[ B2B Enablement Media ]

カスタマーサクセス施策の成果を高めるポイントは?BtoBにおける取り組みや成功事例をご紹介

カスタマーサクセス

目次

SaaS型のBtoB商材を取り扱う企業が増加しつつある中で、売上の向上を目指すためには顧客のLTV向上が重要です。LTVを上げるために必須となるのがカスタマーサクセス施策です。バーチャレクスコンサルティングが実施した「2023年カスタマーサクセスに関する実態調査」によると、「カスタマーサクセスに取り組んでいる人」の6割強は、直近一年間の新規顧客数および新規売上が増加、5割強は取り組み前後で売上高および利益率が向上したと回答しました。一方で、「カスタマーサクセスに取り組んでいない人」で売上高および利益率が向上したのは、わずか2割にとどまっていることからも、カスタマーサクセス施策はBtoBビジネスの成功に重要な施策であることが分かります。カスタマーサクセス施策の存在を理解しつつも「具体的に何を行うべきか分からない」「成功させるためのポイントが分からない」と悩む担当者の方もいるかもしれません。

この記事では顧客の満足度を上げ、契約更新やアップセル・クロスセルにつながるカスタマーサクセス施策や企業の成功事例を紹介します。

カスタマーサクセスとは

カスタマーサクセスとは、商品やサービスを購入した顧客へ積極的に関わり、収益獲得や目標達成などの、顧客のビジネスにおける「成功」を支援していく考え方や活動を指します。BtoB向け商材が「買い切り型」から「サブスクリプション型」へ移行しつつあることを受け、営業部門が定めるゴールを「購入してもらえること」から「商品やサービスをできるだけ長く利用し続けてもらえること」へと設定することも多くなりました。そのためカスタマーサクセスでの施策を通じて顧客の成功を実現し、継続利用してもらうことで自社ビジネスの利益を創出することが重要視されています。

カスタマーサクセス施策の成果を高めるポイント

カスタマーサクセス施策の成果を高めるポイントは、以下の3つです。

・顧客情報を把握・管理する
・利用フェーズに沿ってアプローチする
・KPIを設定し施策の効果測定・振り返りを行う

それぞれのポイントを順に解説します。

顧客情報を把握・管理する

まずは顧客情報の把握と管理を行いましょう。カスタマーサクセス施策は顧客の成功を第一に考え、顧客がサービスを通じて実現したいこと、そのために必要な状態と効果的な支援を考えて施策を投じます。顧客の状況や目的を把握するために、顧客の属性や契約内容などの基本的な情報から、製品やサービスの利用状況、過去の問い合わせ履歴などを整理しましょう。把握した顧客情報から、講じる施策を検討していきます。

利用フェーズに沿ってアプローチする

顧客の利用フェーズに合わせ、アプローチの手法を選択します。手法は大きく分けて「ハイタッチ」「ロータッチ」「テックタッチ」の3つに分類されますが、これらいずれかのアプローチを行います。

タッチモデル ハイタッチ ロータッチ テックタッチハイタッチとは、主に更新・拡大期の自社にとって利益の見込みが大きい顧客に対して行う施策です。サポートも手厚く、個別対応や戦略の提供をもって関わります。

ロータッチは、活用期や更新・拡大期のハイタッチの層よりも利益の見込みが小さい顧客へ関わることです。「セミナー」や「ニュースレターの配信」、「FAQ」などのリソースをもとに一定水準のサポートをより多くの顧客へ提供します。

テックタッチとは、デジタルツールを活用して導入期、活用期、更新・拡大期の顧客とコミュニケーションを取る接触方法です。3つのアプローチ方法の中でも対象の顧客層がもっとも幅広く、ウェブ上の「チュートリアル」や「学習サイト」が「メールマガジン」などがアプローチに活用されます。

顧客の利用フェーズとアプローチ方法が合わないと、施策の成果は出にくいです。そのためにも、顧客の状況を把握したうえでどの段階の施策を行うかを決めましょう。

KPIを設定し施策の効果測定・振り返りを行う

カスタマーサクセス施策の効果測定のために、KPIを設定します。KPIとして設定するおもな指標は以下の通りです。

カスタマーサクセス KPI
設定したKPIを元にカスタマーサクセス施策の効果測定をし、施策の振り返りを行いながら改善点を洗い出します。改善した施策を講じ、効果測定を行うPDCAサイクルを回すことを念頭に、カスタマーサクセス施策を運用していきましょう。

カスタマーサクセス施策5選

カスタマーサクセスを成功させるには、設定したKPIを達成するための施策を講じる必要があります。主なカスタマーサクセス施策を5つ紹介します。

1.活用支援・オンボーディング

活用支援とオンボーディングは、顧客が製品やサービスが使えるようにするサポートの仕組みです。オンボーディングとは「初期導入支援」を指し、初心者でもわかりやすいガイドの提供や、実際に操作手順を見せながらの使い方説明などを行います。適切なオンボーディングが行われると顧客は初期の導入時につまづくことなく早期に製品やサービスを活用できるようになります。スムーズな立ち上がりから、将来的に課題が起きたとしても解決してくれるであろう信頼感やサービスへの期待感も生まれるといった相乗効果が生まれます。その高い満足度を維持することができれば、解約(チャーン)につながりにくくなります。一方で、オンボーディングを行わない、または行っても丁寧な進行ではない場合、製品やサービスの不明点や課題を多く抱くことになり、立ち上げ時から不満を抱える結果となりえます。顧客は製品やサービスの持つ価値を体験できず、活用する機会を失い、結果的に解約(チャーン)を判断する可能性が高くなるでしょう。このようなケースを防ぎ、解約に至らないようにするには顧客に「早く製品やサービスに慣れてもらい、成功体験につなげること」が重要です。オンボーディングは新規顧客の導入期に注力すべき施策と言えます。

2.フィードバック

フィードバックとは、製品やサービスの経験や体験を通じて顧客から提供される情報です。投票、アンケート、インタビュー、レビューなどでフィードバックを集めることで、顧客の製品やサービスへの満足度や改善要望を把握できます。改善要望をカスタマーサクセスやマーケティング、営業部門で共有し製品やサービスに取り入れられれば、顧客が解約する可能性を下げられるでしょう。

3.ユーザー会・交流会

ユーザー会・交流会とは製品やサービスの利用者(ユーザー)が参加し、製品やサービスの活用方法や成功事例などの情報共有を行う場です。ユーザー同士の交流を通じて実際に製品やサービスの活用事例や現場の生の声をあげてもらうことで、製品やサービスの活用促進につなげることを施策の目的としています。企業や業界の枠を超えてユーザー同士が活用方法の共有や意見交換できれば、製品やサービスに対する理解を深められます。ユーザー会や交流会の種類はさまざまで、会場内で交流を行うオフライン開催のものもあれば、指定された日時にオンライン上で開催されるものもあります。自社の製品や状態にあった形式の検討を行いましょう。

4.コンテンツ制作

コンテンツ制作とは、定期的に顧客へ製品やサービスに関した役立つ情報を配信するためにさまざまな形式のコンテンツを制作することです。コンテンツ制作は新規リード獲得などを目的としたマーケティング施策と想像する方も多いかもしれませんが、カスタマーサクセス施策としても行います。

カスタマーサクセス施策として制作、発信するコンテンツには以下のようなものがあります。

・メルマガ
・動画
・CSウェビナー
・ホワイトペーパー
・ブログ記事 など

コンテンツの内容は、企業の方針によりさまざまですが、顧客が製品やサービスを活用するうえでの疑問解決や、まだ使っていない機能の活用方法などが一般的です。これらの顧客の役に立ちそうなコンテンツを通じて、顧客は製品やサービスから成功体験を得ることができ、満足度向上につながる可能性が高まります。

5.顧客フォロー

顧客フォローでは顧客の状態を把握した上で定期的に接点を持ち、顧客体験や満足度を向上させ、製品やサービスの継続利用や顧客単価の向上を促します。顧客の状態を把握するうえで活用するのがヘルススコアです。ヘルススコアとは、顧客が自社のサービスを継続的に利用するかを測る指標を指します。

ヘルススコア
ヘルススコアから顧客の状況を判断し、「定期MTGの開催」「電話・メールでの個別フォロー」など顧客に合わせたアプローチを行います。また、ヘルススコアが高く継続利用が見込める顧客に対しては、顧客単価を上げるための施策も行うのが特徴です。顧客の現状の課題をヒアリングしながら、アップセル・クロスセルの提案も行うことも、カスタマーサクセス施策のひとつといえます。

BtoB企業のカスタマーサクセス施策事例

前章までで具体的なカスタマーサクセス施策内容についてお話ししましたが、担当者の中には、「自社の商材や顧客に合うカスタマーサクセス施策が分からない」「どの施策を選べば良いか分からない」といった悩みを持つ方もいるでしょう。自社のカスタマーサクセス施策のヒントとなる、BtoBのカスタマーサクセス施策事例3つを紹介します。

セールスフォース・ジャパン

セールスフォース・ジャパンは、SFAツールである「Salesforce」を販売しています。Salesforceは、サブスクリプション型サービスとして展開しているため、ビジネスを成功させるための要素が顧客が満足度高く、継続的に利用してもらうことであると考えています。継続的な利用を促進するために、同社はシステム導入後も顧客の業務改善を支援するとして、カスタマーサクセスの取り組みを導入します。

セールスフォース カスタマーサクセス

出典:Salesforce「カスタマーサクセスとは何か?Vol.2 Salesforce流カスタマーサクセスの方法」

同社が行うカスタマーサクセス施策の特徴は、7つの評価と3つのステップに区分けした施策実行です。まず最初にカスタマーサクセスが行うことは、顧客のシステムの利用状況を分析するツールを活用し、顧客情報を分析することです。分析した情報はSalesforceのツール活用に関する7つに分けて評価を行う「SFA/CRM活用支援フレームワーク」に落とし込まれます。その7つとは、「ドメインを評価指標」、「システム連携」、「業務プロセス」、「ビジョンと戦略」、「ロードマップ」、「定着化」、「経営層の賛同と運用体制」です。(詳細情報は図参照)またその後、「設計・定着化・業務改善」の3つのステップに合わせた施策が実施されます。

SmartHR

株式会社SmartHRは、クラウド人事労務ソフト「SmartHR」を展開しています。サービス導入初期の支援を行う「導入支援サービス」の一部を有料サービスとして提供していたところ、無料サービスのみを利用している顧客のサービス活用状況や満足度が把握できないという課題をかかえました。それらの「サービスを使いこなせない」といった課題解決に注力するために、立ち上げ時に充実したオンボーディングを行うことを確定し、またその実行のために「導入支援チーム」を前身にした専任のカスタマーサクセスオンボーディングチームを立ち上げました。オンボーディングチームの施策では、オンボーディングのゴールを「お客さまの独り立ち」と定義しています。ゴールに向けたフローは「キックオフ」「トレーニング」「状況確認」「クロージング」の4つのステップに分解され、顧客のニーズに合わせた多様なサポートを提供していきます。これらの施策を推進し、顧客のサービス導入をスムーズに進めた結果、サービスの継続利用率99.5%に成功しています。

Slack

Slack Technologies, Incは、ビジネス向けコミュニケーションツールを展開しています。同社では、Slackを導入している顧客が世界各国にいるため、顧客ごとに異なるビジネスの価値を把握できないという課題を抱えていました。これらの課題解決のため、カスタマーサクセスで地域を問わない「3つの評価軸」から顧客が求める価値を提供できているかを測定します。各地域の顧客ごとの価値の把握につなげることに成功しています。さらに、日本の顧客に対しては、独自施策として、集約した顧客の成功事例のイベントなどでの共有、技術的なオンライントレーニングの実施、期待と製品のギャップを確認する対面ミーティングなどを実施しました。その結果、Slack内で日本が2番目に大きなマーケットとなる成果を出しています。

おわりに

カスタマーサクセスの概要や具体的な施策、企業の成功事例を解説しました。カスタマーサクセスを成功させるには、顧客のニーズや目的を理解しながら、顧客の購買レベルや状況に合う施策を考えることが重要です。コンテンツ制作や交流会の開催など、カスタマーサクセス施策にあわせたKPIを設定し、効果測定や改善を行いながらカスタマーサクセスを運用していきましょう。

本記事でご紹介したカスタマーサクセスの施策や事例を参考にしながら、貴社内でもぜひ取り入れてみてください。

著者情報
柳本 瑠衣 (やなぎもと るい)
Rui Yanagimoto
米国の州立大学卒業後、米国にて就労経験を経て帰国。国内のIT企業へ入社後、新規開拓営業と経営企画を経験。パーソルホールディングス株式会社(旧インテリジェンス)にてデジタルマーケティング領域を経験した後に、MAツール開発会社へ入社、インサイドセールス部門責任者として従事。2人目の出産を機に働き方を見直し2022年にフリーランスに転身。現在は営業DX領域のコンサルティングとマーケティング業務支援等を行う。