[ B2B Enablement Media ]

【フェーズ別】オウンドメディアのKPI設計。注意点や事前に必要な準備などもわかりやすく解説します

マーケティング

目次

顧客の購買方法が変化しつつあるBtoB領域において、いかにインバウンドからのリード獲得や商談獲得ができるかは非常に大きなテーマとなっています。特にインバウンドマーケティングの施策の中でもオウンドメディアは重要施策として多くの企業で位置付けられており、導入する企業も多くなってきています。

本記事では、オウンドメディアの概要に加えて、運用フェーズごとのKPI設計についてもわかりやすく解説します。これからオウンドメディアを立ち上げる方や、オウンドメディアを立ち上げたが現在の立ち位置を確認したい方にとってお役に立てるコンテンツとなっております。

オウンドメディアとは

オウンドメディアとは、企業のウェブサイトやブログなど、企業が自ら所有するメディアのことを指します。オウンドメディアを運営することで、企業は自らのコンテンツを配信し、リード・顧客獲得やブランディング効果を高めることができます。オウンドメディア以外のメディアとして、アーンドメディアとペイドメディアがあります。オウンドメディアは、企業が自ら所有するメディアであることから、自社や自社サービスに関する情報を提供することができ、リード・顧客獲得へ直結するメディアを作ることができます。ただ、オウンドメディア自体の拡散力は弱いため、メディアの認知を増やす、ファンを作るためには、アーンドメディアやペイドメディアの活用も重要です。

オウンドメディア ペイドメディア アーンドメディア
アーンドメディアとは、有料広告以外の方法で獲得した宣伝や露出のことです。自社の情報を発信できるSNSや、口コミサイトなどのコンテンツを指します。アーンドメディアは「信頼」のためのメディアです。知人からの共有や第3者からの発信により、自社のビジネスや製品・サービスに対する信頼を築くことができます。ペイドメディアとは、広告などを出稿する他社のサイトのことです。全体としては、アーンドメディアやオウンドメディアへのトラフィックを誘導するために、コンテンツを宣伝するために使用されます。お金を払ってコンテンツを宣伝することで、より多くの人に知ってもらうことができます。「認知」のためのメディアと言えるでしょう。オウンドメディアとアーンドメディア、ペイドメディアのそれぞれの特性を理解し、組み合わせてマーケティング施策を展開していきましょう。

BtoB企業向けのオウンドメディアのあり方については、こちらの記事で解説しています。

オウンドメディアの必要性

オウンドメディアに取り組む企業が増えている背景として、WEB広告の費用対効果への懸念と、長期的なマーケティング資産の形成があります。WEB広告(Google 広告やSNS広告)は従来の広告媒体と比較してコスト効率が高く、精度の高いターゲティングも可能と言われています。ただし、、不要なWEB広告がユーザーに表示されることから、近年では「ノイズ」と認識され、WEB広告を掲載しても想定する効果が出ない、最悪の場合ブランディングへの悪影響が発生するとも考えられています。また、WEB広告だけに頼ってしまっていると、一時的な効果を得ることが可能ですが、常に費用を払い続けなければリードや顧客を獲得できない状況を作ってしまいます。そのため長期的な費用対効果を考え、コンテンツがWEB常に残り続けるオウンドメディアを運営する企業が増えています。

KPIとは

オウンドメディアのKPIのお話をする前に、KPIについて解説します。KPIとは「Key Performance Indicator」の略であり、事業目標を達成するために重要なプロセスに関する指標のことです。期初にKPIを設定することで、チームや個人が行うべき役割や業務の方向性を具体的にし、また設定した目標に対する結果から施策のPDCAを回すことでスピード感のある組織の成長を実現させます。

KPIとは KPI
KPIは、KGIとKSFを明確にしてから設定し、最終的にはKPIツリーへ落とし込みます。KGIとは「Key Goal Indicator」の略で、組織やプロジェクトの最終的な目標を定量的に表した指標です。一般的に、BtoBマーケティング活動全体のKGIは「受注件数」や「売上」「利益」などに置かれます。KSFとは「Key Success Factor」の略語で、KGIを達成させるために必要な要素や要因のことを指します。たとえば、売上というKGIに対する成約確度の高い商談の創出や質の高いリードの獲得がKSFにあたります。KPIはKSFに対応する指標であり、上記の例であれば「商談数」「リード数」などにあたります。KPIツリーとは、KGI達成のために必要なKPIと、KPIに紐づいたKSFをツリー化し、分かりやすく整理した図です。「全てのKPIを達成することでKGIを達成できること」をKPIツリーで確認し、各KPI担当の役割とKGIとの関係性を明確にします。

BtoBマーケティングにおけるKPI設定については、こちらの記事で解説しています。

オウンドメディアのKPI設定のポイント

オウンドメディアは、自社のマーケティングにおけるオウンドメディアの役割や実現可能な体制、メディアのフェーズごとによって、KPIの設定方法も異なります。本章では、目的と体制、フェーズの観点から説明します。

メディアのコンセプト・目的を決める

まずKPIを設定する前に、オウンドメディアのコンセプトや目的を明確にする必要があります。そもそも「新規リード獲得のためのメディアなのか?」「自社ブランディングのためのメディアなのか?」「既存顧客のためのメディアなのか?」など、自社におけるマーケティング施策の中での役割によって、オウンドメディアのコンセプトの方向性は変わります。またカスタマージャーニーから考えた時に、ユーザー目線でのオウンドメディアの映り方を想像し、「メディアを通してユーザーがどういう状態になって欲しいか?」という体験ベースでのビジョンを明確にすることも重要です。定性的な体験ベースでのビジョンがあることで、メディア内のコンテンツの方向性を明確にすることができ、メディアでの発信内容の一貫性を保つことができます。

運用体制とスケジュールを立てる

メディアのコンセプトと目的を決めた後は、実現可能な運用体制とスケジュールを考えます。運用体制においては、「ディレクション」「記事企画」「ライティング」「入稿 / CMS管理者」「数値計測」「デザイン」「コーディング」の役割が最低限必要です。全て一人が担当するチームもありますが、外部のフリーランスや企業を活用しつつ、現実的にメディアの運用が可能な組織体制を設計します。組織体制を設計後は、描いた組織体制を構築するまでのスケジュールと、組織体制に合わせたオウンドメディアにおけるフェーズ・各フェーズのスケジュールを設計します。オウンドメディアにおけるフェーズについては、「【フェーズ別】オウンドメディアのKPI設定例」の章にて、詳細を説明します。

フェーズごとにKPIを設定する

オウンドメディアにおけるフェーズとスケジュールを設計した後は、フェーズ毎にKPIを設定します。オウンドメディアにおいても、「商談」「売上」を生むことが最終的なゴールではありますが、「商談」「売上」を生むためのオウンドメディアが達成すべきKPIを設定しましょう。「各記事の検索順位、ユニークユーザー数、リード獲得数、MQL数」などが基本的な指標となり得ます。フェーズ毎に、各指標の重要度と基準値を設定し、KPIを達成するための施策案の考案へつなげていきます。

【フェーズ別】オウンドメディアのKPI設定例

ここからは、フェーズ別のオウンドメディアのKPI設定例を説明します。オウンドメディアは長期的なマーケティング施策であることから、フェーズによって重要となるKPIは異なります。本記事では、一般的に言われているオウンドメディアのKPI設定例をご紹介します。

オウンドメディア KPI

初期:「記事数・PV・検索順位」

初期フェーズでは、結果指標ではなく行動指標をKPIとして設定しましょう。特に「安定して記事が制作できるかどうか?」を意識的に考える必要があります。オウンドメディアの最初の挫折として、継続的に記事を制作できる体制を作れないことがよく挙げられます。安定して記事が制作できなければ、PVや検索順位をあげること、またリード獲得数も増やすことができないので、初期フェーズは「記事数」をKPIとして設定し運用することをお勧めします。SEOを意識するメディアであれば月に15本〜20本、記事の質を意識したメディアであれば月に5〜10本を目安に考えると良いでしょう。また3〜6ヶ月以降は、PVや検索順位の動向も見えてくるので、KPIとして設定しトラッキングしていきましょう。検索順位については、1ページ目にランクインしている記事率を最初に計測し、リライト等を行い徐々に3位や1位の記事を増やしていく流れです。

中期:「リード獲得数(CV・CV率)」

PVが増えてきたところで、ホワイトペーパーやサービス資料などのCTAの設置を検討します。全ての記事にCTAを設置するのも良いですが、カスタマージャーニーで描いた顧客体験に沿って、顧客が記事を読んだ後に興味のあるダウンロードコンテンツを設置した方がCV率は高まります。また、いきなり多くのホワイトペーパーを作成するのではなく、リード獲得の軸となるコンテンツを複数作成し、記事に配置することをお勧めします。理由として、リードの質を検証するためです。一つ、リードの質を担保されたコンテンツがあれば、そこへの導線の引き方を考えれば、量も増えていきます。またホワイトペーパー等は記事よりも、更新するための工数がかかってしまうため、まず複数のコンテンツを揃え、きちんと商談に結びつくコンテンツを作成しておきましょう。

安定期:「対象リード獲得数・アポ数」

リード獲得数が安定してきた後は、対象リード獲得数やアポ数をKPIとして設定することを検討しましょう。対象リード獲得数とは、「受注につながるリード(ペルソナ)の獲得数」を指します。ホワイトペーパーなどは勉強目的の方や競合他社がダウンロードすることも多いので、リードの質を把握し改善をし続けましょう。対象リードは、マーケティングや営業チームが思い描くリード(ペルソナ)をすり合わせ、具体的なリードの属性や行動を定義することが重要です。またリード獲得数が増えてくると、個別にアプローチしきれていないリードも発生するため、メルマガやステップメールを活用し、常にリードを温めて、アポの獲得につながるルートをオウンドメディア上に構築しておきましょう。こちらからアポメールを送るアプローチと、リードから話を聞きたいと依頼が来るルートの2つがあれば、アポ数が安定しやすくなります。アポの獲得をインサイドセールスだけに頼るのではなく、オウンドメディアからのアポ獲得ルートを確立させ、社内価値を高めることも重要です。

インサイドセールスの基礎や成功のポイントは、こちらの記事で説明しています。

オウンドメディアのKPIを設定する上での注意点

オウンドメディアのKPIを設定する上での注意点は、「SMARTの法則で設定する」「数値的なインパクトがあるか」「ツールや専門家を活用して負荷分散する」の3つが挙げられます。

一つずつ説明します。

SMARTの法則で設定する

SMART法則 SMART

出典:カオナビ 人事用語集

オウンドメディアにおけるKPIは、チームの誰が見ても達成基準が明確である目標を求められます。その際、SMARTの法則を適用することで、具体的で測定可能な目標を設定し、達成可能かつ関連性のある目標を追求できます。SMARTの法則は、あらゆる目標設定で用いられる基本的なフレームワークです。それぞれの頭文字が、目標を設定する際に考慮すべき要素を示しています。

Specific(具体的): 
目標は明確かつ具体的であるべきです。何を達成するかを明確にし、曖昧さを排除します。また、複雑な目標ではなく、チーム全員が理解できるものになるようシンプルな目標にしましょう。

Measurable(測定可能): 
目標は数値や基準で測定可能であるべきです。進捗や成果を客観的に評価できるようにします。オウンドメディアにおいても、前述の通り、定量的なKPIを設定することは可能なので、測定可能な指標を選択しましょう。

Achievable(達成可能): 
目標は現実的で達成可能な範囲内に設定する必要があります。現実的なリソースや制約条件を考慮しながら設定しつつ、100%達成できる目標ではなく、ストレッチの効いた60%〜80%程度の達成率の目標を設定しましょう。

Relevant(関連性): 
目標は組織やチームのビジョンや戦略と関連性があります。この目標が組織の大局に貢献することを考慮します。また他のチームの目標との関連性を考え、組織やチームのビジョンを達成するためのオウンドメディアにおける役割を理解しましょう。

Time-bound(期限設定): 
目標は期限を設定することで時間的な枠組みを持ちます。明確な期限を設けることで達成までのスケジュール管理が可能となり、また業務の後回しを防ぐことに役に立ちます。

オウンドメディアは最初から成果を出すことが難しく、継続的なPDCAによる改善により、徐々に成果を発揮する長期的な施策です。そのためSMARTの法則を利用したKPI設定を行うことで、進捗状況を明確にしチーム内で議論ができる体制にできます。

数値的なインパクトがあるか

SMARTの法則内にある「Relevant」の内容とも近いですが、オウンドメディアのKPIと設定したものが組織やチームにどういうインパクトがあるのか?をKPI設定前に考える必要があります。例えば、社内リードを増やしたい時に、ユニークユーザー数をオウンドメディアのKPIとして設定するよりも、お問い合わせ数や資料請求数などリード獲得に直結するKPIを設定する方が組織やチームへのインパクトは大きいです。またオウンドメディアのKPIは、長期目線のKPIと短期目線のKPIを分けて考える必要があります。営業やマーケティングチーム全体として、リード獲得数や商談数を増やすことはどの時期でも意識することであることから、オウンドメディアのKPIもお問い合わせ数や資料請求数が重要と考えがちです。ただ、ユニークユーザー数や検索順位などのサイト訪問ユーザー数のボリュームも上げなければ、長期的にリード獲得数は増えていきません。そのため、チームとしての短期的な目標に関連したKPIだけを設定するのではなく、長期目線でのKPIの設定も意識しましょう。

ツールや専門家を活用して負荷分散する

オウンドメディアは、「ディレクション」「記事企画」「ライティング」「入稿 / CMS管理者」「数値計測」「デザイン」「コーディング」の役割が必要であることから、初期から全てのプロフェッショナルを採用することは難しいです。そのため、SEOやデザイン、コーディングの箇所は、初期からツールの活用や外部への発注も可能な箇所なので、ぜひ活用していきましょう。特にSEOへ力を入れたい企業は、早々にツールを導入し構造的に記事を作成した方がスピード感が高まります。

おわりに

オウンドメディアは、長期的なマーケティング施策であることから、フェーズによって設定するKPIが異なります。また自社のマーケティング施策におけるオウンドメディアの役割定義の仕方によっても、オウンドメディアのあり方は異なります。そのため、KPIを設定する前にオウンドメディアのコンセプトを定めた上で、KGI・KPIの設定を行いましょう。

著者情報
荻野 嶺(おぎの れい)
Rei Ogino
米国NY、LAで幼少時代を過ごす。 2015年、伊藤忠商事入社。金属資源部門にて経営企画や事業開発に携わり、赴任先のシンガポールで石炭の三国トレーダーとして、各国の市場を新規開拓。2020年に帰国し、スタートアップ向け人材紹介のfor Startupsに従事。入社半年で最速昇格基準達成、MVT 受賞などの実績を上げ、各有力スタートアップのCEOやVCからの信頼を獲得。 2020年12月にゼンフォース株式会社を創業し、代表取締役CEOに就任。