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営業メンバーのモチベーション低下理由とモチベーションアップさせる7つの施策

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目次

営業メンバーを管理・マネジメントする人の悩みの一つとして「モチベーション管理」があるのではないでしょうか。営業組織においても生産性の向上が求められる中、営業メンバーのモチベーションは効率に大きな影響をもたらします。モチベーションの維持・管理が適切にできなければ、営業組織の効率化やメンバーのスキルの底上げをしたくても上手くいかない、なんてこともあるでしょう。今回は、営業メンバーのモチベーションについて、低下する理由と、向上させるための施策を7つ紹介し、事例も交えながら解説いたします。

【調査結果】"営業メンバーのモチベーション管理・維持"は最も多い悩み

HubSpot Japanの「日本の営業に関する意識・実態調査 2023」によると、マネジメントレイヤーが最も課題に感じていることは2年連続で「従業員のモチベーション管理・維持」でした。2021年の調査に比べて、「最近、離職率が多い傾向にあること」が増加しています。

営業組織 課題 人事マネジメント課題

出典:HubSpot Japan

営業メンバーのモチベーションを高く維持することは、多くの組織で課題に感じていることだと考えられます。

営業のモチベーションが低下する要因3つ

上記の調査結果もふまえて、営業のモチベーションが低下する要因を3つご紹介いたします。

1.やるべき業務量が多すぎる

同調査のモチベーションが低下する要因についての設問では、「こなさなくてはならない業務が多すぎる、責任領域が広すぎるなど、仕事における余裕のなさ」という回答が最も多く、その状態をもたらす会社の課題の1つとして「営業組織の人員が足りない」が挙げられていました。やるべき業務が多すぎると、モチベーションが低下してしまいます。そもそも、今の人員でカバーできる業務量かどうかを改めて検討し、必要に応じて採用や業務効率化を検討すると良いのではないでしょうか。

2.必要な支援がない・期待を感じられない

活躍するために必要なスキルを習得したいと考える人が多いものの、会社からの支援がないと「期待を感じられない」とモチベーションが低下してしまうことがあるでしょう。モチベーションが低下する理由についての設問では、「上司や組織から必要な支援を得られないことや組織からの期待を感じられないこと」が2位の回答を集めています。また、獲得したいスキルに関する設問では「営業スキルをより向上させたい」という回答が多くありましたが、リスキングの姿勢に関する設問では、「従業員のリスキングについて特に何の施策も講じていない」という回答が売り手全体の49%となっており、スキルアップのための支援ができていない組織が多いことがわかります。営業メンバーのモチベーションを高く維持するためには、成長とさらなる活躍を期待し、スキルアップに必要な支援を提供することが重要でしょう。

3.挑戦機会が少ない・スキルが活かせない

日々のルーティンワークだけを行っていては、モチベーションが低下してしまうことは避けられません。営業メンバーに挑戦の機会や新たなスキルの習得、そのスキルを活かせる環境を提示することは、高いモチベーションを維持するために欠かせない施策です。同調査の「リスキリングができていない理由」に関する質問では、役職が低くなるほど「どのスキルを獲得したら良いか分からない」「時間がない」という理由でスキル習得に時間が避けていないという回答が多く見られました。日々の業務に追われ、新たなことに触れる機会がなければ、モチベーションが低下するだけでなく、自分自身が目指す方向性も見失ってしまう恐れがあります。会社から求めるスキルなどを伝え、必要な支援を行うことで、モチベーションの低下を防ぐことができるでしょう。

営業のモチベーションをアップさせる施策7つ

ここでは、営業のモチベーションをアップさせる具体的な施策について、7つご紹介いたします。

1.実現可能な目標だがチャレンジングな目標を設定してもらう

営業目標を立てる際には、やや挑戦的かつ実現可能なレベルの目標を設定することで、意欲の高い状態で仕事に取り組むことができるでしょう。部門やチームで統一された目標を設定することが一般的ですが、モチベーションを上げるためには、個々のメンバーに適した実現可能な目標を設定することも重要です。個人の営業スキルや実力に応じて、個別に目標を設定すると良いでしょう。また、最終的な目標を達成するまでに必要なプロセスや行動を細分化し、こまめに振り返る機会を作ることも重要です。

特に経験の浅いメンバーにとっては、目標が明確化されて成果につながりやすくなります。心理学で使われる「自己決定理論」によると、自分で目標を自ら決定するなどの内発的動機づけはより良い成果と行動の継続につながるとされています。そのため、自分自身で目標を決めることも、モチベーションを高める一つの方法です。営業マネージャーは定量的なデータだけでなく、面談を通じて個々の課題を把握し、適切な目標設定ができるようにサポートしましょう。

2.期待を伝える

営業のモチベーション向上の施策として、「期待を伝える」ことはとても重要です。HubSpotの調査では、「上司や組織から必要な支援を得られないことや組織からの期待を感じられないこと」が、モチベーションが低下する理由として挙げられています。営業マネージャーは個別の面談や1on1の機会を活用し、明確な言葉で期待していることを伝えると良いでしょう。コミュニケーションを通じて、営業メンバーが自身の役割や目標に対する期待を理解し、それに応える意欲や自信を高めることができます。

また、具体的なフィードバックやアドバイスを提供することも重要です。必要なスキルや行動を明確にして、期待していることを具体的に伝えることで、営業メンバーは改善や成長に向けて前向きに行動することができるでしょう。

3.業務効率化をする

営業の仕事において、営業活動に直結しない業務に多くの時間を奪われると、生産性が下がりモチベーションが低下する恐れがあります。HubSpotの調査によると、営業メンバーや責任者が無駄と感じる業務の第1位は「社内会議」で、2位が「社内報告業務」でした。多くの組織では社内会議や社内報告業務があると思いますが、顧客への時間が削られてしまっている可能性があります。そのため社内会議を必要最低限に減らすことや、社内会議に必要な準備の時間を削減することを検討すると良いでしょう。例えば、SFAやCRMツールを導入すれば、営業活動が可視化され、社内会議や報告に費やす時間を少なくすることができるでしょう。業務を効率化すれば、営業メンバーはより重要な業務に集中することができ、モチベーションの向上につながるでしょう。

4.スキルアップ・リスキリングの機会を設ける

新たな成長の機会を設けることは、モチベーションの向上に非常に重要です。HubSpotの調査でも上がっていた項目で、リスキリングに関する設問では「従業員のリスキリングについて特に何の施策も講じていない」という回答が半数を占めていました。スキルアップの機会がまだ提供されていない場合は、積極的に機会を作りましょう。営業メンバーにとって成長の機会を提供することは、彼らのモチベーションを高めるだけでなく、組織の競争力も向上させます。

一方、既にスキルアップの取り組みが行われている場合でも、定期的にメンバーに対してスキルアップに関するニーズや希望をヒアリングすることが重要です。メンバーが自分自身の成長に向けて取り組みたい領域や目標を明確にし、さらなる成長を目指すモチベーションにもつながります。ただし、希望をヒアリングをするだけでは不十分な場合もあります。同設問では役職が低くなるほど「どのスキルを獲得したら良いか分からない」という回答もありました。そのためスキルアップしたい内容をヒアリングするだけでなく、今取得すべきスキルは何かを明確に提示することも重要です。

5.キャリアパスを伝える

モチベーションを向上させるためには、現在の業務が将来どのように役立つのかを明確に伝えることが必要です。社内でのキャリアパスだけでなく、市場価値の視点も含めて伝えることで、自身の成長と将来の展望を具体的に把握し、モチベーションを高めることができます。仕事の目的や意義を理解することによって、自身の活動が顧客や会社にとって重要であることを認識し、営業メンバーは仕事へのやりがいや意欲を感じることができます。さらに、仕事の目的や意義が明確に伝わると、営業メンバーは自己成長やキャリアの発展に向けて積極的に取り組むことができます。自身の仕事が将来のキャリアパスにつながっていることを認識し、成長の機会や挑戦を求める意欲が高まるのです。キャリアパスの明確な伝達は、営業メンバーにとって目標や意義を持った業務遂行を促し、結果的にモチベーションの向上につながるでしょう。

6.賞賛・感謝を伝える

HubSpotの調査では、仕事のやりがいを感じる瞬間として、「顧客から感謝されたとき」や「上司から評価されたとき」が上位に挙げられています。賞賛や感謝は、仕事のやりがいやモチベーションに大きな影響を与えるのです。営業マネージャーは、1on1の場などで営業メンバーに対して感謝や賞賛の言葉を伝えると良いでしょう。賞賛や感謝の言葉を伝えることで、仕事への取り組みに自信を持つことができ、営業メンバーのモチベーションが高まります。また、具体的な状況や行動について言及することで、メンバーが自身の成果を認識しやすくなります。「ここが良かった」「この姿勢がチームにいい影響を与えている」など、具体的に賞賛し、感謝の気持ちを伝えましょう。

7.インセンティブ制度を設ける

感謝や評価をインセンティブという形にすることで、モチベーションはさらに高まります。インセンティブ制度の設定により、営業メンバーは目標に向かってより一層の努力を行い、成果を上げることに意欲を持つでしょう。インセンティブは単にお金だけではなく、賞賛や評価も含まれます。インセンティブは、営業成果だけでなく、プロセスや取り組み方なども総合的に評価するとよいでしょう。特に若手社員は多くの成果を出すことが難しく、大きな成果が出ていなくてもプロセスや取り組み方などを評価することで、モチベーションの向上につながります。また、賞賛や評価を通じて営業メンバーの貢献を認めることで、モチベーションの向上にもつながります。

モチベーションアップ施策の事例

最後に、モチベーションアップ施策を行った企業の事例を2つ紹介いたします。

KDDI株式会社

KDDI株式会社は、スキルアップやリスキリングの機会を設けて、社員のモチベーションを向上させるだけでなく、コア人材を育成することに成功しています。企業内大学の「KDDIユニバーシティ」を設立し、中核をなすDX事業および社内のDX人財の育成を目指すプロジェクトを推進しています。会社がDX人財を必要とする背景や会社が求めるDX人財の定義について明確に説明し、求めるスキルを具体的に提示してから、スキルの習得に取り組むよう工夫をしています。このように意図を伝えることで、食い違いを防ぎ、モチベーションを向上させることに成功しています。KDDIユニバーシティは人財マネジメントサイクル「4Dサイクル」に基づいて研修を設計しています。4Dとは 「Define(定義・評価)」「Discover(選抜・採用)」「Develop(育成)」「Deploy(配置・活用)」で、大学のように知識やスキルを体系立てて学んでいくことができるのが大きな特徴です。

4Dサイクル 4D

出典:KDDI株式会社

また、DX人財を5つの職種を具体的に定義し育成します。これらの職種は専門領域として人事制度に組み込まれています。

1. ビジネスディベロップメント職種
2.コンサルタント&プロダクトマネージャー職種
3.テクノロジスト職種
4.データサイエンティスト職種
5.エクスペリエンスアーキテクト職種

またDXの分野に限らず、全社員に対して研修メニューの全体像を可視化した上で、全部門共通のポータブルスキルや専門スキルを、各社員が望むタイミングで学習できる環境を構築しています。

ソフトブレーン株式会社

「インセンティブ制度を設ける」施策を行ったソフトブレーン株式会社の事例が、Benefit Oneのウェブサイトで紹介されています。ソフトブレーン株式会社は、営業力強化と社内コミュニケーション活性のために、インセンティブのサンクスポイントを導入し、売上げの向上につなげました。インセンティブは単にお金だけでなく、従業員のモチベーションを高める要素として賞賛も含まれています。この会社では、結果だけでなくプロセスも評価を行い、その評価に応じて「サンクスポイント」を付与しました。サンクスポイントは評価を可視化するもので、「この仕事をしてくれたから」、「この人のおかげで仕事がうまくいったから」などの理由があれば、社内でメンバー同士で渡すことができます。このサンクスポイント導入から約半年で100件の活用がありました。 2日に1回ほどポイントを渡しあっていることになります。 ちょっとしたポイントだけでも、「ありがとう」を添えるだけで、 そこにコミュニケーションが生まれ、社内交流が活発化します。この制度により、従業員は自身の成果に応じて報酬を受け取ることができ、モチベーションが向上しました。ポイントを使ってほしい商品やサービスと交換することもでき、やりがいや満足感の向上にもつなげています。

また、案件化率が制度導入前と比べて1.8倍に高まった若手社員もおり、売上の向上にもつながる成果となりました。このようなインセンティブ制度は、従業員の成果を評価し報酬を与えるだけでなく、賞賛ややりがいを提供することで、モチベーションの向上につながります。

おわりに

モチベーションが低下する理由とモチベーションアップさせるための施策について紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。改めて、モチベーションを高く維持するためには、以下の7つの施策が重要です。

1.実現可能な目標だがチャレンジングな目標を設定してもらう
2.期待を伝える
3.業務効率化をする
4.スキルアップ・リスキリングの機会を設ける
5.キャリアパスを伝える
6.賞賛・感謝を伝える
7.インセンティブ制度を設ける

これらをまとめると、モチベーションアップのためには、会社として目指すべき方向や目標を示し、ムダな業務を排除し、必要な支援を提供して、賞賛や感謝を言葉や形にして伝えることが重要です。

ゼンフォースでは、セールスイネーブルメント支援(分業体制の構築など)や法人営業研修を行なっており、モチベーションアップの環境を提供するのにお役立てできるかと存じます。営業メンバーのモチベーションに課題を感じている方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

著者情報
荻野 嶺(おぎの れい)
Rei Ogino
米国NY、LAで幼少時代を過ごす。 2015年、伊藤忠商事入社。金属資源部門にて経営企画や事業開発に携わり、赴任先のシンガポールで石炭の三国トレーダーとして、各国の市場を新規開拓。2020年に帰国し、スタートアップ向け人材紹介のfor Startupsに従事。入社半年で最速昇格基準達成、MVT 受賞などの実績を上げ、各有力スタートアップのCEOやVCからの信頼を獲得。 2020年12月にゼンフォース株式会社を創業し、代表取締役CEOに就任。