【2023年最新】今さら聞けないインサイドセールスとは? 基本の用語や型、成功ポイント・事例を解説

営業DX

テクノロジーの発展により働き方の柔軟性が高まる中、営業手法もオンライン化が進んできています。すでに2022年のHubSpot Japana社の調査では56.1%の営業組織がテレワークを導入していると回答しており、オンラインを通じての営業活動が当たり前と考える企業も増えています。

そのような背景もあり、インサイドセールスという内勤型の営業手法が近年において注目を集め、多くの企業が導入し始めています。本記事では、インサイドセールスの役割、型、成功ポイント、事例を解説します。今後インサイドセールスの導入を検討している方、インサイドセールスを今まで知らなかった方は本記事を参考に日ごろの業務にお役立てください。

インサイドセールスとは

インサイドセールスとは、顧客獲得を目的に見込み顧客(リード)に対して、電話やメール、ウェブ会議ツールなどのデジタルコミュニケーションを活用して、営業活動を行う手法・ポジションのことを指します。企業へ訪問する「フィールドセールス」に比べ、コストや時間の削減につながり、生産性の向上が期待できます。役割としてはリード獲得から営業活動までを一貫して担い、商談や顧客の獲得、リードとの関係性構築、リードへの新製品の仮説検証等を行います。従来のテレアポやフォーム送信業務だけでなく、セミナー等の社内コンテンツの案内、既存顧客への追加提案など、幅広い役割が現在では求められています。

インサイドセールス 役割

インサイドセールスが注目される背景

インサイドセールスは近年、非常に注目されており、スタートアップから大企業まで多くの企業へ導入されています。HubSpot Japan社による「日本の営業に関する意識・実態調査2023(2022年11月調べ)」では、インサイドセールスを導入している企業は約40%を超えています。

では、なぜインサイドセールスが注目されているのでしょうか?主に下記の3つの要因があると言われています。
1. テレワークの浸透
2. サブスクリプション型ビジネスの普及
3. ナーチャリングの重要性の高まり

1.テレワークの浸透

2020年にCOVID-19の流行が世界中に拡大し、テレワークの導入が急速に進んだことでインサイドセールスの需要が急激に増加しました。公益財団法人 日本生産性本部による「第12回 働く人の意識調査(2023年1月調べ)」では、現在でも従業員数1,001名以上の企業の34%がテレワークを継続しています。またHubSpot Japan社の「日本の営業に関する意識・実態調査2023(2022年11月調べ)」では、買い手側の37.9%が「訪問営業・リモート営業のどちらでも良い」と回答しており、2019年と比較して約12%向上しています。

テレワークが広く普及したことで、営業活動もオンライン上で行われるようになり、営業担当者が顧客と直接対面する機会が減ってきています。インサイドセールスは、オンライン上での営業活動に適した手法であり、現在の働き方改革に適応した営業活動として注目されています。

2.サブスクリプション型ビジネスの普及

サブスクリプション型ビジネスとは、長期間の契約に基づき月1回、年1回など定められた期間に応じて請求するサービスや製品のことを指します。サブスクリプション型ビジネスは、定期的な収益を見込めることから、ビジネスが安定しやすく近年採用する企業が増えてきているビジネスモデルです。矢野経済研究所社による「2022 サブスクリプション・定額サービス市場の実態と展望(2022年1月調べ)」では、2024年までに国内のサブスクリプションサービス市場が1兆円に達すると予測されており、今後も急激な成長が見込まれています。

消費者支払額 矢野経済研究所

出典:矢野経済研究所社

サブスクリプション型ビジネスは、無料試用期間を導入している企業が多いですが、無料試用期間中はプロダクトのメリット等を顧客が理解していないこともケースもあります。そのため、インサイドセールスからプロダクトの説明やフォローアップすることで、顧客との関係構築ができます。結果的に受注確度を高めることができ、売上の向上へつながります。またサブスクリプション型ビジネスは、定期的な課金(サービスのアップグレードやユーザー数の増加)を前提としているため、受注後のフォローアップも重要です。インサイドセールスから受注後も定期的にフォローアップすることで、顧客との関係性が強化され売上増加につながっていきます。

このようにインサイドセールスとサブスクリプション型ビジネスは非常に相性が良く、サブスクリプション型ビジネスの普及により、インサイドセールスを導入する企業が増えています。

3.ナーチャリングの重要性の高まり

リードナーチャリングとは、見込み顧客の購買意欲の醸成を目的に、顧客の興味度合いに応じて段階的に商品の情報提供を行う活動を指します。見込み案件の創出・発掘を行う活動であるデマンドジェネレーションの2番目のステップにあたり、ひとつ前の段階であるリードジェネレーションで獲得した見込み顧客を対象として行う活動です。Forrester社の調査によれば、リードナーチャリングに取り組む企業は、そうでない企業に比べ、30%以上低いコストで50%以上多くの商談を生むことができるといわれており、販売プロセスにおいて重要性が高まっています。

ナーチャリングについては、こちらの記事で詳しく解説しています。

インサイドセールスの活動は、リードナーチャリングへの効果を期待されています。インサイドセールスから顧客へ定期的にコンタクトを取ることで、顧客との関係性を作り、強化できます。また、顧客との関係を作るだけでなく、顧客からのフィードバックから新たなマーケティング・営業施策の切り口や製品へのフィードバックを獲得することも可能です。そのため、リードナーチャリングの活動としても、インサイドセールスは非常に重要な役割を担っており、導入する企業が増える要因となっています。

インサイドセールスの種類

インサイドセールスは、もともと広大な国土を持つアメリカで市場拡大における訪問営業の限界を克服するアプローチとして始まりました。そのため「いかに受注確度を高めてフィールドセールスへ渡せるか」が主な役割でした。しかし、近年はクロージングまでインサイドセールスが行うケースも珍しくなく、その役割はビジネスモデルや企業によって多様化しています。ここでは代表的なインサイドセールスの役割をご紹介します。

SDR

SDRとは、Sales Development Representativeの略語で、マーケティングチームが創出したリードに対して、商談化へつなげるためのアプローチを行い、営業担当者へ引き継ぐ役割を担います。インバウンド型の営業アプローチをするにあたり「反響型」とも呼ばれています。日本のインサイドセールスの意味合いとして、このSDRを指すことが多いです。SDRは、MA(マーケティングオートメーション)やCRM内で管理しているリード情報を活用してターゲットリストを作成し、リストに対してメールや電話等を行います。マーケティングチームからのリードを引き継ぐことから、比較的導入意欲が高いリードがアプローチ対象であり、また中小企業が対象となることが多いため、効率的な営業活動を行うことが重要です。また顧客の導入意欲の温度感が冷めない間にアプローチする必要があるため、スピード感のある対応が求められます。

SDRをマーケティングと営業担当者との間に配置する目的は、「今すぐ商談へつながるリードかどうかの判別」と「リードとの関係構築」です。セミナーへの参加や資料ダウンロード時点では、実際にリードの声をヒアリングしていないため、商談につながるリードかどうかを判断することは難しいです。そのため、比較的導入意欲の高いリードに対して、SDRがアプローチし「今すぐ商談へつながるリードかどうかの判別」を行います。SDRからのアプローチがない場合、リードからのお問い合わせを待たないと商談を生み出せないので、スピード感がどうしても遅くなってしまいます。SDRが商談化への橋渡しとしてアプローチすることで、リードタイムを短くでき、営業効率が高まります。また、もし今すぐに商談へつながらない顧客であっても、SDRとリードとの関係性を構築することで、将来リードが導入検討に進んだ時にお問い合わせをもらえる可能性が高くなります。SDRは、単なるお問い合わせ対応ではなく、リードの選別と長期的な関係性の構築により、営業活動の効率化と売上の向上に大きく影響を与えます。

BDR

BDRは、Business Development Representativeの略語で、新規顧客や新規市場を見つけるためのアプローチを行うアウトバウンド型の営業手法です。いわゆるコールドコールやお問い合わせフォームからの営業等を行う手法で、「新規開拓型」とも呼ばれています。SDRはリードナーチャリングや商談化がメインの役割でしたが、BDRはリード獲得から商談化までの役割を担います。まだ接点がないターゲット企業に対して、公開されている情報を参考に電話やメール送信などを行い、担当者や決裁権のある責任者の情報を取得し商談化へつなげていきます。

BDRは、SDRの要件に加えて、受付突破の仕方、接点のない顧客への信頼関係構築の仕方、社内関係者を紹介してもらう方法などの営業突破力が必要となります。そのためSDRよりも高度な営業技術が必要と言われており、適正人材も異なります。BDRを配置するケースとしてよく挙げられるのが、ABM(Account Based Marketing)を活用したアプローチを行う時です。ABMとは市場内のターゲット企業(アカウント)にリソースを集中させるマーケティング戦略です。一般的なマーケティング戦略は特定セグメントへのアプローチですが、ABMはセグメントよりも具体的な企業を選定し、その企業に対してマーケティング戦略の立案、施策の実施を行います。そのため、具体的な企業を選定後に、BDRがアプローチし顧客情報の獲得および商談化を行うことで、ターゲット企業の受注が実現できます。マーケティング活動では特定のターゲット企業の情報獲得等を行うことは難しいので、ABMにおいてBDRの役割は非常に重要となります。

ABMについては、こちらの記事で詳しく解説しています。

BDRとSDRはどちらかを採用するのではなく、両方を取り入れてアプローチしていくことで、幅広くリードへアプローチできるため、営業効率の向上につながります。また市場シェア拡大のスピード感も高まるため、近年では両方を採用し市場へ包括的にアプローチする企業が増えています。

ADR

ADR (Account Development Representative) は、既存顧客へのアプローチを担当します。SDRやBDRは新規リードへのアプローチに対して、ADRは既存顧客のニーズを把握し、定期的なフォローアップやアップセル、クロスセルなどの営業活動を行います。近年カスタマーサクセス部門を導入する企業が増えているため、ADRの役割をカスタマーサクセス部門が担っているケースも増えてきています。ADRはすでに顧客との関係性がある中で営業活動を行うため、BDRのような営業突破力は必要ありませんが、顧客の課題を解決するためのコンサルティングやファシリテーション能力が必要となります。特に顧客にとって相談できる相手として認識してもらうことが重要であるため、顧客の課題を素早く察知し、顧客よりも先回りして提案していくことが求められます。

また、ADRはBDRの内容で紹介したABMの考え方との親和性が高く、既存顧客を大型案件へ大きくしていくことで売上拡大へ貢献するため重要な役割として近年注目をされています。

インサイドセールスの成功ポイント

営業効率を上げ事業の成長を牽引する役割を持つインサイドセールスですが、効果を発揮させるための押さえておくべきポイントがあります。本章ではインサイドセールスの導入を成功させるポイントを説明します。

役割の明確化

インサイドセールスチームは、SDR、BDR、ADRなどの役割分担が明確であることが重要です。McKinsey & Company社による「日本の営業生産性はなぜ低いのか」のレポート内で、営業効率を下げている課題として役割と責任範囲の不明確さを挙げています。日本の特性として、チームや組織の目標を達成するためにひとりひとりが考えて動くことを推奨する傾向がありますが、企業活動においては明確な戦略がなく、その時の状況・場面で乗り切る体制だとも言えます。営業組織においても各機能の役割や責任が明文化されておらず、曖昧なままメンバーを非効率に管理しているケースも多く見受けられます。ただインサイドセールス導入のように組織における機能を細分化していく際には、各機能を100%稼働させるための戦略と役割を明確にする必要があります。

インサイドセールス導入の場合、マーケティングとフィールドセールスとの違い、そしてそれぞれが担う責任を明確にすることが重要です。例えば、インサイドセールスからの商談化率が低い場合のマーケティングとインサイドセールスの動き方をガイドするレベルまで役割を明確にできているか等を確認していきましょう。役割を定義することは彼らの意思決定の基準を与えることにつながります。彼らの日々の活動やPDCAの意思決定に影響を与えるような役割や責任範囲を明確に明文化しましょう。

KPI設定

役割や責任範囲を明確にした後は、KPIを設定します。KPIを設定していく際は、マーケティング・営業プロセス全体から考えています。下記の図のようにリード獲得/リード数・商談化数・受注数・継続数をベースに考え、マーケティング・インサイドセールス・フィールドセールスの役割範囲に当てはめます。
themodel The Model セールスフォース

出典:Salesforce社

また全チーム共通で持つKPI(受注数や売上など)と、各チームの活動のPDCAを回すための詳細なKPI(メールクリック率、架電数、接続数など)の2つのKPIを持ち、メンバーの活動が組織の最終成果につながるようにしておくのも重要です。設定したKPIは各チームが閉鎖的に管理するのではなく、他のチームも共有し組織全体で課題を解決することが重要です。受注数が少ない理由がフィールドセールスにあるとは一概に言えないため、商談化の段階で問題がないか等を考えていく必要があります。

人材の確保・育成

インサイドセールスの立ち上げに際しては、専任の人材を社内から置くことになるケースが多いでしょう。実務上連携が多いマーケティング、フィールドセールスの経験がある人材を配置することができれば理想的ですが、もし社内の人材にいない場合はインサイドセールスの経験がある人材の新規採用や、アウトソーシングの活用も選択肢として検討してみましょう。ただし、立ち上げ初期は業務フローの構築やノウハウの蓄積が重要となるため、チームの核となるメンバーについては社内から配置し、徐々に組織強化やアウトソーシングを進めていくとよいでしょう。

インサイドセールス 体制 運営

出典:SALES ROBOTICS社「インサイドセールスの内製に関する市場調査」

SALES ROBOTICS社による「インサイドセールスの内製に関する市場調査」では、「インサイドセールスの体制を外注と内製のハイブリットで構成している」企業が50%で最多となっており、外部と社内のナレッジを活用している企業が多いです。

インサイドセールスの成功事例

富士通

富士通 インサイドセールス

出典:IT Media マーケティング

富士通では、2020年からの全社DXに合わせて、デジタルを活用したインサイドセールス組織(デジタルセールス)を立ち上げています。1000億円以上の企業へのアプローチを含めたデジタル営業体制を構築し、その中でもインサイドセールスを強化、初期は3名の1チームだったのが、社内でも評価され現時点では約50名にまで規模を拡大しています。富士通社では、役割をしっかりと明確に定義し、その上で責任者が現場へ熱く語りかけていくことで、社内にインサイドセールスの重要性を浸透させています。また成果を最大化させるためにBDRの強化に力を入れています。今までセミナーやマーケティング活動から獲得したリードへのフォローは行っていたため、BDRから新規顧客へアプローチすることで、リードと商談獲得の幅を広げ、営業効率を高めています。富士通社の事例は、こちらの記事で詳しく解説しています。

ベネッセコーポレーション

ベネッセ インサイドセールス

出典:SalesZine

ベネッセコーポレーション社では2019年より法人向けオンライン学習サービス Udemy Businessの販売を開始し、営業組織を新たに立ち上げています。初期はチーム3名がマーケティングやカスタマーサクセス、インサイドセールスなどあらゆる職種を兼任し、問い合わせ対応を中心に営業活動を行っていたところ、各役割の専任担当を配置する体制へ変更し、KPIを明確化しました。また2021年より架電アプローチを開始しウェビナーやイベントで得たリードへ、電話によるアプローチを開始、結果として有効商談化率10%前後という成果を残しています。さらに社内で結果が出始めた段階で、スクリプト制作などのインサイドセールスの仕組み化を行い、外部パートナーへ架電を委託するまで完了している事例になります。ベネッセコーポレーション社の事例は、こちらの記事で詳しく解説しています。

おわりに

インサイドセールスは、日本では比較的新しい営業手法ですが、その有効性が認められるに伴って急速に普及しています。体制構築や人材育成に一定の時間が必要なため、競合他社に遅れをとらないためにもぜひ早期から検討を進め、他社と差別化する営業体制を作っていきましょう。

著者情報

米田様 お写真

米田 晃(よねだ あきら)

大学卒業後、BtoB事業支援のスタートアップに入社し、「BtoB マーケティングチームの立ち上げ」「BtoB企業向けのMA/CRM初期設定・運用代行サービスの構築/運用」を担当。現在は、シンガポールにて、組織・人事コンサルティングを行いつつ、シンガポール拠点・日本拠点・タイ拠点のマーケティング戦略・施策の責任者として、企業ブランドの促進から、リードライフサイクル全ての統括を行っている。

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