近年、レベニュー組織の成果を効率的に最大化させることを目的に「Rev Ops」が注目されています。Rev Opsとは「Revenue Operations:レベニューオペレーション」のことで、セールス、マーケティング、カスタマーサクセスの基盤を整えて組織全体の収益を最大化する考え方です。このRev Opsをカスタマーサクセスに特化したものが「CS Ops」です。CS組織が一定の規模になり、より効率的に成果を追い求めることが必要とされる企業でCS Opsを立ち上げているケースが増えています。
本記事ではCS Opsの役割から立ち上げ方、活用できるツールをご紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
CS Ops(カスタマーサクセスオペレーション)とは?
CS Opsは「Customer Success Operations:カスタマーサクセスオペレーション」の略称です。ではこのCS Opsにはどんなミッション・役割があるのでしょうか。
CS Opsのミッション
CS Opsのミッションは単なる業務効率化や業務サポートではありません。「カスタマーサクセスチームが戦略を立てるための基盤づくり」がミッションです。
また基盤の整備はもちろんですが、各種オペレーションの運用や範囲拡大に加え、レベニュー全体の成果最大化に貢献するさまざまな業務を担っていきます。CS OpsはRev Opsの構成組織となるため、Rev Opsとの密な連携は必要不可欠です。
Rev Opsについては、こちらの記事で詳しく解説していますのであわせてご覧ください。
CS Opsの役割
CS Opsのミッションである戦略策定のための基盤づくりを実現するため、カスタマーサクセスに関わる業務フロー(オペレーション)を効果的かつスムーズに進めるためのサポートが具体的な役割です。カスタマーサクセス活動では、基本的に既存顧客とハイタッチ/ロータッチ/テックタッチのコミュニケーションを取りながら、リテンション(解約防止)やアップセル、クロスセルを狙っていきます。
それらの活動を効率的に行うために、さまざまなツール(CRM・MAや問い合わせ管理など)を併用していることがほとんどで、CS Opsではこのツール運用も役割の一つです。また運用だけでなく、各種オペレーションの設計やデータ分析もCS Opsが担います。
CSM(カスタマーサクセスマネージャー)との違いと連携
上述したCS Opsの役割を見たときに、「自社ではCSM(カスタマーサクセスマネージャー)が担当している」という企業さまが多いかもしれません。カスタマーサクセスの部署がコンパクトなうちは、CSMが担当しても問題はないでしょう。しかし、既存顧客数が増えてカスタマーサクセスの部署が大きくなると、ハイタッチの直接的なコミュニケーションが求められる顧客も増えていき、フロント業務の比重が上がっていきます。そこで、CS OpsとCSMが異なる役割を担い、しっかりと連携することで、CSMがオペレーション業務を担っていた時と比べて、より効率的に成果を創出できるようになるのです。具体的には、CSMは顧客への直接的な働きかけを行う「フロント業務」を担い、CS OpsはCSMの活動を支える「バックヤード業務」を担います。
このときに大切なのがCS OpsとCSMの連携です。CS Opsは基本的に顧客と直接コミュニケーションをとることはありません。そのため顧客の課題やニーズを把握していないまま、オペレーションを設計・運用してしまうリスクがあり、そうなれば顧客体験を損ねることにつながってしまいます。CSMが顧客の課題やニーズをヒアリングし、その情報をCSOpsに適時適切に共有したうえで、CS Opsがオペレーションの設計・運用・改善を行う、これが成果を出すための最適な形です。
CS Opsの業務内容
ここからはCS Opsの具体的な業務内容について説明します。
CS活動におけるオペレーションの設計・運用・改善
1つ目はカスタマーサクセス活動のオペレーション設計・運用・改善です。例えば、カスタマーサクセス部署で新しくツールを導入する際には、そのベンダー選定から活用オペレーション設計、実運用、利用状況モニタリング、運用改善までCS Opsが主導して行います。CS Opsだけが活用するツールもあれば、フロント業務を担うメンバーも使用するツールもあるはずです。特に、フロント業務でも使用するツールであれば、どんなオペレーションや業務フローを整備するかで定着度合いは大きく異なります。CS Ops目線だけでオペレーションを組むと、情報の入力負荷が高い運用になりがちで、現場が入力作業に疲弊し、だんだんと入力率が低下してしまいます。逆にフロント側の要望を鵜呑みにした運用になると、後述する効果測定やデータ分析に必要な情報が足らず、本来CS Opsが担うべき業務を遂行できなくなってしまうかもしれません。そのため、CSのフロントとOpsの両方の目線で最適なオペレーションや業務フローを設計することが求められます。またツール(システム)の定着化に向けて勉強会の実施やマニュアル整備などの支援を行うことも業務範囲となるため、オペレーション設計と併せて検討しましょう。
CS活動の効果測定・データ分析
さまざまなカスタマーサクセス活動の効果を測定することもCS Opsの業務の1つです。適切なKPIがそもそも定まっていない場合は、その設定からCS Opsも関わります。カスタマーサクセスの活動は、新規開拓のセールスと比べて短期間で成果を出すことが難しいケースが多いです。例えば、サービス導入後の新規導入支援(オンボーディング)を1か月間行ったときに、すぐにアップセルやクロスセルを狙うことは厳しく、また1か月で解約をすることも稀です。つまり、オンボーディングの良し悪しを判断するためには適切なプロセス評価指標を定めることが必要です。これはオンボーディングに限らず、他のカスタマーサクセス活動においても同様です。また、最近では「CSQL:Customer Success Qualified Lead」という考え方が注目されており、全顧客に対して一律のカスタマーサクセス活動を行うのではなく、いくつかのフェーズに顧客を分類し、効率的にカスタマーサクセス活動を行っていきます。
もしCSQLを導入している場合は、このフェーズに応じたKPI設計が必要となります。CSQLについて詳しく知りたい方はこちらの記事で解説しています。
もちろん、単なる効果測定で終わっては改善につながりません。各カスタマーサクセス施策の効果を測定し、その結果を踏まえたデータ分析をもとに戦略立案を行うまでが求められます。
チーム・部門間の連携促進
最後の3つ目は、チーム・部門間の連携を促進するための取り組みです。CS OpsはRev Opsの構成組織ですので、Rev Opsとの連携はもちろん、Sales OpsやMrk Opsなど他のオペレーションチームとの連携は重要です。特にCRMやMAなどのツールは、カスタマーサクセス以外の部署でも使用されることがほとんどですので、全体最適となるオペレーション構築が求められます。
出典:Xactly社
また、レベニュー組織全体で見たときには、カスタマーサクセス活動で得られた知見・情報を共有することも大切です。既存顧客に教えてもらった市場情報は、セールスやマーケティングにおいても大いに役立ちます。部門間連携を強化し、事業成長につなげていきましょう。
CS Opsの立ち上げ方
これからCS Opsを立ち上げていきたい企業向けに立ち上げのステップとポイントを紹介します。
カスタマーサクセスチームの課題を整理する
最初にやるべきは、カスタマーサクセスチームの課題の整理です。課題とはあるべき姿と現状のギャップですので、まずは自社のカスタマーサクセスチームが目指す理想像を定義します。既に定義されている場合も、見直すべき箇所がないかについて再検討することをおすすめします。事業フェーズの変化に応じて、カスタマーサクセスが担うミッションや役割が変わることもあるため、定期的な見直しは欠かせません。そして、定めた理想像と現状を見比べたときにギャップがある箇所を課題として洗い出します。課題を洗い出した後は、フロントにまつわる課題とオペレーションにまつわる課題に整理し、立ち上げるCS Opsが担うべき範囲を決定しましょう。
Ops担当のアサインをする
CS Opsではツール(システム)の実装や運用も業務範囲に入ることから、ITリテラシーが高く、導入ツールの要件を整理できる担当をアサインしましょう。しかし、あくまでカスタマーサクセス活動のサポートを行うため、サポート対象であるカスタマーサクセスのフロント業務の理解や顧客知識も必要となります。つまり、CSMとしての業務経験がありつつ、ITリテラシーが高い人が理想的と言えます。とはいえ、なかなか適任がいないケースも多く、その場合はRev Opsからアサインしてカスタマーサクセスの知見を身につけるか、カスタマーサクセスチームからアサインしてITリテラシーを身につけるかのいずれかになりますので、育成コストも加味してアサインを検討してみてください。
CS業務フローやオペレーションのルールを決める
これまでCS Opsが無かったカスタマーサクセスチームでは、業務フローやオペレーションが属人的になっていることが多いはずです。そのため、CS Opsを立ち上げてからやるべきは、属人的な業務フローやオペレーションを洗い出したうえで、業務効率化につながるルールの設計です。CSMが業務・施策推進に注力できるよう、環境面の整備を行っていきます。この運用ルールを決めるときには、前述の通り、CSのフロントとOpsの両方の目線で考えることが重要です。
KPI設定を行う
立ち上げ段階の最後のステップは、カスタマーサクセス施策のKPI設定です。各施策の効果を適切に評価するためにも、KPIを設定して定期的に振り返りができる状態を作ります。
カスタマーサクセスのKPIの例はこちらの記事で紹介しています。ここまで準備ができたら、決めた業務フローやオペレーションの運用を回しつつ、各施策の効果をモニタリングし、次の施策や戦略立案を行いましょう。CSMや他部署との連携も忘れないようにしてください。
CS Opsに活用されるツール
カスタマーサクセスの業務効率化や成果最大化につながる、CS Opsでよく活用されるツールを4種類ご紹介します。
CRM・MAツール
顧客情報や売上を管理するためのツールがCRMです。顧客数が少ないうちは、Excelやスプレッドシートでもなんとか管理できますが、顧客数が増えると管理が煩雑になるためCRMを導入することがほとんどです。
また、顧客とのテックタッチでのコミュニケーションはMAツールを活用することで自動化(半自動化)が可能です。マーケティングでの活用はもちろんですが、カスタマーサクセスにおいても有用なツールと言えます。このCRM・MAツールは部署横断で利用することが多く、ツールの運用方針は他部署と連携しながら全体最適で設計することが求められます。
既にCRMを導入していてなかなか効果を実感できていない方は、こちらの記事で振り返りのポイントを解説しています。
<CRM・MAツールの代表例>
・Salesforce
・Marketing Cloud Account Engagement(旧Pardot)
・Hubspot
・Adobe Marketo Engage
カスタマーサクセスツール
カスタマーサクセスに特化したツールも多数リリースされています。顧客とのコミュニケーションを活性化するコミュニティ構築をサポートするツールや顧客の状態を定量で把握することに特化したツールなどさまざまな種類が存在します。導入目的としては「チャーンレート(解約率)低減」「アップセル・クロスセルによる売上アップ」「顧客満足度の定量把握」のいずれかとなるため、自社の目的に応じて最適なツールを選定することが大切です。
<カスタマーサクセスツールの代表例>
・commmune
・coorum
・Gainsight
データ分析・BIツール
簡易的なデータ分析であれば、表計算ソフトで十分対応できます。しかし、顧客数が増えたり、見るべき指標が膨大になったりすると、表計算ソフトでは対応できなくなるため、そのときはデータ分析・BIツールの出番です。他のツールに比べてITスキルが求められますが、しっかり使いこなすことができれば、カスタマーサクセスの効果を分かりやすく可視化し、振り返りが行いやすくなります。ぜひ導入を検討してみてください。
<データ分析・BIツールの代表例>
・Tableau
・MotionBoard
・Microsoft PowerBI
問い合わせ対応ツール
CS Opsの業務の一つに問い合わせ対応があります。他ツールと同様、顧客数が増えたときに効果を発揮します。問い合わせの件数が増えれば、対応の抜け漏れが発生するリスクが高まるのはもちろん、1件1件の対応工数を最少化しないと、全体の工数を圧迫しかねません。また、問い合わせ対応を迅速に行うことは顧客満足度向上にもつながるため、問い合わせ対応ツールの導入は有益だと言えます。ツールによってはCRMとの連携機能もあるため、自社に最適なツールを探してみましょう。
<問い合わせ対応ツールの代表例>
・Zendesk
・メールディーラー
・Re:lation
おわりに
Rev Opsが注目を浴びる中、カスタマーサクセスにフォーカスしたCS Opsを導入する企業も徐々に増えてきました。本記事を通して、CS Opsの全体像や立ち上げ方はご理解いただけましたでしょうか?
カスタマーサクセス自体の重要性が世に広く認知され、CSチームが強化され始めている今だからこそ、CS Opsを導入し、カスタマーサクセス全体の業務効率化・成果最大化を実現しましょう。