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CSQLとは?カスタマーサクセスが既存顧客から売り上げを上げる方法とは? 

カスタマーサクセス

目次

BtoBビジネスで顧客満足度を高め、利益を最大化する取り組みとして注目されているのがカスタマーサクセスです。カスタマーサクセスでは、顧客のサービス利用や課題解決のためのサポートを行うことで顧客満足度を高め、商材の継続利用による利益につなげます。また、顧客のフェーズに合わせてアップセルやクロスセルを行い、顧客単価を上げLTVを向上させるのもカスタマーサクセスの役割です。しかしカスタマーサクセスの導入を進めている企業の中には、「カスタマーサクセスのアップセルやクロスセルが成功しない」「カスタマーサクセスで利益を上げられない」といった課題を抱える企業もいるかもしれません。カスタマーサクセスでアップセルやクロスセルの再現性を高めるための設計方法として注目されている施策に、「CSQL」があります。CSQLを導入することで、アップセル・クロスセルの成功率を高め、カスタマーサクセスの活動拡大につながる可能性があります。本記事ではCSQLの概念や、その活用法、顧客への具体的なアプローチについてを紹介します。

CSQLとは?

CSQLとは、「Customer Success Qualified Lead」の略で、マーケティング部門のカスタマーサクセスの施策によって生み出され、精査されたリード(見込み顧客)のことです。MQLやSQLのように、マーケティングや営業活動におけるリードの指標として使われています。マーケティングや営業活動で案件化や受注などの成果に結びつけるためには、リードを自社の商材への興味関心、知識度合いの段階別に分類し、リードの段階ごとに各部門で有効な施策を行います。段階別に分類されたリードは、以下のように各部門で施策を行い、より見込みの高いリードが精査され次の段階へ引き渡されます。

・MQL:マーケティング部門が営業部門(インサイドセールス)に渡すべきと判断されたリード
・TQL:営業部門(インサイドセールス)が担当するリード
・SAL:営業部門(フィールドセールス)が担当する、より購買意欲の高いリード
・SQL:案件化されフィールドセールスがフォローすべきリード

CSQLはMQLから派生した指標で、既存顧客に対するマーケティング活動を経て、アップセルやクロスセルなどを対象とする見込み顧客と判別をするためのものです。CSQLのリードはコンバージョン率が高いことから、カスタマーサクセスにてCSQLへアップセルやクロスセルといった顧客単価の向上や顧客の利用拡大(エクスパンション)のための施策を行うことで、高い成功率が期待できます。

CSQLの特徴    

CSQLはカスタマーサクセスが精査した、既存顧客から選別されたリードです。そのためこれらは現在活用中のサービスや商材以外の自社商材への興味関心を持っており、アップセルやクロスセルへのコンバージョン率が高い状態のリードでもあります。MQLを集客する場合は新規顧客からの創出となるため、集客コストが発生する可能性もありますが、CSQLは既存顧客からの創出となり、集客や顧客獲得のためのコストが発生しないことが特徴です。コストが発生しないこと、エクスパンションが成功した場合の利益率が高いといったメリットもあります。カスタマーサクセスで顧客に対しアップセルやクロスセルがうまく行かず、エクスパンションにつながらない場合があります。その際には、最終目標であるエクスパンションの間に、中間的な目標としてリードのCSQLへの育成を目指すのがおすすめです。中間的な目標を設定することで、最終目標達成までの進捗状況を測定しやすく、施策がうまくいかないときの改善点も把握しやすくなるからです。

CSQL  特徴

出典:Adobe Experience Cloud Blog「「マーケティングチームは何をしているのかわからない」と言われないために、成果を数字で説明する」

カスタマーサクセスでは、顧客との信頼関係などが築けていない状態でアップセルやクロスセルの提案を行い、エクスパンションをいきなり目指しても成功する確率は低いです。既存顧客から引き渡されたリードをしっかりCSQLへ育成させ関係を築き上げたうえで、アップセルやクロスセルを提案することでエクスパンションの成功率を高められます。その結果、エクスパンションによる顧客単価や売上、LTVの向上といった利益の最大化につながります。

CSQLのフェーズ

リードをCSQLへと育成した後は、以下の3つのフェーズに沿ってエクスパンションにつなげます。
・アダプション
・ナーチャリング
・商談獲得

それぞれのフェーズの特徴と、各フェーズごとに行うリードへの施策時に注意すべきポイントを順に解説します。

アダプション

アダプションとは、カスタマーサクセスの業務である新規導入支援(オンボーディング)の次に位置するフェーズです。CSQL化したリードへ適切なオンボーディングが行われ、商材の価値を早期に理解している状態が、アダプションフェーズに入っている状態といえます。アダプションフェーズの役割は、商材の利用を開始した顧客へ活用方法を提供し、エクスパンションにつながるように育成することです。アダプションフェーズに差し掛かっている顧客は、すでに商材やサービスをスムーズに導入し、持っていた課題を解決できたなどの成功体験をしています。その後は商材の継続利用を通じて他の課題の解決を図ったり、商材の利用範囲の拡大を検討したりし始めるでしょう。そのため、アダプションフェーズに差し掛かった顧客へ「使える機能が増加するプラン」「利用できるユーザー人数を増やせる追加オプション」などのアップセルやクロスセルを提案することでエクスパンションにつながる確率が高くなると言えます。

ナーチャリング

アダプションフェーズに入った顧客は、オンボーディングを提供する前の新規顧客よりもエクスパンションの確率は高いものの、すべての顧客へアップセルやクロスセルの提案が成功するというわけではありません。たとえば、顧客が持つ課題を把握しないまま提案を進め、提案内容が課題の解決策にフィットしないようなミスマッチが起きてしまった場合、アップセルやクロスセルは成功しません。さらには、押し売りと感じさせてしまうと顧客との関係が崩れてしまいます。顧客の課題把握、信頼関係をより深く築き上げるためには、ナーチャリングが重要になります。カスタマーサクセスは顧客と継続的に接点を持ち、顧客の持つニーズや課題を理解し、商材の疑問点や不安点、トラブルの解消をまずは進めます。その上で顧客の状態に見合った適切且つ効果的な商材の活用方法の提供などを行います。顧客のニーズや課題に合うフォローを行い、信頼関係を築き顧客の温度感を高めるこのフェーズがナーチャリングです。ナーチャリングフェーズでは、顧客を利益度合いや数に応じて「ハイタッチ」「ロータッチ」「テックタッチ」に分類し、それぞれの顧客へ適切な施策を行いましょう。そうすることで、効率的な顧客の育成が可能になります。

ナーチャリング タッチモデル
ハイタッチ・ロータッチ・テックタッチの具体的な施策や他のカスタマーサクセスの業務についてはこちらの記事で詳しく解説しています。ナーチャリングフェーズで育成され、温度感の高まっている顧客はエクスパンションの成功率も高まっている状態ですので、具体的なクロスセルやアップセルを提案するフェーズへと進みます。

商談獲得

ナーチャリングによって温度感が高まっている顧客へ、具体的な提案を行うフェーズです。カスタマーサクセスは、アップセルやクロスセルでの効果的な提案につなげるために、顧客の抱える課題やニーズの深堀、商材への信頼感、予算感をヒアリングによって把握します。このフェーズでは、アップセルやクロスセルの提案を顧客視点で行うことが重要です。売る側の都合から提案を行うと、押し売りと取られるなどして、顧客の温度感が下がってしまう可能性があります。顧客に成功体験を提供することがカスタマーサクセスのミッションですから、顧客課題を解決するにはどうすべきか、顧客視点での提案を心がけましょう。

CSQLに対するカスタマーサクセス施策

CSQLに該当する顧客は、商材やサービスへの温度感がまだ十分に高まっていない状態のため、すぐにアップセルやクロスセルを提案しても、エクスパンションにつながる可能性は低いです。前述の通り、各フェーズで顧客に対してさまざまな施策を行い接点を継続的に持ち、段階的に顧客の温度感を高める育成を行う必要があります。そのうえでアップセル・クロスセルの商談機会を設定することで、エクスパンションにつなげられるでしょう。各フェーズでカスタマーサクセスが行うべき、CSQLへの具体的な施策を順に解説します。

活用・オンボーディング

活用・オンボーディングは商材の契約や利用を開始したばかりの新規顧客に対して、商材を早期に使えるようにサポートする施策です。例えば、初心者にも分かりやすいガイドを提供したり、操作に迷わないよう手順を実際に見せながら使い方を説明する、といった施策を提供します。活用・オンボーディングは新規顧客の商材導入期に注力すべき施策です。カスタマーサクセスが適切な活用・オンボーディングを顧客に提供することで、初期の導入時に問題なく早期に商材を活用できるようになります。また商材のスムーズな導入が実現し、商材の価値を早期に知ることで、将来的に発生する可能性の高い自社課題を解決できる商材として期待感や信頼感の構築にもつながるでしょう。長期的な契約や使用も見込めるようになり、解約(チャーン)が発生しにくくなります。一方で、活用・オンボーディングを行わない、または行った活用・オンボーディングの施策が適切ではなかった場合、顧客は商材への疑問や不安、不明点を多く持った状態となり、商材への不満を抱えたままとなります。その結果、商材の価値を体験できない、商材を使う機会がなくなる、といったことで解約につながってしまう可能性が高くなるでしょう。解約を防ぐためにも活用・オンボーディングは重要であり、CSQLに該当する顧客をアップデートフェーズへ引き上げるために必須の施策と言えます。適切な活用・オンボーディングの施策を提供すれば、商材の早期定着が実現するため、継続的に顧客は商材を使用することになります。継続的に商材を使用する中で、将来的に別の課題が発生する可能性も高いです。その際に顧客の課題を解決するための方法として、アップセルやクロスセルを提案すれば、エクスパンションも期待できるでしょう。

メルマガコンテンツ

メルマガコンテンツは新規リードの獲得の施策としても用いられていますが、配信コストが低く多くの顧客へ同時にアプローチできる、開封率などのデータを取得し運用できることから、カスタマーサクセスにおけるCSQLの育成の施策としても効果的です。メルマガコンテンツの内容は活用目的別に異なります。たとえば課題はあるものの商材の利用を検討していない顧客をターゲットにする場合は、課題解決を目的としているため顧客課題に対し自社商材が貢献する内容などが望ましいでしょう。また、カスタマーサクセスでのCSQLへのエクスパンションを目的にした場合は、顧客がまだ使用していない商材やサービスの機能の紹介や、オプションの活用方法など、商材やサービスについてより多くの知識を得てもらうための情報配信が有効です。メルマガの内容によって顧客の商材やサービスへの期待感や信頼度を高め、プランのアップグレードやオプション追加を検討するなどの行動変容が期待できます。CSQLへのエクスパンションを目的にしたメルマガコンテンツの施策はただメールを送信するのではなく、KPIを設定し効果を検証しながら運用を改善することが大事です。開封率やクリック率、配信解除率などの指標をKPIとして設定し、データの分析とコンテンツの改善を繰り返し運用していきましょう。

メルマガコンテンツの実施方法についてはこちら、開封率を上げる方法についてはこちらの記事で詳しく解説しています。

既存顧客向けウェビナー

ウェビナー(Webinar)とは、インターネットを通じて行われるセミナーを指します。ウェビナーは新規リードの獲得の他、既存顧客の育成のための施策としても有効です。

BtoBマーケティング ファネル リード獲得

出典:SAIRU「ウェビナー開催の基礎知識/目的やテーマ選定のポイントをBtoB企業向けに解説」

CSQLへの育成を目的とした施策としてウェビナーを開催する場合、顧客の商材への興味や関心度を高められるテーマを選ぶことで、リード育成が発揮できます。たとえばサービスや製品についての説明や、活用のヒントやアドバイスについてといったテーマのウェビナーの開催です。CSQLへの育成を目的にウェビナーを開催する場合は準備が必要です。あらかじめ参加者へ興味のあることや商材への疑問点や不明点などのヒアリングを行っておきましょう。ヒアリングによって参加者のニーズをくみ取ることで、ウェビナーで提供するコンテンツ作成に役立つほか、参加者が興味関心のある内容となるため、参加意欲を上げることもできます。またウェビナー開催後は参加者の視聴時間や参加率、離脱率などのデータを分析し、ウェビナーの振り返りを行いましょう。振り返りを行うことで、次回のウェビナー開催時の改善点や他の施策を行う際の情報として活用できます。ウェビナーによって高まっている参加者の温度感を下げないためにも、ウェビナー開催後にフォローアップを行うのも重要です。お礼メールやアンケートなどを当日または翌日の早いタイミングで配信するなどして、フォローアップを行いましょう。

ウェビナーの開催形態についてはこちら、具体的なメリット、準備、注意点、KPI設定とポイントはこちらの記事で詳しく解説しています。

ユーザー・交流会

ユーザー会・交流会とは製品やサービスの利用者(ユーザー)が参加し、製品やサービスの活用方法や成功事例などの情報共有を行う場です。ユーザー同士の交流により、商材やサービスの活用事例やユーザーとしての生の声を共有し、商材やサービスの活用を促進することを目的に開催されます。ユーザー会や交流会では、企業や業界の枠を超えてユーザー同士が活用方法を共有したり、意見交換を行ったりすることで、商材やサービスに対する理解を深められるのが特徴です。ユーザー会や交流会を通じて他企業や他業種のユーザーから得た商材活用事例や活用方法を、自社での実践を検討する顧客に対して、アップセルやクロスセルを提案することでエクスパンションにつながる可能性も高くなるでしょう。

おわりに

CSQLの概要や各フェーズ、CSQLの顧客に対してカスタマーサクセスが行う施策について解説しました。カスタマーサクセスからのアップセルやクロスセルの提案が成功せず、エクスパンションにつながらない場合、CSQLという指標を設けることで顧客のフェーズや行うべき施策やアプローチが可視化しやすくなります。カスタマーマーケティングを通じてCSQLを創出し、アップセルやクロスセルの成功によるエクスパンションの実現や、LTVの向上につなげましょう。

著者情報
柳本 瑠衣 (やなぎもと るい)
Rui Yanagimoto
米国の州立大学卒業後、米国にて就労経験を経て帰国。国内のIT企業へ入社後、新規開拓営業と経営企画を経験。パーソルホールディングス株式会社(旧インテリジェンス)にてデジタルマーケティング領域を経験した後に、MAツール開発会社へ入社、インサイドセールス部門責任者として従事。2人目の出産を機に働き方を見直し2022年にフリーランスに転身。現在は営業DX領域のコンサルティングとマーケティング業務支援等を行う。