要性が社内で理解されるように、動画コンテンツの作成や提案書の作成などを行いました。営業やマーケティング部門との連携を強化し、顧客の課題やニーズを引き出す営業スタイルの確立に成功しました。分業・協業モデルへの移行にも成功し、業務効率が向上しました。

ベネフィット・ワン プロセス評価で若手営業のモチベーションを改善

株式会社ベネフィット・ワンは、若手主体の営業組織で、モチベーションを向上させるための営業マネジメントを行った結果、前年比360%の業績アップを実現しました。マネジメントで重要となるモチベーションの源泉を「承認」に見出しました。若手社員は、SNSで「いいね」を求めるのと同じように、会社からも周りからの承認を求めていることが分かったのです。その承認を可視化・仕組み化するために、社内ポイント制度の「BIPo」を導入しました。成果だけでなくプロセスにおいても一定の評価を行い、それに応じたポイントを付与しました。また、社内コミュニケーションの活性化のために重要視したのがクロスセルです。クロスセルを受注した際は多くのポイントを付与したほか、社内表彰を行いました。結果的に部署間での交流が活発になり、会社全体の生産性が向上しました。

ベネフィット・ワンは、営業のやる気を引き出すためには、下記の10のポイントに注力したマネジメントが必要だとしています。

1. 無駄なタスクを排除する
2. 社員に行動目標を設定してもらう
3. 社員に行動を習慣化してもらう
4. 社内の風通しを良くし、アイデアを出しやすくする
5. 休暇制度を導入する
6. チームビルディングを行う
7. 学習環境を整える
8. プロセス重視で、データに裏付けされた「ほめる」機会を増やす
9. 頑張りを見える化することで、「承認」効果を高める
10. コミュニケーションを活性化させる仕組みづくり

参考にされてみてはいかがでしょうか。

Chatwork マネージャー研修でオンボーディング効率化

株式会社Chatworkは、課題が顕在化していない顧客に対するコンタクトに個人差を感じていました。中途入社の割合が多く、営業のやり方が属人化していたのです。そのため、まずはリーダー層を中心に組織の地盤を固め、属人的な組織ではなく再現性のある営業組織を作りたいと考えていました。その第一歩として導入したのが、ゼンフォースのSaaS特化型セールスマネージャー研修です。SaaSビジネスは売り切りのようなスタイルではなく、セールスの方法や組織のあり方も特異な部分があります。そういった部分に対し、最前線で活躍している人や実績を出している優秀な講師陣が実践型の講義を行いました。

ゼンフォース 導入事例 Chatwork

研修後は目標達成などの数値的な成果だけでなく、中途社員の立ち上がりが圧倒的に早くなるなどの効果も現れました。現在は講義を受けたリーダー層が「どのようにして、目標を達成させるのか」「そのためにチームがどうあるべきか」といったことを考え、営業マネジメントを実践しています。

おわりに

営業マネジメントは人材に関わる要素が大きく、改善には中長期的な視点も必要となります。一方で、近年は様々なツールや研修サービスも提供されており、これらを活用することで最新のベストプラクティスを比較的短期間で取り入れることもできるようになりつつあります。自社の営業マネジメントに課題を感じていらっしゃる方は、こうした外部サービスの活用も検討してみてはいかがでしょうか。

著者情報
荻野 嶺(おぎの れい)
Rei Ogino
米国NY、LAで幼少時代を過ごす。 2015年、伊藤忠商事入社。金属資源部門にて経営企画や事業開発に携わり、赴任先のシンガポールで石炭の三国トレーダーとして、各国の市場を新規開拓。2020年に帰国し、スタートアップ向け人材紹介のfor Startupsに従事。入社半年で最速昇格基準達成、MVT 受賞などの実績を上げ、各有力スタートアップのCEOやVCからの信頼を獲得。 2020年12月にゼンフォース株式会社を創業し、代表取締役CEOに就任。