今ではさまざまな企業が実践しているWEBマーケティング。とはいえ、中々思うような効果を挙げられていないと感じている方も多いのではないでしょうか。日々刻々とトレンドが変化していくWEBマーケティングにおいて、軸となる戦略について基本を押さえておくことが大切です。
本記事では、WEBマーケティング戦略を立案する上で必要となる考え方や押さえるべきポイント、具体的な手法について解説していきます。
WEBマーケティングとは?
WEBマーケティングとは、ユーザーをWEBサイトに集客し商品やサービスの購入につなげるためのマーケティング活動です。具体的にはWEBサイト運営や広告、SEO対策、オウンドメディアの運営などの活動が挙げられます。最近は、SNSやスマートフォンアプリのようなメディアの浸透に伴い、さらに幅を広げたデジタルマーケティングという言葉も広まっています。
デジタルマーケティングとの違い
WEBマーケティングとデジタルマーケティングの違いは何か?といえば、デジタルマーケティングの方がカバー範囲が広くなっています。デジタルマーケティングとは「デジタル技術やデジタルデータを活用して売れる仕組みを作ること」です。具体的にはアプリの運用、CRMやSFAといったツールを活用したマーケティング活動などが挙げられます。
デジタルマーケティングは、必ずしもオンラインには限定されません。オフラインであっても、デジタル技術やデジタルデータを活用していれば、それはデジタルマーケティングといえます。例えば展示会などでデジタルサイネージを設置し、そこから取得したデータを元にマーケティング活動を行っているケースもあります。ただし、実際にはデジタルマーケティングの多くはオンラインで行われるのもまた事実です。オンライン=WEBというイメージが強いため、実務の現場ではデジタルマーケティングとWEBマーケティングは、ほぼ同意語的に使われることも多い状況となっています。
WEBマーケティング戦略の重要性
従来、営業が顧客先を訪問してサービス概要を説明することが販促活動のスタートとなっていました。
しかし、携帯通信網が整備されスマートフォンやタブレットなどの端末が普及した今、顧客はWEBから多くの情報を入手して自社に導入すべきサービスの比較や検討を行うようになりました。つまりWEBマーケティング戦略は、顧客との接点をどう創出しどう営業活動に繋げるかという観点で考える必要があります。マーケティング部門だけでなく営業部門やその他の部門とも密に連携しながら、会社として共通認識を持つことが肝要です。
WEBマーケティング戦略がないと起きること
次のような場面に遭遇したことはないでしょうか。
会社として戦略を持っていない場合、目の前の数字に一喜一憂してしまい本当に達成すべきことがわからなくなってしまいます。また、先ほどの会話のように部門間で会話が噛み合わず、お互いがお互いの活動に対して疑心暗鬼になってしまうことも。「なぜ今この活動をしているか」をいちいち説明しなくても関係者が理解できている状態がベストです。そしてそれは、戦略なくして成り得ません。
WEBマーケティング戦略立案のポイント
WEBマーケティング戦略の重要性について説明してきましたが、ここからはどう立案していくべきなのか解説していきます。決められた順番があるわけではありませんが、押さえておくべきポイントをいくつかご紹介します。
WEBマーケティングの目的を明確にする
先ほども述べたように、WEBマーケティングはマーケティング部門だけが関わるものではありません。
会社として達成したい事業目標があって、それを達成するための手段としてWEBマーケティングがあるのです。だからこそ「何のためにWEBマーケティング活動を行うのか」を明確にする必要があります。決まりきった答えがあるわけではなく、会社が置かれている状況によって目的はさまざまです。
【目的の一例】
・ 自サービスが市場にまったく認知されていないので、WEBを活用して認知度向上を図る
・ インサイドセールスの活動数を増やすために、WEBを活用して見込み顧客情報を獲得する
・ 営業リソースが不足しているので、WEBでサービスオーダーを受注し売上を伸ばす
KGIとKPIを設定する
企業として目指すべきところ=目的が果たされた状態をできる限り定量化して、達成できているか否か測定できる状態にすることが大事です。日々の活動でこれらの数字を常に意識できるような環境をつくることで、PDCAサイクルが高速でまわるようになります。
例えば、「見込み顧客情報の獲得」が目的なのであれば、
・ KGI:いつまでに何件の情報が必要なのか
・ KPI:中間指標として、WEBサイトのUU数は何件必要なのか
といった具合に目標を立てましょう。
カスタマージャーニーに基づいた戦略を立てる
カスタマージャーニーとは、その名の通り顧客の体験を旅に例えて表現したものです。
顧客があるサービスや商品を知り購入・利用する過程で、WEBサイトや店舗、営業担当者などさまざまな形で提供企業との接点を経ることになります。特にBtoBビジネスにおいては、顧客が意思決定するまでのプロセスが複雑で長い時間を要することがほとんどです。それらのプロセス全てをWEBマーケティングで進めることは、あまり現実的ではありません。どのプロセスまでをWEBマーケティングで進め、どのプロセスから営業に受け渡しをするのか意識して戦略をたてるようにしましょう。
その他のマーケティング戦略や営業戦略とも関連づけて考える
WEBマーケティングはあくまでマーケティング活動の一部です。WEB以外のイベントマーケティングやメールマーケティングなどとあわせて効果が発揮できるように、その他のマーケティング戦略と整合性を持たせることが大切です。また、マーケティング部門だけでなく営業部門との意思統一も必要です。営業は大手製造業にアプローチしたいのに、WEBサイトでは中小小売業向けのコンテンツがメインになっている、なんて状況は避けなければなりません。
営業部門の理解を得る
営業戦略との関連性はもちろんですが、営業部門とのコミュニケーションも大切です。こんなやりとりを見かけたことはないでしょうか。
WEBマーケティングに力を入れ始めると、検討度合いが高くない人の情報も含まれるようになってくるため、営業部門との認識差異によってこのようなやりとりが往々にして起こり得ます。従来の営業活動から変化が必要な点を理解してもらい、必要に応じてインサイドセールスチームを新たに立ち上げるなどして組織だって進めるようにしましょう。
WEBマーケティング戦略立案に役立つフレームワーク
戦略を立案する上でのポイントを押さえたところで、次はフレームワークについてご紹介します。白紙の状態から鉛筆をなめなめするのではなく、フレームワークを活用することで効率よくスピーディに考えをまとめていきましょう。
「3C分析」で自社、競合、市場を理解する
3C分析とは、自社を取り巻く環境がどのような状況なのか分析するためのフレームワークです。
自社製品やターゲットとする顧客だけ見るのではなく、自社が置かれている市場と市場内にいる競合を把握しておく必要があります。3C分析では、以下3つの観点から分析します。
Company(自社)
企業理念やビジョン、既存事業、自社サービスの売上、市場シェア率、販売戦略などの現状、既存事業の特長、強みと弱み、人材、設備、資産、資本など自社をとりまくすべての環境が対象です。WEBマーケティングでは、自社WEBサイトのアクセス数、設定キーワードでの検索順位などを洗い出してみましょう。
Customer(顧客)
顧客のニーズ、流行やトレンドによる消費行動・購買行動の変化のほか、自社が属する業界の市場規模や成長性など、顧客だけではなく顧客を取り巻く市場環境も含めたものを対象としています。WEBマーケティングでは、自社WEBサイトにアクセスするユーザー属性や、設定キーワードの検索ボリュームなどが対象です。
Competitor(競合)
競合他社の市場シェア率、売上、サービスの種類、販売戦略などの現状、競合ごとの特徴、今後新規参入の可能性がある企業や代替品になりうるサービスなど自社に近い企業の現状や今後競合になる可能性のある企業など自社が属する業界の環境すべてが対象です。
WEBマーケティングでは、自社と同様、わかる範囲で調査します。自社、顧客、競合を取り巻くあらゆる環境を調べ、それぞれの関係性を明らかにすることで、自社の戦略立案を行っていくのが3C分析です。
「STP分析」でターゲット顧客を明確にする
STP分析とは、セグメンテーション(Segmentation)、ターゲティング(Targeting)、ポジショニング(Positioning)の頭文字から名付けられた分析法です。それぞれ3つの要素を簡単に解説すると、以下のようになります。
・ セグメンテーション(Segmentation)で市場を細分化して、市場の差全体像を把握
・ ターゲティング(Targeting)で狙うターゲットを明確にする
・ ポジショニング(Positioning)で自社の立ち位置を明確化する
ここで常に意識したいポイントは「ユーザー目線」です。ユーザーの行動を客観的に把握し、それに応じたWEBマーケティングを行うことが、STP分析をより有意義にする秘訣です。
「ペルソナ」作成でターゲット顧客の解像度を高める
ペルソナとは、「自社の商品やサービスを使用する架空のユーザー像」を意味します。自社サービスを使ってくれる典型的なユーザー像を設定することで、マーケティング戦略の方向性が決まり、具体的な施策を考えやすくなります。ペルソナの設定においては「リアリティ」が重視されます。性別・年齢・居住地・職業・収入・家族構成から、趣味・価値観・ライフスタイルまで、さまざまな設定を細かく行い、できるだけリアルな人物像を定めます。
そもそもペルソナという言葉は、ラテン語の「persona」に由来します。当時は、古典劇で役者が被る「仮面」のことをペルソナと呼んでいたそうです。その後、有名な心理学者であるユングが「人間の外的側面・表面上の人格」のことをペルソナと定義しました。そして現代では、上述のように「架空のユーザー像」を示すマーケティング用語として、ビジネスで幅広く用いられています。
「カスタマージャーニー」で理想の顧客の動きを定義する
カスタマージャーニー分析とは、顧客が商品購入に至るまでの行動や思考を可視化するWEBマーケティングのフレームワークです。BtoB向けのカスタマージャーニー分析では、設定したペルソナの検討段階をいくつかに分けて考えます。例えば、以下の5つになります。
1. 課題感の認知
2. 課題解決の情報収集
3. 課題解決策の絞り込み
4. 候補の比較検討
5. 導入サービスの決定
それぞれの検討段階におけるユーザー心理と、ペルソナの「課題」「情報ニーズ」「情報収集するチャネル」「行動」とを照らし合わせて、実際のユーザーの動きを設定していきます。ペルソナとカスタマージャーニーについては、こちらの記事でも詳しく解説しています。
WEBマーケティング戦略を実行に移す際のポイント
せっかく作り上げた戦略が、絵に描いた餅になってしまっては意味がありません。ここでは、戦略を実行に移す際のポイントについてご紹介します。
中長期的なロードマップを作成し、活動のペースを把握する
どうしても短期的な成果に目が行きがちですが、WEBマーケティングは中長期的な視点に立って行う必要があります。「いつまでにどんな状態を達成しているか」を、四半期単位や年単位などで言語化してロードマップを作っておきましょう。また、お金や人が無限にある状況などあり得ず、限られたリソースの中で活動をしていくことになります。戦略を実現するために必要な活動に優先順序をつけて、優先度の高いものから着実に実行していきましょう。
仮説ベースで実行し、指標を見ながら改善を繰り返す
机上の空論で終わらせないために、仮説ベースで実行することが重要です。WEBマーケティングは日々刻々と状況が変化しており、これといった明確な正解がありません。練り上げた戦略とそれに基づいた施策だからといって、必ず成果があがるとは限りません。仮説をすぐに実行に移せるのがWEBマーケティングの特徴です。
まずは実行してみて、そこから得られる指標を確認することで、次にとるべきアクションが定まってきます。
獲得リードのフォロー方法を営業部門と合意する
営業部門の理解を得ることの重要性について前述しましたが、具体的な活動方法についても合意するようにしましょう。営業としては、自身に課された売上目標を達成するために日々の時間を使いたいと考えるのが一般的です。そんな状況で長期的なフォロー活動を前提とした見込み顧客の情報を渡しても、活動されずに放置されてしまうのが関の山です。マーケティング部門はどんなリードを営業にパスするのか、パスを受け取った営業はどんな活動を行うのか、両部門で認識を合わせておくことが肝要です。また活動した結果、想定した通りのリードだったのかどうか、マーケと営業で振り返りができるような仕掛けづくりも行っていきましょう。
WEBマーケティング戦略と実行に役立つツール
WEBマーケティングの特徴として、ユーザーの動きを可視化しやすいという点が挙げられます。そしてその可視化は、さまざまなツールを活用することで効率よく実現することができます。
Google Analyticsなどのアクセス解析ツール
アクセス解析ツールとは、WEBサイトに流入したユーザー像をより詳しく分析し行動理解を深められるWEBマーケティング必須ツールの一つです。具体的にはWEBサイトへの訪問者数は何人なのか、どこからWEBサイトに訪問したのか、どのページに最初に来たのかなどのデータを計測できます。WEBマーケティングで最も重要な指標の1つであるコンバージョンも正確に計測できるので、どのようなユーザーがどのくらいコンバージョンに結びついたかも分析可能です。アカウントを作成しトラッキングコードと呼ばれるJavaScriptのコードを対象のWEBサイトに貼り付けるだけで計測できるため、初心者でも簡単にアクセス解析を始められます。
Google サーチコンソールなどユーザー流入分析ツール
ユーザー流入分析ツールは、WEBサイトやWEBページに訪問するまでのユーザーの動きを計測できるアクセス解析ツールです。例えばGoogleサーチコンソールは、Googleの検索エンジンでユーザーがどのようなキーワードで検索をしているかや、WEBページの検索順位などSEOに特化したデータを分析できます。また、WEBサイトやサイト内の記事コンテンツが正常にGoogleに認識されているかや、エラーや不具合が発生していないかの状態まで管理することが可能です。WEBサイトがSEOに最適化されているかを分析するのであれば、必ず導入すべきツールでしょう。
関心の高いキーワードを探すキーワードプランナー
キーワードプランナーとは、SEOやリスティングといったWEBマーケティングのキーワード調査やキーワード選定を支援する運用ツールです。例えば、Google公式のキーワード調査ツールとしてGoogle AdsのGoogleキーワードプランナーがあります。キーワードプランナーでできることは、主に次の4つです。
1. キーワードごとの月間検索ボリュームの調査
2. 関連キーワードの調査
3. キーワードごとの競合性の確認
4. 広告配信時のクリック単価の確認
メインの検索キーワードとともによく検索されている、関連キーワードやロングテールキーワード)の調査、競合サイトの多さなどSEO対策に役立つ情報を入手できます。
各ページの滞在状況を分析するヒートマップツール
ヒートマップとは、WEBサイトに訪れたユーザーがページ内で取った行動のデータを色の濃淡でわかりやすく表現したものです。ヒートマップツールを使えば、あなたのWEBページで改善すべきポイントを簡単に見つけることができます。WEB解析においてのヒートマップの仕組みは、マウスの動きを追跡し、そのマウスのログからヒートマップを作り出しています。人間の目とマウスの動きには80%以上の相関関係がある事が実証されており、マウスの動きをヒートマップで表現する事により、ユーザーの思考を可視化することができるのです。
WEB解析において数字のデータでは発見できない課題も、ヒートマップなら最も見られている(あるいはクリックされている)場所は濃く表示され、あまり見られていない場所は薄く表示されるため、WEBページとヒートマップを照らし合わせれば、誰でもユーザー心理を把握する事ができます。代表的なツールとして、ミエルカヒートマップやMouseflowなどがあります。
実名化した見込み客の行動を明らかにするCRMとMA
WEBマーケティングにより獲得した見込み顧客情報を有効活用するために、CRMやMAといったツールがあります。
CRMとは?
CRMとはCustomer Relationship Managementを表しており、「顧客関係管理を行うためのツール」を意味します。顧客との関係を構築するにはあらゆる方法が考えられますが、CRMツールを活用することで顧客の個人情報を管理しながら、営業・マーケティングプロセスのどの段階にいるのか、購入履歴、問い合わせ履歴などに合わせた施策が可能になります。代表的なツールとして、SalesforceのSales CloudやHubspotなどがあります。
CRMについては、こちらの記事でも詳しく解説しています。
MAとは?
MAとはMarketing Automationを表しており、新規顧客獲得における一連のマーケティング施策を、管理・自動化・効率化するツールの総称です。見込み顧客の管理やスコアリング、見込み顧客の属性別に行うコンテンツの自動配信のほか、WEBサイトやブログなどのアクセス解析にも対応します。さらに、前述したCRMやSFA(営業支援システム)との連携も可能です。見込み顧客に関する広範かつ詳細な情報や、見込み顧客に対するアプローチを視覚化できるため、マーケティング部門と営業部門のシームレスな連携を促進できます。代表的なツールとして、Adobe Marketo EngageやSATORIなどがあります。
MAについては、こちらの記事でも詳しく解説しています。
WEBサイト内の回遊やコンバージョンを促進するWEB接客ツール
WEB接客とは、名前のとおりWEBサイトで接客を行うことを指します。実店舗では、来店したお客様の様子を見て迷っていたり困っていたりしたら店舗スタッフが声かけをしてサポートします。かたやオンラインでは、お客様の様子を目で追うことはできません。WEB接客ツールは、オンラインでもユーザーの行動を分析して1人ひとりに対して最適な接客を実現します。ユーザーとのコミュニケーションを「集客」「接客」「追客」と分けた場合、デジタルマーケティングではSEOや広告などの集客施策に目がいきがちです。
しかし接客をおろそかにしては、せっかく集客したユーザーを逃してしまうことにもなりかねません。集客施策に投下した予算を無駄にしないためにも、WEBサイトでの丁寧な接客は重要な要素です。代表的なツールとして、Reproなどのポップアップ型やChat Plusなどのチャット型があります。
おわりに
WEBマーケティングは、変化が激しく現在でも成長と変化を続けています。変化の中心には必ず顧客の変化があり、顧客が時代に合わせて変化するに伴い市場や競合も変化し続けるでしょう。今回ご紹介した内容を踏まえ、自社に合ったWEBマーケティング戦略を考えて、最適な戦略設定と施策を改善を繰り返しながら成果につなげていきましょう。