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メールナーチャリングとは?成功に導く4つのポイントを解説!

マーケティング

目次

非対面で多くの顧客へアプローチできる効率性の高さから、営業手法の変化にともないメールナーチャリングを重要なマーケティング施策として行う企業が増加しています。マーケティング担当者を対象とした調査の「新規顧客獲得以外のメールマーケティングを行う目的について」の質問に対し、全体の47.06%が「既存顧客とのエンゲージメント獲得」、41.18%が「見込み客の育成」という回答結果も出ています。

これから本格的にメールナーチャリングに取り組もうと考えている方も多いことでしょう。しかし、「メールナーチャリングの施策の進め方が分からない」「成果を上げるポイントが分からない」と苦戦するマーケティング担当者や責任者の方も多いかもしれません。そのような方のために本記事では、メールナーチャリングの重要性や開始する上での注意点、BtoBでの成功事例について解説していきます。

リードナーチャリングとは?

リードナーチャリングとは「見込み客の育成」とも言われますが、リードである見込み客が求める有益な情報を、適切なタイミングで提供し、良好な関係を長期的に築くマーケティング活動のことを指します。リードナーチャリングを行う手法は多々ありますが、中でもメールを活用してナーチャリングを行う手法のことを、メールナーチャリングと言います。

リードナーチャリングの重要性

リードナーチャリングが企業のマーケティング活動において重要と考えられ、注目度が高まっているのには複数の理由があります。

・見込み客の受注につなげるため
・見込み顧客の購買行動の変化に対応するため
・プッシュ型からプル型のアプローチが主流になったため

それぞれの理由について解説していきます。

まず1つめの理由は、見込み顧客を受注へと繋げるためです。マーケティング施策にて獲得した見込み顧客は、すぐに受注にはいたりません。Forrester Researchでは、展示会や無料のダウンロード資料などで獲得した見込み客のうち、営業活動を展開するレベルにない見込み客の割合は75%としています。つまりは、ほとんどの見込み顧客はすぐに営業がアプローチを行っても受注にはつながらないということです。これらの興味度合いの低い見込み顧客に対しては、リードナーチャリングを行い、継続的に顧客接点を持つことで段階的に興味の度合いを高め、受注へと繋ぐことができます。

2つめの理由が、見込み顧客の購買行動の変化に対応するためです。インターネットの普及により容易に情報収集ができるようになったことから、企業は課題解決を行う際、営業担当者へ確認し情報収集を行うのではなく、インターネットを活用し自ら問題解決を行う行動へと変化しました。株式会社日経リサーチBtoB企業の情報収集の変化とブランドの重要性についてリポートでは、業務上で取引先や商品・サービスを選定する過程での情報収集元が「その会社のHP」が40%、「展示会やイベント」が35%と殆どがオンライン経由である結果が出ています。

情報収集 手段

出典:日経リサーチ「BtoB企業の購買プロセス調査 コロナで変わる情報収集、高まるHPの重要性」

確実に受注につなげるためにも、見込み客の購買意欲が高まるタイミングを把握し、適切な接点を作る活動を行う必要があります。これらを踏まえ、リードナーチャリングを行い、顧客が求めるタイミングで有益な情報を提供し、信頼関係を構築した上で受注に繋げるステップが重要なのです。

3つ目は、アウトバウンドなどのプッシュ型営業からプル型の営業が主流になったことです。顧客自らが顧客のタイミングで情報収集を自由にできるようになった訳ですから、顧客が情報を求めていないタイミングで押し付けるようなアプローチをする従来のプッシュ型の営業は、自分勝手で受け入れ辛い印象を顧客に与えてしまいます。その反面、リードナーチャリングは顧客のタイミングに重きを置き、有益な情報を提供する手法のため、信頼を構築しやすいという特徴があります。

リードナーチャリングのメリット

リードナーチャリングは案件化につなげるための必要な手法であるだけではなく、マーケティングの上でも多くのメリットが得られる手法です。具体的なリードナーチャリングのメリットを解説します。

ブランディング・関係性の向上

リードナーチャリングで顧客との関係性を深めることにより、自社ブランドに対する信頼性の向上にもつながります。特にBtoB関連サービスを提供する企業にとっては、「信頼性」の構築は案件化の鍵にもなり得ます。BtoB関連サービス導入を検討する際の特徴の一つに、企業の商材検討期間が長い点が挙げられます。商材の重要度、予算、意思決定者が多いなどの理由からBtoCよりも一般的に検討期間が長くなり、購買の検討時には、商材や企業への信頼度が大きく影響します。見込み顧客が検討を始める早い段階で、自社の商材やブランドが購入候補として選ばれるためにも、関係性の向上、信頼を構築することが営業プロセスの中で、重要な要素となります。見込み顧客がニーズを持った最適なタイミングで、役立つノウハウやナレッジなどの情報を提供するといった丁寧なリードナーチャリングを施策として定期的に行うことができれば、顧客との信頼関係を構築することはできるようになるでしょう。

購入タイミングを知ることができる

リードナーチャリングを行うことで、見込み顧客の購入タイミングを図ることもできます。一般的には、BtoBマーケティングはBtoCと比較し、企業の導入時期や検討タイミングが決まっているケースが多い傾向にあります。ウェビナーや読み物系コラム、資料ダウンロードが可能なコンテンツなどを活用しながらリードナーチャリングを行うことで、顧客のニーズや課題情報、BANT情報(予算・決裁権・ニーズ・導入時期)の吸い上げを行えます。購入タイミングを把握することができれば、商談へとつながる確率も高まるでしょう。

メールナーチャリングの種類

リードナーチャリングを、メールで行う手法のことをメールナーチャリングと言います。メールナーチャリングの手法にもいくつか種類があり、主に以下の3つの方法が主流です。

・メルマガ
・ステップメール
・イベント開催告知・フォローメール

ここでは、それぞれの手法の特徴やメリットを解説します。

メルマガ

メルマガとは、特定の条件で分けた見込み顧客リストへ一斉にメールを送る手法です。一回の送信で多数の見込み顧客へアプローチができるため、時間もかからず効率的なアプローチができます。メルマガを定期的に配信することで、見込み顧客が商材やサービスを検討しているタイミングなどをはかることができます。メールの一斉送信後開封したかどうか、添付した資料や情報コンテンツをクリックしたかどうか、などの顧客側の行動を分析することで、検討するタイミングを炙り出します。そのタイミングを逃さずに、アプローチができれば機会損失も防げ、案件化に繋がりやすくなるでしょう。

メールマーケティングの基本概念と実践内容についてより知りたい方はこちらの記事も参考にしてみてください。

ステップメール

ステップメールとは、設定したシナリオに対して特定のアクションを起こした顧客を対象に、自動でメールを送る手法です。シナリオとは、顧客のアクションに始まり、購入から集客、さらには購入・申し込みといったゴールまでを想定して構築した筋書きを指します。顧客のアクションをベースにしたメールを自動で配信するため、メールで伝えたい内容とマッチする顧客の母集団を形成できるのも、ステップメールのメリットです。見込み顧客のアクションを起点にメールが送られるような設定も可能なため、その後の行動を促進させ、多くの反応を得ることができます。顧客の行動を基準にステップメールを送ることで、より顧客の状態に合わせた適切なリードナーチャリングの施策の実行が可能になります。

イベント開催告知・フォローメール

イベント開催などの企画実行時に、それらを告知する一斉メール配信と、インサイドセールス担当者から個別でフォローメールを送る、といった手法もあります。イベント開催時には、自社で保有する見込み顧客に対し告知メールを送信し、ウェビナーやセミナー、展示場への参加や来場を促します。今まで定期的なメルマガのみのアプローチで接点が低い見込み顧客が、告知メールに興味を示しイベントに参加すれば、顧客の興味度合いを高めることができるかもしれません。アンケート情報への回答を事前に促し、イベント終了後、参加者に確実に回答をしてもらうことも重要です。アンケートの回答内容から、リードナーチャリングで重要となる顧客の温度感やイベントでの感触を把握できるからです。

アンケート回答から温度感が高い顧客を一定の軸で判断できるため、それらの見込み顧客に対して送るメールがフォローメールです。自社や商材に興味を持っている顧客に対して、インサイドセールスからメールでホワイトペーパーや資料などを案内します。温度感の高い顧客のニーズや課題をインサイドセールスが探り、必要な情報を提供することで顧客との関係性を高め、リードナーチャリングにつなげます。

メールナーチャリングを実施する上での注意点

メールナーチャリングを着実に行うことで、顧客との関係構築の上、商談化につながりやすくなる可能性があります。しかし、単に頻度や内容構わずメールを送れば良いというわけではありません。ここでは、メールナーチャリングを実行する上での注意点、また法律を踏まえ施策前に理解しておくべき内容と対策方法を解説します。

適切な頻度で送信する

メールの適切な回数や頻度は、企業ごと、また企画内容などによって異なってきます。送信回数や頻度を決める指標となるのが、顧客の反応率や配信解除率(オプトアウト率)です。反応率が悪い場合、メールの配信回数が多い、またはターゲットに対して適切なコンテンツを提供できていない可能性があります。メールの配信回数が多かったり、不必要な情報ばかり送信したりすると、顧客がメールを煩わしいと感じ配信解除をされてしまう可能性が高くなります。メールの配信数やコンテンツの内容が適切かどうかを見るべきポイントは、「配信解除率」と「反応率」の2つです。それぞれの数値が低くなると配信解除率が高くなり、メールナーチャリングの対象母数が減少してしまいます。そのため、配信解除率と反応率をKPIとして設定し、メール配信後数値を分析、必要に応じてメールの配信頻度や内容を改善することが必要です。企業ごとでメールの適切な回数や頻度、内容は異なります。重要なのは設定したKPIから適切な配信数かどうかを確認、分析したうえで改善を繰り返すことです。

ユーザーのプライバシーと法的要件

メールナーチャリングを行う場合、確認が必要となるのが企業が規定として定める「個人情報の取り扱いへの対応」と「特定電子メール法の遵守」の内容です。問い合わせフォームなどリード獲得時に経由するサイト上に、プライバシーポリシーや個人情報の取り扱いに関する要件が入っているかどうかを必ず確認しましょう。特定電子メール法とは、営利を目的とする企業や個人が広告または宣伝のために電子メールを送信する際の法律で、迷惑メールを規制することを目的としています。

特定電子メール法違反とならないようにするには、以下のポイントを確認しメールナーチャリングを実施しましょう。

・メール配信前に顧客のオプトイン(同意)を得る
・オプトアウト(配信停止)方法を明確にする
・送信者(または送信に責任を有する者)の氏名または名称及び住所と問い合わせ先(電話番号、メールアドレス等)を明記する

個人情報保護や特定電子メール法に対する適切な処理を行っていない場合、、個人情報の漏洩などトラブルが発生し、法律違反としてメールが送信できない、また訴訟問題に発展する可能性もあります。企業としての信頼を大きく損なわないよう、確実に対応を進めましょう。

オプトアウトの導線を設計・作成する

オプトアウトを希望する顧客がスムーズに解約できるように、オプトアウトの導線を設計、作成し明示しておきましょう。スムーズに解約できない、または解約の方法が分からない場合顧客側と大きなトラブルになってしまう可能性が高いです。オプトアウトの導線はメール内の分かりやすいところに用意しておきましょう。

メールナーチャリングを成功させる4つのポイント

メールナーチャリングはただメールを送るだけでは成果を得ることはできません。成功させる運用の鍵は、「メール配信先のリード数の確保」「KPIの明確化」「ABテストによる精度向上」「MAツールの活用」のこれらの4つと考えられます。ここでは、メールナーチャリングを成功させるための4つのポイントを順に解説していきます。

メール配信先のリード数を確保する

一定量でのメーリングリスト数を確保していない場合、当然ながらメールでアプローチできる見込み顧客数が少ないため、開封やクリック数の成果は出づらくなります。また、リードが少ないと、インサイドセールス部隊が個別で連絡をし、アプローチする先も比例して少なくなるため、その先の商談化数、案件化数なども少なくなります。ナーチャリングした先のKPIとして定める商談数、案件数などを達成するためにも、育てる元となる配信先のリード数の確保は重要なのです。

KPIを明確化する

メールナーチャリングの成果の良し悪しを判断するためには、事前にKPIの設計が重要です。KPIを定めることで、成果を定量的に評価でき、必要に応じて改善するPDCA運用の実行が可能になります。メールナーチャリングのKPIとして設定する主な指標は、以下の通りです。

1.送信成功率…送信リストの総数に対してメールが適切に送信された割合
2.開封率…見込み顧客が届いたメールを開封した割合。「開封数 /総配信数」で算出する
3.クリック率…メールの本文内に設置したリンクがクリックされた割合。「リンククリック数 / 開封数」で算出する
4.コンバージョン率…見込み顧客が取ってもらいたい最終的なアクションを起こした割合。
5.配信解除率(オプトアウト率)…企業からのメールの配信を停止したリードの割合

メールナーチャリングのターゲットや目的によって、重視する指標は異なります。株式会社ITコミュニケーションズB2Bマーケティング株式会社の共同調査「BtoB企業におけるeメールマーケティングに関する実態調査」では、メール配信によるマーケティングや営業活動にて重視している指標は「クリック率(回帰率)」が66.0%「開封率」が 64.9%、「コンバージョン率(資料請求など)」が 58.5%の順となりました。

メールマーケティング 指標


出典:B2Bマーケティング共同調査「BtoB企業におけるeメールマーケティングに関する実態調査レポート2020」

ただし、「非常に重視している」指標のトップは「コンバージョン率(資料請求など)」で25.5%です。資料請求や申し込みの送信、といった直接的な成果を目的としてメールナーチャリングを行う場合は、コンバージョン率が重要な指標となることが分かります。メールナーチャリングの目的に応じたKPIを設定しましょう。

ABテストを繰り返して精度を上げる

KPIを設定し、効果検証を行いながらPDCA運用を行った後は、引き続きABテストを繰り返して分析しながらメールの精度を上げましょう。メールを配信する見込み顧客リスト対象となるセグメント、件名、本文、CTAボタン、配信日時…などの各項目をパターン別に用意し、ABテストを繰り返します。また、効果のあったパターンはスプレッドシートなどにまとめて管理していくことも大事です。メールの勝ちパターンを社内の幅広い人が把握できるようにすることで、その知識を営業メール等にも流用できるかもしれません。ABテストでのノウハウを管理しながら、今後のメールナーチャリングの施策に活かしていきましょう。

メルマガの開封率やクリック率向上に悩む方のために、くわしくポイントをまとめた記事もありますので、こちらを参考にしてみてください。

MAツールを活用する

メールナーチャリングを実行する場合は、MAツールを活用することを推奨します。MAツールは、メール一括送信などの送信機能だけでなく、リードを育成するためのリード管理機能や、見込み顧客の行動が可視化される機能もついています。メール配信から送信後の分析、育成までを一貫して行うことができるのがメリットです。代表的なMAツールの名称と機能を簡単にまとめました。

MAツール 種類

MAツールによって搭載している機能や操作性が異なります。各ツールの特徴を比較し、自社のメールナーチャリングに適したMAツールを選びましょう。

メールナーチャリングの成功事例

すでにMAツール等を活用し、メールナーチャリングで着実な成果を出している企業も多くあります。ここでは、BtoB企業のメールナーチャリング成功事例を3つ紹介します。自社のメールナーチャリング施策のイメージやヒントをつかむのに役立ててください。

株式会社ラクス

「楽楽精算」「楽楽明細」などを展開するSaaS企業である株式会社ラクスでは、お役立ち情報をお届けするナーチャリングメールと、アポイントを提案するセールスメールの2種類のメール配信を施策として実施してしていました。配信後、施策の反応率やクリックといった成果が減少傾向にあるといった課題から、メールの配信目的を変え、「態度変容を起こすこと」から「態度変容の検知」に変更。配信リストの条件を過去にメールを配信したか否か、受注しやすい条件を満たしている顧客を優先してアプローチするといった方法に切り替えました。その結果、目的に応じて変更したことでメールの反応率(クリック/開封数)は約1.5倍改善、商談獲得率は2.5倍という成果を出しています。

株式会社電算システム

クラウドビジネスサポートを事業とする株式会社電算システムは、ブログやメルマガ発行などの施策に対する課題を2つ抱えていました。一つは、施策実行は定期的に行えているものの成果が芳しくないという点、またもう一つは、営業業務が忙しくマーケティング業務を並行できないという内容です。課題解決のために、MAツールを導入し作業効率化をはかる工夫をしました。MAを導入したことにより、メルマガやセミナー実施におけるリード内容の一元管理や、営業とマーケティング業務生産性が向上。施策においては、コンバージョン数が数ヶ月で300〜400件増加し、集客の効率も向上する結果になっています。

コニカミノルタジャパン株式会社

情報機器、医療機器、産業用計測機器の製造販売を行うコニカミノルタジャパン株式会社では、配信するメールの内容のみで顧客の知りたい情報が完結してしまい、ページの流入につながらないといった課題を抱えていました。この課題に対し実行した対策がメールの改善、ステップメールの導入です。件名や文字数などのメール内容を改善し、またトライアルから本契約につなげるためのステップメールの設計などを行いました。その結果、当初10%程度だった開封率が18%まで改善し、メールの開封率の改善と共に、ページ流入が増加しています。

おわりに

メールナーチャリングの手法やポイント、成功事例を解説しました。メールナーチャリングはメールを活用しながら顧客を育成し、商談獲得や案件化につなげる手法です。案件化につなげるためには、ただメールを送信して満足するのではなく、送信するリスト数を確保する、KPIを設定して効果を測定する、ABテストによって勝ちパターンを見つけ施策に取り入れる、といった点に注意した運用も重要です。メールナーチャリングの業務効率化や正しい効果測定、分析のためには、MAツール導入も検討してみましょう。本記事を参考に、ぜひメールナーチャリングを活用し、マーケティング成果を最大化してください。

著者情報
柳本 瑠衣 (やなぎもと るい)
Rui Yanagimoto
米国の州立大学卒業後、米国にて就労経験を経て帰国。国内のIT企業へ入社後、新規開拓営業と経営企画を経験。パーソルホールディングス株式会社(旧インテリジェンス)にてデジタルマーケティング領域を経験した後に、MAツール開発会社へ入社、インサイドセールス部門責任者として従事。2人目の出産を機に働き方を見直し2022年にフリーランスに転身。現在は営業DX領域のコンサルティングとマーケティング業務支援等を行う。