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マーケティングオートメーションが失敗に終わる6つの理由とは?成功へのステップを徹底解説

マーケティング

目次

SaaSやBtoB向けサービスを提供する企業にとって、マーケティングオートメーション(MA)はマーケティング活動における成果を最大化するために取り入れたい手法です。MAは中長期的な運用を見越して、業務改善にあたることで成功を実現できるのです。

本記事では、マーケティングオートメーションが失敗する主な理由に焦点を当て、その回避策となる考え方や成功への具体的なアプローチをご紹介します。

マーケティングオートメーションとは

マーケティングオートメーション(以下MA)は、マーケティング活動を自動化するための方法やプロセスの総称です。オートメーションという言葉から、デジタルツールやソフトウェアの導入で業務を自動化することと捉えられがちですが、それはあくまで手段の一つにすぎません。市場の変化スピードに合わせて、見込み顧客の獲得・選別・育成を滞りなく実現させることがMAの目的です。

MAの定義や説明は、こちらの記事をご覧ください。

MAツールとは

MAは方法やプロセスであるとお伝えしましたが、MAツールは、それを具現化するためのデジタルテクノロジーと整理することができます。MAツールは様々な機能によって構成されています。以下で具体的な例を見てみましょう。

・メールマーケティング
効果的なメールキャンペーンを実施するためのツールです。メール配信をセグメント化することで、顧客に合わせたコンテンツの配信が実現します。またトラッキング機能やA/Bテスト機能は、顧客ニーズの顕在化に役立てられ、マーケティング活動の効果を最大化します。

・CRM(顧客関係管理)
顧客情報を収集、管理、活用するためのツールです。営業やカスタマーサービスが顧客に関する情報を共有し、効率的なコミュニケーションや個別対応を実現する機能を提供します。

・CMS(コンテンツ管理システム)
デジタルコンテンツを作成、編集、管理するための機能を備えるツールです。例として、ウェビナー等を開催する際のLP作成や、オウンドメディアの作成、編集に活用できます。リード獲得のチャネルを、簡易的かつスピード感をもって増やせることがメリットです。

・ソーシャルメディア関連ツール
ソーシャルメディア上で認知獲得をするためのアクションを管理するツールです。主に投稿スケジュール設定、コンテンツの作成、リアルタイムのモニタリング、インサイト分析など、効果的にブランド認知を高め、顧客エンゲージメントを高める効果があります。

・自動応答システム
顧客からの問い合わせや要求に対して、メッセージを自動的に送信するツールです。テンプレート化されたメッセージやFAXへのリンクを使用して、より迅速で一貫性のある応答を提供できます。

それぞれの特徴から、一つのMAツールを導入すれば、効率的なマーケティング運用が実現できるわけではないことが分かります。顧客のニーズに合わせたコンテンツ制作やコミュニケーションの実現には、そもそも人的リソースが必要であると認識することが大切です。ツール自体に魔法の解決策はなく、導入前の戦略構築と、導入後の効果測定や改善を行う一連の活動が、MAの成功には不可欠です。

SFAやCRMとの違い

MAはデジタルマーケティングの手法の一貫ですが、似たような仕組みに、SFA(営業支援システム)やCRM(顧客関係管理)が挙げられます。次の表は、それぞれの違いを示したものです。

MA SFA CRM 違い
それぞれの特徴を捉えると、SFAはセールスプロセスの自動化やリード管理、CRMは顧客情報の統合や顧客関係の強化に焦点が当てられていることが分かります。一方でMAは、デジタルテクノロジーを通じて一部の顧客へのアプローチが自動化されることが最大の特徴です。自動化によって生まれたリソースは、顧客ニーズに合わせたコンテンツ作成や個別のコミュニケーションへ費やすことができるようになります。

マーケティングオートメーションが失敗する主な理由

機能性が素晴らしいMAですが、それでも導入後に効果がでない状況に陥る原因はどこにあるでしょうか。この章では、MAが失敗する理由を明らかにします。自社の運用戦略に欠けている視点がないか、ぜひ確かめてみてください。

1.ツールを導入することから始めようとする
よくある失敗例は、MAツールの導入完了が最終目的となってしまっているケースです。導入の目的や現状の課題に対する必要な機能を明確に整理できていないと、自社としてMAを適切に運用できているかも定義することができません。まずはマーケティング戦略やプロセスを再評価し、多くのMAツールのなかでも、自社にとってどの機能を優先的に取り入れて運用すべきか検討することが大切です。

2.保有しているリード数が少ない
リード数が極端に少ないと、そもそも顧客を属性に分けることが難しく、リードの追跡や管理を自動化させるメリットも感じにくいでしょう。見込み顧客が一定数いるからこそ、ターゲットに合わせたキャンペーンの実施や、個別にコミュニケーションをする必要性が生まれます。リード数が少ないままハイスペックなツールだけを導入してしまうと、機能を使いこなしきれずにコストだけがかかり、結果として失敗に終わってしまう可能性もあります。MAが効果を発揮するリード数の目安は、資本規模やプロダクトの内容が異なるため、組織によって異なります。しかし、自社のROI(Return on Investment:投資収益率)を試算してみると、必要リード数を把握する一つの指標として有効です。成約見込み件数や売上が、MAの導入や運用コストを上回ることが見込めれば、MAの導入価値も期待できます。ただし、リード数の増加を含めた戦略を同時に実施することはあくまで前提とすべきでしょう。

3.顧客理解が足りていない
せっかくのリードからも顧客分析をしていないと、適切なセグメントを作成できません。セグメント化は顧客のニーズや行動に基づいた個別のコミュニケーションを提供する基盤です。しかし、顧客理解が不足していると、どんなに趣向を凝らして制作したコンテンツも、興味を持たれずスルーされてしまうことがあります。まずは、ターゲットの役職、年齢、嗜好、勤務している企業の業種のように、顕在的な特徴を整理します。さらに抱えている課題や、検討段階でどのような思考プロセスを辿るかなど、顧客の現状を深掘りすることが必要です。

4.顧客に提供するコンテンツが少ない
たとえば、リードのエンゲージメントを高めるために自動化されたメールキャンペーンを展開したとします。しかし、バリエーションが乏しいメッセージを繰り返し送信してしまうと、コンバージョン率が低下したり、自社自体に対する興味を失ってしまうことに繋がりかねません。前述したように顧客理解は、バリエーションあるコンテンツ作成に不可欠です。教育情報、プロモーションや特典、トピックに関連した記事やケーススタディなど、ニーズに合わせた様々な形式のコンテンツを準備しておきましょう。

5.MAツールを操作する担当者がいない
設計部分こそ労力がかかるMAツールの導入では、必ずと言っていいほど担当者の存在が求められます。特に初期段階である、顧客のペルソナ設定やカスタマージャーニーの決定は、これまで自社のマーケティングをリードしてきた担当者の知見が不可欠です。また、見込み顧客のナーチャリングやスコアリングの見直しは、運用を開始後も継続的に注力すべき部分です。自動化したら終わりという業務ではなく、むしろ専任の担当者が必要になる場合もあります。部長やマネジメント層こそ、人的リソースの確保の重要性を理解しなければなりません。

6.適切にセグメントしていない
よくありがちな失敗事例で、MAツールを導入してもメールを顧客の属性に分けず一斉送信してしまっているケースがあります。どの業種の顧客にも同じような導入事例や活用方法を送付してしまうと、せっかく充実したコンテンツでも、自分たちにとっては必要のない情報ばかりが届くという印象を持たれてしまいます。場合によっては、情報へ煩わしさや不快感を感じてしまい、メールの開封率低下や登録解除に繋がってしまうでしょう。セグメントの定義をし、リード獲得後も設計したシナリオ通りに情報が配信される仕組みを作ることが重要です。

マーケティングオートメーションを成功させる8つのステップ

MAの失敗要因を捉えたら、日々のマーケティング活動や戦略を見直し、改善をする段階です。せっかくの機能性やかけたコストを無駄にしないためにも、MAを成功に導くためのステップを理解しましょう。

1.MAを行う目的・理想像を明確にする

MAを導入しマーケティング活動をより生産的かつ効率的に実施できたら、自社にどのようなメリットが生まれるでしょうか。まずは、具体的に達成したい目的を明確にするためにも、As-is/To-beを実施します。As-is/To-beとは、それぞれAs-is(現状の姿)To-be(あるべき姿)と表され、現状と理想のギャップを作り出している問題点を分析するためのフレームワークです。

MA 目的

出典:rrslide

現在の状況と理想の状況を比べることで、ギャップを埋めるためのプロセスが明確になります。今後の施策に対する認識のズレや実施スピードの低下を防ぐためにも、結果をマーケティング部長や経営陣とも擦り合わせておくことが大切です。

2.担当者を決め、リソースを確保する

MAを効果的に運用するためには、担当者の存在が不可欠です。人的リソースが足りないと、ツールを活用するためのディレクションや改善業務が滞ってしまうからです。Webマーケティングに精通する経験値の高いマーケターがいれば専任として割り当てることも検討します。または、複数名の担当者のスキルごとに、FAQサイトの運営や問い合わせ対応、個別コンサルティングのような各アシストをする対象を決定することも手段の一つです。一方、MA担当者に短期間で成果を求めてしまうことも避けるべきです。確保できる人的リソースや実施するWebマーケティングのレベルに応じて、よりシンプルな機能や課題解決へピンポイントで対処できる機能を導入することもまた検討する必要があります。

3.マーケティング施策を整理し、課題を見つける

まず、現状でできていることを明確に把握します。たとえば、メールキャンペーンの送信やリード管理の一部に手作業が含まれていた場合、効率化できそうな作業を具体的に検討します。スコアリングによる分析や顧客ごとのデータ整理は、MAを活用することで大幅に労力を削減できるかもしれません。また、できていないことも特定します。たとえば、個別の顧客に合わせたコミュニケーションの提供や、複雑なワークフローの自動化などが挙げられるかもしれません。課題を見つけ、MAを導入する価値のある領域を特定することが重要です。

4.顧客理解を深める

見込み顧客の理解は、マーケティングの基礎であり、MAの成功に欠かせない要素です。顧客が置かれている業界の状況や、増収や減収といった資本の動きは、彼らが直面する課題に直結します。たとえば、市場調査、競合分析、業界レポートからは、広くニーズや要求を推測することができます。さらに、顧客との対話やインタビューなどの個別・具体的な情報は、データ分析や行動トラッキングを活用することで顧客の行動パターンや嗜好の把握に役立つでしょう。前述したマーケティング施策の整理と合わせ、課題と解決策を深く掘り下げたうえで、オートメーションすべきポイントも見極めることが大切です。

5.提供するコンテンツを用意する

顧客のニーズをつかみ、セグメント化させたら、コンテンツをどの形式で見込み顧客の誰に届けるべきかを検討することが大切です。コンテンツの形式と理想のターゲットを考えてみます。

・オフラインセミナー
オフラインセミナーは、特に経営者やBtoB企業のマネジメント層に有効です。経営者は時間の制約があり、高度な専門知識や戦略的な洞察にアクセスをする必要があります。直接的な対話やネットワーキングが提供されれば、他の経営者や業界リーダーとの交流も促進されます。さらに、限られた参加者数や貴重な情報へのアクセスが制限されているため、セミナーの信頼性やプレミアム感も高められるでしょう。自社と情報の価値をより強調する手段となるため、目的意識を持って内容を企画・設計することが大切です。

・ウェビナー
申し込みも手軽で、オンライン参加が可能なウェビナーは、参加者の間口を広く設けられることがメリットです。特にBtoB企業のマーケティング担当者にとっては、最新のトレンドやベストプラクティスの情報を得られる機会です。回によってテーマを幅広く設定できるため、その都度ペルソナを設定する必要があります。
たとえば仮に、BtoB企業のセールス担当をターゲットにしたとします。販売戦略の共有や顧客のアプローチ方法をコンテンツにすれば、限られた時間の中でも、セールスプロセスの改善やスキル向上に有効な機会となるでしょう。もし、技術担当者やカスタマーサクセスに設定したら、新しい技術や製品の解説、技術の進歩に関する情報共有をすれば、普段の開発や顧客対応に追われる彼らの知識とスキルを向上させる貴重な機会となります。各ペルソナに対して、リアルタイムな情報共有と相互作用の機会を提供することは、顧客エンゲージメントを高めるきっかけとなるでしょう。

・ホワイトペーパー
ホワイトペーパーは、特定のテーマや問題を詳しく解説し、課題解決のための洞察や自社のソリューションを示したドキュメント形式の媒体です。サービスの概要や機能、料金などが具体的に示される営業資料と比べて、ホワイトペーパーは、ユーザーの興味・関心や課題をテーマにした解決方法が主な内容です。また、企業が自社の専門知識や業界リーダーシップをアピールするために使用されることもあります。自社サービスに顧客がまだ興味をもっていなかったとしても、ホワイトペーパーのテーマ自体に興味があれば、自社のターゲット層である可能性も見込めます。

・ブログ記事/オウンドメディア
Webサイトにアクセスすれば、誰でも気軽に閲覧できる媒体がブログやオウンドメディアです。ターゲティングは企業のマーケティング担当者や、具体的なマーケティング業務に携わる人をペルソナに設定すると効果的でしょう。悩みを解決できる存在であると教育するとともに、自社の認知獲得が実現します。記事のPVやUU、CTRボタンへの反応率を測定することで、行動変容があるか計測することができます。見込み顧客の年齢層や役職に合わせて、コンテンツの提供方法を考慮することで、届けるべき人にわかりやすく自社の商品やサービス情報を届けることができます。媒体を精査するだけではなく内容も適切に変更しながら、提供後の顧客の反応を計測し分析することが大切です。

6.自社にあったMAツールを導入する

これまでのステップを綿密な計画に基づいて実施したうえで、ようやくMAツールを導入する段階となります。MAツールに期待できる点は大きく2つです。一つは、デジタル戦略部分の自動化によって、割り当てた担当者がより集中すべき業務に取り組めること。もう一つは、自社のサービスを本当に必要とする顧客に販売するために、ニーズに合わせた施策を正確に届けるプロセスを構築できることです。自社の利益創出と最初に定めた理想の状態が実現できるか、複数の観点をもちながらMAツール導入の再評価を行いましょう。

7.MAツールを活用して、見込み顧客にアプローチする 

MA導入後は、設計内容をもとに活用し、導入効果を高めていくフェーズです。ツールを用いると具体的に以下のような効果を期待できます。

MA 活用フロー

・リードのセグメント化
リードが適切に分類されれば、顧客のニーズに合わせたオファーの提供や1on1のアプローチが実現します。一定の条件を満たしたリードは、セールスチームへ優先的に通知して、商談化につなげることもできるでしょう。

(例)
・顧客属性
・流入経路
・Webサイトの訪問回数
・行動履歴

・リードの追跡
リードの行動を追跡し、活動履歴を収集すると、顧客のリアルタイムな興味・関心を把握できます。セールスチームへのスムーズな引き継ぎなどの効果的なマーケティング施策と顧客エンゲージメントの最適化が実現できます。

(例)
・閲覧コンテンツ
・Webページの滞在時間
・キャンペーンへの関与度
・イベント参加率
・フォーム回答率

・リードのスコアリング
リードの質を評価することで、優先度の高いリードに集中的なフォローアップを行うことができます。また、運用前の入念な設計ができていれば、リードの追跡とスコアリングがよりスムーズに行われるようになります。

(例)
・購買意向
・予算の有無
・購入のタイムライン
・決裁権

8.PDCAを回して、継続的に改善する

MAの導入が完了しても、即座に求める成果が現れるわけではありません。稼働後は、定期的に効果測定を行うことが大切です。マーケットの状況や顧客ニーズは絶えず変化します。業務プロセスを自動化したからと安心しきってしまうと、競合分析や顧客からのフィードバックへの対応が疎かになり、再び解決すべき課題の優先事項が曖昧となってしまいます。ここでMA担当者に運用を任せきりにしないことも注意すべき点です。マーケティング部長やマネジメント層とも、結果を数値で共有しあい、改善業務に素早くシフトすることが求められます。

おわりに

自動化という言葉の良いイメージにつられて、自社と顧客の現状や課題を正しく把握しないままツールの導入を進めてしまうと、MAは失敗してしまいます。高い導入効果を得るためには、ツールがもつ機能性に頼りきらず、自社のリソースを確保しながら、継続的に運用と改善を行うことが不可欠です。本記事で紹介したプロセスをもとに、MAの効果を最大限に発揮させるためにも、戦略的な導入設計および中長期的な運用と改善を行っていきましょう。

著者情報
原 千裕(はら ちひろ)
Chihiro Hara
成蹊大学文学部英米文学科卒。新卒でホテル事業のフロントCS業務を経て2018年にオーストラリア・メルボルンに留学。帰国後、カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社でBook&Cafeをコンセプトとした店舗の運営マネージャーを経験。現在はSaaS型POSシステムの開発・提供を行う企業でインサイドセールス職に従事している。