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カスタマーサクセスの代表的なKPIは?おすすめのKPI10個を紹介

カスタマーサクセス

目次

近年、BtoBビジネスの特にSaaS型商材を対象とした、カスタマーサクセスの重要性が高まっています。バーチャレクス・コンサルティング株式会社が行った「2023年カスタマーサクセスに関する実態調査」では、全体の50.3%の企業が「勤務先でカスタマーサクセスに取り組んでいる部署がある、または担当者がいる」と回答しました。同時にこちらの調査では、調査開始時から5年間連続でカスタマーサクセスへ取り組む企業が増加していることも分かっています。

カスタマーサクセス運用における成功への鍵は「適切なKPIの設定」とKPIに沿ったPDCAを回せるかにかかってきます。カスタマーサクセスの運用を開始したいが、「設定すべき適切なKPIが分からない」「そもそもカスタマーサポートとカスタマーサクセスの指標の違いが分からない」と悩む方もいるかもしれません。今回はカスタマーサクセスで設定する代表的なKPIを解説します。

カスタマーサクセスとは

カスタマーサクセスとは、顧客が購入した商品やサービスを活用し、収益獲得や目標達成などの「成功」を支援するために商品やサービスを購入した顧客へ積極的に関わる考え方や活動のことです。まずはカスタマーサクセスの基本的な概要について解説します。

カスタマーサクセスとカスタマーサポートの違い

カスタマーサクセス カスタマーサポート 違い

カスタマーサクセスとカスタマーサポートの大きな違いは「目的」と「関わり方」にあります。カスタマーサクセスが顧客の成功を目的に積極的な関わりを持つことに対して、カスタマーサポートは顧客の問題解決を目的に受動的な支援を提供します。

CS = CX(顧客体験) + CO(顧客の成功)

カスタマーサクセスのKPIを設定するうえで、アメリカのGainsight社が唱える「CS = CX(顧客体験) + CO(顧客の成功)」という考えが参考になります。Gainsight社によると「カスタマーエクスペリエンス(CX・顧客の体験)」と「カスタマーアウトカム(CO・顧客の成果)」の2つを統合すると、「カスタマーサクセス(CO)」と等しくなると定義しています。

カスタマーサクセス カスタマーエクスペリエンス

出典:Gainsight「The Essential Guide to Customer Experience」

顧客が商材を通じて良い体験を得ていても商材のアクティブ率が低い、または商材によって売上向上などの成果を出していても解約されることがあります。この場合、原因は顧客体験と顧客の成功両方を提供できていないことが原因である可能性が高いです。顧客体験と顧客の成功両方を提供することでカスタマーサクセスでの成果につながるため、顧客体験と顧客の成功両方の視点からKPIを管理することが重要です。

カスタマーサクセスが追うべきKPI10選

カスタマーサクセスで成果を出すために必要なのが、KPIの設定です。KPIを設定することで最終的に達成したい目標までのカスタマーサクセスの成果進捗や課題箇所などの把握ができます。カスタマーサクセスのKPIは漠然と指標を選んで設定するのではなく、「顧客ライフサイクル」ごとに適切なKPIを設定することが重要です。顧客ライフサイクルとは、顧客が自社の商材を認知してから、検討、購入、利用、さらに再び購入する一連の流れを指します。顧客ライフサイクルの流れに合わせた適切な指標をKPIに設定することで、カスタマーサクセスで実行すべき施策やカスタマーサクセスで得た成果、課題や改善点などの把握につながるでしょう。

カスタマーサクセス 顧客ライフサイクル
カスタマーサクセスのKPIとして設定すべき代表的な指標を、顧客ライフサイクル別にまとめました。

カスタマーサクセスKPI 顧客ライフサイクル
次に、顧客ライフサイクルごとにKPIとして設定する指標の概要について解説します。

1.オンボーディング完了率

顧客ライフサイクルの「導入期(Onboarding)」にKPIとして設定する指標が「オンボーディング完了率」です。前提として、オンボーディングとは、新規顧客やユーザーが特定の製品やサービスを効果的に活用し、成功を収めるために必要なプロセスや手順のことを指します。オンボーディングは、顧客が製品やサービスを初めて利用する段階から始まり、その後も顧客が効果的に活用できるようサポートする長期的な取り組みです。オンボーディング完了率とは、顧客自身がオンボーディングを完了し、自社の商材を利用できる状態かどうかを、パーセンテージで示した指標を指します。特にSaaS型サービスは商材購入後、顧客自身が商材を使いこなせる状態になることが継続につながるため、オンボーディング完了率は導入期のKPIの指標として設定することが重要です。

2.セッション時間

顧客ライフサイクルの「活用期(Adoption)」に追うKPIのひとつに、「セッション時間」があります。セッション時間とは、顧客自身が購入した商材に費やした時間のことです。たとえばSaaS型サービスを対象とする場合、顧客がプラットフォーム上で過ごした時間がセッション時間に該当します。

セッション時間を分析する方法、追跡する目的などの詳細情報に関しては、こちらのメディアをご参照ください。セッション時間が長ければ商材は顧客に活用されていることになり、逆に短ければ商材があまり活用されていないと考えられるでしょう。セッション時間が短い場合は、顧客が商材に対して何か問題を抱えていないかを探るために、カスタマーサクセスでのアプローチを行います。

3.アクティブユーザー数

顧客ライフサイクルの活用期に指標とするKPIに、「アクティブユーザー数」があります。アクティブユーザー数とは、サービスを活用している顧客を数値化したものです。アクティブユーザー数が多ければサービスに満足しているユーザーが多いと一定の評価ができ、逆に少なければサービスに満足していない顧客がいるとも考えられます。満足度が低い可能性のある顧客に対しては、解約数が増えないよう、顧客が商材に満足するための施策を検討することが必要です。

4.アップセル・クロスセル率

「アップセル・クロスセル率」は「更新・拡大期(Renewal/Expansion)」を指標とするKPIです。アップセルとは、顧客が購入を検討している商品よりも上位の商品を提案し、購入を促すこと、クロスセルとは、顧客が購入を検討している商品の他に、別の商品を提案し、両方の購入を促すことです。アップセル、クロスセルいずれも顧客単価を上げるための施策として行われ、それぞれが成功した確率を示したものが、アップセル・クロスセル率です。アップセルおよびクロスセルをする顧客の現在の商材への満足度が高ければ高いほど、アップセルやクロスセルの成功率が高くなります。そのため指標を定めるタイミングは導入期などの早期ではなく、顧客がある程度商材を購入して活用した更新・拡大期とするのが最適でしょう。

5.NRR(売上継続率)

NRR(売上継続率)とは、前年や前月などの比較時点に対して、既存顧客からの収益がどの程度増減しているかを示した指標です。「Net Retention Rate」の略称で、日本語では売上維持率と訳されます。

<計算式>
NRR = 前年度の顧客の今月のMRR ÷ 前年度の顧客の同月のMRR × 100

NRRは、「NRR = 前年度の顧客の今月のMRR ÷ 前年度の顧客の同月のMRR × 100」の計算式で算出します。NRRからは既存の顧客からの収益を維持できているかを把握でき、NRRが高ければ企業として成長している、逆に低ければ利益を上げられていないことになるため、SaaS型サービスでは特に重要な指標です。

6.LTV(顧客生涯価値)

LTV(顧客生涯価値)とは、顧客が企業との取引を続ける期間における総収益を示す指標です。

<計算式>
LTV=平均購入単価×平均購入頻度×平均継続期間

LTVを上げるために、顧客ロイヤリティや販売単価の向上、購入・契約期間の延長を目的とした施策を、カスタマーサービスで実行するのが特徴です。

7.解約率(レベニューチャーンレート)

解約率(チャーンレート)とは、商品の利用を停止した顧客の割合を表した指標です。解約率は売上に直結する指標のため、最も重視すべき項目です。解約率が高いと利益が減るため、カスタマーサクセスでは解約を防ぐための施策を行います。逆に、解約率が低い場合にカスタマーサクセスで行う施策は、既存顧客の単価を増やすための施策です。売上から算出した解約率は「レベニューチャーン」と呼ばれます。レベニューチャーンの割合を数値化した指標が「レベニューチャーンレート」です。レベニューチャーンレートは、提供している商材に複数の料金プランがある際に活用します。

<計算式>
レベニューチャーン=(単価×解約数)÷売上

レベニューチャーンレートは、大きく分けて2種類あります。期間内に解約やダウンセルによって損失した収益額をベースに算出する「グロウレベニューチャーンレート」と、期間内の解約やダウンセルで損失した収益額に加えて、アップセルやクロスセルによって得た収益額も対象となる「ネットレベルチャーンレート」です。
<h3> 8.解約率(カスタマーチャーンレート)
解約率(チャーンレート)を新規顧客数から算出したものが「カスタマーチャーン」で、カスタマーチャーンの割合を数値化した「カスタマーチャーンレート」です。提供しているサービスの利用料金が一律の場合に活用します。

<計算式>
カスタマーチャーン=解約数÷新規契約数

BtoBビジネスでは「カスタマーチャンレート」のほか、「企業数」から算出する観点から「アカウントチャーンレート」と呼ばれる場合もあります。

9.CSAT(顧客満足度)

CSAT(顧客満足度)とは、「Customers’ Satisfaction」の略で顧客の商材に対する満足度を数値化した指標です。CSを構成するCX(顧客体験)を計測する指標として用いられています。CSATは数値としてのデータを取れないため、顧客アンケート調査の結果などを参照して算出されるのが特徴です。その際はたとえば、以下のような計算式を使用します。

<計算式>※顧客アンケート調査での計算式例
CSAT=アンケート回答者の総数÷満足と答えた回答者数

上記では、満足と答えた回答者数=満足度の高い顧客の割合を算出するといった方法もあります。

10.NPS(顧客推奨度)

NPS(顧客推奨度)とは「Net Promoter Score」の略で、顧客が企業やブランドをどの程度推奨するかを示す指標です。前述したCSATと同じく、CX(顧客体験)を計測する指標として用いられています。NPSは、一般的に以下の手順で算出できるのが特徴です。

1. 顧客に「商品をどの程度親しい人にすすめたいと思うか」を0~10点の11段階の点数で回答してもらう
2.  回答を「批判者(0~6点)」「中立者(7、8点)」「推奨者(9、10点)」の3つに分類する
3. 回答者全体の「推奨者」の割合から「批判者」の割合を引く

おわりに

カスタマーサクセスの基本的な知識とともに、KPIとして設定する代表的な指標を顧客ライフサイクルに沿って解説しました。カスタマーサクセスを構築し、正しく運用するためには、目標への進捗状況や成果を把握するためのKPIの設定が重要です。今回紹介した代表的なKPI10個を必ず全て設定し、追いかける必要はありません。KPI設定の重要なポイントは、自社やサービス展開時期に応じて適切なKPIを選んで設定し、カスタマーサクセスの成果分析へと活用することです。カスタマーサクセスで設定するKPIが分からないときや、効果測定や運用改善がうまくいかないときには、外部の支援サービスを利用するのも良いでしょう。ゼンフォースではカスタマーサクセスの構築や運用をふくめた、営業組織の強化や改革のための支援サービスをご提供しています。ぜひご相談ください。

著者情報
荻野 嶺(おぎの れい)
Rei Ogino
米国NY、LAで幼少時代を過ごす。 2015年、伊藤忠商事入社。金属資源部門にて経営企画や事業開発に携わり、赴任先のシンガポールで石炭の三国トレーダーとして、各国の市場を新規開拓。2020年に帰国し、スタートアップ向け人材紹介のfor Startupsに従事。入社半年で最速昇格基準達成、MVT 受賞などの実績を上げ、各有力スタートアップのCEOやVCからの信頼を獲得。 2020年12月にゼンフォース株式会社を創業し、代表取締役CEOに就任。