データドリブンとは?

営業DX

Amazon社は「GAFA」の一員として世界を牽引する大企業ですが、同社が成功した要因のひとつと言われている施策に「リコメンド機能」と呼ばれるものがあるのをご存じでしょうか?
Amazonのオンラインショップに訪れた顧客に「おすすめ商品」を紹介する機能ですが、これは何も裏にセールスが控えていて商品を人為的にPRしているわけではなく、顧客の検索履歴などのオンライン上での行動や商品の購入傾向などのデータをもとに、その人に最適と判断された商品が自動的に紹介されるしくみになっています。

このリコメンド機能による商品購入はAmazonの売り上げの35%を占めるほど、同社の成功を支える一因となっていますが、実はこの例は今回ご紹介する「データドリブン」が非常にうまく機能した例として考えることができます。とはいえ、例を聞いても「結局データドリブンって何?」という方も多いかと思いますので、この記事ではデータドリブンの基本的な意味、なぜ必要性が高まっているのか、実行するためのステップや課題などについて、詳しく解説します。ぜひ最後まで読んでいただき、自社の戦略に取り入れてみてください。

データドリブンとは

データ データドリブン

(出典:Hevo

データドリブン(Data-driven)は、直訳すると「データを原動力とした〜」といった意味があり、「データドリブンの意思決定(Data-driven dicision-making, DDDM)」とはすなわち、ビジネスなどでの課題解決や戦略決定を行う場面において、勘や経験といった不確かなもののみに頼らず、収集したデータや過去の記録・研究の分析などによる確固たる証拠をもとに意思決定を行うことを表します。ビジネスの世界では時にリスクを取ることも必要とされます。

しかしそれはなにもチャンスと見るやなんでもかんでも無闇に飛びつけばいいということではありません。ビジネスでの意思決定を行う上では、事前にできる限りのデータを収集し、課題を取り巻く環境で何が起きているのかを事実ベースでしっかりと理解した上で最善策を導き出すことが必要となるでしょう。
インターネットやデータベースといったテクノロジーの発展により、近年企業が扱えるデータの総量は過去と比べ急激に増加しています。自社が保有するビッグデータをうまく意思決定に活用できれば、新ビジネスの開拓、顧客満足度の向上、売上増加、社内業務効率の向上など、データドリブンが活かせる場面は数え切れません。

データドリブンの必要性

先に少し触れたとおり、近年のビジネスシーンにおいてデータドリブンの必要性は急激に高まっています。その背景にあるのはテクノロジーの急速な発展と、それによる顧客の購買行動の変化や市場の激しい変化への対応が求められていることです。


市場と顧客の購買行動の変化

インターネットの急速な普及と発展により、さまざまな情報への能動的なアクセスが容易となっている現代では、顧客の購入意思決定を後押しする要因の大半は、企業から与えられる情報ではなく顧客自らが収集した情報が主体となっています。現に、Gartner社によるリサーチでは「BtoBにおける購買行動のうち、バイヤーがサプライヤーと接する時間は全体のたった17%に過ぎない」と言われていますし、SiriusDecisions社(現Forrester社)の「サプライヤーが引合いの連絡を受ける以前にバイヤーの購入意思の57%はすでに完了している」という衝撃的なデータもあるほどです。
データドリブン 購買 購買行動

(出典:Gartner

このように近年の市場および顧客の購買行動は、以前のように「企業が提供するものの中から顧客が選んで買う」といった企業主体のものから、「顧客が望んで情報収集しているものに合わせて企業が製品を提供する」といった顧客主体のものに変化してきています。
このように激しく変化する、もしくは非常に多様な顧客の需要を正確にキャッチするためには、「勘や経験」だけではなく、正確なデータをもとにした分析が必要不可欠となります。これが近年データドリブンの注目度が急速に高まっている理由のひとつです。

データドリブン実行4ステップ

それでは実際にデータドリブンを社内で実行する際にはどのようなステップを踏んだらいいのでしょうか?
ここでは一例として、以下4ステップに分けて解説します。

1)KPI設定と想定課題

2)データの収集・可視化

3)想定課題の妥当性確認・課題解決策検討

4)課題解決策実行

ステップ1:KPI設定と想定課題

データドリブンを実行する上でまず重要となるのがKPIの設定と課題の想定です。KPIとは「Key performance indicator」の略で日本語では「重要業績評価指標」と表されます。つまり想定課題とKPIの設定とは、「何のためにデータを収集するのか」「何をもって成功度合いを評価するのか」を決定するということです。

ただ闇雲にデータを収集するだけでは、そのデータから自社が課題としていることを解決する糸口を見つけられる可能性は限られてしまいます。自社が抱えている課題は何であるか、どのような意思決定を行いたいがためにデータを収集するのかをできるだけ具体化・明確化する必要があります。

また、最終的にデータドリブン化への投資や施策がどれほど成功したかを測る指標としてKPIの設定は必要不可欠です。KPI指標は定量的であることが望ましく、たとえば企業のブランド認知度向上が目的なのであれば認知度の変化率、営業効率アップを目的とするならば受注率や案件数の変化、生産コストの改善が目的ならば1製品あたりのトータルコストなどがKPIの候補として考えられるでしょう。

ステップ2:データの収集・可視化

想定課題とKPIの設定が完了したら、いよいよ本格的にデータの収集を行います。自社内にすでに課題を解決できるだけのデータがあればそれを使うのが早いですが、なければ新たにデータを収集する仕組みを作り出す必要があります。新たにデータを収集する際の重要な考え方として、収集できるデータには、1次データ(Primary data)と2次データ(Secondary data)のふたつのタイプがある、ということを認識しておくと効率的なデータ収集に役立ちます。

(出典:MarketResearch.com

1次データ(Primary data)
自社が自ら収集するデータ
課題が自社特有の市場やセグメント、製品特性などに関わる場合に有効
2次データに比べ時間、費用、労力などがかかる

2次データ(Sedondary data)
第三者によってすでに収集されているデータ
1次データに比べデータ収集が素早く楽に行える
データが自社の課題に100%合致しない可能性がある

必要なデータが誰かの手によってすでに世にあるのであれば、コストをかけて同じリサーチを繰り返す必要はありません。まずは、自社の課題に対する解答が2次データで得られるかどうかを確認しましょう。1次データを収集せざるを得ない状況でも、IT化が進んだ現代ではデータ収集に役立つツールがたくさんあります。営業やマーケティング関連であれば、顧客管理ツール(CRM)や営業支援ツール(SFA)、業務管理であれば業務自動化ツール(RPAなど)など。これらはデータを効率よく収集したり業務を自動化するだけでなく、収集したデータを可視化することにも優れています。収集したデータをもとに正確な分析を行うためにも、目的に応じてデータの可視化がしやすいツールを選定することは重要となるでしょう。

ステップ3:想定課題の妥当性確認・課題解決策検討

データの収集・可視化を行ったら、実際にデータの分析を行い想定課題の妥当性確認と課題解決策の検討を行うのが次のステップとなります。データを比較し分析した結果、当初想定していた課題が見当違いであった、もしくは新たに別の課題が浮上してきた、というのはよくあることです。間違っていたと責めるのではなく、データ収集により新しい発見ができたと切り替えを行うことが大切です。

収集したデータをもとに課題を再設定し、またデータと照らし合わせながらその課題の解決策を検討しましょう。

ステップ4:課題解決策実行

課題の解決策(アクションプラン)が固まったら、次のステップでは実際にアクションプランの実行とその効果測定までを行います。
この際に重要となるのは、確定したアクションプランをどれだけ組織的に実施できるか、という点です。データドリブンの実施、さらにはデジタルトランスフォーメーション(DX)化は一部署だけで行うよりも会社組織全体で行った方が効果が高いとされています。

企業規模が大きくなればなるほど組織が縦割りとなり、部署間での意思疎通が難しくなることが考えられますが、アクションプラン実行する上では、まず先に会社全体を俯瞰し意思決定をする経営陣の理解やデジタルリテラシーの向上を図り、彼らのバックアップを得ることをまず最優先に据える必要があるかもしれません。

データ分析に必要なスキル解説

ビジネスにおいて課題を正確に想定し、的確なデータ収集・分析を行い、効率的なデータドリブンを実行していくには、一般的に「データサイエンティスト」「データアナリスト」といったスキルを持つ人材が求められます。これらの人材には、データの取扱い・分析手法に関する知識や、統計学やデータベースに関する知識が求められます。

一方でBtoBにおいては、統計学やデータベースに関する知識よりも、組織的にKPI運用を行い、ロジカルに組織を動かしながら改善施策を実行できるスキルが重視されます。また同時にデータドリブンを実施する組織の業務に対する理解が求められます。

データドリブンが特に求められる領域

あらゆる状況において活用の場面を想定できる、また効果を発揮できる可能性を秘めたデータドリブンですが、その中でも特にデータドリブンへの注目度が高い領域があります。その一例がセールス、マーケティング、開発です。これらは複合的に関係するデータを持ち、そのデータのボリュームも多くなりがちなため、特にデータドリブンの実施が重要視されている領域です。

マーケティング

マーケティングにおいてのデータドリブンは「データドリブンマーケティング」と表現します。扱うデータは非常に多岐に渡りますが、潜在顧客のセグメンテーションやターゲティングを行う段階では潜在顧客の地理的・人工統計学的・行動的・心理的な属性データを収集し、グループ分けをしたり集中的にアプローチする層を選択したりします。

マーケ マーケティングセグメント 広告効果

(出典:Oberio)

また集まったリードを育成し商談につながる可能性の高いものをセールスに引き継ぐ「クオリフィケーション」と呼ばれるフェーズでは、後述する「BANT情報」と呼ばれるデータを収集することになるでしょう。
ここで挙げた通り、マーケティング部門はそのままでは定量的ではないデータを多く取り扱うことになるため、「スコアリング」と呼ばれる手法で各データに点数をつけて意思決定を行わなければならないケースも多く存在します。どのようなスコアリングをすればクオリフィケーションがより信憑性の高いものとなるかなど、セールスなどの部署と密に連携をとる必要があります。

セールス

セールスにおいてのデータドリブンは「データドリブンセールス」と表現します。セールスで扱うデータとしては、見込み顧客数、商談数、案件数、受注数、受注金額などの他に、マーケティングの項でも少し触れた顧客の「BANT情報」があります。

BANT  データドリブン セールス

(出典:Sales Odyssey

 BANT情報とは、顧客から引き出した情報を1)Budget(予算)、2)Authority(決済権)、3)Needs(需要)、4)Timeline(導入時期)の4つの要素に分類しスコアリングし、それぞれの案件がどれくらい有望であるかを判断するために使われるフレームワークです。BANT情報の中にはやはりそのままでは定量化できないデータも多々存在するため、有望度を正確に測るためにどのようなスコアリングが必要か、また上流のマーケティング部門と同様のスコアリングを採用するか否かなど、やはり他部署との密な連携が必要となるでしょう。

開発

開発においてのデータドリブンは「データドリブン開発」と表現します。データドリブン開発は、主にデータドリブンの手法を用いてシステムやアプリケーションなどのプロダクトを開発することを指します。扱うデータとしては、工数、工期、規模、生産性、信頼性などさまざまですが、マーケティングが収集する顧客ニーズやセールスから上がってくるプロダクトの顧客フィードバックに関するデータから、よりターゲットとする顧客層やセグメントに合った製品開発の意思決定を行うのもデータドリブン開発に含まれます。

データドリブンセールス推進における3つの壁

うまく機能すれば企業にさまざまな利点をもたらす可能性を秘めたデータドリブンですが、残念ながら実施するのが非常に難しいという点も持ち合わせています。
データドリブン 成功事例 成功

(出典:Forbes

Forbes社によると、2022年時点で自社のデータドリブンがうまく機能していると認識している企業は全体の約26.5%ほどであるとされており、2017年に調査した時の37.1%から下降してしまっています。データが右肩下がりとなってしまっているのは、早くにデータドリブンを取り入れた企業でも長く運用を続ける中ででさまざまな問題が発覚してきており、採用当初ほど自信を持ってデータドリブンが機能していると答えづらくなってきているからでしょう。
この項では特にデータドリブンセールスに絞り、推進を阻害する代表的な要因3つについて解説します。

①データが点在していて分析に大きなリソース・コストがかかる

特に大きな企業によく見られる問題点ですが、過去長くにわたる営業活動からすでに多くのデータを保有しているものの、それぞれのデータが社内のいたるところに全く異なる形式やフォーマットで保管されており、データの統合、もしくはそもそもアクセスすることすら困難であるというケースです。 データドリブン オンラインマーケ マーケティング

(出典:KoMarketing B2B Online Marketing

Forbesによると、2019年にTreasure Data社が行った調査ではデータドリブンを推進する上での困難な点として対象者の47%が「繋がりのないデータが点在しており、アクセスが困難」と答えているとあります。
せっかくデータを豊富に持ち合わせていても、見込み顧客情報はメール配信ツール、営業活動データはExcel、顧客データは自社開発のシステムなど......それぞれのデータを統合して分析することができなければデータドリブンを推進するのは困難です。
この問題の解決策としては、まず会社組織全体でデータの統合管理・分析が重要であることを再認識すること、その上で前述したデータに見込み顧客のWeb行動などのマーケティングで取得できるデータなどを加えて統合的に管理できるツールを選定し、活用することが挙げられるでしょう。顧客管理ツール(CRM)や営業支援ツール(SFA)はもちろん、社内で共通のERPシステムを採用し、部署間の情報共有を円滑にするというのも効果的です。そのためには全社が同じくデータドリブンの重要性を認識できるよう、経営トップ層を巻き込んだ活動も必要となるでしょう。

②営業メンバーがデータ収集の協力をしてくれない

データドリブンセールスがうまくいかない企業の課題点として大きなもののふたつ目は、営業活動・顧客に関する情報を持っている営業メンバーがデータ収集の必要性を理解してくれず協力してくれないというケースです。せっかくCRMやSFAなどのシステムを完備し、顧客情報をスムーズに収集できる体制を整えても、営業メンバーがそれらのツールを使ってくれなければ何の意味もありません。特に昔ながらのやり方で長く売上げを上げてきたという自負があるメンバーほど、ツールを使用したデータ共有への変化に抵抗を感じてしまうかもしれません。

この問題の解決策としては、まず取り組みに積極的に協力してくれそうな既存チームまたは組成チームを決めて試験的に「データドリブン実行4ステップ」を実施し、ある程度の成功例を作り出す、というのが効果的です。データドリブン実行による成功例を作り出すことができれば、その成果を営業組織全体に紹介して、営業メンバーにとってのメリットが訴求でき、当初腰の重かったメンバーもデータ収集を実行してくれるようになるかもしれません。また、並行して成功例をもっと大きな組織、会社の経営層に紹介し、トップダウンで全社を巻き込んだプロジェクトにしてしまうということで実行力を高める、ということも望めるかもしれません。

③分析できる人材がいない

前項の「データ分析に必要なスキル解説」で示したようなスキルを持った人材が社内にいないため、データの分析はもちろんアクションプランの検討も行えない、というのも阻害点として非常に大きなポイントです。ITエンジニア エンジニア 雇用 データドリブン

(出典:McKinsey

特に、日本の企業は世界的に見てもITエンジニアを社内に抱えているケースが圧倒的に少ないとされています。上図はMcKinsey社によるユーザーとITプロバイダ間のITエンジニアの雇用割合を示したグラフですが、日本ではほとんどのIT人材がITプロバイダに雇用されており、これからデータドリブンを推進しようとしているユーザー側の企業のほとんどはこれらの優秀なエンジニアを社内に確保できていないのです。

この問題の解決策としては、地道ではありますが優秀なIT人材を新たに雇用するか、社内の素養のある人材の育成・再教育(Re-skill)、もしくは外部のコンサルティング会社からのアウトソーシングを検討するということが挙げられるでしょう。確保した人材は②の解決策で挙げた、試験的なチームにアサインするのが望ましいですが、「必要なスキル」の項で解説したとおり、データドリブンの推進には高度なデータ分析のスキルに加えて内部的な業務に関する高い知見も必要となります。

人材の確保や育成にかかる時間やコストとどれだけ内部業務に関する知見を必要とするかなどを天秤にかけ、最善の策を検討しましょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか?データドリブンは、その言葉の意味「データを原動力とした〜」が示すとおり、あくまで意思決定をする上でのひとつの手段であり、目的ではありません。データドリブンを実施するにしても、まずは「どのような課題を解決したいのか」想定課題とKPIを明確に設定し、課題検証、解決策実行を行なっていく必要があります。
データドリブンセールスを成功させる上で特に重要なポイントは、「②の解決策」で述べたようにまずは小さく取り組んで成功例を作り出すことです。少しでも成果を上げ、経営トップ層にそのメリットを訴求し、会社の全組織を巻き込んでより大きく取り組むことがデータドリブンセールスを効率的に推進する上で必要不可欠となるでしょう。

著者情報

荻野 嶺 (おぎの れい)
米国NY、LAで幼少時代を過ごす。 2015年、伊藤忠商事入社。金属資源部門にて経営企画や事業開発に携わり、赴任先のシンガポールで石炭の三国トレーダーとして、各国の市場を新規開拓。2020年に帰国し、スタートアップ向け人材紹介のfor Startupsに従事。入社半年で最速昇格基準達成、MVT 受賞などの実績を上げ、各有力スタートアップのCEOやVCからの信頼を獲得。 2020年12月にゼンフォース株式会社を創業し、代表取締役CEOに就任。

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