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リードナーチャリングが失敗する6つの理由とは?成功する設計ステップまで解説!

マーケティング

目次

BtoBビジネスの見込み顧客のうち、すぐに商談へと進むものはほんの一握りです。MarketingSherpa社によると、BtoBリードの70%は長期フォローが必要だと言われており、リードナーチャリングは益々重要になってきています。しかし、リードナーチャリングは施策の効果がすぐに現れにくいものもあり、自社の施策が効果的に働いているのか分かりづらいところがあります。また、ナーチャリングの目的は顧客との関係性を維持し、望ましい行動変容を起こしていくことですが、ただただコンテンツを送付するだけで顧客に変化が起こせていないようなケースもよく見られます。このようなナーチャリングの失敗には共通点があり、それらを避けることで効果的なナーチャリングが実現できます。

この記事では、ナーチャリングでの失敗の背後に潜む6つの理由と、失敗を避け、効果的なナーチャリングを行うための8つの設計ステップについて詳しく解説します。

ナーチャリングとは

リードナーチャリングとは、見込み顧客の購買意欲を醸成することを目的に、顧客の興味度合いに応じて段階的に商品の情報提供を行う活動を指します。具体的には、デマンドジェネレーションの中で2番目のステップとして位置づけられており、1番目のステップであるリードジェネレーションを経て獲得された見込み顧客に焦点を当てて行われます。

リードジェネレーション

Demand Waterfallを出典元として当社にて作成

リードジェネレーションの主目的は新しい見込み顧客の獲得なのに対し、リードナーチャリングは既に手に入れたリードに対して、商品やサービスの購入検討を後押しすることが主目的です。これにより、リードという種を育て上げ、購入に結びつけることが狙いとなります。そして、このナーチャリングの次のフェーズとしてリードクオリフィケーションが存在し、ナーチャリングで育成されたリードから、見込み高い顧客を精査・選定する活動が行われます。見込み顧客の属性や興味・関心、行動を基に、スコアリングという手法を用いて点数を付与することで、成約の可能性が高い顧客を特定し、マーケティングチームからインサイドセールスなどのチームに引き継ぐ工程です。

ナーチャリング活動の概要について理解を深めたい方はこちらの記事を参照ください。

ナーチャリングが失敗する理由

ナーチャリングは効果的な手法として知られていますが、成功には多くの要因が絡み合っています。逆に言えば、一歩間違えれば失敗へとつながる要因も存在します。成功を手にするためには、その失敗の原因を正確に知り、適切な対策を取ることが求められます。本章では、ナーチャリングでよく見られる失敗理由とその背後にある課題を解説していきます。

1.保有リード数が少ない

ナーチャリングの成功の鍵は、適切なリードの数量と質にあります。そもそもの保有リード数が少ない場合、ナーチャリングで成果をあげるのは難しいです。例えば、メールの開封率が10%だとした場合、1000人のリードがいれば100人が開封しますが、リードが100人しかいないと10人にしか開封されません。これでは望むアクションへのコンバージョンも期待できません。また、少ないリードからのフィードバックで施策の調整を行うと、本当に必要な施策を正確に把握するのが難しくなる可能性があります。このように、保有リード数が少ないと、効果的なナーチャリング活動を展開するのが難しくなり、結果的に失敗につながるリスクが高まります。

2.顧客・業界理解が足りていない

顧客・業界の深い理解は、効果的なナーチャリングを実施する上で欠かせません。顧客の本当のニーズや業界の最新のトレンドを正確に理解していない場合、提供する情報が顧客の関心を引くものにならず、彼らの心を掴むことは難しくなります。顧客理解が不足していると、マーケティングのメッセージは一般的で無個性となり、顧客にとっての価値が低くなってしまいます。顧客理解のないナーチャリング活動では、顧客の購買意欲を高めることはできません。

3.ペルソナ、カスタマージャーニーを設計していない

ペルソナとカスタマージャーニーの設計は、顧客理解の観点からもマーケティング活動において重要な要素になります。ペルソナを明確にしない限り、理想的な顧客のニーズや課題、欲求に応える適切なコンテンツやサービスを提供することが難しくなります。また、カスタマージャーニーが明確でないと、顧客がどのステージで何を求め、どんな課題を抱えているのかを把握することができません。複数人でのマーケティング活動では、これらの設計がないと、それぞれの担当者が異なる顧客像を持ってしまう可能性があります。これは、ブランドの一貫性を損ない、顧客に対して矛盾したメッセージを送ってしまう危険があります。結果として、顧客の混乱や信頼の喪失を招きかねません。つまり、ペルソナやカスタマージャーニーの設計を欠いてしまうと、マーケティング活動は矛盾した方向に進むことになり、顧客の真のニーズに応えることができず、効果的なナーチャリングが難しくなります。

4.KGIやKPIを設定していない

KGI(主要目標達成指標)やKPI(主要業績評価指標)は、マーケティング活動の指針となる数値です。これらを設定しないと、何を目指して行動すべきかが不明確となり、方向性を失ってしまいます。具体的な目標や業績評価の基準がないため、マーケターが取り組むべき重要なタスクを見失い、結果として業務が闇雲なものとなります。また、数値に基づく改善や業績の評価が難しくなるため、組織内での成果の評価や改善の取り組みが疎かとなり、最終的には失敗へとつながります。

5.効果検証が足りていない

ナーチャリングは継続的な活動であり、施策の効果を正確に検証し、継続的に改善することが中長期での成果につながります。いわゆるPDCAサイクル(計画・実施・検証・行動)を適切に回すことで、活動の効果を定期的に確認し、必要な修正や改善を行うことができます。しかし、PDCAサイクルの中で効果検証が不足した場合、行った施策が本当に効果的であるのかを判断することが難しくなります。結果として、効果の低い施策を繰り返し行ってしまうリスクが高まるとともに、リソースの無駄使いとなり、全体のマーケティング活動の成果が低下します。

6.最初から大規模予算を投下している

ナーチャリング施策を開始する際、最初から大規模な予算を使ってしまうことはリスクが高いアプローチとなります。特に、見込み顧客のニーズや興味を正確に把握していない初期段階では、大規模な投資がそのまま大きな損失となる可能性が高まります。繰り返しますが、ナーチャリングは継続的な活動であり、何度も効果検証を繰り返しながら自社に合ったやり方を見つけていく必要があります。そのため、まずはスモールスタートを心がけ、小さな予算で効果を検証しながら、段階的に投資を増やしていくことが求められます。

失敗しない!ナーチャリング設計の8ステップ

この章では、失敗を避け、確実に結果を出すためのナーチャリング設計のステップを8つに分けて詳しく解説します。各ステップは、事前の理解から実行、検証、そして改善までを包括的にカバーしており、これを順番に進めることで、効果的なナーチャリングが実現します。

1.顧客理解・業界理解を深める

ナーチャリングの目的は、自社や自社の製品への関心を高め、最終的には購買行動へと導くことです。そのためには、顧客の真のニーズや課題を正確に掴むことが不可欠です。また、顧客が直面している課題を深く理解するためには、まず彼らの所属する業界の特性や背景を理解することが大切です。顧客のビジネスは彼らが所属する業界のルールや規制に乗っ取って営まれています。その土台を理解しないまま顧客の課題だけにフォーカスしても、顧客の課題に深く刺さるメッセージを発信することはできません。顧客とその業界を深く理解できてこそ、効果的なナーチャリングにつながります。

2.ペルソナ・カスタマージャーニーを設定する

顧客の課題に関する仮説が立てられたら、次のステップはペルソナとカスタマージャーニーマップの設定です。ペルソナは、理想的な顧客の典型的な特性やニーズ、課題を具体的に表したものです。ペルソナを具体的に設定することで、顧客の心情や動機をリアルに感じることができます。BtoBの場合は企業だけでなく、購買担当として関わる担当者ペルソナも作成することが望ましいです。

ペルソナ カスタマージャーニー
図:企業・担当者ペルソナの例

カスタマージャーニーマップは、顧客が自社や製品を知り、購入するまでの過程を明確に可視化します。カスタマージャーニーが可視化されることで、ペルソナが各フェーズでどのような課題に直面し、どのようなものを求めているのかが浮き彫りになります。また、この2つを設定することで、マーケティング部署内の共通認識が生まれ、施策のブレを防ぐことができます。ナーチャリングの成功には、これらのツールを活用し、顧客の行動や考えを予測し、最適なアプローチを設計することが不可欠です。

ペルソナ設定やカスタマージャーニーマップの作成方法についてはこちらで詳しく解説しておりますので、参照してください。

3.シナリオ設計を行う

ナーチャリングによって、顧客に行動変容を促すには、顧客のニーズに合わせて適切なタイミングでコンテンツを提供することが大切です。そのためには、適切なシナリオ設計が必要です。まず、ペルソナが普段利用するチャネルを特定します。それに基づき、各ステージで求められる情報や興味を引くコンテンツを用意します。次に、カスタマージャーニーを参考に、どのステージでどんなコンテンツを、どのような手段で提供するかのシナリオを設計します。このシナリオ設計は、顧客の旅をスムーズに進め、適切なタイミングで必要な情報を伝えるためのロードマップとなります。細かいステップの整備は手間がかかるかもしれませんが、的確なアプローチのためには欠かせない作業です。

4.各施策ごとのKPIを設定する

具体的な方向性を持つナーチャリングには、KGI(Key Goal Indicator:重要目標達成指標)に基づいたKPI(Key Performance Indicator)の設定が必須となります。KGIは組織が達成すべき最終的な目標を示すもので、その達成のためには各施策でどのような成果を上げるべきかを示す中間指標としてKPIを設定します。KPIはKGIに比べて動的で変更されやすいため、定期的にデータを分析し、適切に見直し・修正していくことが重要です。こうすることで、各施策が目標に向けて順調に進んでいるのかを可視化し、必要なアクションを明確にすることができます。

BtoBマーケティングにおけるKPIの詳細については、こちらの記事を参考にしてみてください。

5.コンテンツを作成する

コンテンツはナーチャリングの核心ともいえます。顧客を動かすコンテンツが作れないとナーチャリング活動はうまくいきません。顧客のニーズを的確に捉え、ニーズに応えるコンテンツを作りましょう。

コンテンツの具体例としては、メール、ブログ記事、ホワイトペーパー、事例集、セミナーやウェビナーなどのイベント形式のものなど多岐に渡ります。大切なのは、顧客の現在の検討段階やニーズに応じて、最も適したコンテンツ形式を選ぶことです。

WEB集客ブレイン 購買プロセス
出典:WEB集客ブレイン

初めて情報を求める段階の顧客にはブログ記事が適しているかもしれませんが、詳しい情報や実例を求める段階の顧客にはホワイトペーパーや事例集が適しています。顧客のニーズに的確に応えるための多様なコンテンツの準備が成功へのカギとなります。

6.コンテンツを顧客に届ける

コンテンツが完成したら、それをどのチャネルに乗せて顧客に届けるのかを検討します。コンテンツの質だけでなく、どのチャネルで情報を提供するかもナーチャリングの成功に大きく影響します。例えば、定期的な情報更新を目的とするならメールやニュースレターが適しています。一方、新しい情報やトピックを迅速に伝えたい場合はブログやSNSが効果的です。ここでも大切なのは、顧客がどのチャネルを好むのか、どのチャネルで情報を取得しやすいのかを理解し、その上で最適なコンテンツを選び、届けることです。顧客に合わせたチャネル選択により、コンテンツの届け手としての効果を最大化することができます。

7.効果検証を行う

ナーチャリングの活動を進める中で、おろそかにしてはいけないのが効果検証のステップです。ナーチャリング活動では実施した施策が見込み顧客に対して期待通りの反応をもたらしているのか、検証することが重要です。具体的には、配信したコンテンツの開封率やクリック率、特定のコンテンツを通じての問い合わせ数など、設定したKPIをもとにその達成度をチェックします。効果検証は一度きりではなく、何度も繰り返し行われるプロセスです。PDCAサイクルに基づき、常に検証と改善の繰り返しを行うことが求められます。その際、重要なのは正確なデータに基づいて検証することです。正確なデータをもとに効果を検証し、施策に反映することでより精度の高いナーチャリングを実現することができるようになります。

8.改善する

効果検証を終えたら、次は「改善」のステップへと移ります。検証の結果、顕在化した課題や気づきを元に、コンテンツや配信チャネルの最適化を図ることが求められます。たとえば、特定のコンテンツの開封率が低かった場合、その内容や配信タイミング、ターゲットの選定などを見直すことが求められます。また、この「改善」のプロセスも一度きりではなく、繰り返し行われる必要があります。常に顧客のニーズや市場は変化します。昨日まで勝ち筋だったものが急に効果がなくなることもあります。ナーチャリングの成功は、このプロセスをいかに繰り返し行えるかの継続性にかかっています。一度の失敗を恐れず、データに基づいて的確な改善を行い、再び見込み顧客に届ける。これが、持続的な成果を生むナーチャリング活動の鍵となります。

おわりに

本記事を通じて、リードナーチャリングの成功と失敗の分岐点を見極めることができたかと思います。ナーチャリングが失敗する主要な理由として、リードの質、顧客や業界の理解不足、適切なKPIやKGIの設定漏れなどが挙げられます。しかし、これらの問題点を理解し、対応するための具体的な8つのステップを踏むことで、失敗から成功へと舵を切ることが可能です。成功したナーチャリングは、ビジネスにおいて大きな成果を生むカギとなります。顧客の理解を深め、そのニーズに適切に応えることで、信頼関係を築き上げることができるのです。最後に、ナーチャリングは一度の活動ではなく、常に見直しと改善の繰り返しを要求される取り組みであることを忘れずに、正しい方法での実施を心がけましょう。

著者情報
田村 佳士(たむら けいし)
Keishi Tamura
2015年に東証一部上場の人材企業に入社し、新規営業、新規事業開発に従事。2018年に機械学習ベンチャーに出向し、AI技術を駆使した新規事業の企画を推進。その後、2020年に転職し、現在は大手IT企業にてAIプロダクトのプロジェクトマネージャを担当。エンタープライズ企業へAIプロダクトの導入プロジェクトの推進やプロダクト企画に勤めている。