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受注率を高めるSPIN話法とは?具体例を交えてわかりやすく解説!

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目次

営業活動を行う上での重要なスキルのひとつに、相手の情報を引き出す力「情報収集力」が挙げられます。顧客が潜在的に抱える課題などを情報収集し、解決策を提示することで受注や成約につながる可能性が高まるからです。しかし、営業活動を行う方々の中には「うまく顧客の課題やニーズを引き出す方法がわからない」「提案内容が適切だろうか」と悩む方も多いかもしれません。実際に日本の営業実態調査2019が行った調査では、85.9%の営業担当者が営業活動に何かしらの不安があると回答し、中でも「お客様と関係構築できているか」や「提案内容は適切か」といった不安を抱える営業担当者が多い結果が出ています。

顧客のニーズや課題を引き出し、受注率を高める手法として世界的にも注目されているのが「SPIN話法」です。本記事ではSPIN話法を今日から使いこなしたい方のために、SPIN話法の基礎に加えて受注率を上げるための実践方法を解説します。

SPIN話法とは?

SPIN SPIN話法

出典:公共財団法人東京都中小企業振興公社「海外企業とのオンライン商談を成功させるために資料作成とプレゼンテーション」

SPIN話法とは、S(Situation)、P(Problem)、I(Implication)、N(Need-Payoff)の4つの質問段階を経て、相手の潜在ニーズを顕在化するフレームワークです。SPIN話法は、イギリスの行動心理学者であり、1970年代にハスウェイト社を設立したニール・ラッカム氏によって提唱されました。SPIN話法の4種の質問についての概要と、具体的な質問例については、のちほどくわしく解説していきます。

なぜSPIN話法が受注率を高められるのか

SPIN話法は、受注率を高められる手法として注目されている営業テクニックです。実際に、この手法はマイクロソフト、IBM、GE、AT&T、ゼロックスなどの世界的にも有名な大手企業でも導入されています。ここでは、国を問わず大企業でも採用される、SPIN話法がなぜ受注率を高められるかについて解説します。

1.顧客の潜在ニーズを引き出せる

SPIN話法は顧客へ質問をしながら会話を展開するテクニックです。顧客に対し、一方的に話を進めながら提案するのではなく、質問を通じて顧客が「話を聞いてもらっている」という気持ちにさせることで、顧客の自発的な発言を促します。顧客が抱える課題の明確化につながる質問を通じて対話を続けることで、顧客自身もまだ気づいてない潜在ニーズを引き出すことができ、それらのニーズに対するソリューションとして自社商材やサービスを提案することで、受注につながる可能性が高まります。

2.顧客の温度感を高められる

SPIN話法の4つの質問は、ヒアリングからスムーズに商談へ移行できる流れとなっているのも特徴の一つです。商品やサービスの概要を淡々と説明をしていく商談の場合、営業担当者が顧客課題を理解せずに一方的に提案する形となるため、顧客の検討度合いも上がりづらいです。そもそも顧客課題を把握していなければ、提案そのものが顧客の課題やニーズからずれている可能性もあり、契約につながる可能性が低くなるケースも考えられます。一方でSPIN話法は、質問を通じて顧客自身の本音を引き出すため、顧客が課題やニーズを自分ごととして考えることができ、顧客の温度感を高めることに繋がります。直面している課題に対する解決方法であると顧客が捉えることができれば、サービスや商品の導入を前向きに検討するかもしれませんし、その結果成約や受注率も向上する可能性も高まります。

3.顧客からの信頼感を高められる

昨今の営業活動は、営業員が定期的に訪問して顧客に御用を聞き納品する営業スタイルの「御用聞き営業」から、「ソリューション営業」へと変化しつつあります。その背景は、顧客自らがニーズに合わせてオンライン上での情報収集がしやすいようになったため、営業が定期的に御用を聞いて注文を受ける必要がなくなったという点にあります。ソリューション営業へとシフトしたことにより、これまで以上に顧客との関係構築の重要度が高まりました。ソリューション営業は自社の製品やサービスの導入を課題の解決方法として提案するため、顧客に「この人から買いたい」と思ってもらえないと受注につながりづらいという特性があるためです。SPIN話法は、このソリューション営業においても顧客信頼度を高める効果があります。SPIN話法の4つの質問は、顧客の本音を引き出しながら対話を進められる内容と構成です。そのため顧客は「話を聞いてもらっている」気持ちになり、営業との距離も近くなります。営業と顧客との間に信頼関係ができているためその後の提案にも説得力が増し、受注につながる可能性も高くなるのです。

4.4つの不の解消が狙える

購買行動の障壁となりえるのが、「不信・不要・不適・不急」の「4つの不」です。顧客から「あなたの会社から買いたくない」、「必要ない」、「うちがやりたいことはそれじゃない」、「今じゃなくてもいい」と言われることを防ぐことで、成約や受注につながりやすくなります。SPIN話法を活用した営業活動は、4つの不の解消も期待できます。SPIN話法の質問を通じて、営業は顧客の現状を正確に捉えることができれば、顧客課題や課題が及ぼす悪影響を認識させるとともに、課題解決後の理想の姿をイメージしてもらうことも可能です。顧客自身が持っている4つの不をSPIN話法から解消することで、受注にもつながりやすくなります。

SPIN話法の特徴と質問の具体例

SPIN話法は、以下の4つの質問の流れに沿って顧客との対話を進めていきます。

・S:Situation(現状質問)

・P:Problem(問題質問)

・I:Implication(示唆質問)

・N:Need-Payoff(解決質問)

SPIN SPIN話法

出典:Keywordmap ACADEMY「SPIN営業とは?潜在ニーズに迫る4つのステップを事例と共に紹介」

本章では、それぞれの質問の特徴や内容、具体的な質問の例を順に解説します。

Situation 

Situation (状況質問)では、相手企業の現状を整理し把握する質問を行います。質問の際には、客観的な事実を質問することがポイントです。具体的な質問例を次にご紹介します。

質問例

「コロナ禍になり、お客様のニーズが多様化していませんか?」「最近他のお客様からはこのようなご要望が上がっていますが、御社では最近新しく上がったニーズはありませんか?」「営業目標の達成にはあとどのくらいの売り上げが必要ですか?」

Problem

Problem(問題質問)では相手企業が抱える問題点や課題をヒアリングします。具体的な質問の例を次に紹介します。

質問例

「多様化するニーズに対応するために多くの製品やサービスをそろえるのは大変ではありませんか?」「営業活動をしても提案がなかなかお客様に受け入れられないことがありませんか?」「お客様の課題が把握できず、どんな提案をすべきか分からず困っていませんか?」

Implication 

Implication (示唆質問)では現状を放置することで発生する具体的な影響(問題)と、それを回避する必要性を提示する質問を行います。問題点や必要性(ニーズ)を顕在化するための質問をするのがポイントです。具体的な質問の例を紹介します。

質問例

「お客様のニーズに応えられないと、どんな影響が出ますか?」「お客様の課題が把握できないままでは、適切な提案ができず受注につながらない危機感がありませんか?」「受け入れられない提案をし続けると、顧客は押し売りと感じ離れてしまうことになりませんか?」

Need-payoff 

Need-payoff(解決質問)では、最後に解決策として提案する質問を行います。相手企業のニーズを満たすことで得られる大きな付加価値を提示し、課題が解決した後の理想の姿を想像してもらうのが目的です。具体的な質問の例を紹介します。

質問例

「顧客ニーズに応えられるように、製品がアップデートできたらいかがでしょうか?」「●●によって適切な提案ができるようになれば、売り上げにつながると思いませんか?」「●●を取り入れて、押し売りにならず顧客へ信頼感を持ってもらえる提案を行ってはいかがでしょうか?」

SPIN話法を活用したヒアリングを成功させるためのコツ

SPIN話法 SPIN

SPIN話法を活用すれば、顧客が課題や解決策を自分事にでき、受注や制約につなげられる営業活動が期待できます。ただし質問を通じて自然と顧客への発言を促し、上手に本音を引き出すことができなけば成果は出にくくなるでしょう。SPIN話法をこれから導入する前に知っておきたい、営業ヒアリングを成功させるコツを順に解説します。

事前準備を丁寧に行う

顧客に会う前に、事前準備として顧客先企業情報を調査しておきましょう。SPIN話法の最初の「Situation」で顧客の現状はヒアリングしますが、状況質問や解決質問の仮説は事前に立てておく必要があるためです。顧客の現状を十分に把握していないと、一貫性のある提案ができない、またSituationの次の3つの段階にうまく進めない、といった問題が発生します。

顧客へ会う前に、まずは以下の情報を調査し把握しておきましょう。

・顧客で導入中、または活用中の製品やサービス

・顧客で導入中の製品やサービスの問題点

・予測できる顧客の課題

・自社が顧客の抱えている課題を解決できるセールスポイント

 

調査によって多くの情報を把握しておくことで、SPIN話法の質問や提案へと活用することができます。

顧客自身が問題に気づくような質問をする

Problem(問題質問)は、「あなたの現状はXXXなので、XXXという課題があると思います」と決めつけるような質問はできるだけ避けましょう。課題を決めつけるような質問は、顧客が課題を自分事として捉えられなくなってしまい、製品やサービスの導入へ前向きな気持ちを持たせることはできません。顧客自身が問題に気づくような質問をするように心がけることが大事です。また、Problemでは、顧客が課題に自ら気づくために誘導質問を行うのが良いでしょう。S(現状質問)とP(問題質問)の流れで顧客が「そうそう、その通り」と課題に気づく流れへ誘導するのが重要です。質問例としては以下です。

質問:「集客のためにどのような施策を行っていますか?」

回答:「広告の配信SNSの運用、オウンドメディアの運用やデータ分析などを行っています」

質問:「多くの施策を行っているのですね、それでは集客施策のために他の業務に手が回らないのではないでしょうか?」

回答:「そうですね、担当者の業務時間が圧迫されてしまい本来の業務が滞ってしまうことも多いです」

上記の質問では、「多くの施策を行っている」「他の業務に手が回らないのでは」の質問が誘導質問にあたり、「業務時間が圧迫されている」という潜在課題を顧客に気づかせているのがポイントです。

問題による悪影響の範囲を気づかせる質問をする

Problem(問題質問)では、顧客自らが課題を認識するための質問を行いますが、Implication(示唆質問)でも同様に、問題による悪影響の範囲を顧客自らが気づくことが必要です。「あなたが抱えている課題はこんなに大きいですよ?今すぐ取り除かないといけません」と営業が一方的に提案しても、悪影響を自分事化していない顧客にとっては響きづらいものです。だからこそ、Implication(示唆質問)を通じて顧客に対し段階的に、起きる可能性のある悪影響をイメージさせる必要があります。Implication(示唆質問)では問題の影響範囲を客観的に伝え、すでに影響が出ていないか、顧客に思い当たる節はないかを問いかけつつ、自分事として捉えてもらえるような質問を行います。質問例としては以下です。

質問:「多くの施策を行っているのに成果が出ていないということは、必要な情報が必要なクライアントに届いていない可能性もありますね」

回答:「確かにそうかもしれません、けれども現状時間が足りず他の施策が考えられないんですよね」

ここでのポイントは、「多くの施策を行っているのに成果が出ないということは…」の質問で顧客に発生している課題と影響を提示し、「時間が足りず他の施策が考えられない」影響が既に出ているという課題や問題を認識させることです。

顧客の立場に立って未来の姿を想像する

Need-payoff(解決質問)では、「自社のサービスで顧客の未来をどのように変えられるか」を提案するフェーズです。ここでは抱えている課題を解決した将来像を顧客自身がイメージできるようにします。たとえば、製品やサービスの導入効果の説得材料として、商談時に事例紹介を行うとします。中小企業のクライアントを相手に、大企業の導入事例を伝えたり、業種等が顧客と異なっている事例を伝えても「よそとうちは違う」というスタンスから聞き流してしまう顧客もいるかもしれません。以下のように顧客が抱えている課題を解決した姿がイメージでき、さらに課題解決した姿がとても素晴らしいことを提示できる質問を投げかけましょう。

質問:「もしも集客の施策にかかる時間を現在の10分の1に減らせたら、他の効果的な施策を考えられるかもしれません」

回答:「そうできたらとても助かるのですが」

提案:「弊社の●●なら~(提案)」

回答:「(解決後のイメージを持っている状態のため、提案に対して前向きに検討できる状態となる)」

このような質問を投げかけることにより、顧客が課題を解決したあとの具体的な将来像をイメージできるようになるため、提案に対し前向きに検討し、受注につながる可能性も高くなるでしょう。

ロープレを入念に行う

SPIN話法を営業活動へ導入しようとするものの、営業経験の浅い営業は「うまくヒアリングができない」「SPIN話法の流れに沿った良い質問が思い浮かばない」と悩む方もいるかもしれません。顧客との商談を行う際にスムーズに話を進められるよう、経験値の高い営業担当者とロープレを入念に行い、SPIN話法を使った商談の練習をしておくことが重要です。経験値の高い担当者と行う実践的なロープレは、実際の商談時SPIN話法をスムーズに展開できるだけでなく、何パターンかの質問の流れもつかみながら商談に臨めるため、より商談時の成功度を高められるでしょう。

おわりに

SPIN話法の概要や質問例、さらにSPIN話法を取り入れた営業活動を成功させるコツを解説しました。SPIN話法は顧客自らに課題や解決策を気づかせ、課題解決後の将来像をイメージさせることで受注や成約の可能性が高まるテクニックです。しかし、SPIN話法の効果を最大化させるには、営業が一方的に話すのではなく顧客に本音を引き出させるための質問を投げかける必要があります。十分なテクニックが身に付いていない営業担当者へは、SPIN話法を取り入れたロープレを行うなどの準備が必要です。ロープレや研修などの準備を内製でできない場合は、外部のプロの支援を受けることも手法の一つです。ゼンフォースでは実力のある講師をアサインし、現場の営業担当のスキルアップを目的とした研修やロープレを実施しています。ぜひご検討ください。

著者情報
柳本 瑠衣 (やなぎもと るい)
Rui Yanagimoto
米国の州立大学卒業後、米国にて就労経験を経て帰国。国内のIT企業へ入社後、新規開拓営業と経営企画を経験。パーソルホールディングス株式会社(旧インテリジェンス)にてデジタルマーケティング領域を経験した後に、MAツール開発会社へ入社、インサイドセールス部門責任者として従事。2人目の出産を機に働き方を見直し2022年にフリーランスに転身。現在は営業DX領域のコンサルティングとマーケティング業務支援等を行う。