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デジタルマーケティングの失敗を回避する5つのポイント

マーケティング

目次

インターネットの普及とともに顧客の購買行動が変化し、従来の「まずは営業担当者に会って話す」状態から、営業担当と会う前にインターネットでの情報収集やサプライヤーの選定が始まるようになりました。こうした状況の中、デジタルマーケティングが注目されています。BtoBの領域でもその重要性は認知されており、デジタルマーケティングに取り組むBtoB企業が増えました。一方で、中途半端な取り組みが原因で、失敗に終わってしまう企業も増えてしまっています。失敗を回避するためには、どのような対策をすれば良いのでしょうか。

本記事では、これからデジタルマーケティングに本格的に取り組もうと検討している方向けに、失敗のよくあるパターンと、失敗を回避する方法を解説します。

デジタルマーケティングとは?

デジタルマーケティングは、インターネットやデジタル技術を活用して商品やサービスを宣伝・販売していく手法を指します。検索エンジンやWebサイト、SNS、メール、モバイルアプリなど包括的なチャネルを用いて、マーケティング活動を展開させていきます。

BtoBデジタルマーケティングについて当ブログのこちらの記事で解説していますので、あわせてご覧ください。

なぜ今デジタルマーケティングが注目されているのか?

米国のCorporate Executive Boardが発表したThe Digital Evolution In B2B Marketingという調査資料では「BtoBでは顧客の購買プロセスの57%が、営業担当者に会う前にすでに終わっている」という事実が明らかにされています。 

BtoB 購買プロセス

出典:Gartner

さらに、近年は顧客が情報を収集する手段が変化しています。かつては営業担当による対面の説明が主流でしたが、現在は顧客が自らWebサイトやSNSを活用して情報収集を行っています。つまり、営業担当を介さずに、競合他社との差別化を図る必要が出てきたのです。顧客はインターネットで検索を行い、課題解決の手段を模索しています。自社製品が選ばれるためには、情報収集の段階で顧客に認知されることが不可欠です。デジタルマーケティングは、さまざまなツールを活用してターゲット顧客に情報を届けるためにBtoBの領域でも重要視されているのです。

デジタルマーケティングとWebマーケティングの違い

デジタルマーケティングとWebマーケティングの違いは、端的に「カバー範囲の違い」と言うことができます。デジタルマーケティングは「デジタル技術やデジタルデータを活用して売れる仕組みを作ること」です。具体的にはアプリの運用、CRMやSFAといったツールを活用したマーケティング活動などが挙げられます。一方、WEBマーケティングは、WEBサイトやSNSなどオンライン上で展開されるマーケティング活動のことを指します。

デジタルマーケティング
MA、デジタル広告、Iot、ビックデータ、CRM、デジタルサイネージ、VR/AR、アプリケーションなど

Webマーケティング
Webサイトの作成・運用、SEO、Web広告、SNSマーケティング、メール、オウンドメディアの運営など

デジタルマーケティング WEBマーケティング

 

デジタルマーケティングが失敗するパターン

それでは、デジタルマーケティングが失敗するパターンについて、5つ紹介いたします。

コストをかけていない

デジタルマーケティングに投資をせずに、取り組みも成果も失敗に終わってしまうケースがよくあります。デジタルマーケティングを成功させるためには、一定のコストが必要です。各種ITツールやオンライン広告、ウェブサイトの設計等にかかる予算を捻出しなければ、デジタルマーケティングの取り組みは中途半端に終わってしまうでしょう。

デジタルマーケティングは、主に以下の5つの取り組みが必要です。

・Webサイトの作成、運用
・SEO
・デジタル広告
・メールマーケティング
・各種ITツールの導入

どの施策も、ある程度のコストをかけて最適な取り組みを行うことが重要です。

予算を捻出できない理由として「経営陣が内容を把握できていない」ことが挙げられます。高い売上目標を設定しているにも関わらず、それを達成させるためのプロセスや適切な予算を知らずに、最低限の予算で済ませようとする企業も多く存在します。経営陣には、デジタルマーケティングに関する基礎的な知識を持ち、適切な予算配分を行うことが求められます。一方で、デジタルマーケティングはコストをかければ必ず成功する訳ではなく、「売上の○%をデジタルマーケティングの予算にすると良い」といった公式もありません。成功に必要な予算は業界や企業によって異なります。

なお、Gartnerの2018年の調査によると、欧米企業ではデジタルマーケティングの予算は、全体のマーケティング予算のうち約25%を占めています。しかし認知を獲得していない新興企業や中小企業は、認知度の高い企業よりも費用をかける必要があるでしょう。

部門間連携ができていない

デジタルマーケティングのよくある失敗例として、「部門間連携ができていない」ことが挙げられます。マーケティング部門と営業部門が目標に向かって連携できなければ、成果を出すことはできません。また、マーケティング部門が存在せず、マーケティング活動に力を注ぐ体制ができていない組織もあります。株式会社Nexalの代表上島千鶴氏が2018年に行ったマーケティング組織設置率の調査では、当時のマーケティング組織の設置率はわずか11.7%であることが明らかにされました。マーケティング部門を設置していなくても、営業や事業部のメンバーがマーケティング活動を兼任している企業もあるでしょう。営業担当者が新規顧客の獲得からアフターフォローまで一貫して行っているような組織では「マーケティング組織の役割や目的が分からない」と考える方もいるかもしれません。しかしデジタルマーケティングで成果を出すためには、マーケティングを専門に行う組織を設置し、営業部門と連携を行うことが重要です。

マーケティング部門が行う業務は、主に以下の3つです。

・ リードジェネレーション(リード獲得)
・ リードナーチャリング(リード育成)
・ コンテンツ制作

リードとは、見込み客になり得る潜在顧客を意味します。リードジェネレーションは、そのリードの企業名やメールアドレス、役職などの情報を獲得するための活動です。リードナーチャリングは、獲得したリードが購買時に自社を選んでくれるように、定期的にメールや電話でアプローチを行います。これらの活動には、顧客の役に立つコンテンツが必要となります。ウェブサイト上やダウンロード資料を用いて顧客が興味を持つコンテンツを提供できれば、顧客は自社のことを認知し、購買時の検討テーブルに乗ることができるでしょう。こうしたマーケティング部門の活動ののち、商談を獲得できたリードを営業部門に渡すことで、より効率的に顧客を獲得できるのです。

マーケティング 営業 役割分担この部門間連携でもっとも重要となるのが「役割を明確化」することです。どのような経由で得たリードを、どの部門に、どのようなタイミングで振り分けるのか?といった基準を明確にしましょう。

部門間連携についてはこちらの記事でも解説していますので、あわせてご覧ください。

共通のKPIが設定できていない

会社全体のKGIを達成するためには、営業とマーケティング部門が共通の目標を持つことが重要です。部門をまたぐ場合、共通のKPIがなければ目標に向かって一体感が欠ける可能性があります。例えばマーケティング部門が単独でリードを増やす目標を達成する場合、目先の「リード数」だけを追いかけてしまい、質の低いリードが営業に渡されてしまう恐れがあります。こうした状態が続けば効率が下がり、営業成績が落ちてしまうこともあるでしょう。それによって会社全体のKGIも達成困難になります。営業部門とマーケティング部門で共通の目標を設定することで、このような事態を防ぐことができます。こうした共通のKPI設定などの取り組みには、経営層やリーダー層の関与が必要不可欠です。共通のKPI策定においては、ボトムアップではなくトップダウンで進めていくことが重要となります。特に複数の部門が関わる項目については、役割や責任を明確にしましょう。また、ITツールを活用しKPI管理を可視化して行うことも重要です。定期的にKPIの振り返りの場を設け、達成できていない項目を洗い出し、達成するための改善策を見出しましょう。

KPIについて当ブログのこちらの記事で解説していますので、あわせてご覧ください。

ターゲットが明確ではない

デジタルマーケティングに失敗する企業の中で、ターゲットが明確ではないケースが多く存在します。ターゲットが定まっていなければ、やみくもにマーケティング活動を行っていることを意味するため、失敗する可能性は高まります。

「デジタルマーケティングを強化する」という目標に取り組む際には、ITツールの活用やDXが自社の事業やマーケティング上の課題を解決するための手段であることを忘れてはなりません。これらを目的として捉えてしまうと、ターゲット顧客を無視した施策を実施したり、PV数やSNSのフォロワー数だけを見たりすることになるでしょう。あくまでもデジタルマーケティングは手段であり、目的は自社の顧客を増やすことです。顧客を置き去りにしてしまう結果にならないよう、ターゲットを明確にし、ターゲットに合わせた施策を行う必要があります。そのためにも、ターゲット顧客を理解することがとても重要です。

例えば、顧客がデジタルのチャネルで情報収集していない場合は、検索広告やSNS広告では成果を上げることはできません。また、顧客が営業との対話を望んでいる場合、オンラインのみの販売では上手くいきません。顧客が調べないキーワードで検索順位を向上させることや、顧客が普段目にしないチャネルに広告を出稿することは、無意味な取り組みになってしまいます。デジタルマーケティングで成果を上げるためには、顧客を理解することが必要不可欠なのです。顧客を理解するためには、営業と同行したり、過去の問い合わせ内容を確認したり、ペルソナに近い人物にインタビューを行ったりすることが有効です。特にインタビューは商談とは異なり、マーケティング施策について顧客の生の声を聞くことができるため、優先して取り組むべきことでしょう。

マーケティング施策が部分最適になっている

デジタルマーケティングで様々な施策に取り組む中で、「WebサイトはA社に制作を依頼」、「SEOはB社に支援を依頼」、「広告はC社に運用を発注」など、それぞれの分野で協力会社に依頼した結果、なかなか思うような成果がでていないケースがよくあります。デジタルマーケティング分野では、ウェブサイト制作会社やSEO業者、動画制作会社、オウンドメディア運用会社、SNSマーケティング支援会社、ウェブ広告代理店など、さまざまな特徴をもった支援会社が存在します。それぞれが得意とする領域がありますが、これらの会社からマーケティング全体の最適な視点からの支援を受けることは難しいでしょう。マーケティングの全体最適な視点で支援を受けるためには、マーケティングに関するコンサルティング会社を伴走パートナーとして迎える必要があります。自社にマーケティングの全体像を設計できる人材がいる場合は必要ありませんが、そうでなければ、コンサルティング会社に依頼することがおすすめです。コンサルティングへの投資には抵抗感があるかもしれませんが、部分的な施策だけを追い求めず、全体像や戦略を描かずに進めても効果は得られにくいものです。コンサルティング会社への発注も選択肢として考えてみてはいかがでしょうか。

おわりに

デジタルマーケティングが失敗するパターンと回避する方法について解説してまいりましたが、いかがでしたでしょうか。デジタルマーケティングへの投資が失敗しないよう、今回解説した点をリスクヘッジして取り組んでいただければと思います。また、デジタルマーケティングは組織やツール選定などを含めて全体設計が必要です。経営層やリーダー層も参画し、全体が最適化されるような設計を行いましょう。本記事がデジタルマーケティング成功の一助になりましたら幸いです。

著者情報
荻野 嶺(おぎの れい)
Rei Ogino
米国NY、LAで幼少時代を過ごす。 2015年、伊藤忠商事入社。金属資源部門にて経営企画や事業開発に携わり、赴任先のシンガポールで石炭の三国トレーダーとして、各国の市場を新規開拓。2020年に帰国し、スタートアップ向け人材紹介のfor Startupsに従事。入社半年で最速昇格基準達成、MVT 受賞などの実績を上げ、各有力スタートアップのCEOやVCからの信頼を獲得。 2020年12月にゼンフォース株式会社を創業し、代表取締役CEOに就任。