営業が属人化しないために取り組むべきこと

営業DX

序文

営業組織は自社の売上を構成する上でも非常に重要な役割ですが、目標を達成し続ける営業組織を作るとなると多くの課題に直面することになります。その中でも多くの企業が抱えている課題の一つが「営業の属人化」です。特にテレワークなどが普及して、非対面のコミュニケーションが増えた昨今では、営業メンバーそれぞれが日々どのような活動をしているのかが把握しにくくなってきていると言えるでしょう。

そこで本記事では、営業の属人化とは何か、なぜ営業の属人化が良くないのか、また属人化を解消することによって期待できる効果について取り上げたいと思います。

営業の属人化とは?

営業の属人化とは、日々の営業活動の内容やノウハウがその人自身にしか分からない状態になっていることを指しています。例えば、Aさんが、どのように営業を行っているのかがわからない。Bさんしか、そのやり方を把握していない。というような場面に遭遇したことがあるかもしれません。このような状態になっていると、営業の属人化が起こっていると言えるでしょう。

なぜ営業の属人化が良くないのか

営業の属人化が起こると、組織の運営や営業目標の達成などの観点で様々な問題やリスクが発生してしまいます。営業の属人化が起こることによって、具体的にどのようなデメリットがあるのでしょうか。

営業組織全体の課題を特定しづらい

営業活動の進め方が個人毎に異なると、さらなる成果向上や全体のスキルアップの取組みを行う際に、組織全体の課題が特定しづらくなってしまいます。例えば、組織全体での目標数値が未達だった時にはその原因を分析する必要がありますが、営業が属人化していると、Aさんの課題は提案のスキル、Bさんの課題はアプローチ顧客の選定のように、個別に課題が点在してしまい組織全体の抜本的な課題の発見が難しくなります。個人の活動に焦点を当てた解決策は、組織全体の課題解決につながるとは言えず、思うような効果が得られなくなってしまいます。

組織全体のスキル向上に繋げづらい

課題が個々によって点在していることと同様に、成功事例や営業ノウハウなども属人化してしまいます。仮にAさんが高い実績を上げることができたとしても営業の属人化している企業では、Aさんの実績を上げることのできた成功事例や営業ノウハウが共有されることなくAさんのみが知っている営業手法となってしまいます。結果、Aさん個人で成果を上げることができたとしても営業組織全体のスキル向上には繋がりません。

売上予測の精度が下がる

売上予測は、組織や企業全体が戦略を考える際に参考にするべき重要なデータとなります。売上予測の計算方法は様々ですが、過去の売上実績や市況のデータ、営業人員の活動実績などを総合的に分析して具体的な数値として算出する必要があります。この時、営業人員の活動実績も非常に重要なデータとなりますが、営業活動が属人化されていると営業一人あたりの売上の中央値からの振れ幅が大きくなるなど、結果的に売上予測の精度が低くなってしまいます。

営業の属人化が起こる理由

ここまでは営業の属人化によって起こることのデメリットをご紹介しましたが、ここからは営業の属人化が起こってしまう原因を紹介していきます。

営業における業務ルールが曖昧

営業フローは、見込み顧客の選定に始まりアポイント獲得、商談、クロージングというように、各プロセスに分けることができます。営業の属人化している企業では見込み顧客の選定や商談方法などが定まっておらず、営業活動方法が個人毎に異なってしまっていることがあると思います。結果、営業活動全体が個人に依存した方法に委ねられ、営業活動が属人化されていきます。

営業の自己保身のため

ベテランの営業になればなるほど、営業活動に役立つ社内外の情報を持っていることが多くなります。自身の業績地位を守りたいという心理が働き、ノウハウや顧客情報を他者に渡したくないと考える方もいるでしょう。また、ミスが発覚しても隠せる様に活動詳細を残さないなどの心理が働き、顧客管理システムに詳細情報を残さないケースも出てきてしまいます。

営業活動が忙しく情報を記録・共有するリソースがない

営業の業務範囲は広く、商談前の準備や商談後の対応、契約書の作成なども営業が行うといったケースがあるでしょう。営業である以上、売上げをあげることを強く求められるため、まずは直近の営業目標の達成に向けて奔走し、優先度の低い業務が落ち着いてから処理するといった状況もあるのではないでしょうか。このような背景から、短期の営業成果を追うことのみを前提とした目標を設定されていたり、顧客対応業務が忙しいなどの理由から、営業メンバーが情報を記録する行為をせず、営業の属人化が進んでしまうことも原因の一つとしてあげられます。

 属人化を解消するためにやるべきこと

上記のような営業の属人化を解消していくためにはどのようなやり方があるのか、大きく3つに分けてご紹介します。

営業活動におけるルールを明確にする

組織全体で営業活動をする中で、ある程度のルール設計や共通認識を設けておくことで営業の属人化を防ぐことができます。また個人の営業活動や結果が重要であることには変わりはありませんが、中長期的に成長をしていくためには、組織全体での成果を第一に考えなければならないためです。

たとえば自社の中長期目標として、「半期での事業部売上5億円」という指標を置かれているとします。部署の営業メンバーが5人いたとして、これらの売上目標金額を個人の目標に落とし込む際、「ベテランでこれまでの業績も好調なAさんには4億円の目標を設定し、あとの4人で残りの1億円を達成しよう」と決めてしまったらどうなるでしょうか?このケースでは、Aさんが大幅に未達となった場合には事業部の目標達成すらも難しくなるほどAさんに依存してしまう形になります。ここで重要なのは、中長期目標を達成するにあたって組織全体のスキルを底上げしつつ結果を残していく必要があることです。つまり、特定の個人の営業活動方法に依存するのではなく組織全体でのルールを決定し、営業活動を行う必要があります。

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では、組織全体でのルールを明確化させるポイントは何でしょうか。ルール設計においては、営業フローに則った納得できる項目であることが大切です。たとえば、自身の顧客情報に関するルールであれば、以下のような項目が参考として挙げられるでしょう。

● 過去取引実績や売上規模を踏まえ顧客ランクを作成し、顧客リストの偏りを減らしメンバーの共有する

● 商談後には簡易的なレポートを提出し、組織全体が閲覧できるように一元管理をしておく

● 若手社員の場合、初回の顧客との商談では必ず上長や先輩社員を同席させる。事前すり合わせのMTG設置

組織の目標達成することを念頭に置き、営業組織全体の目標設計やルール設計することで個人への属人化を防ぎ、組織全体での営業成果を出し続けられる組織を作ることができます。ルール設計の際に注意しなければならないことが大きく二点あります。

● 目的を見失わないこと


● 必要以上にルールを増やし過ぎないこと

たとえば、顧客対応の偏りを避けるために『個人の見込み顧客数の上限数は10社まで』というルールを作ったとします。ある営業メンバーがすでに10社対応している中で既存顧客から新規顧客を紹介してもらったとします。この時にルールを遵守すると何が起こるでしょうか。上限数を超えてしまうため、紹介いただいた新規顧客を対応できる他の営業メンバーに渡さなくてはなりません。顧客紹介いただいた営業メンバーからすると、自身の努力で獲得した貴重な顧客が他のメンバーに渡ってしまうことでモチベーションが大きく低下してしまうことでしょう。

今回の記事では、営業組織全体で営業成果を出し続けることを目的とし、一つの手段として営業属人化を解消することを紹介しております。ルールを作ること、決めたルールを遵守することは必要ですが、目的を見失わず必要なルールのみ作ることを心掛けましょう。

KPIを設定して業務プロセスを可視化する

営業の属人化を解消するには、組織でのルールを設けるだけでなくKPIを設定して業務プロセスを可視化することも大切です。KPIを設定する上では、まず自社の中長期目標から事業部の売上目標に落とし込み、その上でさらに個人の売上目標を設定していきます。また、先ほどの例のように特定の個人に目標の比重が偏ることなく、個人の顧客保有状況なども考慮し、適切なKPIを設定することが重要です。

しかし、このKPI設定を、目先の架電数やメール数などの短期的な行動量の目標のみに目を向けてしまうと、最終的に組織の目標達成に至ることができません。あくまで達成の現実性があり、かつ明確な目標を設定し、その目標とリソースの最適化をするための管理体制を築いていくことが重要です。その他のKPI設定のポイントとしては、以下のようなポイントも押さえておくと良いでしょう。

● 商談獲得率や有効商談化率などの結果に対してもKPIを設定

● 達成への進捗は組織で把握できるようにしておく


● KPIの結果に一喜一憂するだけではなく、何が良くて達成したのかの振り返り

● または達成しなかった理由を定期的に振り返り、KPI達成に再現性を持たせるようにする

情報共有メリットを理解してもらい、共有文化を作る

情報共有メリットを理解してもらい、共有文化を作ることが挙げられます。立てたルールやKPIに対して、個人のみが把握できる状況では属人化が解消されたとは言えません。社内での情報共有発表会や、もっと身近なところでチームミーティングなどを定例開催して、互いのKPI進捗状況や営業活動で得たノウハウの情報共有をしていく必要があります。情報を持ってるベテランから若手、または若手同士で情報交換することによって、組織の活性化にもつながりますし、最終的には営業の属人化を防ぐこともできます。

共有内容の例としては、

● 同一企業の他拠点経由での顧客情報


● 商談の成功事例、失注理由


● 営業ノウハウ全般


このような内容があげられます。共有文化を作るポイントとしては、情報の共有が目的ではなく、情報交換の習慣をつけることが目的です。こういった情報共有、共有の習慣化によって営業成果につながるため営業成果を上げること以外にも共有者、管理者を評価するために社内貢献度を人事評価にも反映させることも情報交換の習慣化に繋がります。

属人化解消による効果

ここまで営業の属人化を解消するポイントを3つほどご紹介しましたが、実際に営業の属人化を解消することで、どのような効果が期待できるのかもあわせてお伝えします。

売上目標達成確度が上がる

まず営業の属人化を解消することで、一人当たりの売上の中央値を上げることができます。営業メンバーの成果ボトムアップにつながるため、特定のハイプレイヤーの成果に影響されることなく、メンバー個々人の目標達成率が上がることによって、組織全体の売上目標達成確度を上げることができます。

営業チーム全体のスキル向上を実現できる

先ほどの組織全体のスキルの底上げのお話にも通じますが、適切なルール設計やKPI管理、状況共有の場を設けることによって、新たな情報やノウハウが蓄積されていきます。社内での営業メンバーそれぞれの営業ノウハウが共有されることで、自ずと営業メンバー全体の営業スキルが向上します。

新人の早期戦力化ができる

営業の属人化を解消するということはつまり、営業活動の標準化ができているとも言えます。たとえば新入社員の研修を行う際に、各営業のノウハウを集約して導き出した内容や営業市場に出回っているノウハウを体系化して伝えることで、新卒・中途入社社員が早期に成果を出せる営業手法を学ぶことができます。そのノウハウは社内に共通認知された営業手法のため指導側もアドバイスしやすく、新入社員の早期戦力化も図ることができるでしょう。

営業の属人化の解消支援ツール

ここまで、営業の属人化を解消するためのポイントや解消することによって期待できる効果についてお伝えしましたが、実際に標準化された営業活動を行うとなると、標準化の仕組み導入初期においては、マネジメントする側はプロセス管理の工数が増し、マネジメントされる側も活動効率が落ちてしまいます。限られた時間の中で効率的に営業活動や、情報共有を可能にするために、目的に応じたツールを導入することも一つの手段です。そこで各目的に沿ったツールの紹介をいたします。

KPI計測や業務プロセスの可視化に役立つSFA

KPIの設計や管理の重要性は先ほどお伝えしましたが、KPI計測を効率的に行えるようにするものが、SFAやエクセルといったツールです。有名どころでは「Salesforce」、「HubSpot」、「エクセルWeb版」といったものが挙げられます。SFAを用いることで、顧客管理、案件管理、商談管理、さらにはリード獲得から契約締結までのプロセス管理なども一元化して行えるため、KPIの計測に非常に優秀なツールといえるでしょう。個人単位での営業行動を細かに計測し管理していくことは、本来であれば非常に時間と工数がかかる業務です。しかしSFAの導入によって、より短時間で、最小の工数で組織全体の営業管理ができるようになります。今ではベンチャー企業から日本を代表するような大企業まで非常に多くの企業がこのSFAを導入しています。

業務マニュアルやナレッジの共有に役立つナレッジマネジメントツール

営業の属人化解消のために、情報の共有文化を形成することが重要ということは先述の通りですが、例えば、マニュアルの運用する際にも課題は多く発生します。その運用課題によく挙がるものは、情報量が多く読みにくい、必要な情報にたどり着くまでに時間がかかるといった内容です。この2点の課題を解消してくれるツールが、ナレッジマネジメントツールです。有名なツールですと「Notion」や「Confluence」といったサービスが挙げられます。例えばWordやExcelなどのファイルで情報共有を行うと、ファイルを開いて中身を確認する、といった手順が必要になります。

一方で「Notion」や「Confluence」といったサービスは、Webページとしてすべての情報が集約されているため検索機能を用いて必要な情報に素早くアクセスすることが可能となります。また共同編集機能などを使えば、離れた環境でいつでも好きな時に、個々人が情報を追記することが可能となるため情報共有の文化形成には大変便利なナレッジ共有ツールとなっています。

社内情報共有効率化に役立つチャットツール

営業ノウハウやナレッジを共有しやすい環境づくりも重要ですが、その前段として組織でのコミュニケーションが円滑にとれることが必要となります。特にリモートワークが普及してきている昨今では、非対面でのコミュニケーションの割合が非常に高まってきています。そこで、情報の発信や交換をタイミングを選ばず気軽に行えるのがチャットツールです。有名どころでは「Slack」、「Microsoft Teams」、「LINEworks」といったサービスが挙げられます。たとえばSlackでは、個々人でのメッセージのやり取りはもちろん、特定のメンバーでチャンネルを作成して、複数人でコミュニケーションをとることも可能です。

チーム単位で必要な議論をするときや他部署との連携を図るとき、場合によっては顧客を招待して会話をすることも可能です。またオープンチャンネルでの会話は、個人がいつでも必要な情報にアクセスができるため、情報を自ら取得しにいくといった点でも大変魅力的なツールです。

 おわりに

営業の属人化によるデメリットや属人化が起こる理由、またその解決策について紹介してきました。目標を達成し続ける営業組織を作るために営業の属人化を解消することの重要性を感じていただけましたでしょうか。属人化の解消は営業の標準化にも繋がり、営業組織としてハイプレイヤーに依存した営業組織ではなく組織全体で全員が成果を出し続ける組織になります。改めて自社でハイプレイヤーに依存する組織であるか今一度状況を確認し、もし自社の営業組織が属人化している状況であれば本記事の取り組みなど実施してみてはいかがでしょうか。

著者情報

小林 拓也(こばやし たくや)

大学卒業後、大手人材サービスのパーソルキャリア(株)に新卒で入社。
IT業界専任として、ベンチャーから大企業向けに求人媒体の営業活動を行う。MVPや顧客満足度表彰など、多くの実績を持つ。その後「人材領域」から「新規事業」を通じて企業のさらなる成長を支援したいと考え、2021年に Creww(株)にジョイン。カスタマーサクセスとして、日本を代表する大手企業や地方自治体の新規事業支援を行う。

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