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BDRとは?重要な理由と背景も解説!

インサイドセールス

目次

BtoB企業の営業活動において主流になりつつあるのが、インサイドセールスとフィールドセールスの分業です。特にSaaS(Software as a Service)業界では、ほとんどの企業が分業体制を築いています。その中でもインサイドセールスには大きく2つの役割があり、反響型の「SDR」と新規開拓型の「BDR」に分かれます。本記事では両者の違いを説明しつつ、BDRに焦点を当てて重要性や成果を出すための戦略・手法を解説します。

これからインサイドセールスでBDRを立ち上げたいと考えている方必見の内容ですので、ぜひ最後までご覧ください。

BDRとは何か?

BDRとは「Business Development Representative」の頭文字を取った言葉で、新規開拓を行うアウトバウンド型のインサイドセールスを指します。BDRではターゲット企業を選定し、その企業ごとに個別最適化したアプローチを行うことで商談機会を創出します。アプローチ方法は意思決定者向けのお手紙・DMや名刺交換先へのメール、代表電話へのコールドコールなど多岐に渡ります。1社1社に個別でアプローチしていくため、ターゲットとなる企業は絞る必要があり、SDRでは獲得が難しい中堅〜大手企業をターゲティングするのが一般的です。このようにターゲットを決めて個別にアプローチしていく考え方はABM「Account Based Marketing」と呼ばれ、近年注目されていますので覚えておくことをおすすめします。

ABMを活用すべき企業はこちらの記事で解説していますので、あわせてお読みください。

BDRとSDRの違い

では次にBDRとSDRの違いを見ていきましょう。SDRは「Sales Development Representativ」の略称で、マーケティング活動によって獲得したインバウンドリードへのアプローチを行う、反響型のインサイドセールスのことです。SDRでは問い合わせや資料請求などの能動的なアクションがあったリードに対してセールスを行うため、BDRと比較して購買意欲が高く、短期間で商談に繋げることができます。また、あくまで反響型であるためターゲットを特定することはできず、日本の中業企業比率が99.7%であることを考えると、中小企業の割合が多くなることが予想されます。SDRのアプローチ方法は、電話もしくはメールです。リード獲得時に取得した電話番号とメールアドレスを用いて、商談化に向けたアプローチを行います。ここまでの内容を表形式でまとめます。

BDR SDR

SDRとBDRの違いをさらに詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

このようにBDRとSDRにはそれぞれ異なる特徴・役割があります。どちらか片方が優れているというわけではなく、その違いを理解したうえでSDRのみにするか、SDRとBDRを組み合わせるのかを選択することが重要です。では次にBDRを導入する企業がSaaS業界を中心に増えている背景を見ていきましょう。

BDRが重要な理由・背景

BDRが重要な理由と導入企業が増えている背景について説明します。

SaaSビジネスにおける収益安定化

改めてSaaSとは「Software as a Service」の略称で、クラウド上にあるソフトウェアをインターネットを介して提供するサービスを指します。従来のITサービスはオンプレミスという、クライアント側のサーバー内でシステムを運用管理する形式でした。そのため、初期構築に膨大な工数がかかるため、導入コストが多額になるケースがほとんどです。SaaSの場合は、クライアント側でのサーバー設置などは不要で、導入コストがあまりかからないことから、導入へのハードルが低く、中小企業でも手軽に導入ができます。その反面、解約も簡単にできてしまい、中小企業のチャーンレート(解約率)はしばしば課題にあがります。資本力のある大手企業(エンタープライズ)を獲得することができれば、継続的に収益を得られるため、収益安定化に大きく寄与します。前章でご紹介した通り、SDRのみでは大手企業を意図的に開拓することは難しく、BDRを導入する企業が増加しているのです。

SaaSの市場規模の拡大 

SaaSとオンプレミスの違いはご説明しましたが、少し前までは中小企業はSaaS、大手企業はオンプレミスという状況でした。SaaSの場合、既存のソフトウェアを活用するためカスタマイズ性がないものの、大手企業は自社に最適化したものを利用したいというニーズがあったからです。またセキュリティの観点でも、自社内のサーバーに置いたほうが安全だという理由もありました。しかし、コロナ禍に入って状況は一変します。オンライン化が急速に進み、リモートワークを導入する企業も急増しました。これにより、自社内サーバーだけで使用できるソフトウェアでは対応できなくなります。さらに、オンプレミスでカスタマイズしたソフトウェアを使い切るのが難しいこともあり、必要な機能は切り出して活用していこうと方針転換する企業も出てきました。オンライン化の流れに乗って、コミュニケーションツールやグループウェア、Web会議システムなど様々なSaaSが世に生み出され、市場規模は年々拡大。大手企業がSaaSを導入するケースも増加しています。実際、テックタッチ社の「大企業のSaaS活用に関する実態調査」によると、大企業におけるSaaS導入率は74.7%であり、コロナ前と比較して、6割以上(64.1%)がSaaSの導入数を2倍以上に増加しているそうです。

エンタープライズ開拓の収益性

収益安定化の観点でエンタープライズを開拓する重要性は前述しましたが、「顧客単価」の違いによる収益性も外せないポイントです。SaaSの多くは利用人数によって顧客単価が変わります。つまり、従業員数が少ない中小企業は当然、1社あたりの収益も少なくなり、売上をあげるには取引社数を増やさなければなりません。ところが中小企業はチャーンレート(解約率)も高くなるため、新規開拓をしてるのに売上が上がらないといった事態が起こりえます。従業員数が多いエンタープライズ企業であれば、顧客単価も大きくチャーンレートも低いため、少ない取引社数でも十分な収益を確保可能です。その意味でBDRによるエンタープライズ開拓はとても重要な役割を担っています。とはいえ、エンタープライズ頼りの収益構造になれば、解約が出たときのリスクも相対的に大きくなります。SDRで中小企業をしっかり受注して面を拡げつつ、エンタープライズはBDRで開拓してアップサイドを狙っていく、といったバランスを考えての営業戦略を心がけましょう。

BDRの戦略と手法

ここからは実際にBDRを立ち上げていくうえで欠かせない戦略と具体的な手法をご紹介します。

ターゲットの設計と理解

改めてBDRとSDRのターゲットの違いをおさらいします。SDRは反響型であるため、ターゲットは不特定となり、中小企業の割合が多くなるのが一般的です。そのためBDRでは中堅〜大手企業(エンタープライズ)がターゲットとなります。ターゲット設計の観点では、エンタープライズの中でも自社サービスとの親和性が高い企業をさらに絞り込んでいくことが大切です。もしエンタープライズの既存顧客がいる場合は、その顧客と同業界の企業をターゲットにするのがよいでしょう。実際の導入事例を伝えられるのは架電時や商談時に大きな武器となります。また既存顧客に導入前の課題や検討プロセスをヒアリングすることで、ターゲットの解像度を高めることもできます。エンタープライズの既存顧客がまだいない場合は、業界や所在地、資本金などからターゲットリストを作成しましょう。ターゲットリストが作成できたら、各企業の詳細を調査し理解を深めていきます。Webサイトや有価証券報告書、決算短信などから、その企業の現状を整理し、アプローチ方法を検討します。このターゲット理解のフェーズでは、企業のキーパーソンを見定めることも大切です。特に大手企業では、決裁ルートが複雑なことも多く、いかに意思決定に関わる人とコンタクトを取るかが成否の分かれ目です。その企業との過去のやり取り実績や名刺交換している人がいないかも確認し、社内にあるリソースを総動員してターゲット理解を深めてください。

方針とKPIの設計

ターゲットが決まったら、BDRの方針を決めます。ターゲット企業におけるキーパーソンとの商談獲得を目的にするケースもあれば、キーパーソンのリード情報取得を目的にすることもあります。キーパーソンに限らず担当者レベルの商談獲得をひとまず狙うのも方針の一つです。これらの目的はターゲットの理解度に応じて決めるのがおすすめです。ターゲット企業のキーパーソンを把握できているのであれば、回りくどいアプローチをせず、そのキーパーソンとの商談獲得を狙いましょう。逆にターゲット企業の情報が少なく、追加での情報収集が必要な場合は、担当者レベルの商談をまずは獲得し、内情を把握することが受注に向けての第一歩になります。方針とあわせてKPIも定めます。ABMでのアプローチを行う場合は、上記のように個社ごとの方針にあわせてKPIを設計することになりますが、よく用いられる指標はターゲット企業へのアプローチ数、キーパーソンの把握数・リード獲得数、そのカバレッジ率などです。またコールドコールでリストに対して機械的に架電をしていく場合には、以下のようにインサイドセールスでの代表的なKPIを用います。

インサイドセールス KPI
一般的なインサイドセールスにおけるKPIはこちらの記事で詳しく解説しているのでぜひご覧ください。

ヒアリング項目とコミュニケーション設計

ターゲットへのアプローチ時にヒアリングの抜け漏れが発生するのを防ぐために、ヒアリング項目は事前に定めておきましょう。商材によって設定すべき項目は変わりますが、インサイドセールスでよく用いられるヒアリング項目は以下の通りです。各項目の詳細はこちらの記事でまとめています。

・ビジネス上の目標と課題
・解決したい課題の優先順位
・自社サービスの認知/興味関心
・予算と希望価格
・意思決定プロセス
・競合他社との比較・検討状況
・希望納期とスケジュール

上記をすべて聞けたら理想ではあるものの、BDRでのアプローチの場合、「はじめまして」のコミュニケーションとなることが多く、ヒアリング項目内での優先順位をつけることも大切です。優先順位を付ける際はフィールドセールスと連携し、どういった情報を聞けたらフィールドセールスにパスをするのかという基準をすり合わせておきましょう。またコミュニケーション方法は電話だけではありません。全く接点がない企業にはお手紙を送ってから電話、過去に名刺交換をしたことがある企業にはメールしてから電話のように、個別にコミュニケーションを設計することでBDRの成果向上につながります。

適切なツールの使用

ここまでBDRの戦略と手法をご紹介してきましたが、実現するために欠かせないのがITツールです。名刺管理ツールを使用すれば、ターゲット企業との名刺交換の有無が分かりますし、CRM・SFAを導入していれば、アプローチ状況を可視化しKPIの達成状況が一目で分かります。まずはBDRに適切なツールを理解し、不足しているものがあれば導入を検討してみてください。

名刺管理ツール

紙の名刺をスキャナーやアプリで読み取りデータ化して、管理できるツールです。コロナ禍が落ち着き、対面での商談やリアル開催の展示会が増え、紙の名刺交換機会も増加しているため、需要が高まっているタイミングです。名刺管理ツールを導入することで営業の入力工数を削減できるのはもちろん、読み取ったデータを後述するCRM・SFAツールと連携することで、各企業の担当者情報を一元管理し、データを資産として残せます。

<名刺管理ツールの代表例>
Sansan
Eight Team

CRM・SFAツール

顧客情報や商談情報を一元管理するためのツールがCRM・SFAです。各企業の担当者の名刺情報はもちろん、受注履歴や接点履歴などの様々な情報を一元管理できます。BDRではキーパーソンとの商談獲得は長期戦になることが多く、過去にどういったコミュニケーションを取ったのかを履歴として残しながら、アプローチしていくことが求められます。CRM・SFAツールがあればメンバーの退職や異動にも対応できるため、BDRにおいて必須のツールと言えます。

<CRM・SFAツールの代表例>
Salesforce
Mazrica

IP電話ツール

電話をネット回線を利用して行うシステムがIP電話ツールです。IP電話は専用電話機が不要でスマホかPCがあれば、電話をかけることができます。さらに固定回線よりも安くコスト面でのメリットもあります。またシステムの拡張性が高く、架電のログや会話内容をCRM・SFAツールに自動連携できるツールもあるため、BDRの工数削減にも繋がります。

<IP電話ツールの代表例>
MiiTel
pickupon

MAツール

リードの獲得やナーチャリングをはじめとした、マーケティング活動を自動化・効率化できるのがMA(マーケティングオートメーション)ツールです。繰り返しになりますが、BDRは長期戦です。キーパーソンのリードを獲得してすぐに商談化して受注というわけにはいきません。しっかりとナーチャリング(育成)を行い、サービスへの興味・関心度合いを高めることが求められます。とはいえ、1件1件手動でメールを送っていては工数が足りなくなってしまいますので、MAツールを活用して効率化しましょう。

<MAツールの代表例>
Marketing Cloud Account Engagement(旧Pardot)
Adobe Marketo Engage
SATORI

おわりに

本記事ではBDRの重要性と戦略について紹介しました。BDRに成功してエンタープライズの受注を獲得できれば、安定した高い収益が見込めます。実際に中長期の企業成長を見据えて導入する企業も増えていますので、早めに検討をスタートするのがおすすめです。また、導入することになった際は本記事でご紹介した成功ポイントを参考にしてください。BDRの難易度は高く、戦略を立てずに臨んで成功する確率は低いです。ターゲットの設計・理解から一歩ずつ進めていきましょう。

著者情報
関田 秀平(せきた しゅうへい)
Shuhei Sekita
新卒で社会人向けの研修会社に入社し、新規開拓営業、営業企画の部署を経て、マーケティング部署の責任者を務める。その後、法人向けeラーニング提供会社で1人目マーケターとして、マーケティング組織の立ち上げを行う。現在は、新卒採用支援を行っている会社でBtoBマーケティングチームのマネージャーとして、戦略立案から施策遂行、採用・組織マネジメントまで幅広く従事。