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【インサイドセールス向け】トークスクリプトの作り方とポイントを解説

インサイドセールス

目次

営業効率化や組織の改革などを目的に、インサイドセールスの立ち上げを検討する企業が近年増えています。それと同時に、導入時期のノウハウ不足による課題を抱える企業も多いようです。SALES ROBOTICS株式会社が実施した「インサイドセールスの内製化に関する市場調査」によると、「人材の育成に時間がかかる」「インサイドセールス人材の採用ができない」、「リスト作り・アプローチなどのノウハウがない」などのインサイドセールス推進課題が上がりました。インサイドセールスは国内では比較的新しい取り組みでもあるため、ノウハウが足りないことからインサイドセールスの運用に課題を持つ企業が多いようです。

インサイドセールスでのノウハウ不足による営業トーク展開やアプローチ方法の面での課題解決に役立つのが、トークスクリプトです。トークスクリプトを用意することで、顧客への営業トークやアプローチ方法が可視化され、インサイドセールスの品質の均一化や課題の発見に役立つからです。本記事では、「トークスクリプトの作成方法が分からない」と悩む企業のためにトークスクリプトの作り方や手順を解説します。効果的なトークスクリプトを作成し、インサイドセールスの成功にぜひ役立ててください。

インサイドセールスとは?

インサイドセールスとは顧客獲得を目的に見込み顧客(リード)に対して、電話やメール、ウェブ会議ツールなどのデジタルコミュニケーションを活用して、営業活動を行う手法・ポジションのことです。インサイドセールスによって顧客と常に接点を持ち続けることで信頼関係を構築し、顧客の獲得につなげます。

インサイドセールス

インサイドセールスは、企業へ直接訪問する営業手法であるフィールドセールスと比較し、業務効率化やコスト削減といった生産性向上が期待できる取り組みです。近年のテレワークの普及、サブスクリプション型ビジネスの拡大、ナーチャリングの重要性の高まりといった営業活動の変容に対応できるとして、インサイドセールスは注目されています。

インサイドセールスの概要や目的、重要性についてはこちらの記事で詳しく解説しています。

トークスクリプトとは?

トークスクリプトとは、営業活動における顧客対応する際の営業台本(マニュアル)です。インサイドセールスの目的は見込み顧客と長期的な接点を持ち、信頼関係を築くことです。トークスクリプトでは、顧客の潜在的な課題やニーズを引き出すための情報収集を目的とした内容を構成します。

トークスクリプトの必要性

インサイドセールスのトークスクリプトの重要性や役割について解説します。

品質の標準化ができる

トークスクリプトを活用することで、インサイドセールスでの会話品質の標準化の実現が可能です。営業トークは基本的にメンバー個々で内容や展開に違いがあることが多いため、属人化しやすいのが特徴です。受注や案件化率が低いため、営業トークを見直そうとしても会話の内容が型化されていない場合、原因を把握することは難しいでしょう。営業活動の見直しを行い改善することもできません。そこで役立つのが、成果を上げているメンバーの会話内容をトークスクリプトとして作成する方法です。型として共有すれば属人化が防げ、成果の出ないメンバーの改善にもつながり、会話品質の標準化につながります。

改善点が明確になる

トークスクリプトにより営業トークの内容を客観視できるようになるため、改善点を明確にできるというメリットがあります。実際に顧客に対し話をするトーク内容とトークスクリプトの内容を比較することで、違和感のある箇所を炙り出し、改善を行います。トークスクリプトの通りに話を進め、話の最中に断られてしまった箇所があれば、そのトーク表現に問題があるとして原因を探ることもできます。問題を把握し、改善することで、営業トークの精度やパフォーマンスを上げられる可能性も高いでしょう。

カスタマーサービスの向上につながる

トークスクリプトの内容には、顧客からよく聞かれる質問への回答や、顧客が抱えがちな課題に対するレスポンス方法も含まれます。トークスクリプトは単に顧客に対し何を話すかを準備するものだけでなく、顧客のニーズや課題を自然に聞き出すストーリーを想定するものでもあります。想定することで、顧客課題を迅速に解決し、顧客との信頼構築につなげることにも繋がります。顧客のニーズや課題を解決することによって結果的に、顧客満足度の向上をもたらすため、トークスクリプトはカスタマーサービスの向上にも期待できます。

人材育成・教育に活用できる

トークスクリプトは、新人営業担当者の人材育成や教育にも活用できます。営業トークのノウハウやスキルが低い新人の営業担当者の中には、「顧客に対し話の進め方が分からない」「どんな内容を話すべきか分からない」といった問題を抱える方もいるでしょう。トークスクリプトを作成し営業研修時に営業トークのトレーニングとして活用することで、ノウハウやスキルの向上につながります。また、練習や実践を繰り返すことで、アポイントの獲得も増えれば、早期から成功体験を得ることにもつながり、新人営業マンのモチベーション向上にも期待できます。

トークスクリプトの作成手順

トークスクリプト 作成手順 ステップ

インサイドセールス向けのトークスクリプトは、目的やターゲットを明確にしてから具体的なヒアリングの内容や構成を作成していくのがポイントです。インサイドセールス向けトークスクリプトの作成方法を、手順に沿って解説します。

目的の明確化

まずトークスクリプトの目的を決めます。インサイドセールスの目的は、顧客と信頼関係を構築し、新規の案件化や商談化につなげることです。そのため、電話やメール、オンライン相談などのインサイドセールスでの顧客へのアプローチごとに目的を明確にしましょう。インサイドセールスがアプローチを行い、顧客に行ってもらいたいアクション(目的)は、一般的には「サービス資料やお役立ちコンテンツの申込への誘導」「サービス問い合わせへの誘導」「商談のアポ獲得」などが挙げられます。これらの目的を明確にし、どの成果へ誘導したいのかを考えた上でトークスクリプトを作成しましょう。そうすることで、より顧客に対するトークの方向性が定まり、目的を達成できる可能性が高まります。

ターゲットの定義

次に、作成するトークスクリプトでアプローチをする先のターゲットを定義します。ターゲットによって効果的な話し方やトークの内容は異なるため、トークスクリプトの方向性を決める上でもターゲットの設定は重要です。自社の商材の特性を踏まえて、ターゲットの年齢、役職、職種などを想定し、詳細にターゲット設定を行いましょう。マーケティング戦略等でターゲットのペルソナ設計等を事前に行われている場合は、そちらを参考にターゲットを改めて定義するのもおすすめです。

ヒアリング内容の設定

トークスクリプトの目的とターゲットを明確にしたあとは、トーク内容を決めていきます。まず最初に決める内容はヒアリング内容です。前提としてヒアリングを行う目的は、自社のサービスや商材に対するニーズや現状課題などの顧客情報を正確に聞き出すことです。正確に聞き出すためには、顧客の抱える課題や要望に少しでも沿った質問を投げかけることが有効です。リードを獲得した流入経路や、フォーム入力時に収集した情報などで顧客の状態を仮説立てを行える場合は、それに沿ったヒアリング内容を準備しましょう。また、サービス資料ダウンロード、ホワイトペーパーダウンロード、セミナー参加など、顧客が申し込みを行った内容に応じてトークスクリプト上での提案内容を変更していきます。インサイドセールスの活動では、顧客との信頼関係を構築していくことが最も重要です。顧客と信頼関係を構築するためには、顧客のニーズをヒアリングし、必要とする情報を提供する必要があります。ヒアリングの項目や内容を事前に設定しておくことで、トークスクリプトのどの段階で、何を聞くべきかが明確になります。

インサイドセールスのヒアリングの必要性、項目設定、ポイントについてはこちらの記事で詳しく解説しています。

トークフローの骨子作成

ヒアリング内容を設定したあとは、トークフローの骨子作成に入ります。トークフローの骨子は、トークスクリプトの会話の流れを可視化したものです。トークフローの骨子の構成要素として、トークフローの段階と入れるべき内容をそれぞれ以下にまとめました。

トークフロー トークスクリプト
トークフローでは、上記の表のようにイントロダクション、本文、クロージングの3段階に分けて骨子を作成すると、営業トークの流れをつかみやすくなります。それぞれの段階では、トークに入れるべき内容のほか、トークに分岐が生じる場合、分岐ごとの骨子も作成しましょう。顧客の検討度合い、課題、興味に応じて返答が変わるため、トークの内容も変化していきます。想定されるトークの内容や分岐ごとに適切なアプローチができるように、トークをパターン化し、それぞれのトークスクリプトを作成しましょう。分岐別にトークスクリプトを作成することで、顧客それぞれで最適化された営業トークの実現につなげられます。

具体的なトーク内容を入れ込む

トークスクリプトの骨子作成後、いよいよ具体的なトーク内容を入れ込みます。トーク内容の具体化のポイントは、実際の電話でのトークを想定し、口語体で作成することです。文語体や箇条書き、キーワードのみといったトークスクリプトでは、実際に担当者が営業トークで活用する際に、トークスクリプトの内容を把握できず、重要な箇所を飛ばす、聞き漏らす、返答がつまる、といった問題が発生する恐れがあります。たとえば「●●と言われたら××と返す」といったように、会話を想定しながら詳細なトークの内容を考えていきます。担当者が実際に電話口で話すことを想定して、トークスクリプトを作成しましょう。

インサイドセールスの成功事例

インサイドセールスの取り組みを実施し、明確な成果を出している企業も多くあります。ここでは、各企業のインサイドセールスの成功事例を紹介します。

インサイドセールスの導入メリットや成功させるポイント、成功事例については、こちらの記事で詳しく解説しています。

営業DX強化にあたり、インサイドセールス人材を育成 | 株式会社イトーキ

オフィス家具の製造販売や空間デザインの設計などを事業とする株式会社イトーキでは、営業DXの一環としてインサイドセールス部門を立ち上げました。しかし、社内にインサイドセールスに精通した人材がいないこと、インサイドセールスの評価軸や評価方法が分からないこと、の大きく2点に課題を抱えました。

ゼンフォース 研修 営業強化
課題解決のために、ゼンフォースが提供するThe Model型営業に特化した研修・コンサルティングサービス「営業強化プログラム」を導入しました。インサイドセールスの研修やロープレの実施、フィードバックを受けることで、より踏み込んだインサイドセールスでのアプローチが実現できるようになり、商談の円滑化や新入社員のマインドの変化などの成果を上げています。

株式会社イトーキの「営業強化プログラム」導入事例についてはこちらで詳しく紹介しています。

スキルセットやプロセスを均一化し、リードの量と質を担保する | HubSpot    

インバウンドマーケティングソフトウェアの提供販売を行うHubSpotは、HubSpotのリリース初期にふたつの課題を抱えていました。ひとつは、インバウンドマーケティングやSaaSツールの市場の認知度が低く、販売チャネルを開拓することが困難なこと、そしてもうひとつがツールに搭載されている多彩な機能を顧客へ説明するために多くの時間がかかることです。

Hubspot リード獲得

出典:matrix partners「Inside Sales Best Practices: HubSpot – A Case Study」

課題解決のために、営業担当者による顧客の課題の提示とHubSpotができる支援を記載したブログの執筆や、営業担当者全員で共通のスキルセットやプロセスを通し、個別のデータに基づいた営業の課題解決のための継続的なトレーニングを実施しました。またデータドブリンに基づいたリードごとの最適なアプローチの試行回数の割り出し、マーケティングがリードを営業へ引き渡す前に、リードの質と数の担保といった取り組みを行います。その結果、過去4年間で収益が 6,000% 以上増加し、Inc 500 の急成長企業リストで33位にランクインするという成果を出しました。

インサイドセールスをセールスの司令塔に | 株式会社カオナビ

クラウド人事管理システム「カオナビ」を提供している株式会社カオナビでは、見込み顧客が広告を見た後の期待値と、問い合わせ後の期待値にギャップがあり、商談化や受注につながりづらいという課題を抱えていました。課題解決のため、見込み顧客を獲得し集約を行うマーケティング部門と、商談で受注を獲得するフィールドセールス部門の間に立つポジションとして、インサイドセールスを設立。インサイドセールスを司令塔的ポジションとして顧客の流れを俯瞰する取り組みを行いました。インサイドセールスでの活動では、MAツールをメインツールとして活用し、獲得した見込み顧客をマーケティングファネルに当て込むことで見込み顧客の検討状況を想定し、適した方法でアプローチを行いました。インサイドセールス設立を行い、またMAツールも導入したことで顧客へのアプローチの仮説検証の高速化、数値などのデータの蓄積とデータベース化による各所へのフィードバックを行い、商材の累計導入社数1,800社超を達成しています。

おわりに

インサイドセールスのトークスクリプトの必要性や作成手順、インサイドセールスの成功事例を解説しました。トークスクリプトを作成、導入することでインサイドセールスの営業トークの質の均一化や顧客満足度の向上、人材育成への活用といった効果が得られます。インサイドセールスで成果を上げられない場合も改善点の把握につながり、生産性やパフォーマンスの向上も期待できるでしょう。トークスクリプトを作成するには、目的やターゲットの設定や骨子、具体的なトーク内容の作成が必要です。自社内でトークスクリプトを作成できるノウハウや人材がいない場合には、外部の営業強化支援サービスを利用するのもおすすめです。自社の商材や目的に合わせたトークスクリプトを作成し、インサイドセールスでの成果を上げましょう。

著者情報

荻野プロフィール写真

荻野 嶺 (おぎの れい)
米国NY、LAで幼少時代を過ごす。 2015年、伊藤忠商事入社。金属資源部門にて経営企画や事業開発に携わり、赴任先のシンガポールで石炭の三国トレーダーとして、各国の市場を新規開拓。2020年に帰国し、スタートアップ向け人材紹介のfor Startupsに従事。入社半年で最速昇格基準達成、MVT 受賞などの実績を上げ、各有力スタートアップのCEOやVCからの信頼を獲得。 2020年12月にゼンフォース株式会社を創業し、代表取締役CEOに就任。