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ChatGPTをBtoB営業で活用する方法5選

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目次

ChatGPTは2022年のリリース以降、世間で大きな注目を集めています。ChatGPTがホワイトカラーの仕事に影響を与えるとも言われていますが、上手に活用すれば、仕事の生産性を大きく向上させることができます。今回はBtoB営業の分野でChatGPTを活用する方法について解説いたします。この記事を参考に、日々の営業活動にChatGPTを取り入れてみてはいかがでしょうか。

ChatGPTとは?

ChatGPTは、OpenAI社が開発した自然言語処理のAIモデル「GPT」を搭載した対話型のAIチャットツールです。リリースは2022年で、公開からわずか1週間で100万ユーザーを獲得し、2カ月で1億ユーザーに到達するなど、急速にサービスが普及しました。ChatGPTは、入力されたテキストメッセージに対して適切な応答を返してくれます。簡単な質問から小説や詩の創作、英文の翻訳など、さまざまな用途に活用できます。特にビジネスの分野では、議事録やレポートの作成、文章の要約やチェック、校正など、ホワイトカラーの業務の効率化に大いに役立つことが期待されています。

ChatGPTは何がすごいのか

ChatGPTのすごさは、まるで人と会話をしているかのように自然に対話をこなすことです。初めてChatGPTを使用したときに、その自然なやり取りに驚いた方も多いのではないでしょうか。ChatGPTの学習には「人間反応の強化学習(RLHF)」という方法が使われており、大量のテキストデータを学習し、文脈を理解するためのパターンを抽出しています。

吾輩は、
吾輩は、猫である。
吾輩は、猫である。名前は
吾輩は、猫である。名前はまだ無い。

このように、大量のデータの中から文章のパターンを認識し、「後に続きそうな単語」をつなぎ合わせることで自然な文章を生成しています。しかしこのパターン認識に基づく方法では、新たなアイデアや創造的な表現を生み出すことは難しいとされています。それでも、ビジネスの分野では議事録作成や文章の要約など、ルーティンワークの効率化において価値を持つ活用ができると言えるでしょう。

ChatGPTをBtoB営業で活用する方法5選

それでは、ChatGPTを営業で活用する方法について、5つご紹介いたします。

ターゲットとする企業や業界について調査する

SalesforceのState of Salesレポートによると、営業担当者は毎週約9.3%の時間を見込み客の調査に費やしています。ChatGPTにターゲット業界の調査をするための質問をすることで、短時間でその業界について知ることができます。

営業 業務 内訳

出典:salesforce

ChatGPTにターゲット業界について質問をすると、その業界の概要やトレンドなどを回答してくれます。また、ターゲット業界の中で自社業界の製品やサービスの導入状況なども聞くことができるため、顧客の調査に非常に役に立ちます。特に新入社員の場合は顧客の業界について詳しくないことが多く、短時間で顧客や市場について理解することができるため、効果的でしょう。

また、ターゲットペルソナの作成にも、ChatGPTは役立ちます。ペルソナとは、「自社の商品やサービスを使用する架空のユーザー像」を意味します。自社サービスを活用する典型的なユーザー像を設定することで、戦略の方向性が決まり、具体的な戦術を考えやすくなります。ペルソナの設定においては「リアリティ」が重視されます。性別・年齢・居住地・職業・収入・家族構成から、趣味・価値観・ライフスタイルまで、さまざまな設定を細かく行い、できるだけリアルな人物像を定めます。

ペルソナに取り組む際、設定を決めるのに時間がかかってしまうことから、なかなか設定出来ていない企業もあるのではないでしょうか。ChatGPTに「〇〇業界のペルソナを設定して」と質問すると、瞬時にたくさんの情報を出してくれます。その情報の中から、自社に必要なものをピックアップすることで、ペルソナ作成の時間が大幅に削減されます。また、年齢や性別、役職だけでなく、その業界の背景を踏まえ、企業が抱えている課題や目標、ペルソナの関心事なども回答してくれます。短時間で、より詳細なペルソナを作成することができるでしょう。

競合他社について調査する

ChatGPTは、ターゲット企業だけでなく競合他社について簡単に調べるのに役立ちます。競合他社を調べる際は、検索エンジンに会社の名前を入力して、ウェブサイトを訪問して、複数のページを閲覧するのが一般的な方法でしょう。この数分かかってしまう作業も、ChatGPTなら瞬時に必要な情報を出してくれます。たとえば「〈競合他社〉とはどんな会社ですか?」と質問をすると、企業の概要や展開している事業について回答してくれます。さらに質問をすれば、売上高や主要取引先なども回答してくれます。ChatGPTから良い回答を引き出すためには、具体的に質問することと、追加で質問することが重要です。「どのような製品を販売していますか?」「彼らのターゲットは誰ですか?」などの具体的な質問を追加で投げて、自分に必要な情報を引き出しましょう。営業電話の中で、相手から「〈競合他社〉とすでに取引をしている」という言葉をもらった際も、ChatGPTに聞けば電話中でも簡単に競合他社を調べることができます。一度電話を切って、調べてから再度かけ直すこともなくなり、ビジネスのスピードが向上するでしょう。

ロールプレイングを行う

ChatGPTを顧客に見立てて、営業担当者はロールプレイングや質問練習を行うことができます。ChatGPTに対し「私は〇〇会社の営業です。あなたは〇〇会社の潜在的な顧客です。この設定で、営業ロールプレイングを行いましょう」と投げかけると、ChatGPTが潜在顧客になりきってロールプレイングの相手をしてくれます。たとえば「あなたの会社ではどんな課題を抱えていますか?」と質問を投げると、複数の課題を挙げてくれます。それに対して回答をして、さらに質問をして……と繰り返すことで、そのトピックについて深堀りができます。営業担当者は予想される質問を知り商談の準備を行うことができます。必要に応じて、このプロセスを微調整することも可能です。たとえば、新規開拓のテレアポスクリプトを入力し、ChatGPTにフォローアップの質問をしてもらうことができます。実際のテレアポの前にChatGPTに対して練習を行うことで、テレアポの準備を行うことができます。特に新入社員研修などに活用できるのではないでしょうか。これらの機能は営業担当者にとって非常に便利であり、目的に応じて柔軟に活用できるでしょう。

営業メールを作成する

HubSpotによると、営業担当者は業務時間の21%をEメール作成に費やしています。このメールは見込み客との継続的な会話が含まれる場合もありますが、返信が期待できない新規顧客向けのメールも多く含まれます。パーソナライズされたメールの作成には時間がかかってしまうものです。ChatGPTはこの問題を解決するのに役立ちます。ChatGPTは、LinkedInのプロフィール情報など個人の情報にアクセスすることはできませんが、ターゲットの業界や職種の関心事や課題について回答することができます。たとえば、ChatGPTに「〈職種〉に会社紹介のメールをします。私たちの会社は〇〇の課題に対し、△△を提案することができます。この情報を踏まえ、新規開拓用のメールを作成してください」とお願いをすれば、ビジネス用のメール文を作成してくれます。もちろん、ChatGPTが書いた文章に追記や修正をする必要がありますが、ゼロの状態からメールの文章を作成するよりも、かなりの時間を削減することができます。メール作成の時間が削減できれば、その分の時間を商談の準備や、さらに大勢の顧客にアプローチする時間にあてることが可能です。

また、ChatGPTにメール件名の作成や注目を集める内容への書き換えのサポートを依頼することもできます。メールの文章とともに、「ターゲット顧客が興味をもってくれるようなメールタイトルを作成してください」とお願いをすれば、瞬時にキャッチーなタイトルを提示してくれます。

商談メモを要約する

商談や打ち合わせの議事録を作成することはとても重要ですが、かなりの時間がかかってしまい、なかなか実現できていない方も多いのではないでしょうか。ChatGPTを活用すれば、商談中に取ったメモを的確に要約し、チームメンバーに共有できるものに書き換えてもらうことができます。また、音声メモを自動で書き起こし、その内容をChatGPTに修正してもらう方法も有効です。音声メモの自動書き起こしは、文章としてまとまっておらず、「あー」「えーっと」などの文字も入ってしまうことが多いでしょう。ChatGPTに要約をお願いすれば、整然とした文章に直してもらうことができます。

【デモ】BtoB営業でChatGPTを使ってみた

ChatGPTを営業活動に活かすためのデモンストレーションを行いました。筆者がBtoBマーケティング支援を行う会社の営業担当として、製造業について市場調査を行い、さらに営業ロープレを行いました。

ターゲット業界について調査してみた

まずは、ターゲット業界の調査です。今回は製造業界という大きなくくりでChatGPTに聞いてみました。「製造業界について、市場規模、BtoBマーケティングの導入状況などを教えて下さい」と聞いたところ、以下のような回答がありました。

ChatGPT デモ

製造業は世界的にみると非常に大きな市場で、その中でデジタルマーケティングが重要視されていることがわかりますね。次に、業界のトレンドと主要な会社についても聞いてみました。

ChatGPT デモ
製造業のトレンドは、IoTやAIなどのデジタル化、そして環境に配慮した取り組みなどが挙げられています。BtoBマーケティング支援役の立場からすると、いい回答が得られたのではないでしょうか。また、主要プレイヤーについては、トヨタ自動車を筆頭に数十個の会社を挙げてもらいました。市場調査ではどんな会社が存在しているか、その会社がどんな事業を展開しているか知ることが重要です。ChatGPTはすぐに数十個の会社を挙げてくれるため、市場調査に非常に役に立つのではないでしょうか。

ロールプレイングをしてみた

筆者をBtoBマーケティング支援会社Aの営業担当、ChatGPTに製造会社Bの営業部長を演じてもらい、営業ロールプレイングを行いました。まずはBtoBマーケティングにおける課題を聞いてみます。

ChatGPT デモ
B社の課題について、「ターゲットの明確化」「競合との差別化」「デジタルマーケティングの活用」と具体的に3つも話してくれました。この中で、A社が主に支援できることは3つ目のデジタルマーケティングが中心であると設定して、その旨を伝えました。また、デジタルマーケティングについて、現在取り組んでいることについても聞いてみました。

ChatGPT デモ
ChatGPT デモ

B社はウェブサイトの運営、SNSの運営、メールマーケティングを行っていて、それぞれに課題を感じていました。そこでウェブサイトの改善と、ウェブからの集客の提案をしたところ、B社担当の方から内定のような言葉をいただきました。

具体的な数字の話になると「私は架空の会社であり、現実のデータにアクセスすることはできません。具体的な数字についてはお答えできません。」と言われてしまいますが、顧客からの質問とその受け答えの練習には、十分な効果を発揮してくれるでしょう。

ChatGPTを活用する際の注意点

ChatGPTは営業に非常に有用なツールですが、活用する上での注意点がいくつかあります。

情報が正確でない可能性がある

ChatGPTは、正確な情報を提供するのではなく、学習データから適切と思われる単語を組み合わせて回答を生成します。そのため、誤った情報や信頼性の低い情報を出力する可能性があることに注意しましょう。ChatGPTに「ChatGPTの回答の正確性は、どのくらい信用していいのでしょうか」聞いてみたところ、以下のような回答がありました。「ChatGPTの回答の正確性については、一般的に信頼性が高いとは言えません。ChatGPTは、トレーニングに使用されたデータに基づいて応答を生成するため、入力された情報に関連する情報を含めることができます。しかし、ChatGPTは人工知能であり、入力された情報が正確である限りにおいて、応答が正確であるとは限りません。

特に、ChatGPTは情報源の信頼性を判断することができず、入力された情報が正確であるかどうかを判断することができません。したがって、ChatGPTの回答を信頼する場合は、他の情報源と照らし合わせることや、専門家に相談することが重要です。」

ChatGPT デモ

ChatGPTの回答の通り、情報の正確性を確認するには、他の情報源との比較や専門家への確認が必要です。

情報漏洩の恐れがある

ビジネス上でChatGPTを利用する際には、情報漏洩のリスクがあることに注意しましょう。質問に入力された情報は、ChatGPTの学習データとして活用されることになります。もし会社の機密情報をChatGPTに送信してしまった場合、その情報が別の第三者への回答に使用される可能性があります。実際、Amazonでは、ChatGPTが機密情報に酷似した回答を提供したことから、社員に対して会社の情報をChatGPTに提供しないように通知する事態が発生しました。
「オプトアウト」の仕組みによって、ユーザーは自身の情報をAIの学習から除外することも可能ですが、情報を提供する限り、情報漏洩のリスクは存在すると認識してください。顧客情報や業務上の機密情報などは、ChatGPTに送信しないよう注意することをお勧めします。

最新の情報は反映されていない

ChatGPTは、膨大なデータを学習しており、そのデータに基づいて回答を提供しています。この学習データは2021年9月までの情報であるため、最新の情報にアクセスすることはできない点に注意が必要です。試しに、ChatGPTに「2023年に日本で起こった出来事を教えてください。」と質問したところ、以下のような回答がありました。

「ChatGPTは、2021年9月までの情報しか学習していないため、現在の2023年に起こった出来事に関する情報を提供することはできません。ただし、私が提供する情報は、最新の情報ではなく、一般的な情報であることをご理解ください。必ず他の信頼できる情報源も参照してください。」

ChatGPT デモ
ChatGPTを活用する際は、最新情報が反映されないことを考慮しましょう。

おわりに

ChatGPTを営業に活用する方法について解説しましたが、いかがでしたでしょうか。ChatGPTは、使い方次第であなたの業務を効率化させるアシスタントとなります。注意点はしっかり押さえつつ、身の回りの業務効率化に活用してみましょう。そうすることで、本来時間をかけるべき営業活動に時間を割くことが可能となります。

著者情報
荻野 嶺(おぎの れい)
Rei Ogino
米国NY、LAで幼少時代を過ごす。 2015年、伊藤忠商事入社。金属資源部門にて経営企画や事業開発に携わり、赴任先のシンガポールで石炭の三国トレーダーとして、各国の市場を新規開拓。2020年に帰国し、スタートアップ向け人材紹介のfor Startupsに従事。入社半年で最速昇格基準達成、MVT 受賞などの実績を上げ、各有力スタートアップのCEOやVCからの信頼を獲得。 2020年12月にゼンフォース株式会社を創業し、代表取締役CEOに就任。