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インサイドセールスにおける戦略の立て方とは?組織立ち上げ時の注意点まで解説! 

インサイドセールス

目次

従来の対面式で行う営業手法に加え、非対面で行う営業手法も昨今では取り入れられるようになりました。非対面で行う営業手法として企業が導入しはじめている活動の一つが、インサイドセールスです。企業間では注目されつつあるインサイドセールスですが実際に導入し運用するも、組織として十分な機能を発揮できていないといった悩みを抱える企業も多いようです。実際に、SALES ROBOTICS株式会社の「インサイドセールスの内製に関する市場調査」では、インサイドセールス導入から課題解決までに「1年以上かかった企業がもっとも多かった」という結果が出ています。インサイドセールスの機能を十分に発揮させるには、戦略立案を行ったうえで運用を進めることが重要です。

本記事では、インサイドセールスの役割や戦略の立て方を解説します。インサイドセールス立ち上げ時の注意点も解説していますので、これからインサイドセールスの構築を検討している方も、ぜひ参考にしてください。

インサイドセールスとは

インサイドセールスとは、顧客獲得を目的に見込み顧客(リード)に対して、電話やメール、ウェブ会議ツールなどのデジタルコミュニケーションを活用して、営業活動を行う手法・ポジションです。2020年のCOVID-19の流行によるテレワークの拡大や、多様化するニーズへ対応するためのサブスクリプション型ビジネスの普及、顧客の購買行動の変化によるリードナーチャリングの重要性の高まりなどの影響を受けて、インサイドセールスが注目されるようになりました。インサイドセールスのミッションは、マーケティング部門が集客した見込み顧客(リード)に対し適切な育成と選別を行いながら、リードのサービスや検討の度合いを高め、興味度合いの高い状態のリードのみをフィールドセールスへ引き渡すことです。厳選された確度の高いリードのみを対象としてフィールドセールスが商談を行うことにより生産性や商談率の向上などにつながり営業活動の効率化に期待できます。また、インサイドセールスの主な活動は、電話やオンラインツールを活用し行われることが一般的なため、訪問型の営業スタイルと比較すると交通費や出張費などのコスト削減の効果もあります。

インサイドセールスの概要や種類、メリットなどの詳細はこちらの記事で解説しています。あわせてご覧ください。

インサイドセールスの役割

インサイドセールスの役割は、マーケティングとフィールドセールスの中間に立ち、リード獲得から営業活動までを一貫して担うことです。以下は、マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールスが関わる営業活動のプロセス図です。この図のように、インサイドセールスはマーケティング部門とフィールドセールスの間に位置し、マーケ部門で獲得したリードをインサイドセールスがアプローチを行い、商談につなげたうえでフィールドセールスへ引き渡す、といった潤滑油のような役割を行います。

インサイドセールス 役割 業務内容

インサイドセールスの主な業務内容は、マーケティング部門が集客を行い獲得した新規の見込み顧客(リード)へのアプローチと育成(ナーチャリング)、そして商談化です。業務範囲は、従来型の営業が行うようなテレアポ活動、リードと関係構築を築くための定期接触、メールを活用しお役立ち資料やウェビナーなどの社内コンテンツを案内を行う育成活動、まで及びます。一般的な業務はこの範囲ですが、各企業が抱える方針によりインサイドセールスの領域は少々異なります。場合によっては通常フィールドセールスが行う商談実施までをインサイドセールスの役務として行うケースもあります。インサイドセールスが両部隊の間に立ち、組織同士で連携しながらリードの情報等を密に取りあうことで顧客へ適切なタイミングで適切な情報を伝達することでき、信頼関係の構築につながります。またその結果、商談の機会が増え、また情報連携により質の高い商談実行により成約率の向上、さらには売上最大化への可能性が高まります。

インサイドセールスの種類

インサイドセールスは、アプローチ方法によってBDRとSDRの2種類に分けられます。BDRとはアウトバウンド(発信)を中心に行う新規開拓型、SDRはインバウンド(受信)を中心に行う反響型のインサイドセールスです。

インサイドセールス BDR SDR

出典:HubWorks「BDRとは?インサイドセールスで注目される理由や具体的戦略を解説」

BDRとSDRの特徴を以下にまとめました。

BDR SDR 違い 特徴

インサイドセールスはBDRとSDRを組み合わせた営業戦略を構築することで、サービスや商品の検討確度の高いリードの商談獲得につながります。次に、BDRとSDRそれぞれの概要や役割などを具体的に解説します。

BDR

BDRとは「Business Development Representative」の略語で、新規開拓を行うアウトバウンド型のインサイドセールスのことです。BDRでは、ターゲット企業を選定し、ターゲット企業ごとに個別最適化したアプローチを行うことでリード獲得から商談機会の創出までを担います。アプローチ方法は意思決定者向けのお手紙・DMや名刺交換先へのメール、問い合わせフォームからの発信、代表電話へのコールドコールなど多岐に渡り、ターゲット企業ごとに最適な手法を選び、実行するのが特徴です。BDRはおもに発信による1社1社への個別アプローチを行い個社ごとの情報収集や適切な情報提供を行うことでリード獲得や商談の創出の可能性を高める効果が上がります。適切なアプローチを幅広くリードに行うにはリソースも限られますし、効果を高めるためにも、企業ターゲットを絞りこみます。ターゲットの選定は企業の方針によりますが、一般的にはターゲットを絞る際は、予算が潤沢にあるような中堅〜大手企業をターゲットとする傾向にあります。BDRでは今まで接点が一度もない企業へのアプローチを行うため、過去に接点があったり自発的に行動を起こし問い合わせなどをしてくるようなリードよりも関係構築が確立するまでに時間はかかります。そのため商談獲得までのリードタイムも長く獲得自体も比較的困難であると考えられるため、一般的にはSDRより高い営業力が求められます。

BDRの概要や重要視される背景、手法についてはこちらの記事で詳しく解説していますので、ぜひあわせてご覧ください。

SDR

SDRとは「Sales Development Representative」の略語で、インバウンド型のインサイドセールス手法です。マーケティングが創出したリードに対し、商談化へつなげるためのアプローチを行い、見込み度合いが高い状態のリードのみを営業担当者(フィールドセールス)へ引き渡します。SDRがアプローチするターゲットリードは、主にマーケティングチームから引き継いだ比較的導入意欲が高いリードです。既に幾分か自社の商材に対して興味を持っている状態のリード、例えば資料申し込みや問い合わせのあったリード、またウェビナー申し込み等のリードへアプローチすることが一般的であるため、SDRが商談を設定するのは一見容易に見えるかもしれません。しかし実際にはSDRの商談設定も簡単ではありません。商談へつなげるためのスピーディかつ適切な行動が最も重要です。悠長に構えているとリードの購買意欲や温度感が失われて、商談獲得の機会を逃しかねません。確実に商談や提案アポを得てフィールドセールスにつなげるためにも、SDRでは1分一秒の時間を有効活用し、スピーディなアプローチを行うことが大切です。

SDRの概要やBDRの違い、インサイドセールス成功のポイントはこちらの記事で解説しています、ぜひこちらも参考にしてください。

インサイドセールスを機能させる戦略の立て方

インサイドセールスの部隊を組織内に設置しただけでは、具体的な成果を得ることはできません。前述したBDRとSDRを組み合わせ、戦略的にアプローチを行うことで、成果につながる可能性が高まるでしょう。インサイドセールスを機能させるための戦略の立て方を、順に解説します。

1.アンゾフの成長マトリクスで方向性を策定する

インサイドセールスの戦略の方向性を決めるために、まずは自社に関わる市場の状況や、自社が抱える商材やサービスの強みやニーズ、市場環境を把握することが重要です。それらを把握するために活用するフレームワークが、「アンゾフの成長マトリクス」です。アンゾフの成長マトリクスとは、「戦略的経営の父」とも呼ばれるロシア系アメリカ人の経営学者イゴール・アンゾフが提唱したフレームワーク、また企業戦略の計画ツールの一つで、企業が成長戦略を計画する際のガイドラインとして広く利用されるものです。アンゾフの成長マトリクスは、成長戦略を「製品」と「市場」の2軸、さらに「既存」と「新規」に分け、市場浸透戦略、新製品開発戦略、新市場開拓戦略、多角化戦略の4つの基本戦略から自社が取るべき成長戦略の方向性を定めます。

アンゾフの成長マトリクス

出典:経済産業省「アンゾフの成長マトリクス」

2.成長戦略ごとにアクションを考える

アンゾフの成長マトリクスの市場浸透戦略、新製品開発戦略、新市場開拓戦略、多角化戦略の4つのパターンいずれかで方向性を定めます。まず4つのパターンのどれを優先的に戦略を立てるべきかを決めます。優先度を決めるための判断要素は、市場の競合の数や成熟度、商材の認知度、ユーザーニーズ、などがあり、成長させるためにはどこを攻めるべきかを加味しましょう。またこれらの各戦略は、現状の企業の経済状況や定める目標などにも関わり選択する順序も変わるでしょうから、それらに応じて適切な選択を行います。選択後は、いよいよ成長戦略ごとに必要な計画を立てましょう。詳細内容は次の章にて、4つの成長戦略それぞれの特徴と向いているシーンに沿った戦略の立て方を解説します。

市場浸透戦略

市場浸透戦略は、既存製品を既存の市場に投入し、製品の販売を増やす戦略です。インサイドセールスでは既存の市場でシェアを獲得できる環境が整っているときに、既存商材で市場シェアの拡大を狙いたいときにこの戦略にて計画を立てます。市場浸透戦略を取り入れる場合、マーケティング部門では既存製品の認知度を高めることと、またインサイドセールスでは顧客の購買意欲を高めることを重視します。そのため、この戦略を用いる場合はマーケティング部門では、プロモーション活動の強化を行い、インサイドセールスではマーケティングから引き渡される顧客の購買温度を高めるためのアプローチの強化、また既存顧客の継続的な契約や購買を促すためのアクション強化などを重点的に行います。

新製品開発戦略

新製品開発戦略は、既存の市場へ新しい製品やサービスを投入する戦略です。この戦略は主に、既存市場で新しいニーズが生まれているときや、既存製品やサービスではそのニーズを充足できないとき、またインサイドセールスで既存市場の売上を拡大したいとき、などです。新製品の開発戦略を進める際には、既存顧客のニーズをどれだけ収集できるかや、競合と自社の製品との差別化をどれだけはかれるか、がポイントになります。そのためこの戦略時でのインサイドセールスは、既存顧客へ自社の製品やサービスに対する要望や、企業で発生している課題について密にヒアリングを行ったり、新製品のリリースに関するセミナーやトライアル利用の案内をメールで送るなど、といったリードとのアプローチを密接に行う活動を行います。このようにインサイドセールスには、既存顧客のニーズや課題を収集する役割を持たせることで、新製品開発戦略による既存市場の売り上げ拡大につなげることができるでしょう。

新市場開拓戦略

新市場開拓戦略は、既存の製品やサービスを新しい市場へ投入する戦略です。既存の市場では売上が見込めない場合、既存の製品やサービスを国内だけでなく海外にも拡大したいときなどに向いています。新規市場開拓戦略では、新しい市場へと事業拡大していくフェーズにある企業が取り入れるわけですから、当然、今まで接点のなかった新規のリード層へ自社の製品やサービスの魅力を十分に伝え認知度を高められるような営業力が必要です。インサイドセールスでは、新規市場での具体的なターゲットを対象としてアプローチを行うABMを行うと良いでしょう。ABMとは「Account Based Marketing」の略語で、新規市場内でターゲットとした企業(アカウント)にリソースを集中させるマーケティング戦略です。ABMによって具体的な企業をターゲットとし、パーソナライズされた戦略の立案や施策を講じることで、新規市場の中でも効率的かつ効果的なアプローチにつながります。また新規市場の中でも限られたリソースをターゲットに集中できることで、さらにパーソナライズされた戦略により顧客体験を向上させ、受注につなげやすくなることが期待できます。ターゲット先は、既存市場と類似したニーズや課題を抱える顧客とし、新規市場の顧客に対しても今までと似たアプローチによる営業活動を行うことで成果が出しやすくなります。新しい市場にもシェアを拡大したいときや、新規の顧客を獲得できる見込みがある場合は新規市場開拓戦略を優先しましょう。

ABMの概要やメリット、事例についての詳細はこちらの記事で解説していますのでご覧ください。

多角化戦略

多角化戦略は、新しい製品やサービスを開発し、新規市場で勝負する戦略です。市場環境や社会情勢の変化により既存の製品やサービス、市場では売上や企業としての成長が見込めない場合、新しい事業を立ち上げたい場合などに選択します。福井県商工会議所連合会の行った「新型コロナウイルス感染症を契機とした新事業展開に関する調査」では、全体の34.2%がコロナ禍をきっかけに新事業をはじめた、または予定していると答えたことから、コロナ禍などの社会情勢の変化で多角化戦略を行う企業が多い傾向であることがわかります。多角化戦略は新製品やサービスの開発費用に加えて、新規市場への認知度アップなどの戦略も必要です。新しい収入源が確保できる期待がある一方、大きなコストがかかるデメリットもあります。よって、インサイドセールスでは新製品やサービスの立ち上げ時、より営業担当者が商談にて効率的な営業活動を行うためのアプローチを行うことが重要です。インサイドセールスでは、まず新規市場でのターゲットのニーズや課題の仮説を立てたうえで、シナリオを作成しましょう。たとえば架電時のトークシナリオやメールの雛形といった形で、実際にインサイドセールス実行時にシナリオを活用します。作成したシナリオを新規顧客や新規市場で実際に展開し、顧客からの反応をフィードバックとしてシナリオへ取り入れ、改善するサイクルを実施しましょう。

インサイドセールス組織立ち上げ時の注意点

今後インサイドセールス組織の立ち上げを検討している方のために、立ち上げ時に気を付けるべきポイントを順に解説します。

目標と戦略を明確化する

インサイドセールスの組織立ち上げ時または立ち上げる前には、組織の目的や目標、KPIを設定し戦略立案を行うようにしましょう。目標を立て戦略化することで、組織の方向性の軸を定めることができるためです。明確な組織化をせず、プロジェクトなどでスモールスタートでまずはやってみよう・進めてみよう、という考えも勿論ありますが、その場合でも目的や目標、戦略なく進めるとチームの取り組みが散漫になる可能性が高まります。全員が同じ目的に向かい行動を行い、集中的な努力を可能にするためにも前提でもある目標と目的の設定は必要です。実際にSALES ROBOTICS株式会社の「インサイドセールスの内製に関する市場調査」結果では、インサイドセールス立ち上げ前に発生した課題についての問いでは、営業職の属人性が高い点や、新規顧客の獲得施策においても戦略性が低い、といった回答が挙がっているようです。目標設定を行うと同時にインサイドセールスでの成果の測定ができるよう準備しておくことも大事です。分析し改善を行うサイクルを回すことで、効率的かつ生産性の高い営業活動を行えるようになりますので、定めた目標、KPIに対する成果測定を定量的にも測れるようにしましょう。またこれらの定量要素が測れるようになれば、チームの最適なリソースなどもわかるようになります。戦略設計は、前述のアンゾフの成長戦略も合わせて検討します。インサイドセールスによって解決すべき課題を明確にし、課題解決のためにターゲット市場、顧客セグメント、販売戦略などを明確に定義し、適切な戦略を策定しましょう。

効果的なリード管理とデジタルツールを導入する

インサイドセールスの成功に大きく影響する要素が、デジタルツールの活用です。インサイドセールスで育成され、生成された高品質なリードを効果的に管理するためにも、デジタルツールを活用することが重要です。CRMなどの顧客関係管理システムや、MAリードなどの行動履歴追跡と分析を行うツールを活用することで、データの分析により戦略の改善にもつながります。また、定期的にインサイドセールスの行動やパフォーマンスを測定することで、チームの成果を評価するのにもツールは有効です。効率的なインサイドセールス活動を支援するツールは、インサイドセールスの運用に必須となります。スムーズな組織の構築のために、まずはコールセンターソフトウェア、メールツール、ビデオ会議システムなどのテクノロジーの選定を先んじて行うようにしましょう。

適切なチーム構成と人材育成を検討する

インサイドセールスの立ち上げ時には、インサイドセールス活動に適したスキルセットを持つ人材の採用も重要です。定期的なトレーニングとスキルアップデートを提供し、チームメンバーの成長支援を行うスキルや、時にはチームのモチベーションを高めるために、適切な報酬体系やインセンティブプログラムを設計するスキルを持つ人材が、インサイドセールスの組織には必須となります。インサイドセールスのチーム構成や人材育成は社内で内製する方法と外注する方法があります。内製でのインサイドセールス立ち上げはノウハウが蓄積しやすい、顧客リストの流出リスクなどが防げるといったメリットがある一方、インサイドセールスに精通している人員を確保しにくいデメリットがあります。立ち上げ時にリソースが不足している場合は、社内の人員と外注両方からリソースを確保するハイブリッド型や、外注も検討することで、スムーズなインサイドセールスの立ち上げにつながります。

おわりに

インサイドセールスの概要や戦略の立て方、立ち上げ時の注意点について解説しました。インサイドセールスで成果を上げるには、まずインサイドセールスで解決したい課題を明確にし、目的を設定したうえで戦略を立て、施策を講じることが重要です。インサイドセールスでの戦略の方向性が分からないときや、立ち上げのリソースが不足しているときなどは外部の支援サービスなども上手に活用し、売上や成約率の向上などの成果を得られるインサイドセールス構築につなげましょう。

著者情報
柳本 瑠衣 (やなぎもと るい)
Rui Yanagimoto
米国の州立大学卒業後、米国にて就労経験を経て帰国。国内のIT企業へ入社後、新規開拓営業と経営企画を経験。パーソルホールディングス株式会社(旧インテリジェンス)にてデジタルマーケティング領域を経験した後に、MAツール開発会社へ入社、インサイドセールス部門責任者として従事。2人目の出産を機に働き方を見直し2022年にフリーランスに転身。現在は営業DX領域のコンサルティングとマーケティング業務支援等を行う。