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セールスファネルとは?作り方とBtoBにおける具体的な活用方法を解説

セールス

目次

ビジネスがますます複雑になる中、Salesforceの調査レポート「セールス最新事情」(第5版)によると、全世界の69%の営業関係者が営業の仕事が以前よりも難しくなったと回答しています。これは顧客とつながる時間が削られ、営業の効率化が求められている現状を反映しています。

この記事は、営業の難易度が高まる状況で営業効率の改善に取り組もうとされる方を対象に、セールスファネルを紹介します。セールスファネルの作り方からBtoBにおける具体的な活用方法まで、詳しく理解することで、営業チームの課題が明確になり、営業効率を一段と向上させることが期待できます。

セールスファネルとは?

セールスファネルとは、潜在的な顧客が最終的に購入・契約し、さらには継続的な顧客へと変化していくプロセスを、段階的に可視化したモデルのことを指します。具体的には、製品やサービスを初めて認知する見込み顧客の段階から、契約し顧客に至るまでの過程を表現しています。この過程は各段階で顧客の数が絞られていくため、形状は漏斗(ファネル)のように広い上部から狭い下部へと進んでいくイメージが一般的です。このセールスファネルを理解し、活用することで、マーケティング活動や営業戦略をより効果的に進めることが可能となります。

パイプライン管理との違い

セールスファネルとパイプライン管理は、ふたつとも営業プロセスを可視化・図式化するモデルですが、視点と対象範囲に違いがあります。

セールスファネル パイプライン管理 違い

セールスファネルは、顧客の視点で考え、マーケティングから営業までの全体的なプロセスを見ています。顧客が製品やサービスを初めて認知し、それがどのように購入行動につながるのかを追いかけています。一方、パイプライン管理は、営業の視点から見て、営業活動に焦点を当ててプロセスを細分化します。具体的には、リードの獲得から提案、最終的な受注までのプロセスを詳細に見ています。両者は互いに補完的な関係にあり、効果的な営業戦略を立てるためには、どちらも理解して適切に活用することが求められます。

パイプライン管理について詳細を知りたい方は、こちらの記事もご参照ください。

 セールスファネルの基本的な3つの形

セールスファネルは、顧客の関心度に応じて、トップ、ミドル、ボトムの3段階に分けることができます。それぞれの定義について解説します。

トップ・オブ・ザ・ファネル

トップ・オブ・ザ・ファネル(TOFU)は、セールスファネルの最初の段階で、顧客があなたの商品やサービスに初めて触れる「認知フェーズ」を指します。この段階で重要なのは、可能な限り多くの潜在顧客に対して商品やサービスの認知を促進することです。たとえば、テレビコマーシャルやウェブ広告、ソーシャルメディアを活用し、商品やサービスの情報を広く伝えることで、ファネルの入口を広げることができます。TOFUの段階では、顧客と購入までの距離がまだ遠いため、さまざまなマーケティング施策を駆使して、関わりを持ち続けることが重要となります。

ミドル・オブ・ザ・ファネル

ミドル・オブ・ザ・ファネル(MOFU)は、セールスファネルの中間段階で、顧客が商品やサービスについて具体的に考慮し始める、いわゆる検討フェーズを指します。この段階には、面談や商品説明を通じて購入に至らなかった見込み顧客が含まれます。MOFUの段階では、購買意欲を高めるための施策が重要となり、営業担当者による個別のアプローチが有効に働きます。ここでの努力は顧客を次の段階へと導く役割を果たし、結果に直結しやすいため、慎重な対応が求められます。

ボトム・オブ・ザ・ファネル

ボトム・オブ・ザ・ファネル(BOFU)は、セールスファネルの最終段階で、関係性が構築され、信頼関係が成熟した状態を指します。この段階では、購入や契約の達成がゴールとされる場合もありますが、また一方で、顧客に継続的な支持を得ること、つまり継続顧客としての関係性を築くことがゴールとされることもあります。そのためBOFUの段階では、顧客に長期間にわたり支持してもらうために、自社の商品やサービスを深く理解し、ロイヤリティを高めることも重要です。

セールスファネル作成のメリット

セールスファネルを作成することで、各ファネルごとで効果測定ができ、施策の自動化とパイプライン管理に役立ちます。また、成約率の向上が見込めるというメリットもあります。それぞれ詳細を解説します。

各ファネルごとで効果測定ができる

セールスファネルの作成には大きな利点があります。それは、各ステップごとの効果を測定することができるという点です。このアプローチにより、見込み客がどのフェーズで離脱し、またはどこで進行が停滞しているかという、いわゆる「ボトルネック」を具体的に特定することが可能となります。これによって、マーケティング戦略をより効果的に見直し、最適化するための貴重なインサイトを得ることができます。

施策の自動化とパイプライン管理に役立つ

セールスファネルのもう一つの大きな利点は、施策の自動化とパイプライン管理が容易になる点です。顧客の興味・関心度を段階的に示すファネルを用意することで、追加の訴求が必要な見込み客は誰なのか、その見込み顧客に対してどう訴求するかが明確になります。また、WEB広告やステップメールなどのマーケティング施策はファネルの各段階と合わせるとさらに効果が期待できます。。例えば、TOFUの段階にいる見込み顧客に対してはお知らせや記事紹介などでまずは関心を惹き、徐々にサービス紹介やウェビナーへの誘致などを実施していきます。このような自動化は、営業チームの労力を大幅に減らすだけでなく、顧客の興味・関心が高いタイミングで適切な情報を提供することで、見込み顧客の増加にもつながる可能性があります。結果として、より効率的かつ効果的な営業活動を実現できます。

購買フェーズ セグメント
ステップメール自動配信については、こちらの記事も参照してください。

成約率の向上が見込める

セールスファネルを利用する最大のメリットの一つは、成約率の向上が見込める点です。これは、ファネルの各段階における顧客の意識とニーズを正確に把握し、それに対応した適切なアプローチが可能となるからです。一般的な営業活動では、すべての見込み顧客に対して同じアプローチを行うことが多いです。しかし、これでは顧客の興味や関心、ニーズに応じた対応が難しいため、最終的な成約率につながりづらいです。セールスファネルを利用すれば、各段階ごとに顧客の関心度や購入意欲が可視化されるため、特に購入・契約意欲の高い顧客を絞り出すことが可能となります。そして、その結果、営業活動の効率が大幅に向上し、成約率も上がると期待されます。これは営業の生産性を大いに高める要素と言えるでしょう。

セールスファネルを効果的に運用するために注意すべき3つのポイント

セールスファネルを効果的に運用するためには、データの管理、部門間の連携、顧客の行動履歴の把握といったポイントが重要となります。ここではこれらの要素についてくわしく解説します。

データの入力・収集・管理

セールスファネルを効果的に運用するためには、まずデータの入力・収集・管理が不可欠です。顧客の興味・関心の段階を正確に把握するためには、顧客の基本情報(氏名、電話番号など)だけでなく、WEBサイトの訪問履歴、メールの開封・クリック履歴、問い合わせ・購入履歴などの行動データを一元的に収集・管理する必要があります。これらのデータは、ファネルの各段階で顧客の動向を把握し、適切なアクションを決定する上での貴重な情報源となります。

部門間で連携してデータ共有

セールスファネルの各段階において中心となる部署は変わります。これによりさまざまな部門が連携し、顧客データや施策の内容を共有することが求められます。営業、マーケティング、カスタマーサポートなど、それぞれの部署の視点で得られた顧客情報や施策の結果を共有することで、顧客にとって最も適切なアプローチが可能となります。逆に、説明の重複や連携不足による不備は顧客離脱の原因にもなります。これを避けるためにも、部門間での情報共有と連携は不可欠です。実際、調査レポート「セールス最新事情」(第5版)によれば、ほとんどの営業担当者は社内の他のチームと連携して案件を成約へと導いています。また、83%の顧客は部門の枠を越えて一貫した体験をもたらす企業をひいきにしたいと回答しています。

顧客の行動履歴をスコアリング

顧客がセールスファネルのどの段階にいるかを正確に把握するためには、顧客の行動履歴をスコアリングすることが非常に重要です。スコアリングとは、顧客の行動や情報を評価し、それに基づいてポイントを付与することを指します。具体的には、WEBページへの訪問、メールの開封率・クリック率、セミナーへの参加、資料のダウンロード回数、問い合わせなどの情報をもとに、顧客の関心度を評価し、顧客がセールスファネルのどの段階にいるかを判別します。このスコアリングによって、マーケティングや営業活動の効率性を大きく向上させることができます。ただし、スコアリングは企業内で共有されるべき情報であるため、各部門が納得できる明確な基準を設けることが重要です。そのためには、スコアリングの基準を設定し、それが全ての関係者にとって理解しやすいものであることが必要となります。

行動スコア
くわしいスコアリングの方法については、こちらの記事も参照してください。

【BtoB向け】各セールスファネルでの施策・アクション例

ここではBtoB向けの各セールスファネルステージでの施策やアクション例を具体的に紹介します。この情報をもとに、ファネルの各段階に応じた効果的な施策を立案し、営業効率の向上に役立ててください。

ファネル別 施策 各ファネルでの施策

トップ・オブ・ザ・ファネル

「トップ・オブ・ザ・ファネル」の段階では、可能な限り多くの見込み客に対し、自社の製品やサービスの情報を広めることが重要です。入り口が枯渇すると後続のフェーズに大きく影響するため、あらゆる手段を活用していきます。具体的なアクションとしては、テレビCM、紙のダイレクトメール、ウェブ広告などの一方的な広報活動が含まれます。これに加えて、SNSを活用した情報発信も欠かせません。例えば、FacebookやTwitter、LinkedInなどに業界のトレンドや自社の最新情報をアップすることで、見込み客との接点を増やすことができます。また、教育的なコンテンツを提供することも有効です。動画やホワイトペーパーを作成し、ウェブサイトで無料配布することで、見込み客の関心を引き、製品やサービスへの理解を深める機会を提供します。

ミドル・オブ・ザ・ファネル

「ミドル・オブ・ザ・ファネル」の段階では、一度接触した見込み客との関係深化が求められます。さらなる段階に進めるための行動変容を起こすことが重要です。そのためには、顧客との継続的な交流や顧客ニーズに合わせた情報発信、セミナーやイベントへの誘致などが必要です。顧客との交流はSNSやブログ、ステップメールを通じて行うことが有効です。顧客ニーズを捉え、それに応じた情報発信を行うことで、見込み客の自社への興味を引き続き喚起します。また、セミナーやイベントへの誘致は、深い理解と信頼関係の構築につながります。商品の特長やメリットを具体的に伝え、自社サービスの価値を高めるアクションが重要です。このステージを効果的に進めることで、見込み客を次の段階へと進める道筋が作られます。

ボトム・オブ・ザ・ファネル

「ボトム・オブ・ザ・ファネル」では、見込み客を最終的な顧客へと転換するアクションが求められます。他社と比較検討できる詳細な資料の提供は、見込み客が自社と競合他社とを比較検討する上で役立ちます。また、購入や契約方法のフローを提供することで、見込み客が契約までのステップを明確に理解することが可能となります。さらに、自社商品やサービスに関する付加価値を具体的に示し、他社との差別化を図ることが重要です。これらのアクションにより、見込み客を顧客へと結びつける道を整備し、最終的な契約・購入へと導きます。

おわりに

本記事では、BtoBビジネスを行うみなさまに、セールスファネルの概要や作り方、具体的な活用方法をご紹介しました。ファネルは大きく分けると3段階あり、それぞれで目的やアプローチ方法が変わります。最適なアプローチ方法を選択しましょう。また、セールスファネルを有効的に活用するためにデータ収集や管理、スコアリングが重要になってきます。ファネル管理は部署を跨った活動のため、スコアリングの基準を統一し、適切にデータを連携することが大切です。ファネル改善や成約率向上に取り組んでいるものの、なかなか成果の出ない企業様は組織体制や施策を客観的に見直す必要があります。我々ゼンフォースはファネルの改善や成約率向上の支援ができますので、ぜひお悩みの方はご相談ください。

著者情報
田村 佳士(たむら けいし)
Keishi Tamura
2015年に東証一部上場の人材企業に入社し、新規営業、新規事業開発に従事。2018年に機械学習ベンチャーに出向し、AI技術を駆使した新規事業の企画を推進。その後、2020年に転職し、現在は大手IT企業にてAIプロダクトのプロジェクトマネージャを担当。エンタープライズ企業へAIプロダクトの導入プロジェクトの推進やプロダクト企画に勤めている。