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【目的別】ウェビナーのKPI設定とポイントをわかりやすく解説

マーケティング

目次

新型コロナウィルス流行以降、B2Bマーケティングのあり方が変化する中、ウェビナーを最重要施策として実施されている企業も多いのではないでしょうか?ただウェビナー運営についてのナレッジは発展途上であり、自社に合ったやり方を見つけることは難しい状況かと思います。本記事では、企業の状況に沿ったウェビナーを実施するために、ウェビナーの目的別にKPIの設定方法をまとめております。ウェビナーをこれから始める方や、ウェビナー運営に課題を感じている方にとって、お役に立てる情報なので、ぜひご参考ください。

KPIとは?

ウェビナーのKPIの説明をする前に、KPIの概念について解説します。KPIとは「Key Performance Indicator」の略であり、事業目標を達成するために重要なプロセスに関する指標のことです。期初にKPIを設定することで、チームや個人が行うべき役割や業務の方向性を具体的にし、また設定した目標に対する結果から施策のPDCAを回すことでスピード感のある組織の成長を実現させます。

KPI KPIとは
KPIは、KGIとKSFを明確にしてから設定し、最終的にはKPIツリーへ落とし込みます。KGIとは「Key Goal Indicator」の略で、組織やプロジェクトの最終的な目標を定量的に表した指標です。一般的に、BtoBマーケティング活動全体のKGIは「受注件数」や「売上」「利益」などに置かれます。KSFとは「Key Success Factor」の略語で、KGIを達成させるために必要な要素や要因のことを指します。たとえば、売上というKGIに対する成約確度の高い商談の創出や質の高いリードの獲得がKSFにあたります。KPIはKSFに対応する指標であり、上記の例であれば「商談数」「リード数」などにあたります。KPIツリーとは、KGI達成のために必要なKPIと、KPIに紐づいたKSFをツリー化し、分かりやすく整理した図です。「全てのKPIを達成することでKGIを達成できること」をKPIツリーで確認し、各KPI担当の役割とKGIとの関係性を明確にします。

BtoB営業全体におけるKPI設定については、こちらの記事で解説しています。

KPIを立てる重要性

組織目標や営業目標を達成する秘訣は、営業チーム・マーケティングチームそれぞれが各進捗や予算実績管理を可能な限り正確に把握することにあります。しかし、漠然と予実管理をするのではなく、営業・マーケティングプロセスを細かく分解し、各プロセスで課題となっている箇所の状況を定量的に知ることが大切です。そのためには、各プロセスで実施している業務内容を体系立てて理解する必要があります。その状況を明確化するためにKPIを数値化、定点観測を実施し、計画通りの実績が出ない場合は、改善施策を打っていく必要があります。

ウェビナーに取り組む企業は年々増えている

新型コロナウィルス流行の影響やリモートワークの普及により、ウェビナーに取り組む企業が増えています。株式会社シャノン社が実施した「ウェビナーに関するアンケート」では、ウェビナーを開催する頻度として、2021年から2022年にかけて、42.1%の方が「増加した」とした答えており、年々ウェビナー施策に力を入れる企業が増えていることがわかります。

ウェビナー 開催頻度 推移

出典:PR TIMES

また、ウェビナーを視聴する頻度においても、60%以上の方が2021年と比較して2022年は増えたと回答しており、ウェビナーにおける視聴者側のニーズも未だ途絶えていません。

ウェビナー 視聴頻度

出典:PR TIMES

このようにリードや顧客との接点を作り出すのにウェビナーは有効的であることから、COVID-19以降、重要施策としてあらゆる企業が取り組み、視聴者側のニーズに応えています。

ウェビナーを開催する目的を理解しよう

ウェビナーはターゲットの選定やコンテンツの発信の仕方によって、企業にもたらす効果が異なります。そのため、ウェビナーを実施する前やKPIを設定する前に、目的を決めることが重要です。

BtoB企業の場合、ウェビナーを開催する目的は、大きく3つに分けることができます。
・新規リードの獲得
・リードフォローアップ / 商品プロモーション
・顧客満足度アップ

新規リードの獲得

新規リード獲得が目的の場合、市場における潜在層へアプローチし、自社を知ってもらうことや課題を認知してもらうことをメインに発信します。具体的なコンテンツ内容としては「市場傾向や最新のトレンド情報」などのお役立ち情報が挙げられます。新規リードの獲得のためには様々なマーケティングチャネルの活用も重要です。特に広告出稿は考える必要があります。ウェビナー集客で用いられる一般的な広告チャネルは、ターゲティングが行えるSNS広告や各種専門メディアなどが挙げられます。ただ広告出稿をなるべく抑えたい場合は、共催での実施や外部からのゲストの登壇など、外部とのコラボレーションを行うことで、新規リードへのアプローチがしやすくなります。

リードフォローアップ・商品プロモーション

既存リードに対して、商談獲得やナーチャリングを目的としたウェビナーの場合、サービスの認知や具体的活用事例の紹介により企業の信頼度を高めることを訴求します。すでに接点を持っているリードへのアプローチのため、社内のリードリストに対して集客を行います。またすでにサービスを認知しているリードに対しては、デモ画面の解説などを行い、「一度この企業の話を聞きたい」と思ってもらえるように、コンテンツを組み立てます。

顧客満足度アップ

既存顧客の満足度アップを目的としたウェビナーの場合、商品の使い方やユーザー会などを行い、既存顧客が商品の理解を深められることや他社の使い方を知り課題解決手法を学ぶことができるようなコンテンツを発信します。ウェビナーにより既存顧客へのフォローを行うことで、購買の継続やアップセル・クロスセルにつなげるきっかけができるため、サブスクリプション型のサービスを持つ企業では活用されています。

【目的別】ウェビナーで設定するKPI

ここからはウェビナーにおけるKPIについて説明します。ウェビナーの目的によって企業への効果やターゲット等が異なるため、「共通で設定するKPI」と「前章でご紹介した目的別によって異なるKPI」の2つに分けて考えていきます。

共通で設定するKPI

まずどの目的のウェビナーにおいても見るべき指標を説明します。
基本的な考え方として、「ウェビナー単体施策としての効果はあったのかどうか?」です。そのため、下記のようなKPIが挙げられます。

・ウェビナーへの申込数 ・ 申込率
・ウェビナーへの参加数 ・ 参加率
・ウェビナー実施後のアンケート回答率
・ウェビナーの満足度
・集客単価
・集客チャネル別の申込 / 参加数

開催したウェビナーに対して、どこのチャネルから申し込み、参加度合い、そして満足度までの一連の流れを数値として可視化し、確認する必要があります。各ウェビナーごとで、上記のKPIのうち、成果が良し悪しがあれば、各集客チャネルから分析を行い、成果につながった原因を探すことで、安定的に効果の高いウェビナーを実施できます。ウェビナーごとで数値が下がる指標は「参加率」と「満足度」です。参加率が悪い場合は、「集客チャネル」「集客文章」「開催リマインド」などに原因があることが多いです。特に「後日録画動画を閲覧可能」といった文言が書かれている場合は、当日の参加率は下がってしまいます。またSNS広告やバナー広告の場合、「広告を見た時はウェビナーに興味があり申し込んだが、予定が合わなくなった」という方も多いので、参加率が低くなる傾向があります。満足度が低い場合は、集客文章と当日のコンテンツ内容のズレ、もしくは参加者のニーズと当日のコンテンツ内容のズレが起こっていることが多いです。そのため他のチームや既存顧客からフィードバックをもらい、どこがズレているのかを確認する必要があります。

1.新規リードの獲得「新規リード獲得数」

ここからは、各目的別のKPIを説明します。新規リードの獲得の場合、重要KPIは下記の通りです。

・新規リード獲得数
・集客数
・商談化の件数

特に「新規リード獲得数」が一番の重要KPIとなり、自社を知らない方々にいかに申込・参加してもらうかが鍵となります。そのため、新規リード獲得を行えるマーケティングチャネルの開拓、そしてチャネルとコンテンツの相性の確認が必要となります。どのウェビナーにおいても集客チャネル別の申込者数や参加者数を確認しますが、新規リードの獲得が目的の場合、「集客チャネル別の新規リード獲得数」も確認する必要があります。既存リードの集客に強いチャネルと新規リードの集客に強いチャネルは異なるため、集客リソースの配分を考えるにあたって、「集客チャネル別の新規リード獲得数」は参考になります。

また「資料プレゼント」や「調査結果の共有」を謳ったウェビナーの場合は、SNS広告やバナー広告との相性が良いですが、単純なウェビナーの場合は、専門メディアからのダイレクトメッセージの方が新規リードを獲得しやすい傾向があります。そのため、コンテンツ内容によってどのチャネルが有力なのかを把握しておくことで、効果の出やすい広告予算の掛け方が事前に分かります。さらに新規リードの詳細な情報があれば、営業やマーケティングからのアプローチの幅が広がるため、アンケート回答率を高めることも意識すると良いでしょう。当日の資料スライドやホワイトペーパーのプレゼントなどのインセンティブをつけることで、アンケート回答率は高まります。そしてアンケート回答結果をインサイドセールスへ共有し、セミナーフォローアップへつなげることで、効率良く商談獲得を行うことができます。インサイドセールスとは、事前にセミナー実施日時やターゲットリストの作成手順、実施後のフォローアップ方法をすり合わせておくことで、リードに対してスピーディーなアプローチができるため、商談獲得率が高まります。

インサイドセールスのKPIについては、こちらの記事で解説しています。

2.リードフォローアップ・商品プロモーション「商談化の件数」

リードフォローアップ・商品プロモーションを目的とする場合は、下記のKPIが考えられます。

・商談化の件数
・サービス資料請求数
・メール開封率
・新規リード獲得数

特に「商談化の件数」が重要なKPIとなります。前述でも説明した通り、リードフォローアップ・商品プロモーションを目的とする場合はサービスを認知しお問い合わせや資料請求につなげることが最重要事項になります。そのため、新規リードの獲得数に重点を置くのではなく、商談化へつながりやすい既存のターゲットリードが参加したかどうか、そして商談につながったかどうかを確認することが大切です。商談化へつながりやすい既存のターゲットリードの参加や申込が少ない場合は、リードリストへ送信したメールの開封率やクリック率を確認し、件名や集客文章、コンテンツ、また実施日時のいずれかに問題がないかを把握します。また商談件数が想定よりも少ない場合は、商談までの導線、ウェビナーコンテンツの満足度を確認し、商談創出までの導線がスムーズかどうか、そしてウェビナーコンテンツに対して参加者が納得し課題を認知しているかどうかを把握します。特にウェビナーアンケート内で参加者が抱える課題等をヒアリングすることで、ウェビナーのコンテンツの妥当性や商談創出への導線が正しいかが見えやすくなるので、お勧めです。

3.顧客満足度アップ「満足度、成約率」

既存顧客の満足度アップを目的としたウェビナーの場合、下記のKPIが挙げられます。

・満足度
・成約率
・追加商品の販売数(アップセル・クロスセル)

まずウェビナーとしての満足度が高くなければ、成約やアップセル、クロスセルへつなげることができないため、既存顧客の課題やニーズに応じたウェビナーである必要があります。機能の使い方や活用方法、また業界の市場動向・トレンド情報の発信を行い、企業と顧客との関係性をより深めることで、サービスの定着、また追加発注へつなげていきます。成約率やアップセル、クロスセルを重点的にフォローしたい場合は、フィールドセールス(顧客の営業窓口)やカスタマーサクセスから顧客ニーズをヒアリングし、集客やアフターフォローまで連携することで、より成果の出るウェビナーとなります。

KPIを設定する際のポイント

ウェビナーのKPIを設定する上での注意点は、「SMARTの法則で設定する」「現実的に達成できる数値にする」「組織・他部署連携の強化」の3つが挙げられます。

一つずつ説明します。

SMARTの法則で設定する

ウェビナーにおけるKPIは、チームの誰が見ても達成基準が明確である目標を求められます。その際、SMARTの法則を適用することで、具体的で測定可能な目標を設定し、達成可能かつ関連性のある目標を追求できます。SMARTの法則は、あらゆる目標設定で用いられる基本的なフレームワークです。それぞれの頭文字が、目標を設定する際に考慮すべき要素を示しています。

SMART法則 カオナビ

出典:カオナビ 人事用語集

Specific(具体的): 
目標は明確かつ具体的であるべきです。何を達成するかを明確にし、曖昧さを排除します。また、複雑な目標ではなく、チーム全員が理解できるものになるようシンプルな目標にしましょう。

Measurable(測定可能): 
目標は数値や基準で測定可能であるべきです。進捗や成果を客観的に評価できるようにします。オウンドメディアにおいても、前述の通り、定量的なKPIを設定することは可能なので、測定可能な指標を選択しましょう。

Achievable(達成可能): 
目標は現実的で達成可能な範囲内に設定する必要があります。現実的なリソースや制約条件を考慮しながら設定しつつ、100%達成できる目標ではなく、ストレッチの効いた60%〜80%程度の達成率の目標を設定しましょう。

Relevant(関連性): 
目標は組織やチームのビジョンや戦略と関連性があります。この目標が組織の大局に貢献することを考慮します。また他のチームの目標との関連性を考え、組織やチームのビジョンを達成するためのオウンドメディアにおける役割を理解しましょう。

Time-bound(期限設定): 
目標は期限を設定することで時間的な枠組みを持ちます。明確な期限を設けることで達成までのスケジュール管理が可能となり、また業務の後回しを防ぐことに役に立ちます。

現実的に達成できる数値にする

ウェビナーは数値の可視化や期限の設定がしやすい傾向がありますが、達成可能性を見極めることが難しいです。特にウェビナー施策を始めたばかりの場合は、集客チャネルや実施時期などの選定にあたっての判断材料が少ないと思います。そのため、他社のウェビナー申込者数などを参考にKPIを設定し、達成可能性の基準を見定めていくことをお勧めします。初期から無理なKPIの設定をしてしまうと、チームメンバーのモチベーションが下がり、施策が継続されなくなるので、達成可能性のあるKPIの設定が重要です。

組織・他部署連携の強化

ウェビナー単体では売上につながらず、コンテンツアイディアも乏しくなるため、他部署との連携が必須です。ウェビナー後のセールスフォローアップ等の連携を取れている企業は多い印象ですが、ウェビナーのコンテンツまで連携を取りながら、進められている企業は多くありません。本来、顧客と直接コミュニケーションを取る営業やカスタマーサクセスの方が、顧客が抱える悩みや課題をよく知っています。マーケティングチームが考えるマクロ的な視野のコンテンツと、営業やカスタマーサクセスが知っている顧客インサイトの2つをうまく掛け合わせることで、商談獲得の推進、成約率の向上につながります。ウェビナーの施策から、売上につなげるためにも、実施後のフォローアップだけでなく定期的にコンテンツアイディアのブレストを他部署と一緒に行いましょう。

おわりに

ウェビナーは、柔軟性の高い施策がゆえに、目的の設定が重要になります。組織におけるKGIから逆算し各ウェビナーの目的とKPIを明確にしてから、実施していきましょう。また、KPI達成には、PDCAサイクルを回すことが重要です。ウェビナーを実施して、「上手くいった理由」「数値が下がってしまった理由」を分析し、KPIと施策を改善していくことで、精度が高くなっていきます。本記事の目的別のKPIを元に、自社のウェビナーを一度振り返ってみてはいかがでしょうか?

著者情報
荻野 嶺(おぎの れい)
Rei Ogino
米国NY、LAで幼少時代を過ごす。 2015年、伊藤忠商事入社。金属資源部門にて経営企画や事業開発に携わり、赴任先のシンガポールで石炭の三国トレーダーとして、各国の市場を新規開拓。2020年に帰国し、スタートアップ向け人材紹介のfor Startupsに従事。入社半年で最速昇格基準達成、MVT 受賞などの実績を上げ、各有力スタートアップのCEOやVCからの信頼を獲得。 2020年12月にゼンフォース株式会社を創業し、代表取締役CEOに就任。