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セールスイネーブルメントとは?意味や実践方法について詳しく解説

マーケティング セールス

目次

デジタル化や顧客のニーズ多様化、少子高齢化による人材不足などの流れを受け、企業は従来のスタイルを用いた営業活動の業績維持や向上が難しくなっています。令和3年中小企業実態基本調査でも企業当たりの売上高は1.71億円(前年度比-2.0%減)、1企業当たりの経常利益は663万円(同-7.8%減)、法人企業の1企業当たりの付加価値額は0.80億円(前年度比-7.2%減)と、業績はいずれも減少した結果が出ています。

企業視点では、売上や利益に直結する営業スキルの向上が必須となりますが、個々の営業担当にスキル向上を求めるのはレベルの差が出ますし、難易度が高いものです。また、営業スキルの向上には単に個人がスキルを磨くのではなく、営業活動の業務効率化や他部門との営業活動における連携も大事になります。

営業部門とマーケティング部門をはじめ各部門が連携し、組織全体で営業スキルを向上させる取り組みとして注目を浴びているのが「セールスイネーブルメント」です。この記事ではセールスイネーブルメントの概要やメリット、実施のポイントについて解説しますので、「セールスイネーブルメントとはなにか」「具体的にどのような対応を行えば良いのか」と疑問を持つ担当者は参考にしてみてください。

セールスイネーブルメントとは何か?

セールスイネーブルメント(Sales-Enablement)とは、営業組織を強化・改善するための取り組みです。「マーケティング部門と営業部門でブランドメッセージが一致していない、または一貫していない」「営業活動において商材と顧客に関する情報が欠落している」といった、営業活動における問題点を解決するための概念として1999年にアメリカで提唱されました。

セールスイネーブルメントの目的は、営業部門だけでなくマーケティング、人事、システムといった各部門がそれぞれの知見を活かし、組織全体で営業力を強化していくことです。営業力を強化することができれば、部門で目的視点を統一し販売戦略を実現できます。例えば、CRM/SFAなどを活用するマーケティング部門の顧客分析の情報を、営業部門に注入することで顧客に関する正確かつ効率的な情報を知ることができ、購買機会の創出や顧客ロイヤリティの向上にもつながる可能性も高まります。また、人材育成や営業スキルを部門間で共有することができれば、従業員の属人化防止や、再現性の高い販売プロセスの実現が可能になるなど、セールスイネーブルメントによる効果が多数期待できます。

セールスイネーブルメントが今注目されている理由

セールスイネーブルメントは、テクノロジーの発展や顧客とのコミュニケーション手法の変化が進んだ2010年以降より注目されるようになりました。セールスイネーブルメントが注目されている背景にあるのが「労働生産力の低下」「消費者の購買行動の変化」「営業力の個人から組織力への変化」です。セールスイネーブルメントが営業スキル向上のための手段として注目されるようになった理由を解説します。

労働生産性の低下

セールスイネーブルメントが注目されるようになった理由のひとつに、労働生産性の低下があります。内閣府が発表した「生産性低迷の原因と向上策」では、日本の労働生産性は米国の59%にあたり、ソフトウェアなどの資本装備率の低さや労働者の能力の格差、ICT導入の企業規模間の格差などが労働生産性低下の原因としています。
労働生産性向上の施策として推進されているのがDXです。社内のDX化を推進したくとも、「既存のシステムが複雑化、ブラックボックス化している」「IT人材が不足している」「DXのために業務見直しや変革が必要だが、現場サイドの抵抗が大きい」「プロダクトの複雑化により、課題解決型の提案が必要になったがスキルや専門性を持つ営業担当がいない」などの問題が社内で発生し、DX化がうまく進められない企業も多いかもしれません。

DX化を進めるため、SaaS型のクラウド系商材やソフトウェアなどのデジタルツールの活用が主流です。それに伴い、営業職が取り扱う商材が有形から無形へと移り変わったことで、問題解決型のソリューション営業スキル、またITの知識が必要となり、営業職は従来以上に高度な営業スキルが求められています。更に首相官邸の政府政策ポータルサイトで発表されている通り、国を挙げてDXの推進に向けた対応策を行っていくことが発表されており、企業のDX推進活動が追い風の状況にあることからも、今後BtoB企業では、よりセールスイネーブルメントが注目されていくと考えられます。

急速な購買行動の変化

その他にも、市場ニーズの変動に伴う顧客の購買行動の変化も注目される要因の一つです。経済産業省が提言する「2025年の崖」という表現を聞いたことはありますでしょうか。

企業のDXが実現しなければ、2025年以降最大12兆円/年の経済損失が生じる可能性があることを「2025年の崖」と言われています。この問題を回避するため、自社の将来性や競争力を向上させる目的でDX推進を検討する企業が多くなりました。国がDXを推奨する流れを受け、市場ニーズはデジタル化や業務効率化を実現するために商材が有形から無形へと市場ニーズも変動している傾向にあります。結果的に、この大きな変動へ柔軟に対応できない企業は競争力が低下し、競合への優位性を保てないなどにより、業績が低下し続けるいわゆる「デジタルの敗者」となる可能性もあります。

また、営業職といった売り手を挟まずに購買へたどりつきたい顧客も増加しました。Gatner社の調査によると、BtoB購入者の43%は売り手なしの販売体験を望んでおり、さらにミレニアル世代の購入者はその傾向が54%に増加しています。売り手なしの購入体験を好む顧客は、購入を後悔する割合が23%高くなり、購入後の後悔の多い購入者は、顧客ロイヤルティが14%低く、商材に対して否定的である顧客は53%高いとの報告もあります。

これらの顧客の購買行動の変化と急速に変化する顧客の購買ニーズを満たすためには、個々の営業職による従来の営業アプローチでは対応できません。デジタルツールを活用し、顧客ニーズを正しく適切に捉えられるような営業アプローチや組織的な営業力の強化が重要です。そのための対策が、セールスイネーブルメントです。セールスイネーブルメントでCRM/SFAツールを活用し顧客ニーズを事前に把握し適切にニーズを満たす仕組みを整備することができれば、前述したような顧客が後悔するような体験を減らし、顧客ロイヤリティーを高められることも実現できます。

営業力は個人から組織力へ変化

コロナ禍を経て、営業スキルが個人から組織力へ変化したこともセールスイネーブルメントが注目されるようになった理由のひとつです。Sansan株式会社 が行った「営業活動におけるデータ活用の実態調査」によると、営業力強化に必要な要素について全国の20~50代の営業・マーケティング・経営部門いずれかに所属しているビジネスパーソン1,200名を対象に伺った結果、「個人の営業スキル」と答えた回答率がコロナ禍前と比較して29.8%から17.2%へと大幅に減少しました。一方で「営業のデジタル活用」と回答したビジネスパーソンは1.8%から12.8%と7倍以上に、「チームもしくは組織全体でのデータ活用」は12.7%から15.8%(1.2倍以上)に増加しています。
セールスイネーブルメント 営業強化

出典:Sansan

さらに、回答者の8割強が「他部署が収集した顧客データや外部の企業データなどのデータを営業活動に利用したい」と考えていることが分かりました。調査結果から、個人の営業スキルを向上させるより、組織内でデータを共有・活用することこそが営業活動において重要度が高いと考えられるようになったと言えるでしょう。

上記の傾向からも、セールスイネーブルメントを積極的に推進し、営業活動を営業職個々ではなく、他部門と連携し組織全体で共有する取り組みはコロナ後の社会の変動にマッチしていると言えます。

セールスイネーブルメントによって得られるメリット

セールスイネーブルメントを実践することで、「コスト削減」「属人化の防止」「複雑な顧客ニーズへの対応」「営業活動の可視化」といったさまざまな課題を解決するメリットが得られます。それぞれのメリットについて解説します。

コスト削減

セールスイネーブルメントは、営業プロセス内での「無駄」を可視化させる効果があり、それらの無駄を排除することでコスト削減につながるメリットがあります。例えば、営業部門やマーケティング部門、その他の部門との情報伝達が分断され、不要なやりとりや会議開催などにより時間的コストが余計に発生しているケース、また情報が行き届かないことにより効果が悪い広告を掲載し続け、宣伝費の無駄が発生しているというケースがあります。セールスイネーブルメントを実行し営業プロセスを連携することで、プロセス内での無駄を明らかにします。また、これらを省く対策を行うことで結果的にコスト削減へとつながります。

属人的な営業組織からの脱却

セールスイネーブルメントでは、営業担当者の持つノウハウやスキルを共有することで営業組織の強化や効率化にもつながります。

人事のミカタ「2019年企業の人材不足実態調査」では、不足している職種の上位に「営業職」という結果から営業職の離職率の高さが伺え、人材の流動化が著しい状況にあることがわかります。このような背景から、各営業のスキルやノウハウを引き継ぐことが難しく、営業知識が担当者個人に依存してしまう懸念も考えられます。
セールスイネーブルメントを推進し営業ノウハウを共有する仕組みを整えることで、OJTによる教育のばらつきを防ぎ、属人的なネットワークの解消も実現できます。情報が個人に依存する属人的な環境から、ノウハウを共有する連携する環境を整備することで、組織全体としての効率・効果を上げることにもつながるでしょう。

複雑な顧客ニーズへの対応

セールスイネーブルメントを推進し、顧客情報の集約を行うことで効率的な管理が実現できるといったメリットもあります。社内の顧客情報が分散している状態では、顧客それぞれが持つニーズを把握できず、営業が適切なタイミングでのアプローチができません。

セールスイネーブルメントではMAやCRMなどの営業管理ツールを利用して、顧客情報を集約し管理ができます。顧客情報の集約と管理をツールによって徹底することで、顧客ニーズを適切に捉えることも可能です。複雑な顧客ニーズにも対応でき、営業成果につなげられるでしょう。

再現性の高い営業活動の実現

営業活動には、成約につながる可能性の高い「勝ちパターン」があります。成約を多く上げるためには、勝ちパターンの再現性の高い営業活動を行うことが重要です。

セールスイネーブルメントは、再現性の高い営業活動を実現します。営業プロセスを通じての成果の可視化ができるためですデータの分析と成果を可視化し、改善や次の戦略に活かすことで営業活動におけるPDCAを回すことにもつながります。営業活動の「勝ちパターン」を再現できる可能性も高くなるため、新規顧客へのアプローチにも有効な営業活動が展開できるでしょう。

セールスイネーブルメントが失敗する主な原因    

セールスイネーブルメントを実践し組織的に営業力を強化するには、トレーニングなどにより個々の営業スキルの向上を図るだけでは十分な成果は得られません。自社の営業組織における課題を把握し、組織全体で根本的な改善を図っていくことが重要です。

「そもそも、自社の営業組織や営業活動における課題を把握できない」と悩む企業も多いのではないでしょうか。そのような場合には、国内の企業が営業組織において発生しやすい傾向のある課題と、自社の営業組織や営業活動の現状を比較してみましょう。ここでは、日本の営業組織における課題を順に解説します。

営業活動における分業化の遅れによる生産性の低下

日本の営業生産性が低い背景にあるのが、営業活動における分業化の遅れです。日本企業における営業活動の生産性は、以下の図から見て分かるように諸外国と比べ低い傾向です。

日本営業生産性 営業生産性 セールスイネーブルメント

出展:Mckinsey&Company「日本の営業生産性はなぜ低いのか」

営業活動は、アポ取得から商談まで複数のプロセスで分業され、各プロセスで異なるスキルが求められます。しかし、日本における営業活動は、営業が行う業務範囲や活動に必要なスキルが明確にされていません。組織上の連携が困難なことや、属人的な営業スタイルであることなどから、営業活動での具体的な施策や改善点が把握できないことが明確化できない理由でしょう。その結果、上記の図の通り海外と国内の営業生産性を比較すると日本の営業職の生産性が低いことがわかります。

「営業力の強化」という漠然とした目標に掲げるだけでは、組織的な営業力強化にはつながりません。セールスイネーブルメントにおいては、各営業プロセスを定義し、営業の活動状況を可視化、管理すべきKPIを定義するなど、全てを明確化したうえで実行することが重要です。各営業プロセスや活動状況を可視化できれば、成果が上がっている営業担当者の抽出もでき、営業担当者のノウハウをモデルケースとして、営業活動に活かすことで組織的な営業力の強化にもつながるでしょう。

営業スキル平準化の遅れによる属人的な営業

日本は諸外国に比べ、営業スキルの平準化が遅れ属人的な営業を行っていることも、セールスイネーブルメントの実施を阻む要因となっています。OECD が調査し、 公益財団法人日本生産性本部が発表している「労働生産性の国際比較」によれば、OECDデータに基づく2018年の日本の時間当たり労働生産性 ( 就業1時間当たり付加価値 ) は 、46.8ドル(4,744円 / 購買力平価 (PPP) 換算 )、米国 (74.7ドル /7,571円) の6割強の水準に相当し、 順位は OECD 加盟36ヵ国中21位だという結果が出ました。、諸外国と異なり日本の営業職は営業プロセスの全領域を担当の営業がすべて行う風土にあることが、営業活動の属人化による生産性の低下を招いていると考えられます。

諸外国では営業が業務として行う領域は営業活動のプロセスでいう「受注」までです。その後の顧客対応はカスタマーサービス部門などの専門部隊が担います。一方で日本企業の営業職は「会社の顔」として最後まで責任を果たすべき、という考え方から受注後のアフターフォローなども営業職が行っていることが多いです。営業プロセスへ営業職以外が関与しないことから、営業活動がブラックボックス化してしまい、営業活動のスキルや生産性の低下を招いてしまう可能性も高まります。

組織的なデジタル化の遅れ

セールスイネーブルメントの推進には、CRM・SFAなどの営業デジタルツールの利活用も含まれるため、営業活動に携わるメンバーのデジタルリテラシーが必須です。日本は諸外国と比べて組織的なデジタル化が遅れています。日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)の「デジタル化の進行の影響具合」に関する調査では、欧米と比較し日本のデジタル化への取り組み状況は、「圧倒的に遅れている」と答えた企業が2016年度の39.4%から2017年度は45.5%に増加したという結果も出ています。セールスイネーブルメント推進に必要なデジタルリテラシーを従業員へ十分に身に付けさせていない企業も多いでしょう。

セールスイネーブルメントの推進には、推進するプロジェクトメンバーだけでなく経営陣も含め、組織全体へのデジタル教育が必要です。教育を進めるには、営業に知見のあるIT人材による一貫して伴走しながらサポートし、実務面の教育だけでなく、中長期的な教育計画・体制の構築が求められます。

セールスイネーブルメントを実践するポイント

CRM/SFAなどのデジタルツールの導入やトレーニングを実施するといった施策だけでは、セールスイネーブルメントでの成果につながりません。上記で解説した課題をふまえ、営業活動の組織化、かつデジタル化を進めたうえでセールスイネーブルメントを推進することが重要です。

これからセールスイネーブルメントを実践する企業が、抑えておくべきポイントを解説します。

営業組織内でセールスイネーブルメントを実現するポイント

セールスイネーブルメントを実現するために、営業組織内で踏まえるポイントは以下の5つです。
1. 顧客に対する提供価値を再定義する
2. 営業プロセスとスキルを明確化する
3. 営業活動を可視化する
4. 情報を共有する文化を作る
5. 営業スキルを社内で共有する仕組みを作る

それぞれのポイントについて解説します。


1. 顧客に対する提供価値の再定義

セールスイネーブルメントを実現するには、営業組織以外の他部署へ「顧客に対する提供価値」を共有する必要があります。なぜなら、具体的な顧客像や商材の提供価値を把握していないなければ、具体的な施策や戦略を打ち出せないためです。

営業組織として、以下の3つを再定義し他部署へ共有しましょう。
・顧客のターゲット像
・自社商材の提供価値
バリュープロポジション(顧客のニーズが高く、かつ競合他社が提供できていない独自の価値)

顧客への提供価値を再定義すれば、目指すべき営業像を部署間で共有でき競合他社との競争にも勝てる明確なビジョンを把握できます。

2. 営業プロセス・スキルの明確化する

営業プロセスを共有するためには、営業プロセスで求められるスキルを明確にしなければいけません。セールスイネーブルメントを実現するには、幅広い営業ノウハウを共通資産化する必要があるためです。そのために、営業プロセスを細分化し、各プロセスで求められるスキルを把握、共有するための定義化が必要です。営業職の持つ営業ノウハウを定義化し、営業組織全体で共有することで属人化を防ぎ、営業活動での生産性向上や効率化につなげられます。

3. KPIを設定し営業活動を可視化する

セールスイネーブルメントを実現するには、個々の営業担当者が保有する営業ノウハウやスキルを具体化し、教育などへ活用することも必要です。営業ノウハウやスキルを抽出するために有効なのが、KPIの設定です。KPIを設定することができれば、成果を挙げている営業担当者の営業活動状況を数字で評価でき、KPIを一定の尺度で判断できるようになります。モデルケースとする営業担当者の持つノウハウやスキルを、KPIを基に具体化できればスキルを他営業担当へと紡ぐこともできるでしょう。

営業組織ではKPI計測と情報共有をしやすくするために、業務ルールを運用可能なレベルまで構築しておきましょう。KPIとする指標例として、「SMART」(「S(Specific):明確である」「M(Measurable):計量できる」「A(Achievable):達成可能性がある」「R(Relevant):KGIと関連がある」「T(Time-bound):期限が定められている」)など、これらの定義に当てはまる数値にすると良いでしょう。
KPIの詳しい設定方法についてはこちらの記事に詳しく解説しています。

4. 情報共有メリットを理解してもらい、共有文化を作る

情報提供が面倒、自分の顧客や成果を奪われたくないといった理由から意図的にノウハウを共有しない営業担当もいるかもしれません。しかし、営業担当者が個々で顧客情報を保有したり、営業プロセスを管理してしまうと、営業職の属人化は止まらず、セールスイネーブルメントの導入はうまくいかない可能性が出てきてしまいます。
重要なことは、営業組織全体で情報やノウハウを共有する文化を作ることです。共有する文化を浸透させるために、営業担当者が進んで情報共有をしたいと感じる仕組みや環境づくりを行いましょう。例えば、情報共有が正確に行われた場合、有益な情報を共有した社員の人事評価を上げる、営業支援策へ還元する、などのメリットを設ける方法があります。

5. トレーニングコンテンツなどを社内で共通資産化する

営業職の育成で使用したマニュアルやトレーニングコンテンツなどは、社内で共有することで営業活動を組織化でき属人化を防げます。新規の営業メンバーのオンボーディング(新しく配属されたメンバーが組織に馴染み、早期に力を発揮できるようにするために企業が実施する一連の取り組み)の効率化にもつながります。具体的な共有資産の活用方法は幅広くあるため、自社に合うものを選びましょう。

セールスイネーブルメント実現に必要なデジタル化推進におけるポイント

セールスイネーブルメントを実現させるためには、顧客情報を正確かつ効率的に管理し、営業部門とマーケティング部門が連携して顧客のニーズに応えていかなければいけません。顧客情報の分析や管理のためには、デジタル化が必須です。セールスイネーブルメント実現に必要なデジタル化を進めるうえでのポイントを解説します。

明確なデジタル化推進のビジョンをもつ

まずデジタル化を進めるにあたって、明確なビジョンを設定しましょう。組織のデジタル化を推進する際に、推進目的やビジョン検討の前に、導入するデジタルツールを先に検討していませんか?セールスイネーブルメントにおいては、ツールの導入はあくまで手段です。ただツールを導入しただけでは営業スキルの底上げや課題の解決にはつながりませんので、優先順位は低いでしょう。まずは推進目的やビジョン検討から進めてください。

デジタル化推進のビジョンを決めるために重要視すべきポイントが、現在の営業活動における課題の明確化です。課題を明確にすることで、解決のための具体的な手法が把握できます。
そのうえで課題解決のためのアプローチや目的を検討し、最適なデジタル化の手段を決めましょう。

CRM/SFAツールの導入をはじめとした、デジタル化推進を行う体制を整備する

営業活動のデジタル化を推進するプロジェクトの良し悪しは、推進する人材を確保できるかどうかにより決まります。従来の手法を大きく変える言わば「変革」が必要なため、それらを推進する人材確保がプロジェクトを左右する重要な鍵だと言っても過言ではありません。デジタル化を進めるには、変革のためのツール選び、システム運用の整備、ツールの使い方の教育などが必要ですが、これらのツール選定から運用、教育までのあらゆるリソースを社内で確保できないという企業もいるでしょう。

デジタル化を推進するための専門スキルを保有している人が社内にいない、プロジェクトを推進するためのリソースが不足しているといった課題がある場合には、社外のコンサルティングなどの支援サービスを活用するといった手段もあります。デジタル化を進める中で、顧客情報など重要なデータを取り扱うため社外に委託することに不安を抱える企業もいるかもしれません。しかし近年の傾向では、セールスイネーブルメントを含めた企業のデジタル化、DX化活動が企業内で積極的に行われていることから、社外のコンサルティングを活用する企業も増えている傾向にあります。

実際に、日本経済新聞社と独調査会社スタティスタ「2022年の経営コンサルティング調査」では、コンサル会社の顧客企業が重視するテーマが、デジタル化・DXであると回答した割合は最多の46%、経営戦略が33%、データ分析・ビッグデータが28%という調査結果が出ています。この結果から、デジタル化・DXに関係するコンサル活用が広がり、また今後も増加していくことが予想できます。

デジタル人材の教育・リテラシーの向上させる

セールスイネーブルメントの導入により、デジタル化した営業組織を継続的に運用するための重要な要素が、推進する人材の教育と、営業メンバーのリテラシー向上に向けた組織体制の構築です。デジタル庁が、目指すべきデジタル社会の着実な実現のために必要なのは「デジタルリテラシーの向上」「デジタル専門人材の育成・確保」の2点を挙げているように、デジタル人材の教育は国策としても重視されています。デジタル人材の育成やリテラシー向上のための具体的な方法は、プログラミング教育や社会人向けのリカレント教育を充実させる、デジタル人材に必要となる教育や研修を行う、eラーニングの活用などがあります。デジタル人材の教育やリテラシー向上のための取り組みを行いましょう。

デジタル化による営業力強化に対する知見をセミナーや本で深める

営業組織のデジタル化を推進するための最優先事項が、経営陣のデジタル化への理解やデジタルリテラシーの向上を促すことです。システムなどの仕組みを変えるだけでなく、組織の再編成なども行われますが、その際には必ず経営陣の意思決定が必要です。経営陣がデジタル化への理解を示していなければ、当然の如くセールスイネーブルメントのためのデジタル化や組織の再編成は進められないため、経営陣の理解やデジタルリテラシーの向上は最優先と考えておきましょう。

経営陣のデジタル化への理解やデジタルリテラシー向上への有効な手法として挙げられるのが、営業DXなどに関係するセミナーの受講や書籍からの情報収集です。さまざまな情報を収集し、営業DXによる効果や成功例などに触れる機会を増やすことで、経営陣のデジタルに対する知見の向上につながります。

おわりに

市場の変化や労働生産性の低下といった背景を受け、個々で行う営業活動では顧客のニーズを満たせず、成約につなげられない可能性があります。顧客のニーズへの対応や営業の業務効率化を目的に、個々で行う営業活動から組織化するためにセールスイネーブルメントが重視されています。セールスイネーブルメントは営業活動における課題解決になるだけでなく、コスト削減や営業職の属人化の防止などのメリットも得られます。ただし、IT人材の育成やITリテラシー教育が障壁になっているなどの理由でセールスイネーブルメント推進が進められないこともあります。社外のコンサル活用などもふまえて、セールスイネーブルメント推進をぜひ検討しましょう。

著者情報
柳本 瑠衣 (やなぎもと るい)
Rui Yanagimoto
米国の州立大学卒業後、米国にて就労経験を経て帰国。国内のIT企業へ入社後、新規開拓営業と経営企画を経験。パーソルホールディングス株式会社(旧インテリジェンス)にてデジタルマーケティング領域を経験した後に、MAツール開発会社へ入社、インサイドセールス部門責任者として従事。2人目の出産を機に働き方を見直し2022年にフリーランスに転身。現在は営業DX領域のコンサルティングとマーケティング業務支援等を行う。