「インサイドセールス部門の成果が乏しく、現在のKPIを見直すべきか悩んでいる」「インサイドセールスがうまくワークしているか不安」このように、正しくKPIを設定できているか不安を抱えていませんか。インサイドセールスを運営するうえで、適切なKPIの設定はマネジメントの第一歩です。やみくもに業務をこなすのではなく、KPIを設定・管理することで成果が得られるようになります。
本記事では、インサイドセールスにおけるKPIの基本から、KPIを設定するうえでの課題や設定のポイントまで詳しく解説します。本記事をご覧いただくことで、フェーズごとに最適なKPI設定を考えられるようになり、目指すゴールを達成しやすくなりますので、ぜひ参考にしてください。
インサイドセールスとは?
インサイドセールスは、企業が顧客とのコミュニケーションや営業活動をインターネットや電話などの内部チャネルを通じて行う営業手法です。従来のフィールドセールスと比べて、効率的な営業が可能であり、費用対効果の高さから多くの企業が採用しています。インサイドセールスでは、リアルタイムなデータ分析やコミュニケーションツールの活用により、顧客との関係構築やフォローアップが円滑に行えます。また、物理的な移動が不要なため、地理的な制約がなくなり、アポイント数や商談数の増加が見込めることも魅力です。このような特徴により、インサイドセールスは効率的な営業手法として広く活用されています。
インサイドセールスについて、くわしく知りたい方はこちらの記事もあわせてご覧ください。
インサイドセールスにありがちな課題
近年注目されるインサイドセールスですが、企業によって様々な課題を抱えています。ここでは、インサイドセールス体制を構築するうえで発生しがちな課題をいくつかご紹介します。
部門間の業務連携が上手くいっていない
インサイドセールスの成果を高めるには、マーケティング部門やフィールドセールス部門との密接な連携が重要です。しかしながら、実際には部門間の連携にトレードオフ(背反関係)や軋轢が生じるケースもあります。例えば、商談数をKPIとした場合は次のような課題が生じる可能性があります。
1.セールス部門とインサイドセールスの間でのトレードオフ
インサイドセールスがKPI達成のためにアポイントを創出しますが、その中には売上に直結しないアポイントも含まれることがあります。この結果、インサイドセールスはKPIを達成しているが、セールス部門としては、KGI(売上など)につながらないため、不満を募らせる可能性があります。
2.マーケティング部門とインサイドセールスの間でのトレードオフ
インサイドセールスがアポイントにつながるリードを優先することで、マーケティング部門で獲得したリードに対する接触数が減ってしまい、獲得リードが無駄になる可能性もあります。これらの課題を解決するためには、マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールスの役割や業務内容(ターゲットやコミュニケーション設計)を正確に把握することが大切です。そのうえで、各部門のKPI達成が組織としてのゴールにつながるように、全体最適を図る必要があります。
収集したデータを活用しきれていない
インサイドセールスにおいては、MAやSFA、CRMなどのマーケティングツールを導入し、リード獲得やアプローチ状況を定量で把握することが大切です。しかしながら、それらのツールを使用して膨大なデータを収集・蓄積し続けたとしても、検証や改善に活かせなければ意味がありません。いくらKPIを設定しても、現状をリアルタイムに把握できていなかったり、KGI達成に向けたロードマップを敷けていなかったりすれば、KSF(最重要成功要因)を作り出すことも難しいでしょう。この課題を解決するためには、データ分析スキルの向上や組織内の情報共有といった連携強化が重要です。データ分析によって自社の傾向やパターンを把握し、戦略的な意思決定や効果的な施策の立案が可能になります。
現場のモチベーションが下がる
インサイドセールスは、架電によるアプローチが中心の職種です。フィールドセールスと異なり、オフィス内で相手の顔が見えない中で数値を追い求めるため、現場がモチベーションを維持しにくいという課題が起きがちです。現場のモチベーションが低下すると、営業成績が低下したり顧客とのコミュニケーション品質に影響が出たりします。こうした状況を防ぐためにも、現場のメンバーと密にコミュニケーションを取り、一人ひとりが抱えている課題を把握しながら適切にフォローすることが重要です。具体的には、1to1ミーティングの設定や報酬制度の設計、あるいは本人のスキルアップにつながる営業ロールプレイングなどのマネジメント体制を整えることが大切です。現場のメンバーがやりがいを感じ、自己成長や結果を出すための支援を受けられる環境を整えることが、モチベーションの維持と成果の向上につながります。
営業ロールプレイングについてはこちらの記事で解説していますので、あわせてご覧ください。
インサイドセールスで設定する代表的なKPI
KPIは組織の業績評価や目標達成の指標となるため、組織の状態やフェーズにあわせて適切に設定することが大切です。しかし、具体的にどういったKPIを設定すべきか悩まれる方も多いでしょう。ここではインサイドセールスで設定する代表的なKPIをご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
共通のKPI
フェーズ関係なく確認しておくべきKPIとしては主に3つあります。
・フォローアップ数
・着電数・着電率/コネクト数・コネクト率
・有効会話数
続いて、それぞれのKPIについて解説します。
フォローアップ数
フォローアップ数は、電話やメールなどで見込み顧客に対して接触した回数を指します。インサイドセールスでは、獲得したリードのニーズを顕在化させ、商談へと進めるためのフォローアップが重要です。フォローアップ数をKPIに設定し、継続的に増やし続けることで、商談の進展や顧客の関心喚起が期待できます。
着電(コネクト)数・着電率
着電数とは「コネクト数」ともいわれ、インサイドセールス担当者がフォローアップを行い、見込み顧客と電話が繋がった数を指します。また、架電では不通になる場合も多いですが、架電総数に対して着電数の割合を着電率(コネクト率)と言います。新規顧客を増やすためには、より多くの見込み客へアプローチする必要があります。そのため、どれだけ多く架電し、見込み顧客と接触できたかを計測する必要があります。時間帯によってもコネクト率が変わるため、見込み顧客の業界や特性に合わせて架電する時間帯を変えることも大切です。
<業界ごとの効果的な時間帯例>
一般企業:10時〜11時半、14時〜16時
飲食店:11時前、14時〜17時
クリニック:8時頃、12時頃
美容サロン:10時前
また、コネクト率を高めるためには、電話による架電だけが有効とは限りません。業界によっては、電話よりもメールやSMS(ショートメッセージサービス)の方が有効な場合もあります。日々コネクト数やコネクト率を計測・検証し、時間帯やアプローチ方法を改善することで、インサイドセールスの生産性向上を図ることが可能です。
有効会話数
有効会話数とは、インサイドセールス担当者が見込み顧客へ着電した結果、会話が成立して課題感や興味関心度合いをヒアリングできた数を指します。たとえば、着電したものの「今、業務が立て込んでいるので、改めて連絡してください」などと言われた場合は有効会話数にカウントしないものとします。有効会話数をKPIに定めることで、インサイドセールス担当者の会話の質と効果を測ることが可能です。ただし、有効会話が実現するかどうかは、架電時の顧客の状態にも影響を受けます。そのため、有効会話率を単独のKPIとして追うことには限定的な意味しかありません。無理に厳しく追う必要性はないものの、あまりに数値が低い場合やインサイドセールス担当者によって偏りが見られる場合は、アプローチ内容を見直したりトーク内容を確認したりすることが大切です。
フェーズ別のKPI
見込み顧客のフェーズ(初期〜後期)ごとに確認しておくべきKPIとしては主に3つあります。
初期:商談獲得率
中期:商談率の高いリード分析
後期:成約数・成約率
以下、それぞれのKPIについて解説します。
初期「商談獲得率」
初期のフェーズでは、商談獲得率の確認が重要です。商談獲得率とは、リードから商談に進展する割合を示します。商談獲得率を高めるには、リードの質を向上させたり、効果的なフォローアップを実施したりすることが必要です。特に初期のフェーズではデータの確保も出来ていないため、「一定量のリード確保」が欠かせません。商談獲得率をKPIとして定め、その成果を評価しながら、効果的な営業活動を展開していきましょう。
中期「商談率の高いリードを分析」
中期のフェーズでは、商談率の高いリードを特定し内容を分析することで、よりターゲットに合った再現性の高い営業活動が可能になります。ホットなリードを見極め、安定的に商談を進めるための戦略を立案しましょう。定量的な評価に加え、データ分析と意思決定の組み合わせが、成功の鍵を握ります。
後期「成約数・成約率」
後期のフェーズでは、成約数や成約率が重要なKPIとなります。見込み顧客との関係構築や交渉スキルの向上など、効果的な営業活動が求められます。商談化率が一定のスコアに成長したタイミングで、より有効な商談を生み出せているか、その後の成約数と成約率をKPIに設定しましょう。定期的な改善や最適化を行いながら、最終的な成約へのコンバージョンを追求することが大切です。
KPIを設定するうえでのポイント
インサイドセールスに限らず、適切なKPI設定は生産性向上やゴール達成に向けてとても重要です。KGIに対して設定したKPIがずれていれば、十分な成果につながらないでしょう。ここでは、KPIを設定するうえでのポイントを詳しく解説します。
BtoBマーケティングにおけるKPIについてはこちらの記事もあわせてご覧ください。
SMARTの法則で設定する
KPIは具体的で測定可能な目標であることが求められます。その際、SMARTの法則を適用することで、具体的で測定可能な目標を設定し、達成可能かつ関連性のある目標を追求できます。SMARTの法則は、目標管理制度(MBO)などの目標設定にも用いられる有名なフレームワークです。それぞれの頭文字が、KPIを設定する際に考慮すべき要素を示しています。
Specific(具体的): 目標は明確かつ具体的であるべきです。何を達成するかを明確にし、曖昧さを排除します。
Measurable(測定可能): 目標は数値や基準で測定可能であるべきです。進捗や成果を客観的に評価できるようにします。
Achievable(達成可能): 目標は現実的で達成可能な範囲内に設定する必要があります。現実的なリソースや制約条件を考慮しながら設定します。
Relevant(関連性): 目標は組織やチームのビジョンや戦略と関連性があります。目標が組織の大局に貢献することを考慮します。
Time-bound(期限設定): 目標は期限を設定することで時間的な枠組みを持ちます。明確な期限を設けることで達成までのスケジュール管理が可能となります。
組織・他部署連携の強化
インサイドセールスでは、マーケティング部門やカスタマーサポート部門など他部署との連携が重要です。しかしながら先述したとおり、部門間ではトレードオフや軋轢が生じることもあります。そのため、インサイドセールスのKPI設定においては、自部門単独で決めるのではなく、経営や他部署を巻き込んでKGI・KPIの合意形成を取ることが大切です。また、KGIへの貢献度に照らし合わせてKPIを洗い出し、その中で優先度の高いものを設定することが対策として考えられます。
クイックウィンを見つける
KPIの設定においては、まずはQuick Win(クイックウィン)を見つけることが大切です。クイックウィンとは、「長期のビジネスゴールを見据えながらも、短期・中期で成果を上げていく取り組み」を指します。KPI達成に向けて適切なアプローチが見つからないと、「今のやり方で合っているのだろうか」といったようにメンバーが不安に感じ、モチベーション低下につながりやすくなります。クイックウィンを設定することでメンバーは成功体験が得られるため、モチベーションを保つことが可能です。具体例を挙げると、Zoominfのデータによれば、リード応答時間と平均商談化率には相関性がみられます。
出典:InsideSales
このデータに基づき、温度感の高いサービス資料をダウンロードしたユーザーに対しては、リードタイムを短くし、即時架電できる仕組みを作るとします。その結果、「サービス資料経由のリードのアポイント獲得率は◯◯%アップする」という成果が得られれば、それをクイックウィンとして社内に共有することが大切です。クイックウィンの考え方を通じて、効率的な営業活動を展開し、KPIの達成に向けた積極的な取り組みを推進しましょう。
おわりに
インサイドセールスが成果を上げ続けるには、適切なKPI設定が欠かせません。しかし、どういったKPIを設定すべきかは業態や現状の課題によって異なるため、インサイドセールスの役割を明確にし、実態に即したKPIを設定することが大切です。また、KPIは一度設定して終わりではなく、他部署との連携強化やデータ検証など、KPI達成に向けて継続的に改善を繰り返しましょう。本記事で紹介した、KPIの例や注意点を参考にしながら、効果的なKPI設定を進めてみてください。
その他、インサイドセールスの立ち上げ手順や成功事例については、こちらの記事で解説していますので、あわせてご覧ください。