インサイドセールスは、費用や時間の削減、生産性の向上などのメリットがあるため、注目されている営業手法です。今回の記事では、7つの具体的な導入事例を通じて、インサイドセールスの成功のポイントやメリットについて解説します。インサイドセールスの導入や効果的な運用方法を知りたい方は参考にしてください。
インサイドセールスとは?
インサイドセールスは、サブスクリプション型ビジネスの普及やリードナーチャリングの重要性の高まりを背景として、注目されている営業手法です。顧客獲得を目的として、見込み客(リード)に対して電話やメール、ウェブ会議ツールなどを用いて営業活動を行う手法、ポジションを指します。これに対して、企業への訪問を主とする営業手法をフィールドセールスと呼びます。インサイドセールスを導入することで、費用や時間の削減、生産性の向上などのメリットがあるため、リード獲得から営業活動、商談や顧客の獲得、見込み客との関係性構築、新製品の仮説検証など幅広い目的で活用されています。
インサイドセールスについては、こちらの記事で解説しています。
インサイドセールスを導入するメリット
インサイドセールスを導入するメリットは、以下の通りです。
これらのインサイドセールスのメリットに関して、解説します。
1日にアプローチできるリードが増える
インサイドセールスの導入によるメリットとして、1日にアプローチできるリード数の大幅な増加が挙げられます。従来のフィールドセールスの場合、移動時間が必要となるため、1日に行える商談数は3件〜4件が限界とされていました。顧客の場所や距離によっては、移動時間が商談の時間を超えることもありました。しかし、インサイドセールスを採用することで移動時間が不要となるため、1日に3件〜4件が限界だった商談件数を8件以上組むことが可能となります。さらに、時間を有効に活用することで、従来のフィールドセールスではフォローできていなかった顧客や、新たな市場、セグメントへのアプローチも可能となります。インサイドセールスの導入により、1日にアプローチできるリードが増加するだけでなく、新たなビジネスチャンスの発掘や、既存顧客との関係をさらに深化させる効果が期待できます。
リードのナーチャリングができる
インサイドセールスのメリットとして、リードナーチャリング、つまり見込み客の育成が行える点も挙げられます。フィールドセールスは売上の達成という短期的な目標が重視される傾向にあるため、すぐに案件化しなかった場合、見込み客の継続的なフォローが難しいという問題があります。しかし、インサイドセールスを採用することで、電話やメールを駆使して、直ぐに購入には至らなくても長期間に渡って見込み客との関係を維持することが可能になります。インサイドセールスの継続的なコミュニケーションを通じて、顧客のニーズやアプローチするべきタイミングをより深く理解できるため、最適な時期に提案や成約へと導くことができます。さらに、インサイドセールスの活動ログを参照することで、過去のコミュニケーションや顧客の反応を振り返り、次回のアプローチ方法をより精緻に計画することができるため、リードの質を高めるだけでなく、全体の営業活動をより効率的に進められます。
業務の属人化が防止できる
インサイドセールスのメリットには、業務の属人化を防げるという点も挙げられます。SFA、MA、CRMといったツールの活用により、営業活動や顧客情報をチーム全体で共有し、情報の一元管理が可能となります。その結果、担当者が退職や異動となった場合でも、後継者が迅速に業務を継続できるようになる点は大きなメリットです。業務が属人化してしまうと、担当者の不在時に情報が途絶え、業務の遅延や停滞のリスクが増大します。特に、顧客情報や過去のコミュニケーションの記録が不十分な場合、後任の担当者は顧客との関係を築くのに時間が必要となるため、商機を失う恐れがあります。インサイドセールスの手法を採用することで、見込み客の育成手順が標準化され、担当者の能力や経験に依存することが少なくなります。結果として、組織全体の営業力が一層強化され、後任の担当者もスムーズに業務を引き継ぐことができるようになります。
インサイドセールスの成功のポイント
インサイドセールスの成功のポイントをまとめたものが、以下の表です。
これらのインサイドセールスの成功のポイントに関して、解説します。
役割の明確化
役割の明確化は、インサイドセールスを成功させるための重要なポイントです。インサイドセールスチームでは、インバウンド型のSDR、アウトバウンド型のBDR、既存顧客を担当するADRといった役割分担が明確であることが求められます。日本企業では、チームや組織の目標を達成するために、各メンバーが自らの判断で行動することが推奨される傾向がありますが、明確な戦略や方針が出ていない場合は、業務の効率が悪化するリスクがあります。インサイドセールスを導入する際は、業務効率低下のリスクを回避するために各メンバーの役割と責任を明確にし、業務を進める必要があります。マーケティングとフィールドセールスも含め責任範囲をしっかりと定義し役割を明確にすることで、メンバーの意思決定がスムーズになり、効率的に業務を行うことができるようになるでしょう。
KPI設定
KPI(Key Performance Indicator)の設定は、インサイドセールスの効果を評価し、その品質を高めるために欠かせません。インサイドセールスの役割や責任範囲を明確に定義した上で、マーケティングや営業の全プロセスを基にKPIを策定します。KPIには、リード獲得数、商談化数、受注数、継続数などの指標が含まれ、これらの指標をマーケティング、インサイドセールス、フィールドセールスのそれぞれの役割に合わせてKPIとして設定します。インサイドセールスの全チームメンバーが共有するKPI(例:受注数や売上)と、各チームメンバーの活動を最適化するための詳細なKPI(例:メールのクリック率、架電数、接続数)の2種類の指標がKPIとして挙げられます。これらの指標をKPIとして設定することで、各メンバーがどのように組織全体の成果に貢献しているかが明確になります。KPIを設定する際の重要なポイントは、KPIを各チームが個別に管理するのではなく、全チームで共有し、組織全体の課題を共同で解決する姿勢です。例えば、受注数が目標未達の場合、その原因がフィールドセールスのみにあるとは限りません。商談だけでなく、それ以前のプロセスにおいても問題がないか調査することで、問題の原因を正確に把握し、適切な改善策を立てることができます。
インサイドセールスにおけるKPI・目標設定については、こちらの記事で解説しています。
人材の確保・育成
インサイドセールスの導入を成功させるためには、適切な人材の確保と育成が必要不可欠です。多くの企業は、インサイドセールスを始める際に社内の専任人材を配置します。マーケティングやフィールドセールスの経験者をインサイドセールスに配置するのが理想的です。なぜなら、インサイドセールスはマーケティングやフィールドセールスとの連携を頻繁に行う必要があるため、マーケティングやフィールドセールスの経験や知識を活かして効果的に連携できるからです。社内に適切な人材がいない場合は、インサイドセールス経験者の新規採用や外部企業へのアウトソーシングを検討することになります。立ち上げの初期段階では、業務の流れやノウハウの蓄積が重要となるため、チームの核となるメンバーは社内から選び、徐々に経験者の採用やアウトソーシングを進めると良いでしょう。
インサイドセールスの成功事例
さまざまな企業のインサイドセールス導入の成功事例を紹介します。
営業DX強化にあたり、インサイドセールス人材を育成 | 株式会社イトーキ
オフィス家具の製造・販売を行っているITOKI株式会社のインサイドセールス導入の事例は、営業DXの成功事例として注目を浴びています。ITOKIは、新規顧客の獲得や既存顧客との関係強化という課題を抱えていました。特に、営業担当者が顧客を直接訪問するフィールドセールスは時間とコストが掛かるため、効率的とは言えませんでした。この課題を解決するためにITOKIはインサイドセールスの導入を考え、ゼンフォースはインサイドセールス導入に関わる以下のサポートを提供しました。結果として、新規顧客の獲得数は大幅に増加し、既存顧客との関係もより強固になりました。
ITOKIのインサイドセールス導入事例については、こちらの記事で解説しています。
スキルセットやプロセスを均一化し、リードの量と質を担保する | HubSpot
HubSpotはSaaS業界での急成長企業として知られています。過去4年間で、その収益は驚異的な6,000%以上の増加を遂げ、Inc 500の急成長企業リストで33位にランクインしています。このような成果を上げることができた背景には、以下のインサイドセールスの取り組みが大きく関与しています。
1. 顧客のニーズを理解する
HubSpotは、顧客のニーズや課題を深く理解することを最優先としています。そのため、ブログの執筆を積極的に行い、顧客に有益な情報を提供することで信頼関係を築く取り組みを行っています。
2. 共通のプロセスを作成する
HubSpotのチームは、全員が共通のプロセスに従うことを重視しています。これにより、業務の効率化や品質の向上を実現しています。また、個人のデータを基にした継続的なトレーニングを行い、各メンバーの弱点を克服する取り組みも行っています。
出典:Inside Sales Best Practices: HubSpot – A Case Study
3. データドリブンなアプローチを行う
HubSpotは、直感や経験だけでなく、データに基づいた判断を行うことを重視しています。リードごとの最適な試行回数をデータから導き出し、より効果的なアプローチを実現しています。
4. マーケティングがリードの量と質を担保する
HubSpotのマーケティング部門は、リードの量と質を担保する役割を持っています。これにより、営業チームが効果的にアプローチを行うための高品質なリードを確保することができます。
インサイドセールスをセールスの司令塔に | 株式会社カオナビ
カオナビは企業の人事労務の課題を解決するクラウドサービスを展開しています。同社のインサイドセールスの取り組みは、顧客のニーズを的確に捉えることを中心に行われており、セールスの全行程を明確に可視化することで、営業活動の効率と品質を向上させています。また、カオナビはMAの活用を積極的に行っている点も特徴としてあげられます。リードの行動履歴や属性情報を元に個別にコンテンツを提供することで、リードの興味やニーズに応じたアプローチが可能となっています。この方法により、リードのコンバージョン率を向上させるとともに、高品質なリードを獲得しています。
他の支援会社と比較して5倍の商談数を獲得 | 株式会社カケハシ
株式会社カケハシは、電子薬歴の開発や薬局サポートを手掛ける企業です。カケハシはマーケティング部門による新規のリード供給がない時期は新規開拓が十分に行えない、医薬品卸売会社に同行し販路拡大を試みるも商談獲得につながらない、といった課題を抱えていました。これらの問題を克服するため、カケハシはインサイドセールスのアウトソーシングを行いました。この結果、他の支援会社と比べて5倍の商談数を獲得しました。さらに、フィールドセールスの人材育成が加速し、顧客訪問のタイミングを柔軟に選定できるようになり、PDCAサイクルを効果的に回せるようになりました。インサイドセールス導入の効果はそれだけではありません。情報の記録と可視化により、社内コミュニケーションがスムーズになり、チーム全体の生産性が上がり、商談や取引の成功率を高める要因となりました。
事業成長のストーリーまで考える | 株式会社SanSan
株式会社Sansanは、法人と個人の双方を対象に名刺管理サービスを提供している企業です。営業組織は、The Model型と呼ばれる分業体制を採用しています。
出典:受注から活用、事業成長のストーリーまで考える。Sansanならではのインサイドセールス
Sansanのインサイドセールスは、単に商談のアポイントメントを獲得するだけではありません。彼らのアプローチの特徴は、Sansanの価値をお客様に伝え、事業の成長ストーリーを共有する点にあります。インサイドセールスチームは、お客様のニーズや課題を深く捉え、それに合わせた最良のソリューションを提案しています。この姿勢が、Sansanが多くのお客様の信頼を得て、事業を成長させる原動力となっています。
マーケティングの全体最適化を行う | コニカミノルタ株式会社
マーケティングの成功は、単に広告やプロモーションだけに限らず、全体の最適化が鍵となります。これは、マーケティング活動の各ステージを最適化することを意味します。リードの創出から、それが商談や受注につながるまでの全プロセスを通じて、ボトルネックや改善点を特定し、効果的なアクションを実行することが求められます。電機メーカーのコニカミノルタ株式会社は、この考え方に基づき以下のマーケティング活動を展開しています。
1. データに基づく活動
現代のマーケティングはデータ駆動型が重要となるため、インサイドセールスや営業の活動、顧客との取引実績など、さまざまなデータを活用して的確なマーケティング戦略を策定する。
2. 条件の明確化
マーケティング活動の条件やルールを明確に設定することで関係者間の認識を統一することで、スムーズに実施できる。また、明確な条件やルールがあれば、状況に応じて柔軟に見直しや改善が行いやすくなる。
3. 全体最適を目指すマーケティング
マーケティング組織の主要なミッションはリードの創出であるが、それだけでは不十分。LTV(Life Time Value)を最大化するために、インサイドセールスや営業の課題解決にも焦点を当てる必要がある。
受注数3倍に増加 | SO Technologies株式会社
SO Technologies株式会社は、数万円規模の手頃な価格でリスティング広告運用サービスを提供しています。新規の営業機会を増やす目的で、インサイドセールスを全面的に導入しました。インサイドセールスの導入前は、ヒアリングの初期段階から営業先を訪問していましたが、訪問後に商談化できないケースが多く、人的リソースの浪費が問題となっていました。
出典:【徹底図解】インサイドセールスとは?実践方法と受注数3倍の事例も紹介!
インサイドセールスの導入により、ヒアリングから営業までの全プロセスをオンラインで実施する方針に変更しました。この変更の結果、営業先への移動時間が不要となり、1日の平均営業件数は3件から8件に増加しました。
出典:【徹底図解】インサイドセールスとは?実践方法と受注数3倍の事例も紹介!
さらに、オンライン会議システムを活用することで、顔を見ながらの商談や提案書をパソコン画面で共有しながらの営業が可能となり、受注率の低下を防ぐことができました。
出典:【徹底図解】インサイドセールスとは?実践方法と受注数3倍の事例も紹介!
これらの取り組みにより、SO Technologies株式会社は移動時間を大幅に削減し、受注数を3倍に増加させることに成功しました。
おわりに
今回の記事では、インサイドセールスの導入事例を紹介し、その成功のポイントについても詳しく解説しました。インサイドセールス成功のポイントをまとめると以下の通りです。
1. 役割の明確化
インサイドセールスの成功の鍵として、役割の明確化が欠かせません。特に、インバウンド型のSDR、アウトバウンド型のBDR、既存顧客を担当するADRといった役割分担が重要です。日本企業の特性を考慮し、業務効率を上げるための戦略や方針の明確化が求められます。
2. KPI設定
インサイドセールスの効果を評価し向上させるためには、KPIの設定が必要です。リード獲得数や商談化数などの指標を策定し、それを全チームで共有することで、組織全体の課題解決の姿勢を醸成することが求められます。
3. 人材の確保・育成
適切な人材の確保と育成は、インサイドセールスの成功を左右する要因となります。社内での専任人材の配置、新規採用、またはアウトソーシングの検討など、人材戦略がキーポイントとなります。
今回紹介した事例を参考に、インサイドセールスの立ち上げや取り組みにチャレンジしてみてはいかがでしょうか。