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インサイドセールスのヒアリング項目設計とヒアリング時のポイントを解説

インサイドセールス

目次

コロナ禍を経て、非対面で営業活動を行う「インサイドセールス」を導入する企業が増加傾向にあります。株式会社インターパークが実施した「テレワーク実施状況と今後のテレワーク実施意向に関する実態調査」では、自社でインサイドセールスを導入していると回答した営業職は26.1%(昨年比+6.1%)、その内34.9%は、外出自粛が推奨された2020年3月以降にインサイドセールスを導入したことが分かりました。この結果から、今後もインサイドセールスを導入する企業が増加すると予想できます。インサイドセールス導入後の企業の中には、インサイドセールスが行う架電時のトークやヒアリング内容などがわからない、と具体的な手法について悩みを持つ担当者もいるかもしれません。

この記事では、インサイドセールスのヒアリング項目や、ヒアリング時のポイントについて解説します。ヒアリング項目の雛形も載せていますので、ぜひ参考にしてください。

インサイドセールスとは?

インサイドセールスとは、顧客獲得を目的に見込み顧客(リード)に対して、電話やメール、ウェブ会議ツールなどのデジタルコミュニケーションを活用して、営業活動を行う手法・ポジションです。インサイドセールスの役割は複数に渡り、商談や顧客の獲得、リードとの関係性構築、リードへの新製品の仮説検証等といったリード獲得から営業活動までの役割を一貫して担っています。

インサイドセールス インサイドセールスとは

この記事ではインサイドセールスの概要や目的、成功のポイントや事例についてはこちらで解説しています。

ヒアリングシートの必要性

インサイドセールスで顧客のニーズを正確に聞き出すために使われるのがヒアリングシートです。本章では、ヒアリングシートの持つ必要性や役割を解説します。

抜け漏れをなくすため

ヒアリングシートを活用することであらかじめ顧客へヒアリングすべき項目を用意できるため、実際に行う質問時の抜け漏れを少なくすることができるメリットがあります。ヒアリングシートを準備の上、顧客との会話のなかで質問を通じてヒアリングすべき項目を聞き出すことで、ニーズを正確に把握でき、営業活動でのアクションやアプローチに活用できるでしょう。ヒアリングシート作成時のポイントは、あらかじめヒアリングすべき項目である「Must項目」や、できれば聞き出したい項目の「Want項目」を洗い出しておくことです。全ての項目を聞くことを意識してしまうと、誘導尋問のようになり相手を圧迫しますので、会話の中で自然と聞き出せるよう質問にも優先順位付けを行いましょう。

ヒアリングの品質を一定にする

インサイドセールスの活動では、メンバーごとのスキルセットにより、情報収集量や精度が異なる課題が発生することもあります。このような問題に対しても、ヒアリングシートを活用することで解決が可能です。ヒアリングすべき項目をヒアリングシートを活用し事前準備をしておくことで、メンバーの技量に左右されないヒアリングが可能となります。その結果、ヒアリングの品質が一定となり、メンバーのスキルに依存せずに情報収集量と情報の品質を保つことができるようになります。

顧客の解像度と精度を上げる

ヒアリングシートを活用して細かな情報収集を行いながら、顧客のニーズの吸い上げを行います。顧客の状態やニーズを収集することで顧客の解像度を上げられるため、見込み顧客を育成するうえでも効果的です。SaaS比較サイトを展開するBOXILによると、オンライン上で獲得するリードの種類は2つに分類できると言います。1つが、ニーズが潜在的で購買意欲の低い「これから客」、もう1つがニーズが顕著で購買意欲が高い「今すぐ客」です。以下の図のように一般的には「これから客」の割合は80%、「今すぐ客」の割合は20%と言われていますが、売上向上のためには「今すぐ客」のみに注力せず「これから客」を継続的に育成することも重要です。

インサイドセールス 顕在顧客 潜在顧客

出典:BOXIL「BtoBマーケティングとは?6つの手法と成功のポイント「今すぐ客よりこれから客」を育成しよう」

「これから客」を「今すぐ客」へ育成するには、顧客の状態把握のためにニーズをヒアリングし、顧客が求める情報を迅速に届けることが重要です。素早く情報を届けることで、顧客の課題解決につながり、自社商材を検討するようになる可能性が高まるからです。顧客の情報把握のために重要となるのがヒアリングシートです。営業活動を効率的に進めるために必要な聞くべき情報(顧客の検討時期や決済者など)をシートを基に確認し、データとして蓄積しておきます。そうすることで顧客にとって最適なタイミングが把握できるようになり、それらの情報を活用しながら顧客接点を持てば、顧客の育成やアプローチの精度を高められるようにもなるでしょう。

商談につながる

ヒアリングシートを準備することは、インサイドセールスの目標である商談の獲得にもつながります。顧客に対し、シートに沿ったヒアリングの実行を継続することで、顧客のニーズや課題を明らかにできます。その結果、顧客のニーズや課題の解決方法として、自社商材をアプローチし商談へつなげられるようにもなるでしょう。

ヒアリングシートに入れるべき項目

ヒアリングシートを雛形化することで、インサイドセールスのメンバーのスキルに左右されず、どのメンバーでも必要なヒアリングができるようになります。ヒアリングシートの雛形作りにも役立つ、ヒアリングシートに入れるべき項目を順に解説します。

目標と課題

ヒアリングを行う中でも優先してヒアリングしたい項目は、顧客のビジネス上の目標と課題を把握することです。顧客の目標や課題を元に、顧客へ提示する自社の商材を提供できる価値やソリューションの方向を定めるためです。では、どのようにして顧客の目標や課題の情報を収集すれば良いのでしょうか。方法の一つとして、顧客が行った行動を想定・仮説立てをしながら吸い上げたい情報を聞き出す質問を行う、というやり方があります。質問例を以下に2点挙げます。

・インサイドセールスのKPI管理シートをDLした顧客に対して
質問:「インサイドセールスのマネジメントに課題を感じていらっしゃいますか?」

・営業DXに関するセミナーに参加した顧客に対して
質問:「営業業務の効率化や改革がうまく行かずお悩みでしょうか?」

このようなヒアリングを行い、「これから客」の潜在的な課題やニーズを顕著にし、課題解決やニーズに対応できる提案をすることで、案件化や成約につながる可能性が高くなるでしょう。

ソリューションの優先順位

顧客がビジネス上の目標や課題を複数抱えている場合、どの目標や課題を優先したいかをヒアリングしましょう。解決すべき顧客のニーズや課題を把握できるためです。自社の商材が複数ある場合、どの商材を顧客におすすめするかが分かるため、商談での方向性が決まります。

自社サービスの認知・興味関心

顧客が自社商材やサービスを認知しているか、顧客の課題をヒアリングしながら、その課題の解決方法として自社商材やサービスに興味関心があるかをヒアリングします。ヒアリングの結果、自社商材の認知や興味関心があれば、商談につながりやすくなります。すぐさまアポイント獲得へのトークへつなげましょう。もしも自社商材に対しマイナスイメージや不信感を持っている場合、すぐにアポイント獲得のトークをすると更にネガティブな印象を与えてしまいます。その場合は営業担当へつなげる前に顧客が抱える商材への疑問や不安を解消するためのアプローチを行いましょう。顧客の疑問や不安を早期にヒアリング、解決することで顧客が自社商材に良いイメージのある状態へ営業担当へつなげられます。

予算と希望価格

顧客が想定している予算感や希望価格もヒアリングしておくべき項目です。顧客の予算感をある程度把握できれば、おすすめするグレードやプランなどの方向性が分かります。顧客も費用面で安心感を得られるため、円滑に商談を進められるでしょう。

意思決定プロセス

顧客の意思決定の基準、購入を検討をする部門などの意思決定プロセスについての情報もヒアリングであらかじめ入手しておきましょう。BtoBビジネスでは、ヒアリングをする相手と、実際に意思決定を行う相手が別の場合が多いため、誰に対し情報を伝えるべきかを知るために重要になります。成約を得るためには、営業担当者は意思決定権のある相手が納得する商材の価値観や課題解決法をアピールする必要があります。意思決定権のある相手が納得してこそ、成約につながるためです。あらかじめヒアリングで意思決定プロセスを把握しておくことで、営業担当者が商談でアプローチすべき内容や方向性が定められます。

競合他社との比較・検討状況

ヒアリングでは競合他社との比較・検討状況も聞き出しましょう。顧客がどのような商材と自社商材を比較検討しているかを把握することができれば、競合商材の情報と自社商材の情報を比較することで、顧客のニーズや課題を知る糸口となります。また、営業担当者が商談に入る前に競合他社との比較・検討状況を知れるため、商談では他社と比較した自社商材の魅力やメリットなどの効果的なアピールも可能です。

希望納期とスケジュール

商談へ進む前に、顧客の希望納期やスケジュールをヒアリングしておきましょう。商談後に希望納期に間に合わないことが判明した場合、契約や購入に至らない可能性もあります。ここまでの顧客育成やアプローチなどがすべて無駄になってしまうことがないように事前確認を行うことが重要です。顧客の希望納期やスケジュールを把握することで、営業側も納期に間に合わせるための方法を考えたり、代替案を出したりと、猶予を持ったアプローチもできるようになります。自社側、顧客側両方の時間のロスを防ぐためにも、希望納期とスケジュールをヒアリングしましょう。

ヒアリング時のポイント

本章では、顧客からヒアリングすべき項目を効果的に聞き出せる、インサイドセールスにおけるヒアリング時のポイントを解説します。

事前にできるだけ顧客に関する情報収集を行う

事前に顧客に関するさまざまな情報を収集しておくと、質問内容が抽象的ではなく、具体的に行えるようになります。顧客に関する情報を収集する際は、具体的に以下のような要素を収集しておきましょう。

・顧客に関する情報や取り巻く市場
・競合サービスの利用状況
・ターゲット属性かどうか

ヒアリング時にはできるだけ細かく、顧客へ具体的な質問を行うようにしましょう。詳細なデータを得ることで、顧客の状態に合った適切な商談を行うことができ、その結果成約につながる可能性も高くなるからです。

ニーズの仮説を立てる

インサイドセールスでヒアリングを行う目的は、顧客の課題やニーズを把握し、営業担当からの商談につなげることです。顧客から自然の流れで課題やニーズを引き出すためには、ニーズの仮説を立てましょう。ニーズの仮説を立てて顧客に伝えることで、顧客が質問に対してどのように答えれば良いかが分かるようになります。またその結果、返答から効果的なヒアリングの成果を得られるようになります。ニーズの仮説は、リード獲得時の流入経路から考えるのも一つの策です。たとえば、流入経路がサイトに掲載しているホワイトペーパーのダウンロードであり、またそのコンテンツ内容がMAツールに関する内容であれば、

「マーケティングと営業をうまく連携したい」
「分散している業務を集約して、効率的な営業活動につなげたい」

といったニーズを仮説として立てることができるでしょう。ニーズを仮説として立てることで、顧客の求める提案や商談の方向性が分かり、効果的なアプローチにつながります。

ヒアリングシートの記載必須化

ヒアリングシートの雛形を作成したのに、活用されないといった運用フローになってしまうとせっかくのヒアリングシートが意味をなさないことになります。ヒアリングシートを作成することを目的にするのではなく、案件化や成約につなげるためにシートを必ず活用しましょう。シートの内容を元に顧客育成や営業活動を通じ、シート自体を修正・改善を行うことでより精度の高いヒアリングの実行も可能になります。

CRMと連携する

ヒアリングはCRM(顧客管理ツール)と連携し、顧客管理やインサイドセールスの架電を含む営業履歴として記録しておきましょう。営業履歴を記録しておけば、次回の顧客接点のタイミングが把握できるため効果的なアプローチができます。また、次回の顧客接点のタイミングをCRMでリマインド設定しておけば、顧客が購入を検討するタイミングを逃さずにアプローチができ、成約につながる可能性が高くなります。

インサイドセールスのマネージャーとして成果を出すポイント

インサイドセールス部門での成果を上げるためには、マネージャーが成果を管理できるような状態になることが重要です。ここでは、マネージャーとして覚えておきたいポイントを解説します。

KPI管理と意思決定

マネージャーの重要な役割は、KPI管理と意思決定です。インサイドセールスで成果を上げるためには、成果の評価やチームの方向性を定めるためのKPI設定や意思決定が必要になります。インサイドセールスでの業績評価や目標達成までの進捗を把握するために、明確なKPIを設定しましょう。

インサイドセールス KPI
KPIと最終目標を達成させ、成果を上げるためにはインサイドセールスチームが同じ方向性や焦点を持って業務に取り組む必要があります。そのため、マネージャーはKPIを定期的にモニタリングし、インサイドセールスチームの方向性や焦点を保ちましょう。

インサイドセールスで設定する代表的なKPIや目標設定のポイントはこちらで解説しています。

チームの育成とモチベーション維持

インサイドセールスでの安定的な成果を得るためにも、マネージャーはチームの育成とメンバーのモチベーション維持のための取り組みを行うことが重要です。マネージャーの主な役割と、役割ごとの取り組む内容について、以下の表にまとめました。

インサイドセールス マネージャー 役割
メンバーひとり一人へのフィードバックやコーチングなどのサポートを行うことで、育成やモチベーションアップの高い効果も期待できます。マネージャーがチームやメンバーの育成やモチベーションに関する取り組みを行うことで、インサイドセールスの継続的なレベルアップにもつながります。

適切なツール導入とプロセス改善

マネージャーとして成果を出すためには、インサイドセールスの業務効率化をし生産性を向上させることも重要です。業務効率化には、適切なツールの導入やプロセスの改善が有効な手法となります。たとえばCRMを導入し、顧客情報、リードのステータス、コミュニケーション履歴などを一元的に管理することで効率的なフォローアップや分析が可能になります。その結果、リードへの効果的なアプローチですべき行動が分かり、成約率向上にもつながるでしょう。デジタルツールを活用し、チームの営業活動に関するフィードバックも収集するようにしましょう。収集後は、プロセスのボトルネックや無駄を見つけて改善を進めることで、インサイドセールス業務の効率化と生産性向上にもつながります。

おわりに

インサイドセールスの必要性とともに、インサイドセールスのヒアリング項目とポイントについて解説しました。営業手法の変遷にともない、今後もインサイドセールスの重要性は高まっていくと予測されます。インサイドセールスで成果を発揮し、商談へつなげるためには、顧客のビジネス目的と課題を引き出すための項目とポイントを踏まえたヒアリングが必要です。記載すべき項目を取り入れたヒアリングシートを作成し、インサイドセールスでのヒアリングに活用しましょう。

著者情報
柳本 瑠衣 (やなぎもと るい)
Rui Yanagimoto
米国の州立大学卒業後、米国にて就労経験を経て帰国。国内のIT企業へ入社後、新規開拓営業と経営企画を経験。パーソルホールディングス株式会社(旧インテリジェンス)にてデジタルマーケティング領域を経験した後に、MAツール開発会社へ入社、インサイドセールス部門責任者として従事。2人目の出産を機に働き方を見直し2022年にフリーランスに転身。現在は営業DX領域のコンサルティングとマーケティング業務支援等を行う。