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【BtoB企業向け】ナーチャリング計画の立て方とは? 

マーケティング

目次

BtoBビジネスでの商談化数や率の向上のために必要な施策の一つとして、「ナーチャリング」活動を取り入れる企業が増えています。アイティメディア株式会社が実施した「見込み客への営業活動に関する調査」では、「見込み客へのどのような情報発信方法を行っているか」という問いに対し、「個別での打ち合わせ」が59%、「一斉メール配信」が37%、「自社のホームページまたはオウンドメディア」が34%と、各企業がさまざまな方法で見込み顧客と接点を持ちナーチャリング活動を行っていることが分かりました。ナーチャリングにより顧客と接点を持ち続けることで、商談化や案件化が期待できますが、「ナーチャリングに有効な具体的な施策が分からない」「計画の立て方や進め方が分からない」と悩みを持つ担当者も多いかもしれません。

本記事ではナーチャリング計画の立て方と顧客の検討段階別の有効なナーチャリングの手法を解説します。

ナーチャリングとは?

ナーチャリングとは、見込み顧客の興味度合いに応じて、段階的に商品の情報提供を行う活動です。見込み案件の創出・発掘を行う活動であるデマンドジェネレーションの2番目のステップに当たります。デマンドジェネレーションの中でのナーチャリングの目的を解説します。

ナーチャリングの目的

ナーチャリングの目的は、見込み顧客の購買意欲を醸成することです。新規で獲得した顧客にテレアポ活動などでいきなり商談を持ちかけるといった営業活動を行う方法もありますが、検討段階に入っていない顧客に対しアプローチをしても、商談後に成約に至るケースは低い可能性があります。顧客の前情報などもなく、いきなり商談を持ちかけるといった非効率な営業活動ではなく、顧客の課題等を事前に把握し興味度合いに応じた施策を段階的に行うことができれば、商談後の成約率も上がり営業効率の向上が期待できます。この段階的に顧客へアプローチを行う活動こそが育成、すなわちナーチャリングです。

ナーチャリング

ナーチャリングの施策は、ナーチャリングの前のステップであるリードジェネレーションで獲得した新規の見込み顧客を対象に行います。そして顧客の興味関心を引き出し、商品やサービスの購入検討を後押しします。ナーチャリングの第一目的は、顧客が商材に興味関心のある状態へ育成し、次のステップに引き渡すことであり、効果的なナーチャリングを行うことで、商談化や案件化につながる可能性が高くなります。

ナーチャリングの概要や重要性、取り組むポイント、有効な手法についてはこちらで解説しています。

ナーチャリングの種類

ナーチャリングの種類は、長期的なナーチャリングと短期的なナーチャリングの2種類に分けられます。ここでは、それぞれの特徴やナーチャリングを行う計画の立て方の違いについて解説します。

長期的なナーチャリング

長期的なナーチャリングは、見込み度合いが低い顧客に対して行います。見込み度合いの低い顧客は商材への認知度や興味関心が低い可能性があるため、長期スパンでのナーチャリング施策を行い、顧客の認知や興味関心を高めることが重要です。たとえば、名刺交換をした顧客に対しては、オウンドメディアや無料セミナーなどのコンテンツを介して商材の認知度を高めるための施策を行ったり、休眠顧客に対してはメールを送るなど新たな課題発掘のための施策を行うといった方法があります。長期的なナーチャリングは、どのようなコンテンツをリードに送るべきか、コンテンツ企画等も含め長期的な計画が必要であることを前提に考えましょう。

短期的なナーチャリング

短期的なナーチャリングは、見込み度合いが高い顧客に対して行います。見込み度合いが高い顧客の中には、すでに顧客の組織内で具体検討のフェーズに至っているケースもありますので提案後に成約や案件化に至る時間が短い可能性があります。そのような顧客に対しては、短期的なナーチャリングを行い、最終的な購入決定を後押しするような施策を行います。たとえば、資料請求やカタログダウンロードを行った顧客に対しては、顧客の業界にマッチした他社事例資料を送付し、サービスや商品導入後のイメージを具体化させるといった方法です。短期的なナーチャリングでは、具体的に顧客へ商材の購入を検討させる短期的な施策を講じることを重要視し、計画しましょう。

ナーチャリング計画の立て方

ナーチャリングの成果を上げるためには、顧客の興味や関心を高めるために継続的に接点を持つ必要があります。ナーチャリング計画は、以下のプロセスに沿って立てていきます。

1.KGIを設定する
2.リードの情報を一元化する
3.リードをセグメントする
4.セグメントごとのナーチャリング手法を検討する
5.手法ごとのKPIを設定する
6.施策の実行と分析を行う

ここでは、それぞれの手順について解説します。

1.KGIを設定する

まず、ナーチャリング活動を行う上での最終目標となる「KGI」を設定しましょう。KGIを設定することでナーチャリング施策の実行目的を明確にし、施策の具体的な方向性が定まります。KGIを設定するポイントは主に2点であり、目標を統一することと、具体的な数値を上げることです。最初の目標を統一するという点においては、ナーチャリングの計画の目的がぶれないようにKGIを一つに統一させることが重要です。案件化数、売上目標値など、会社や部署として達成する必要のある目標をKGIに設定しましょう。また、KGIは測定可能な定量的な数値を設定します。たとえば「売上を上げる」といった定性的な目標を設定してしまうと、達成させるための具体的な施策が分からず、また目標までの進捗度合いや成果が計れず計画が破綻してしまう可能性もあります。「半年後までに売上を〇%上げる」のような、定量的数値を設定することで、KGIを達成するために行うべき行動が逆算できるようになり、また成果達成までの進捗の測定もできるようになります。

2.リードの情報を一元化する

次にリードの情報を正確に把握するために、企業内に散在するリードの情報を集約し、一元化します。企業で保管されているハウスリードは、セミナーや訪問などで入手した名刺、Webサイトやオウンドメディアで入手したメールアドレス、資料やホワイトペーパーダウンロードで入手した企業名や部署名などが一般的です。リードの情報管理は企業によって方針が異なりますが、営業が個人でリードを属人的に管理している、または部門ごとに管理している、などリード情報が分散されている組織もあるかもしれません。リードの情報が分散された管理方法では、ナーチャリング対象から抜けや重複が発生するなどの問題が出る可能性があります。リードの情報を一元化しておくことで、ナーチャリングする対象の抜けや漏れ、重複を防げ、育成しやすくなるでしょう。リード情報の一元化には、営業担当者の管理している情報を効率よく収集、管理できるMAツールの活用がおすすめです。

3.リードをセグメントする

一元化した情報を元にリードをセグメントします。セグメントとは、性別や住所、年齢、職業、過去の取引履歴、リード情報を獲得したチャネルなどで顧客を分類することです。セグメントによって、ターゲットとするリードの検討段階が明確にできます。自社の保有リードはどの顧客段階が多いかも把握できるため、ナーチャリングで行うべき施策も絞り込めるでしょう。

4.セグメントごとのナーチャリング手法を検討する

セグメントしたリードの属性に合うナーチャリング方法を検討します。どのセグメントのリードにはどういった施策を行うと反応が高まるのか、リードの見込み度合いを上げられるのか、をイメージしながら検討しましょう。たとえば商材をまだ認知していないリードには顧客の潜在課題を炙り出すようなコンテンツを送付したり、具体的に購入を検討しているリードには実際の導入イメージがつきやすい導入事例、といったように効果的な手法を具体化します。刺さるナーチャリング手法についての詳細は後述します。

5.手法ごとのKPIを設定する

実行するナーチャリングの手法ごとに、達成するべきKPIを設定します。KPIとは「Key Performance Indicators」の略語で、最終目標であるKGIを達成するための中間数値指標のことです。KPIを設定し、定期的に観測することでKGI達成までの進捗や達成度合いが可視化できます。最初のステップで設定したKGIを達成させるためのプロセスを逆算して考えることで、KPIに設定すべき指標や数値を把握できるでしょう。

6.施策の実行と分析を行う

KPIの設定後は、ナーチャリング施策を実行しましょう。実行した施策ごとにメール開封率・ページアクセス数などを細かく分析し、KPIの達成度合いを測定します。分析結果を元に必要に応じて施策の改善を行い、PDCAを迅速に回しましょう。また、施策の実行は単発ではなく長期視点で計画を立てましょう。定期的にリードが求める情報を提供し続けることで、リードの商品やサービスに対する検討の見込み度合いを高められることが期待できます。

【検討段階別】刺さるナーチャリング手法

ナーチャリング施策は、顧客の検討フェーズに合わせた手法を選ぶことが重要です。顧客のニーズに合わせた情報を提供することで、顧客の商材への認知や興味関心をひき、見込み度合いを高めることに期待できます。顧客の検討フェーズを把握する上で用いられるのが、マーケティングファネルです。マーケティングファネルとは、顧客の認知から購入にいたるまでの購買行動をファネル(漏斗)の形に示したものを指します。

ナーチャリング マーケティングファネル

出典:SATORI「マーケティングファネルとは?基礎から活用方法を徹底解説」

マーケティングファネルの各フェーズに沿ったナーチャリング施策を行うことで、効果的に顧客の検討度合いを高められるでしょう。マーケティングファネル内で、ナーチャリングを行うフェーズは以下の3つです。

1.認知(気づき)フェーズ
2.興味・関心フェーズ
3.比較・検討フェーズ

購入フェーズはすでに顧客が商材への購入を検討する段階に入っているため、ナーチャリングでの施策は不要です。その他の3つのフェーズでは、顧客の状態に合わせたナーチャリング施策を講じることで、顧客の見込み度合いを高められます。次に、マーケティングの各フェーズに沿った顧客の状態と、適したナーチャリング施策を解説します。

1.認知(気づき)フェーズ

認知(気づき)フェーズとは、顧客がまだ自分の課題やニーズ、自社の商材の存在に気づいていない状態です。ナーチャリング施策としては、以下のような顧客の課題への気づきと自社の商材の認知を促すための施策を行います。

・Twitter広告 
・YouTubeの広告 
・CM 
・プレスリリース
・ブログ記事などのオウンドメディア
・メールマガジン
・企業SNSの運用

認知(気づき)フェーズでナーチャリング施策を行うことで自分の課題やニーズに気づかせることで、次のフェーズに進みます。

2.興味・関心フェーズ

興味・関心フェーズは見込み顧客の課題やニーズが顕著化し、課題の解決方法を探している状態です。興味・関心フェーズでは、以下のように顧客の興味・関心の高い話題や情報を提供できるナーチャリング施策を講じましょう。

・顧客の課題に即した企業イベントへの案内
・顧客の課題に即したセミナー・ウェビナーへの案内
・業務マニュアルやノウハウに関するホワイトペーパーのダウンロード
・市場データや調査結果をまとめたホワイトペーパーのダウンロード
・特定の条件を満たした顧客へにあらかじめ用意した複数のメールを順次送るシナリオメール
・特定の行動をした顧客へ送るステップメール

興味・関心フェーズの見込み顧客は課題やニーズが顕著になっているものの、解決方法として自社の商材は検討していない状態です。ナーチャリング施策として顧客の課題やニーズに即した情報を提供し、課題解決方法として自社商材を提示することで、自社の商材を解決方法のひとつとして顧客へ提案できます。

3.比較・検討フェーズ

比較・検討フェーズのリードは、顧客が商材やサービスの導入を決定している状態です。このフェーズの顧客は、自社の商材に興味があり、他の競合他社の商材と比較、検討し最終的に購入する商材を選びます。比較・検討フェーズでは自社の商材の購入後の具体的なイメージを提示できる、以下のようなナーチャリング施策を行いましょう。

・同業他社の成功事例紹介
・商材の導入事例
・特定の行動(問い合わせ、資料請求、見積もり請求)などを行った顧客へ送るステップメール
・インサイドセールスによるヒアリングや提案
・商材導入後のシミュレーション作成

比較・検討フェーズで自社商材の購入により解決できることや、成功事例を提示することで自社の商材の購入を促します。比較・検討フェーズでのナーチャリングに成功すれば、顧客の検討度合いが高い状態で営業担当者に引き渡せるため、商談で成約につながる可能性も高くなるでしょう。

おわりに

BtoB企業向けにナーチャリング計画の立て方やマーケティングファネルのフェーズごとの有効なナーチャリング施策を解説しました。ナーチャリングは継続的に顧客と接点を持つことで見込み度合いを上げるため、成果を上げるためには事前に顧客のフェーズごとに有効な施策を検討し、計画的に運用することが重要です。「ナーチャリングで行うべき施策が分からない」、「リソース不足などでナーチャリングを運用できない」などのお悩みをお持ちなら、外部のコンサルティングや代行の利用を検討するのも有効です。ゼンフォースでは、ナーチャリングを含め、営業組織の改革や強化に関する課題解決のコンサルティングサービスや、代行サービスをご提供しております。ぜひお気軽にご相談ください。

著者情報
柳本 瑠衣 (やなぎもと るい)
Rui Yanagimoto
米国の州立大学卒業後、米国にて就労経験を経て帰国。国内のIT企業へ入社後、新規開拓営業と経営企画を経験。パーソルホールディングス株式会社(旧インテリジェンス)にてデジタルマーケティング領域を経験した後に、MAツール開発会社へ入社、インサイドセールス部門責任者として従事。2人目の出産を機に働き方を見直し2022年にフリーランスに転身。現在は営業DX領域のコンサルティングとマーケティング業務支援等を行う。