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インサイドセールス・SDRのKPI設定の仕方は?目標設定のポイントと運用方法を解説

マネジメント インサイドセールス

目次

リード(見込み客)と対話を続け、リードの購買意欲をかき立てた上で、商談を創出するインサイドセールス。営業活動のより一層の効率化が求められる日本でも、重要視されるようになりました。毎月安定した商談数と、高品質な商談を生み出すためには、インサイドセールス業務のパフォーマンス向上が必須。そのためにはインサイドセールス業務の仕組み化および適切なKPIの設定が必要です。

今回はインサイドセールスの中でも、SDRが成果を出すための、KPI設定のポイントと運用方法について解説します。

インサイドセールス・SDRとは?

インサイドセールス

出典:BOXIL

インサイドセールスとは、電話やメール、DMなどのツールを駆使して、顧客とコミュニケーションを重ねて作り出した商談を、フィールドセールスに受け渡すまでがその業務で、原則的に非対面で行う営業のことです。インサイドセールスには、SDR(Sales Development Representative) およびBDR (Business Development Representative) という2つの手法があります。

最初にSDRとBDRそれぞれの役割を確認しましょう。なおSDRとBDRの違いについては、ぜひこちらもご一読ください。

SDRの役割

SDRとはインバウンド型(反響型)のインサイドセールス手法です。マーケティングが生成したリードをターゲットとして、コミュニケーションを重ね、受注に繋がるリードを見極めた上で、リードの購買意欲を最大限に引き上げ商談を設定し、その商談をフィールドセールスに受け渡すことが職務になります。SDRが担当するリードは、中堅企業や中小企業の場合が多く、自社の製品またはサービスに対してすでに何らかの興味があるため、ファーストコンタクトから話がはずみ、比較的早い段階で、商談設定まで進むことが考えられます。しかし、複数のリード対応を、同時進行で行うことがほとんどなので、SDR業務が簡単というわけでは決してありません。アプローチのタイミングが遅れたり、的を得ないコミュニケーションをだらだら続けてしまうと、相手の興味が喪失してしまうことも。つまりSDRの業務にはスピード感が最も重要なのです。

BDRの役割

一方BDRはアウトバウンド型(開拓型)のインサイドセールス手法です。自社のターゲットとして定めた企業に対して、ドアノックから始めてリードまで育て、最終的に商談を設定することがBDRの仕事です。マーケティング経由では入手しにくい、大企業の決裁権を持つ人物などにアプローチできるスキルが、BDRには求められます。BDRのターゲットとなるのは、グローバル企業や日本の大企業です。キーパーソンを特定することから始め、キーパーソンとコンタクトを取り、自社の製品またはサービスに興味を抱かせるまでには時間がかかり、様々な難題を乗り越える必要がありますが、しかしひとたび相手の心を掴むことができれば、優良で比較的大規模な案件が獲得できる確率が高いのです。

インサイドセールス・SDRのKPI例

インサイドセールス SDR KPI

出典:Linkedin

KPI (Key Performance Indicator=重要業績評価指標)とは、業績を評価し、適切に管理を行うための定量的な指標として、現在多くの企業で設定されています。KPIを正しく設定することは、インサイドセールスに限らず、目標を達成するために全ての組織にとって必要不可欠といえます。

インサイドセールスのKPI設定方法については、こちらで詳しく解説しておりますので、あわせてご覧下さい。

インサイドセールスを成功させるには、フィールドセールスとは別の視点でのKPIの設定が必要となり、インサイドセールスがKPIを設定する目的は、主に次の3つが挙げられます。

・ 目標に向けた進捗状況の確認
・ 業務プロセスにおけるボトルネックの特定
・ データに基づいた管理の実現

商談までの業務プロセスを定期的に確認することで、有効データの蓄積が進み、データに基づくマネジメント体制が整いますし、最新の進捗状況やボトルネックの特定ができれば、問題点の早期発見や軌道修正もスピーディに行えるのです。

SDRのKPIには、次の5つが適しています。

・ フォローアップ数
・ 着電数・着電率
・ 有効会話数
・ 商談化率
・ 有効商談化率

この5つの中で、SDRにとって主要KPIをひとつ決めるとすれば、商談化率あるいは有効商談化率が一般的でしょう。インサイドセールスの成熟度や、フィールドセールス側の引き受け体制から鑑みて、どちらかに定めるのが通常です。その他の3つのKPIに関しては、SDR業務の進捗状況確認の指標としての着電数・着電率や有効会話数、また行動の指標としてフォローアップ数と位置付けるのが良いと考えられます。

フォローアップ数

リードに対して、電話やメールでアプローチするのがフォローアップです。リード1人に対して最大フォローアップ数を定めますが、自社のSDRメンバーの状況から判断して、最適なフォローアップ数を決めましょう。一般的には、リード1社につき、電話とメールで最大でも5回というのが、フォローアップ数の目安といえます。次にフォローアッププロセスの一例を紹介します。自社のウェブサイトから、製品詳細情報をダウンロードしたリードに対する、最大フォローアップ数5回の場合です。

1.自動返信メール(資料ダウンロードのお礼メール)
2.顧客(リード)に電話
3.つながらない場合には、挨拶メールを顧客に配信*
4.  再度顧客に電話*
5.顧客と電話で会話した後で、電話対応のお礼またはアポイントの日程確認などを記載したメール配信

*= 電話が一度でつながった場合には、3.と 4.のプロセスはなし

タイムリーできめ細やかなフォローアップができれば、商談につなげやすくなることは間違いありません。

着電数・着電率

着電数とはリードと電話でつながることができた数を指し、着電率とは着電した確率のことです。また着電数はコネクト数、着電率はコネクト率と呼ばれることもあります。コロナ前には、一般的なオフィスワーカーとの着電率が高いのは、朝一番の9時台と昼食後の13時台が、日本企業の常識と考えられておりましたが、セールスリクエスト社の2023年12月調査によれば、現在は9時台と17時以降の電話が、比較的つながりやすい傾向とのことです。また曜日別では、火曜日と木曜日の着電率が比較的高いことが報告されています。2017年のBRIGHT ORANGE THREADSDRによれば、着電率を上げるためには、「問い合わせ発生から5分以内に電話をかけること」が必須条件であり、10分以内に電話した場合と比較すると、着電率が4倍も違うというとのことでした。これはSDRのアクションはスピード命ということの裏付けといえます。着電数は架電数に左右するため、具体的な数値目標を定めることは困難ですが、着電率は中央値の少し上に設定するのがよいので、20%前後というところがよいのではないでしょうか。

有効会話数

有効会話とは、リードとの会話ができて、リードの課題や興味などがヒアリングできた状態を指し、着電数・着電率とともに、SDR業務の進捗確認のためのKPIと位置付けられます。たとえ相手が電話口に出たとしても、顧客が多忙でまともな会話ができなかった場合は、有効会話となりません。有効会話数をKPIの項目にするには、何を有効会話とみなすのかを判断する基準を設定することがあらかじめ必要となります。有効会話数が増えることは、効果的なコミュニケーションができていることや、リードを十分に理解できていることを意味するため、商談化の可能性が高くなると考えて間違いではないでしょう。有効会話数の具体的な目標数値を定めることは困難ですが、架電数に対して5-10%の有効会話数は欲しいところです。万一1日の有効会話数がゼロだったとすれば、ただちに改善が必要なので、電話をかける時間帯やアプローチ方法、トーク内容を見直しましょう。

商談化率

商談化数とは商談を獲得した数のことです。そして商談化率は商談化数を、マーケティングから引き継いだリードの中で、コンタクトができて、ポテンシャルが高いとみなせたリードの、対応済みリードで割ることで算出します。

商談化率=商談化数➗対応済みリード

商談化率は、リードを獲得したソースによって大きく異なります。例えば多くの企業が出展する展示会で生成したリードの多くは、情報収集が目的だったり、最悪な場合には、ブースで配布されるノベルティー収集だけが目的という場合も存在します。大規模な展示会では大量のリードが生成されますが、商談化が多くできないことが想定されますので、商談化率の目安は1-5%前後です。同じイベントでも自社主催セミナー経由のリードの場合は、自社製品やサービスに興味を持っているとみなされるので、商談化率の目安は少し高めの5-10%が一般的と考えられます。外部メディア媒体経由のリードは、概ね情報収集が目的なので、展示会同様の1-5%と低く設定すべきです。自社のウェブサイトに個人情報を入力した上で、資料をダウンロードしたリードならば、相手の購買意欲があると考えられるので、商談化率の目安も10-30%と高く設定します。商談化率をKPIと定める前に、目安の数値を参考に、マーケティングやフィールドセールスともよく話し合った上で、リードソースごとに数値を定めましょう。

有効商談化率

インサイドセールスから引き継いだ商談を実際に行った結果、フィールドセールスが受注につながると見なした商談を有効商談と呼び、また商談化数の中での有効商談の割合は有効商談化率と呼ばれます。有効商談化率は商談化率同様に、SDRの主要KPIになり得る項目です。

有効商談の条件については、次の4つが考えられます。

・ 顧客の課題が確実に把握できた
・ 課題解決は自社の製品やサービスで可能
・ 顧客側で契約の意思決定が済んでいる
・ すぐに受注できる状態

一方で次の3つの条件にあてはまる商談は、無効商談と位置付けます。

・ 顧客が必要とする機能が自社製品やサービスにないために、解決策を提案できない(自社製品やサービスがリードの要件と合わない)
・ 顧客の予算と合わない(顧客に契約するための予算がない)
・ 顧客が消極的(実は自社製品やサービスに契約するつもりがない)

SDRが商談化数を増やすことだけに邁進した結果、無効商談が増えてしまうと、SDRからの商談が、フィールドセールスに重要視されなくなってしまう危険性もあり得ますので、注意が必要でしょう。商談化数からの有効商談率は、50-60%というのが一般的なので、50%を切るようなことがあれば、インサイドセールスのアプローチに問題があると判断すべきでしょう。アプローチ方法の改善や有効商談の条件を、フィールドセールスと徹底的に話し合い、必要であれば有効商談の条件を変更して、フィールドセールスと同じ目線で商談を作るように努めます。またマーケティングとともに、リードの質を向上する工夫について検討する必要があります。
H2 インサイドセールス・SDRのKPI運用のポイント

最後にSDRのKPIを正しく運用するための、ポイントを2つご紹介しましょう。

商談化率の高いリードを分析する

商談率の高いリードを継続して分析することで、ファーストコンタクトから商談設定までの成功パターンをSDRが会得できるようになるものですが、リードデータの蓄積や分析をより正確かつ効率的に行うためには、SFA (Sales Automation=営業支援)、CRM (Customer Relation Management=顧客管理)、MA (Marketing Automation=マーケティング自動化)さらには名刺管理ツールなどを活用するのが、成功パターンの早期習得にはベストといえます。全てのツールを一気に導入するのは難しいので、まずは導入しやすいツールから検討されることをおすすめします。どれか一つでも活用してみれば、SDRにとって必要な情報やツールが見えてくるはずです。ツールの活用で客観的に有効リードを見極め、有効商談を定量的に獲得するための戦略が立てられるようになれば、SDRのパフォーマンスも向上し、確度の高い商談がより多く獲得できます。

商談化率向上のポイント

トークスクリプト 作成手順

出典:SOFT BRAIN eセールスマネージャー

効果的なトークスクリプトがSDRの商談化率向上には必要です。まずはインターネット検索等で得たサンプルを用いた一般的な内容でシナリオを作成して、顧客とのトークに使ってみます。効果がみられたらそれをベースに日々改善し、全く役にたたなければ、別の観点から新たなシナリオを作ってまた試してみます。トークスクリプトのPDCA (Plan, Do, Check, Action = 計画、実行、評価、改善) サイクルを実行することで、トークスプリクトが改善され、リードと効果的なコミュニケーションができる内容の、効果的なトークスクリプトになります。トークスクリプト完成後も、顧客のポジションや業界など、リードのタイプによりトークスクリプトのパターンを増やしていきましょう。また、商談化率の高いリードソースを多く活用できるように、マーケティングと充分に話し合い、お互いの戦略を共有して共通目標を定めることも、商談化率を向上させるための重要ポイントです。

おわりに

インサイドセールスに限ることではありませんが、業務のパフォーマンスを向上させるには、数値で客観的に成果が判断できるKPIを設定することが、現代社会ではもはや事実上の標準であるといえます。SDRがマーケティングから引き継いだ大量のリードの中から、多くの有効商談をフィールドセールスに受け渡すためには、単に商談化数を増やすことだけを追うのではなく、必須KPI以外のKPIにも注力しながら、商談を設定していくことが成功の早道です。

インサイドセールス設置をこれから検討される場合には、ぜひこちらもあわせてご覧ください。

なお、ゼンフォースでは「インサイドセールス特化型Salesforceカスタマイズサービス」を提供しております。インサイドセールスを早急に本番稼働させたい、Salesforceの設計を行い、オペレーションを効率化したいなどお悩みのみなさまに、経験豊富なコンサルタントがご支援するサービスです。詳細はこちらからご確認ください。

著者情報
武藤 かおり(むとう かおり)
Kaori Mutoh
1993年に縁あってSAPジャパン株式会社に入社以来、勤め人を終えるまで一貫してIT業界にて勤務。主に外資系IT企業(主にソフトウェアベンダー)数社で日本法人立ち上げも含めた、マーケティングまたはアライアンスパートナープログラム(チャネルビジネス)部門の責任者を務める。ERP、BPM,、ECM、OSS分野でのビジネス経験あり。2018年よりフリーランスとして、ITおよびマーケティングサービス企業向けの営業およびマーケティング支援コンサルタント、ライター(IT&マーケティングトレンド専門)、マネジメントおよびジュニアマーケターの外部メンターとして活動中。