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【BtoB版】マーケティングオートメーションのシナリオ作成方法【おすすめ基本シナリオ5選付】

マーケティング

目次

マーケティングオートメーション(MA)を導入している企業の中で、なかなか上手く使いこなせていないと課題に感じている方も多いかもしれません。目的に沿ったシナリオを設計しなければ、MAを活用して効果的なマーケティング活動を行うことはできません。今回はBtoB企業に特化した内容で、MAのシナリオ作成のメリットや作成手順を解説し、おすすめの基本シナリオも紹介します。

マーケティングオートメーションのシナリオとは

シナリオといえば、映画などのセリフや展開をまとめたものを連想する方が多いのではないでしょうか。このように、計画を実現するための筋道のことをシナリオといいます。MAのシナリオも同様に、「売上げ」や「CV」のような目標を実現するための筋道をつくり、それが自動的に実行できる仕組みを構築します。リードが特定の行動を起こした際や特定の条件に当てはまった場合に、あらかじめ用意したアクションやタスクを実行し、「売上げ」や「CV」などの目標に誘導します。MAのシナリオを実現させるためには、顧客の購買行動を理解した上でシナリオを作成し、MAツールを適切に使いこなさなければなりません。

MAについては、こちらの記事でも解説していますので、あわせてご覧ください。

シナリオ作成のメリット

MAのシナリオを作成すると、効率的なマーケティング活動が可能となります。以下の3つの観点から、具体的にシナリオ作成のメリットを見ていきましょう。

対応の自動化による業務効率化

MAのシナリオを作成することで、マーケティング活動を自動化し、業務を効率的に行うことができます。人力でのメール送信やリスト管理など、従来の非効率な業務は不要となります。また、シナリオを一度作成すれば、それを複製・調整して流用できるため、様々なパターンで利用することが可能です。MAは顧客の行動に対してリアクションを起こすことを得意としています。この対応をパターン化することで、対応漏れやミスをなくし、手間や時間を削減することができるのです。

顧客のタイミングに合わせたアプローチ

顧客へアプローチする際、タイミングは非常に重要です。購入検討の時期を逃したり、商品カタログや見積、契約書などの送付が遅れてしまっては、顧客からの信頼を失い購買意欲は下がってしまうでしょう。MAのシナリオを作成することで、顧客の中で関心が高まっているタイミングや商談の重要な時期に、漏れなくアプローチすることが可能になります。資料をダウンロードした瞬間、セミナーの開催前日、名刺交換した当日、契約継続の検討時期、次年度予算の検討時期など、様々なタイミングに合わせて自動的に対応することができます。顧客の行動に合わせて自動に対応できるシナリオを作成することで、膨大な数の見込み顧客に対して適切なタイミングでのアプローチが可能となります。

顧客データの蓄積

MAのシナリオを実行すると、メールや各コンテンツへの顧客の反応率等のデータが蓄積されます。シナリオを通じて収集したデータは、以降のシナリオ改善やコンテンツ改善につなげる重要な情報源となります。シナリオで送信したメールや、提供したコンテンツに対する顧客の反応を分析することで、効果的なアプローチや好まれるコンテンツが明らかになります。顧客の行動パターンや関心領域を把握することで、改善を行ったり、顧客の関心に合わせたコンテンツを提供して顧客満足度を高めたりすることができます。

シナリオ作成の基本手順

MAのシナリオ作成には、顧客の購買行動を理解することが不可欠です。顧客が購買に至るまでの過程や顧客体験を可視化した「カスタマージャージャーニーマップ」に基づくことで、精度の高いシナリオ作成が可能となります。

カスタマージャーニーマップの例

カスタマージャーニーについては、こちらの記事でも解説していますのであわせてご覧ください。

シナリオ作成にあたっては、カスタマージャーニーを俯瞰したうえで、以下の要素を順に考える必要があります。

1. Why(何を目的に): シナリオの目的を明確にする
2. Who(誰をターゲットに): シナリオの対象となる顧客セグメントを特定する
3. When(何をきっかけに): 顧客行動やトリガーに基づき、シナリオ実行のタイミングを設定する
4. What(どんなコンテンツを): シナリオで提供するコンテンツを決定する
5. How(どんなチャネルで): コンテンツを配信するためのチャネルを選定する

これらの要素を踏まえてシナリオを作成することで、マーケティング活動の効率化だけでなく、顧客との関係性強化やCV率の向上に貢献することができます。以降でシナリオ作成のステップを解説します。

Step1. シナリオの目的設定

まずは、シナリオで実現したい目的を明確にします。シナリオはさまざまな目的に活用されますが、代表的なパターンを以下に挙げます。

・有効リードの判別:リードスコアリングなどを用いて、質の高いリードを判別し、営業に引き継ぐためのシナリオ

・リードナーチャリング:リードが特定の行動を起こした場合、自動的に適切なタイミングで情報を提供するシナリオ

・営業効率化:営業担当者がリードの進捗や興味を把握するための自動通知やタスク管理を行うシナリオ

・休眠失注商談の掘り起こし:見積を提示した失注商談に対して、再度アプローチするための自動リマーケティングシナリオ

・クロスセル・アップセル:既存顧客に対して関連商品やアップグレードを提案する自動化されたシナリオ

・カスタマーオンボーディング: 新規顧客のスムーズなオンボーディング体験を提供するためのシナリオ

それぞれにシナリオの例を加えて表にまとめました。

マーケティングオートメーション MA シナリオ
シナリオの目的を定めた後に、ターゲット設定やコンテンツの選定など、具体的な設計に取り掛かるとよいでしょう。

Step2. ターゲットの決定

ターゲットの決定は、MAシナリオの作成において重要なステップです。正確なターゲティングを行うことで、それぞれの顧客に合わせた施策を行い、顧客との関係性を強化することができます。MAのシナリオを作成する際は、ターゲットを所属企業、役職、関心などの「属性情報」と、リード獲得経路、Webサイト訪問履歴、Webセミナー参加履歴などの「行動情報」を組み合わせて決定します。

・属性情報: 顧客の所属企業、役職、関心分野など

・行動情報::リード獲得経路やWebサイトの訪問履歴、Webセミナー参加履歴など

また、こうした顧客の行動や属性に基づいてスコアリングを行い、そのスコアに基づいてターゲットを設定することも可能です。行動の結果や関心を示す情報を評価し、それらをスコアに変換します。スコアが高いHotリードや関心が薄いColdリードに分類することで、ターゲットをより適切に分けることができます。

スコアリングについてはこちらの記事でも解説していますので、あわせてご覧ください。

Step3. タイミング・トリガーの設定

MAのシナリオでは、アプローチのタイミングやきっかけとなるトリガーの設定が重要です。顧客の行動や関心に応じて、適切な時期にアプローチできるような設定を行います。

・タイミングの設定:顧客が特定の行動を起こした後、あるいは特定の期間が経過した後など、適切なタイミングでアクションを起こします。

例:資料ダウンロード後にサンクスメールを送信する

・トリガーの設定:アプローチのきっかけとなるトリガーの設定を行います。トリガーは顧客の特定の行動や状況に応じて発火する条件です。

例:特定の商品ページを訪れた顧客へ関連商品をメールで提案する

これらのタイミングとトリガーは、MAのシステムに事前に設定しておくことで、自動的に実施されます。顧客の行動に即座に反応し、タイミングを逃さずにアプローチすることで、商談獲得の可能性を最大化することができます。タイミングとトリガーの設定にはデータ分析やテストが必要不可欠です。顧客の行動パターンを把握し、より効果的なシナリオを構築しましょう。

Step4. コンテンツの決定

次に、ターゲットに届けるコンテンツを決定します。顧客の関心やニーズに合わせて、適切なコンテンツを提供することが重要です。シナリオで提供するコンテンツは多様であり、メール、事例記事、Ebook、Webセミナーなどが挙げられます。

・メール:自動で送信されるメールは、サンクスメールやリマインダーメール、特典提供メールなどがあります。メールの内容はターゲットのステージや関心に合わせて作成する必要があります。

・事例記事:既存の顧客の成功事例を紹介することで、新規顧客に対して信頼性を高めることができます。特にリードナーチャリングの段階で効果的なコンテンツとなります。

・Ebook:専門的な知識や解決策を提供するEbookは、リードの関心を高めるための重要な資源となります。

・Webセミナー:専門家によるWebセミナーは、ターゲットとのコミュニケーションを生み、関係性の強化に役立ちます。

これらのコンテンツをシナリオと組み合わせることで、顧客のニーズに合わせたタイミングで、価値のある情報を提供できます。

Step5. チャネルの決定

最後に、コンテンツを届ける方法を決定します。MAのシナリオではメールが中心的な配信チャネルとなりますが、WEB広告やSNSも検討することができます。また、インサイドセールスやフィールドセールス、カスタマーサクセスとの連携も重要です。

・メール配信:メールはMAのシナリオにおいて主要なチャネルです。サンクスメール、リマインダーメール、情報提供メールなど、ターゲットに対して自動的に送信されるメールを活用してコンテンツを届けます。

・WEB広告:WEB広告は属性を絞って表示させることができるため、効率よくターゲット層にコンテンツを届けられるチャネルです。また、リターゲティング広告により、一度自社のホームページを訪問したユーザーにコンテンツを届けることができます。

・SNS:ターゲット層がSNSを活用する場合、SNSは自社コンテンツを顧客に届けるための最適なチャネルとなります。SNSを日常的に活用するユーザーをターゲットとする場合は、SNSも積極的に活用すると良いでしょう。

・インサイドセールス:インサイドセールスは個々の見込み顧客へメールや電話でコンテンツを届けられる強力なチャネルです。MAで送信するメールの差出人名をインサイドセールス担当者に設定し、リアクションがあった顧客へ架電するといったシナリオも効果的です。

・フィールドセールス:商談後成約に至らなかったリードに対して、今後の検討につなげるためのフォローアップをMAで行うといった連携は簡単かつ効果的です。

・カスタマーサクセスとの連携:MAのシナリオは、顧客の育成だけでなく、既存顧客との関係性向上にも貢献することができます。カスタマーサクセスとの連携により、顧客満足度を高め、自社のファンやリピーターを育成します。

おすすめの基本シナリオ5選

シナリオの作成を難しく捉えてしまう人もいるかもしれませんが、まずは簡単なシナリオから作成してみるとよいでしょう。ここでは、MA導入初期にもおすすめできる、基本のシナリオを5つ紹介します。

資料請求・問い合わせへのフォロー

資料請求や問い合わせなど、確度の高いリードに対して即時フォローを行うことで、商談(SQL)の獲得率を向上させることを目的としたシナリオです。

目的: 即時フォローによる商談(SQL)獲得率UP

ターゲット: 資料請求や問い合わせフォームを通過した有効リード

タイミング: フォーム通過時

コンテンツ: フォーム通過を確認した旨の御礼メールと、サービス紹介資料

チャネル: メールとインサイドセールス(IS)による架電

マーケティングオートメーション MA 資料請求 問い合わせへのフォロー 
資料請求や問い合わせフォームを通過した有効なリードに対して、フォーム通過を確認した旨の御礼メールを自動的に送信します。さらに、同じタイミングでサービス紹介資料を添付し、リードに対して興味を持たせるようなコンテンツを提供します。また、メール配信に加えてインサイドセールス(IS)による架電も組み込むことで、より迅速な対応を実現します。確度の高いリードは、漏れなく即座に営業担当者に引き継がれ、効果的なフォローアップが行われます。資料請求や問い合わせなど熱の高い行動を取る人は、迅速なコミュニケーションを望んでいます。即時フォローを重視するこのシナリオを作成することで、質の高い商談を獲得することができます。

デモ・無料トライアル参加者へのフォロー

デモや無料トライアルに参加したリードに対し、サービスの価値を正しく伝え、購買意欲を高めることを目的としたシナリオです。

目的: 見込み顧客のナーチャリング

ターゲット: デモや無料トライアルフォームを通過した有効なリード

タイミング: フォーム通過後一定期間をおいて

コンテンツ: トライアルの使い方ポイントをまとめたWebページと動画

チャネル: メール

マーケティングオートメーション MA デモ 無料トライアル参加者へのフォロー
デモや無料トライアルは、見込み顧客をサービスへと導く重要なステップですが、サービスの使い方につまずいたり、価値を十分に理解できないことがあります。そのためフォーム通過後一定期間をおいて、参加者に対してトライアルの使い方ポイントをまとめたWebページや動画を提供します。このコンテンツにより、参加者はサービスの活用方法をより理解し、価値を実感することができます。また、メールによるフォローアップを行うことで、参加者とのコミュニケーションを強化し、質問や疑問に対応することができます。このシナリオを通じて参加者のサポートを徹底することで、顧客の満足度を高め、購買率を高めることができるでしょう。

失注商談へのフォロー

営業が失注した商談を、次のサービス切り替えや予算検討のタイミングで再商談化することを目的とするシナリオです。

目的: 失注した案件の再商談化

ターゲット: 過去の失注顧客

タイミング: 失注後、一定期間経過後

コンテンツ: Ebook、セミナー案内、新サービスのプレスリリース

チャネル: メールとインサイドセールス(IS)による架電

マーケティングオートメーション MA 失注商談へのフォロー
過去に商談で見積提示などを行った顧客は、一度は本格的に自社商品の導入を検討したことがあるため、たとえ失注してもまだ潜在的なチャンスを秘めている可能性があります。このシナリオでは、失注後一定期間が経過したタイミングで、過去の失注顧客に対してEbookやセミナー案内、新サービスのプレスリリースなどのコンテンツを提供します。このシナリオは、失注した顧客が再度サービスの価値を理解し、サービスの切替や予算検討のタイミングで再商談を獲得することに貢献します。メールによるフォローアップだけでなく、ISによる架電を組み合わせることで、より個別に対応することができます。

展示会参加者へのフォロー

展示会で大量に獲得した名刺から有効なリードを見極めることを目的とするシナリオです。

目的: 展示会で大量獲得した名刺から有効リードの見極め

ターゲット: 展示会ブースで獲得したリード

タイミング: フォーム通過時

コンテンツ: 展示製品の詳細情報、ハンズオンセミナー案内

チャネル: メール

マーケティングオートメーション MA 展示会参加者へのフォロー

展示会などのイベントでは、多くのリードを獲得することができますが、属性情報が不十分なことがよくあります。MAのシナリオを活用し、展示会ブースで獲得したリードに対して、資料ダウンロードやセミナー申込みなどを通じて属性情報を追加取得することができます。また、メールに反応していないリードには、一度だけでなく複数回メールを送ると良いでしょう。一度だけでは膨大な数のメールに埋もれてしまうことや、検討度合いが低く反応できていない可能性があります。展示会で獲得したリードをナーチャリングするためにも、複数回アプローチすることが重要です。大量のリードの中から有効なリードを見極めることで、見込み客に効果的なアプローチをすることができます。展示会参加者への適切なフォローは、展示会を成功させるための重要な要素です。シナリオを活用して、効果的なフォローアップを行いましょう。

解約の察知

サブスクリプションビジネスにおいて解約リスクがある顧客を早期に察知し、解約を阻止することを目的とするシナリオです。

目的: 解約リスクがある顧客の察知、解約阻止

ターゲット: 契約中の既存顧客

タイミング: 契約更新日の一定期間前

コンテンツ: 契約更新手順と継続特典の案内

チャネル: メール、カスタマーサクセス(CS)

マーケティングオートメーション MA  解約の察知
契約中の既存顧客に対して、契約更新日の一定期間前になると、解約リスクが高まることがあります。シナリオを活用して、このような顧客の解約リスクを察知することができます。一定期間前に、契約更新手順や継続特典などのコンテンツを提供することで、顧客に継続のメリットを理解してもらいます。「解約はこちら」をクリックするなど、解約への動きをした顧客に対しては、カスタマーサクセスによる丁寧なフォローアップも行います。解約を阻止することは、サブスクリプションビジネスにおいて非常に重要です。このシナリオを活用し、解約リスクを早期に察知して顧客への丁寧なフォローアップを行いましょう。カスタマーサクセスによるフォローアップは、顧客の満足度向上にもつなげることができます。

おわりに

MAのシナリオは、マーケティング活動を効率化できるだけでなく、売上げの向上に貢献することができます。シナリオの作成は、顧客の購買行動を理解したうえで、以下の要素を順に検討することが重要です。

1. シナリオの目的
2. シナリオの対象となる顧客セグメント
3. シナリオ実行のタイミング
4. シナリオで提供するコンテンツ
5. コンテンツを配信するためのチャネル

シナリオの精度を向上させるためには、データの分析やテストを通じて改善を続けることが必要不可欠です。MAツールに蓄積されたデータをもとに、改善し続けましょう。また、シナリオの作成や運用は、簡単なものからはじめてみると良いでしょう。最初から複雑なシナリオを作り上げてしまうと、「結局使いこなせていない」「いまいち効果が出ていない」といった課題が出てしまうことがあります。今回ご紹介した基本のシナリオから運用を開始し、慣れてきたら自社に必要な要素を組み入れて、効果的なシナリオを作成してみてはいかがでしょうか。

著者情報
荻野 嶺(おぎの れい)
Rei Ogino
米国NY、LAで幼少時代を過ごす。 2015年、伊藤忠商事入社。金属資源部門にて経営企画や事業開発に携わり、赴任先のシンガポールで石炭の三国トレーダーとして、各国の市場を新規開拓。2020年に帰国し、スタートアップ向け人材紹介のfor Startupsに従事。入社半年で最速昇格基準達成、MVT 受賞などの実績を上げ、各有力スタートアップのCEOやVCからの信頼を獲得。 2020年12月にゼンフォース株式会社を創業し、代表取締役CEOに就任。