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BtoBマーケティングで必要とされる人材とは?

マーケティング

目次

近年、Webマーケティング施策の重要性が高まりつつあることから、デジタルマーケティング予算の増加を視野に入れる企業が急増し、BtoBマーケティングの注目度が上がっています。株式会社メディックスがBtoBマーケティング担当者を対象に行った「BtoB領域のデジタルマーケティング」の調査によると、SaaS系商材のWebマーケティング予算は全体の過半数以上を占めている結果が出ています。非SaaS系商材はSaaS系商材と比較すると予算比率は下がりますが、Webマーケティングへ充てる予算そのものは前年比より増加しています。この結果からも、多くの業界、業種でデジタルマーケティングが重要視されていることが分かります。

デジタルマーケティングの取り組みが重視される一方で、マーケティングを実行する人材不足の課題を抱える企業も多いのが現状です。株式会社メディアリーチが実施した、国内企業の経営者・役員300名を対象に行われた「国内企業のデジタルマーケティング実態調査2022」によると、「精通した人材がいない」と回答した方が全体の35%と「人材不足」がもっとも多い結果でした。

実際にBtoBでマーケティング施策を実行しようとしても、「BtoBマーケティングに関するスキルや知識を持った人材が社内にいない」「マーケティング業務や組織を任せるだけの人材が不足している」といった人材不足への課題を抱えている担当者も多いのではないでしょうか。本記事ではマーケティング人材の重要性や求められるスキル、人材不足を解消する方法を解説します。

マーケティング人材を確保する重要性

BtoBマーケティングの活動や施策を行う人材のニーズが高まっています。多業種においてマーケティング人材の確保が重要視されるようになった背景を解説します。

デジタルマーケティングの普及

近年、BtoB向けサービスを展開する業界では商談や成約につなげるための施策として、デジタルマーケティングが急速に広まり、営業活動におけるマーケティングの重要性が高まりました。総合ITサービス企業であるTIS株式会社が実施した「デジタルマーケティング実施状況」のアンケート調査でも、95.3%の企業が「デジタルマーケティングの重要性を感じている」と回答。また、富士通総研が2019年に実施した調査でも半数以上の企業が「デジタルマーケティングはビジネスに貢献している」と回答していることから、企業のデジタルマーケティングへの注目度が高いことが大いに分かります。
デジタルマーケティング 重要性 BtoBマーケティング

出典:TIS株式会社「~95%以上の企業がデジタルマーケティングの重要性を感じる時代に~デジタルマーケティング実施状況についてアンケート調査」

デジタルマーケティング施策は、デジタルチャネルを活用した施策や、ITツールを活用して分析を元に施策実行することから、様々なマーケティングスキルが必要になります。そのため、各企業ではデジタルマーケティングに関する知識やスキルを持つ人材の確保が急務になっていると言えるでしょう。

マーケティング部門の役割拡大

マーケティング部門が果たす役割が拡大し、マーケティング業務も複雑化している傾向にあります。マーケティング施策がオフラインからオンラインへシフトしつつあることも、マーケティング人材の確保が必要な理由のひとつです。従来のマーケティング手法と言えば、主に新聞、テレビCM、雑誌などのマスメディアや販促物によるオフライン広告です。マーケティングだけでなく、営業担当者の飛び込み営業や顧客との対面など、営業活動もオフラインでのアプローチが主流でした。

それが近年では、インターネットやスマートフォンの普及が後押しとなり、顧客がオンライン上で情報収集やコミュニケーションを活発に行う方法が主流となりつつあります。株式会社グリーゼの行った「BtoB製品購入プロセスにおけるWebマーケティングの重要性」の調査では、82%の顧客が営業担当者との商談時には、製品やサービスの絞り込みを終えていることが分かりました。顧客の購買行動の変化に合わせ、BtoBにおけるマーケティング活動もオンラインの領域へとシフトさせる変化が求められています。

社会やビジネスにとって、未来の予測が難しくなる状況である「VUCAの時代」であることもマーケティングが重要視される理由のひとつです。新型コロナウイルス感染拡大などの影響もあり、既存のビジネスモデルの価値が突然失われてしまうことも珍しくありません。中小企業基盤整理機構が中⼩企業経営者1,000⼈を対象に行った「経営に関する悩み‧課題への意識調査」では、事業の継続について半数以上が不測の事態に備えたいとしているものの「判断に自信がない」などと先行き不透明な現代において多くの経営者が不安を抱えていることが分かりました。
災害感染対策 災害対策

出典:中小企業基盤整備機構「中小企業 小規模事業者 1,000人に経営の悩みを聞きました」

顧客のオンラインへの行動変容、不透明なビジネス環境への生き残りへ対応するためにマーケティング部門の役割範囲も年々拡大しています。マーケティング業務が多様化していくことも見据え、専門的なマーケティング知識を持つ人材の確保は必須と言えるでしょう。

マーケティング人材が不足している背景    

BtoBマーケティング活動を行う人材の確保が急務であるものの、多くの企業ではマーケティング「人材不足」という課題に直面しています。デジタルマーケティング支援会社である株式会社シンクロが行った「マーケティング教育についてのアンケート調査」によれば、72.3%が「アフターコロナ時代の経営において、マーケティング部門の役割が拡大している」と回答しているものの、半数以上が「現場のマーケティング人材が足りていない」と回答しています。 デジタルマーケティングを拡充したいと考えつつも、人材不足で推進が難しい現状が浮き彫りになっていると言えるでしょう。ではなぜ、マーケティング人材が不足しているのでしょうか。ここでは、その原因や背景を解説します。

育成が難しい

マーケティング人材不足の要因の一つに、そもそもマーケ人材を育成することが困難である、という点が挙げられます。株式会社シンクロが行った「マーケティング教育についてのアンケート調査」では、半数以上の企業がマーケティング教育に必要な研修が整っていないと回答しており、多くの企業で人材を育成する環境整備がなされていない傾向にあることが分かります。
マーケティング人材 マーケティング研修

出典:株式会社シンクロ「プレスリリース 重要度が高まるアフターコロナのデジタルマーケティング。9割の組織がもつマーケター育成の課題とは?~マーケティング教育についてのアンケート結果まとめ~」

マーケティング人材育成を困難とする原因のひとつが、企業が専門的なノウハウや育成時間を確保できないことです。日本企業が営業活動においてマーケティングよりも販売活動を重視してきたこと、日本にマーケティングを専門的に学べる教育機関などが整っていないことが影響し、マーケティング人材を育成できる土壌が整っていない企業が多いことも、マーケティング人材の育成が困難である原因となっています。

人材市場にいない

すでに専門的なスキルや知識を持つ優秀なマーケティング人材が、転職市場などに出てこないこともBtoB企業のマーケティング人材不足の原因のひとつです。マーケティング人材は企業に属さず、フリーランスをはじめとした柔軟な働き方をする傾向にあります。全国20代~60代のフリーランスWebマーケター300人を対象として行われた「年収や働き方などの実態調査」では、フリーランスのWebマーケターの職種でもっとも多かったのは「デジタルマーケター」という結果が出ており、優秀なマーケターの多くはフリーランスとして活躍している傾向が伺えます。その他にも、柔軟な働き方ができることから、コンサルティング会社などで勤務しつつ副業で仕事を受けるケースもあります。このような背景から、いくら企業が求人広告を出しても魅力的な求人情報ではない限りマーケティング人材が集まりにくく、結果的にマーケティング人材不足を招いているということです。

人材の要件定義が難しい

企業側が、どのようなマーケティング人材を確保すればいいのか理解していないことも、マーケティング人材不足の原因とも考えられます。「マーケティング教育についてのアンケート調査」では、人材育成のベース環境の整備について「人材要件の明文化ができているか」の質問について、80.2%が「できていない」と回答、さらに、「各社員のスキルの可視化ができているか」の質問について、81.2%が「できていない」という結果が出ています。
人材要件定義 マーケティング人材

出典:株式会社シンクロ「プレスリリース 重要度が高まるアフターコロナのデジタルマーケティング。9割の組織がもつマーケター育成の課題とは?~マーケティング教育についてのアンケート結果まとめ~」

この調査結果から、マーケティング人材のニーズが高まっているものの、マーケティング人材に必要なスキルを企業側が理解していないこと、また、どんな人材を育成すべきか、募集すべきか分からず困っている企業が多い実態が伺えます。

BtoBマーケティング部門に必要な人材・スキル

BtoBマーケティング部門の人材を確保するためには、企業側がマーケティング人材に必要な能力やスキルを理解し、人材の要件定義ができるようにする必要があります。BtoBマーケティング部門に必要な人材・スキルのうち、代表的なものを以下にまとめました。

・ プロダクトマーケティング
・ コンテンツ
・ Web
・ マーケティングオペレーション

それぞれの詳細を順に解説していきます。

プロダクトマーケティング

プロダクトマーケティングとは、自社製品を抱える企業において、製品のプロモーションプラン、販売促進施策などを行う業務です。IT機器などの有形製品はもちろん、Webサービスやソフトウェアといった無形製品も製品(プロダクト)などを展開するサービスで、プロダクトマーケティングといったスキルが必要となります。

プロダクトマーケティングは別名ブランドマネージャー、プロダクトマネージャー、PRマネージャーとも呼ばれます。自社製品やブランドの販売促進のための戦略設計、商材のターゲットを具体的に設定するペルソナ設定、顧客が商品を購入し、利用、継続・再購入するまでの道のりであるカスタマージャーニーの検討・作成、メールやSNSを活用したマーケティングキャンペーンの検討・実行などを行います。プロダクトマーケティングを行う人材に必要なスキルは、主にブランド戦略、カスタマー サービス、ライティング、メッセージング、マーケティング キャンペーン管理、メールマーケティングのスキルなどです。

コンテンツ

コンテンツマーケティングをリードする人材は、別名 コンテンツ ディレクター、シニアコピーライター、コンテンツマーケティング マネージャーなどと呼ばれています。コンテンツマーケティングでは、顧客にとって価値のあるコンテンツを作成します。代表的なコンテンツはホワイトペーパー、電子書籍、ウェビナー、ポッドキャスト、オウンドメディアなどで、それらの作成スケジュールの計画や、必要に応じたライターやデザイナーなどの手配などが主な業務範囲です。コンテンツマーケティングを行う人材に必要な主なスキルは、執筆、グラフィックデザイン、セールスファネルの熟知、バイヤーペルソナの理解、魅力的なコンテンツの制作するスキルなどです。

Web

Web担当者は、企業の中でWebやデジタルを活用し、成果を出すためのあらゆる活動を行う人材であり、別名ではシニアWeb開発者、シニアフロントエンド Web開発者とも呼ばれています。Web担当者の業務は主に、Webサイトの最適化やランディングページの設計、更新、Webサイト訪問者のデータ分析、分析結果を取り入れたWebサイトの改善や更新などです。また、UI/UX デザイナー、グラフィックデザイナー、Web開発者、データアナリストと協力してWeb領域の業務を行うことが一般的です。Web担当者には、フロントエンド開発、CRM、UX/UI、データ分析、デジタルアクセシビリティ基準、人事管理などのスキルが求められます。

マーケティングオペレーション

マーケティングオペレーションとは、マーケティング業務全体を俯瞰し、マネジメントや施策設計を担う業務や立場のことです。プロダクトマーケティングやコンテンツ、Webのマーケティング担当者がそれぞれの領域で実務を行うのに対し、マーケティングオペレーションの担当者は、マーケティング業務全体の管理、全体業務や運用の最適化を行います。そのため、「顧客志向」「コンテンツ志向」といった実務的な業務ではなく、マーケティングの工程や運営の最適化を重視した裏方的な業務にあたるのが特徴です。マーケティング関連のオペレーション業務を担う人材だけでなく、部署や組織のこと、さらにマーケティングオペレーションを実行するデジタルツールを指す場合もあります。マーケティングオペレーションは、別名でデータマネージャー、シニアデータ分析、マーケティングオートメーションマネージャーとも呼ばれています。求められるスキルはマーケティングオペレーションのためのツール(マーケティングの自動化のためのMA、CRM、スケーリング、広告ツール、解析ツール)などを運用するスキル、マーケティングの課題や改善点を洗い出せるデータ分析スキル、マーケティング活動から売上までの全体プロセスを設計・施策かできるオペレーション管理スキルなどです。

人材不足を解消するには

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BtoBの営業スキル強化のため、または商談・成約へつながるリード獲得のためといった目的でマーケティング組織を構築しようとしても、マーケティングを担う人材が不足しているといった課題を既に抱える企業もいるかもしれません。今後自社でBtoBマーケティングの人材を確保したいと検討している企業へのアドバイスとして「社内で人材を登用・育成する」「外部リソースを活用する」の2つの方法をここでご紹介します。

社内で登用・育成する場合

BtoBマーケティングの適正を持つ人材を社内から登用または育成する方法です。社内の既存人材をマーケティング人材として登用または育成を検討する場合は、自社の製品やターゲットについて熟知している人材が適任となります。営業活動経験があり顧客との接触が多い営業担当者や社歴の長い人材が適切と言えるでしょう。自社の製品やターゲットの知識が豊富である条件以外にも、ITリテラシーが高い人材を選ぶのも重要です。近年顧客の行動がオンラインへシフトしたことを受け、マーケティングの手法はITツールを活用したデジタルマーケティングが主流となっています。デジタルマーケティングを推進するためにも、IT機器に強く、デジタル領域の情報にも敏感な人が好ましいでしょう。

外部リソースを活用する場合

自社内でマーケティングの適正人材がいない場合、またノウハウやリソース不足などで育成する環境が整っていない場合は外部リソースからマーケティング人材を確保する方法もあります。外部リソースを活用する場合の主な方法は「マーケティング支援企業にアウトソーシングする」「優秀なマーケターに業務依頼する」の2つです。

マーケティング支援をしている企業にアウトソーシング

1つは、マーケティング業務支援を提供している企業へマーケティング業務をアウトソーシング(外注)する方法です。アウトソーシング先の候補となるのは、広告代理店、Web制作会社、コンテンツマーケティング会社、サイト分析・コンサルティング会社、SEO会社、システム導入支援会社、インサイドセールス代行会社などになります。マーケティング支援を提供している企業によって、依頼できる業務や強みは異なります。自社がマーケティングで優先すべき業務は何か、マーケティング業務の範囲でどこまで社内で行いどこまで外注するかを踏まえて、依頼先を検討しましょう。

優秀なマーケターに業務委託

マーケティング知識が豊富で専門性の高いフリーランスを登用する、または副業としてWebマーケティングを行っているマーケターへ業務委託する方法もあります。依頼する場合の業務領域は主には、コンテンツマーケティング(SEO)、広告運用、SNSマーケティング、データ分析、Webコンサルティングなどです。マーケターへの業務委託はマーケティング支援会社よりも低コストで依頼できる、フットワークの軽いマーケターならスケジュールや依頼内容も柔軟に対応してもらえる、といったメリットがあります。ただし、マーケターによって依頼できる業務内容やスキルは異なる点に注意が必要です。契約を締結する前に、マーケターの実績についてはしっかり確認をしておきましょう。

 おわりに

BtoBマーケティングにおける人材の重要性や必要なスキル、人材不足を解消する方法を解説しました。マーケティング人材は社内での登用や育成、社外への外注といったことで確保できますが、いずれも一朝一夕では解決できません。とはいえ、何も取り組まないままではBtoBマーケティングの人材はいつまでたっても確保できず、自社の営業活動や利益の確保にも課題が生じたままとなります。BtoBマーケティングでより成果を上げるために、今からできるマーケティング人材不足の解消に取り組んでみてはいかがでしょうか。

著者情報
高橋 洋介(たかはし ようすけ)
Yosuke Takahashi
2010年リクルート入社。アルバイト・中途採用領域の求人広告営業に従事し。在職中にMVP5度受賞などの実績を上げ、業界・業種・企業規模問わず多くのクライアントからの信頼を獲得。その後人材系広告代理店を経て、2020年よりフリーランスとして活動を開始。現在では法人向けに採用支援、営業支援、SaaS導入支援など幅広く対応。