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【BtoB企業向け】認知度調査の実施方法と活用法を解説 

マーケティング

目次

「認知度調査」とは、特定のテーマや商品に関する人々の認知度を測定する手法です。BtoBサービスにおいても、第一想起した商品を導入する確率は55%といわれており、多くの企業が認知度向上に取り組むとともに、自社サービスの現状把握や広告施策の効果測定のために認知度調査を実施しています。本記事では、BtoB事業を展開しており「自社商品やサービスの認知度調査をしたいが、何から始めればいいのかわからない」という方に向けて、純粋想起と助成想起などの認知度に関する基礎部分から説明し、認知度調査の具体的な方法や、調査のステップについてもくわしく解説します。認知度調査の結果を効果的に活用するためのポイントも紹介しますので、ぜひ自社の認知度調査にお役立てください。

認知度調査とは

BtoBにおける認知度調査は、自社の商品やサービスが人々の間でどれだけ知られているかということや、浸透しているかを測定する手法です。認知度調査を通じて、市場での自社のポジションを適切に把握でき、マーケティング活動の改善を行うことが可能です。特に新商品の販売や商品リニューアルのタイミング、商品の売上が伸び悩んでいる時、自社商品のマーケティング戦略を策定する時などに、確度の高い仮説や施策作りに有効なデータを得ることができます。認知度調査では調査対象範囲や分析軸によって結果の見方が変わるので、目的を明確化し調査設計をすることが重要です。

認知度とは

認知度調査について知るには、まず認知度について正しく理解することが必要です。「認知度」とは、「名前だけでなく、製品や事業内容までが広く知られ、ある程度中身について理解されている度合い」のことを指します。「知名度」と混同されがちですが、知名度は単に「名前が知られている度合い」のことを指すため、「認知度」が高い方がより市場に浸透していると言えます。また認知度には「企業認知度」と「商品認知度」の2つがあります。「企業認知度」は、企業自体やそのブランドの存在や業績、製品やサービスの提供内容、ブランドイメージなどに関する知識や認識をどれくらい持っているかを示す指標です。一方で、「商品認知度」は、特定の製品や商品に対する認知の程度を指します。消費者が特定の商品や製品に対して認識や知識を持っているかを示します。商品認知度は、商品の特徴や利点、ブランドイメージ、広告やプロモーションの認知度などを包括的に評価することが求められます。

認知度や認知度の上げ方についてより詳細を知りたい方がこちらの記事で深く解説しておりますので、併せて参考にしてください。

本記事では、主に商品やサービスなどの認知度(=商品認知度)の調査について解説していきます。

認知の3段階

商品認知度には、カテゴリーの認知、名称の認知、特徴の認知の三段階があります。認知における最初の段階は「カテゴリーの認知」です。この段階では、消費者があるカテゴリー(例:スマートフォン)が存在することを認識している状態を指します。消費者は、そのカテゴリーに関連する一般的な知識や概念を持っているかもしれませんが、具体的な製品やブランドについてはまだ特定していない段階を指しています。

次の段階として「名称の認知」があります。この段階では、消費者が特定のカテゴリーに属する製品やブランドの名称を認識しています。消費者は、製品やブランドの名称を目にしたり、聞いたりすることによって、その存在や識別ができるようになります(例:iPhone)。ただし、名称の認知だけでは具体的な特徴や詳細についてはまだ把握していないことがあります。

最後の段階は「特徴の認知」です。この段階では、消費者が特定の製品やブランドの特徴や利点を認識しています。消費者は、製品やブランドの独自性や優れた機能、付加価値などを理解し、その製品やブランドを他の競合製品と区別することができます。(例:iPhoneはデザイン性が優れている)
特徴の認知が高まると、消費者は製品やブランドに対してより深い関心や好意を持つ傾向があります。

認知度調査をする際は、上記のどの段階に顧客がいるのか把握することで適切な施策を打てるようになります。

純粋想起と助成想起

認知度に関連する重要な概念として、純粋想起と助成想起があります。純粋想起は「表計算ソフトといえばどんな商品を浮かべますか?」といった質問で測定される、ロゴやキャッチコピーなどのヒントがなくても、自発的に特定の商品やサービスを思い出せる状態を指します。助成想起は、純粋想起とは反対に、選択肢やロゴなどのヒントを提示した上で、特定の商品やサービスを想起できる状態を指します。助成想起を測定する質問としては下記のようなものが挙げられます。

「表計算ソフトで以下の中から知っている商品を選んでください。」
1.エクセル
2.Googleスプレッドシート
3.Numbers
4.LibreOffice Calc

一般に「純粋想起」は「助成想起」よりも獲得が難しい一方で、純粋想起率の高い商品やサービスは、より選ばれやすいといえます。後ほどくわしく解説しますが、この2つの想起率をクロスさせ、自社サービスの市場での立ち位置を明確にするトップオブマインド分析という手法もよく活用されます。

認知度調査が必要な理由

自社商品の認知度によって、取り組むべきマーケティング施策の優先度は大きく変わります。特にBtoBの場合は商品の「カテゴリーの認知」自体が低いことが多く、その場合は商品そのものだけでなくカテゴリー自体を啓蒙するマーケティング活動が必要になります。逆に、カテゴリーの認知は高いが自社商品の「名称認知」が低い場合は、まずは純粋想起ではなく助成想起率を高め顧客の選択肢に入るための活動が必要となります。また、助成想起で一定の数値を得られている場合は、自社商品の「特徴の認知」を高め、より細分化されたサブカテゴリーを創出する活動が有効です。

例えばマーケティングオートメーション(MA)ツールが日本で展開されはじめた2000年代は、その必要性自体がまだ市場に認知されておらず、当時欧米からいくつかのMAベンダーが進出を試みましたが、そもそも顧客はMA導入のメリットを知らないため拡販にはつながりませんでした。その後、リーマンショックを経て経済環境が悪化し、BtoB市場でも営業効率化が強く求められるようになったことなどを背景にMAというカテゴリーに注目が集まり、多くのMAベンダーが自社の独自性を謳うマーケティング活動を行うようになりました。そして現在では、「国産MA」「中小企業むけMA」などのサブカテゴリーが形成されつつあります。このように、認知度調査をもとに自社のポジショニングを把握したうえで施策を実行することでその効果を最大化することができます。

認知度調査の方法

ここまで認知調査の基本的な概念を紹介してきました。ここでは実際にどのような手法を用いて、調査を進めるか解説していきます。認知度調査の方法には、ネットリサーチ、郵送調査、インタビュー調査という3つの主要な手法があります。

ネットリサーチ

ネットリサーチは、インターネットを活用して認知度調査を行う方法です。オンラインアンケートやウェブサイト上のフォームを通じて、大量の回答を収集することが可能です。ネットリサーチの利点は、比較的短期間でデータ収集や広範な参加者の獲得が可能なことです。また、オンライン上でデータの集計や分析が容易に行えるため、効率的な調査結果の取得が可能です。

郵送調査

郵送調査は、郵送を通じてアンケートや質問票を送付し、回答を収集する方法です。参加者に調査資料を送付し、返送された回答を集計・分析します。郵送調査の利点は、オフライン環境でも実施できることや、特定のターゲット層(特に高齢者層)に対してアプローチしやすいことです。また、参加者に時間をかけて回答を考える余裕を与えることができるため、詳細な情報や意見を収集することができます。郵送調査をする際は、ネットリサーチに比べて若年層の回答率が低い可能性があることやコスト面やスピード面がかかることに注意しましょう。

インタビュー調査

インタビュー調査は、対面やオンライン上で直接参加者と対話しながら情報を収集する方法です。インタビュー調査の利点は、参加者のリアルタイムな反応や深いインサイトを得ることができることです。また、アンケートではできない、個人にカスタマイズした追加の質問がその場で出来るため、より具体的で詳細な情報を収集することができます。これらの認知度調査方法は、目的や調査対象、予算、効率性などに応じて選択しましょう。

認知度調査のステップ

ここからは実際に認知度調査を行う際の具体的なステップを紹介します。下図の8ステップに沿って認知度調査の実施方法を解説します。

認知調査 進め方 ステップ

Step1.調査目的の確認

先述の通り、認知度には多くの構成要素があるため、一度の調査で網羅的なデータを得ることは難しいです。そのため、自社の事業の状況に応じて調査目的を明確にすることが重要です。例えば「商品のリブランディングのため、現在の商品イメージや認知度を把握する」「CMの広告効果を測定するため前後での商品名称の認知度の変化を確認する」など具体的な目的に基づいて調査を行うことで、必要な情報やデータを効率的に収集することができます。また、調査を実施する前に仮説を立てることで、調査項目や質問内容を検討しやすくなります。例えば自社の商品やサービスが売れていない原因について「特定の顧客セグメントの認知度に課題があるのでは」という仮説があるならば、調査対象に複数のセグメントの顧客を均等に含め、セグメント間で認知度を比較する、といった調査設計が可能になります。

Step2.調査対象の決定

調査目的が明確になった後は、調査対象の範囲を決めていきます。範囲の決定の際には、事業の市場規模であるTAM、SAM、SOMに基づいて検討すると良いでしょう。

 TAM SAM SOM
製品の認知度調査の場合、一般に短期的な利益につながりやすいSOMを対象とします。またBtoBの場合は、製品の購買に関わる担当者の業種、職種、職位といったペルソナに基づいて対象者の属性を限定するのも有効です。

STEP3.サンプル数の設定

調査において、適切なサンプル数を設定することは調査の信頼性や有効性を確保するために重要です。サンプル数を決める際にはまず、割付の設定をします。前述した調査対象の設定の際にペルソナを立てましたが、この「業種」や「役職」などのセグメントに応じて、分析が十分にできるような回答数が集まるように調整しましょう。割付はセグメントごとに均等に割り振る均等割付と、市場規模に比例して割り振る比例割付があります。

例えば調査対象者の業界別に割付を行う際、均等割付なら
製造業200名、 金融業200名、不動産業200名……

SOMに含まれる業界別の企業数に基づき比例割付する場合、
比例割付:製造業300名、 金融業200名、不動産業100名……

といったようになります。

割付を行う際、統計的な信頼性を確保するためには一般に最低でも100件以上のサンプルが必要です。セグメントを細く分割しすぎるとサンプル数の確保が困難になるため、分析のために必要最低限な割付を行うのがポイントです。

STEP4.リサーチ方法の選定

調査対象や必要なサンプル数に応じて、最適なリサーチ方法を選択しましょう。調査対象となるサンプルのデータが、予算・期間内で得られる方法を選ぶことが重要です。BtoBの場合は調査対象が限られるため、必要なサンプル数を確保するために調査会社にインターネット調査を依頼することが一般的です。調査会社に依頼する際は、各社の保有するパネル(継続的に調査可能な同一人物のモニター)の性質や、調査設計のノウハウなどを見て、調査趣旨に即した調査会社を選定するようにしましょう。また、調査に慣れているのであれば、パネルだけを借りるセルフサービス型の調査会社を利用することでコストを抑えることができます。

Step5. 調査票の作成

リサーチ方法を決定したら調査票を作成しましょう。調査会社に作成を依頼することもできますが、自社で作成する場合は各社が公開しているテンプレートを利用することも可能です。例えば、QuestionProの調査票は一般的な認知度調査に対応しているのでぜひ参考にしてみてください。自社で独自の調査項目を設定する場合は、検証したい仮説を軸に項目を精査すると良いでしょう。例えば立ち上げ段階の商品やサービスであれば「〇〇というサービスを知っていますか?」という純粋想起を確認する質問や、そもそも「〇〇という言葉を知っていますか?」などのカテゴリー認知を確認するような質問をしましょう。既存商品のマーケティング手法を検証したい場合は「どのチャネルで自社のサービスを認知したか」などの設問を用意すると良いでしょう。自社の調査目的や特定の要件に応じて、設問を作成したり、テンプレートをカスタマイズしたりして使用するようにしましょう。

Step6.スクリーニング調査の実施

スクリーニング調査はパネルから認知度調査の対象者を適切に選別するための調査です。スクリーニング調査では、事前に設定した基準や要件に基づいて、調査対象者の資格や属性を確認します。例えば、特定の会社規模や業種、役職や年齢層などの条件に基づいて調査に必要な対象者を選び出します。調査会社や調査プラットフォームを利用する場合は、事前に設定した条件に基づいて対象者をフィルタリングすることが可能です。スクリーニング調査をすることで、調査結果の信頼性や有効性を向上させることができるので、認知度調査では重要な工程となっております。適格な対象者を選び出すために、明確な基準の設定と正確なデータの収集をするようにしましょう。

Step7.本調査の実施

本調査ではスクリーニング調査で絞られた対象者に対して、Step4、Step5で決めた調査方法や調査票に基づいて調査をします。調査の実施時には、調査対象者に対して調査目的、実施期間や回答方法についても明確に伝えることで、調査対象者が調査に参加しやすく、円滑な回答が得られるようになります。

Step8.分析・報告

調査対象からの回答データを分析し、マーケティングやプロダクトの改善に活かせるインサイトをレポートします。この際、Step1で立てた仮説に基づいて検証を進めていくとよいでしょう。具体的な分析手法は次の項でご紹介します。

調査結果の活用方法

調査結果の分析方法やその活用方法について具体例を交えながら解説します。

トップオブマインド分析で自社商品の立ち位置を知る

トップオブマインド分析は、純粋想起と助成想起をクロス集計し、自社商品の市場占有率(マインドシェア)を把握する手法です。トップオブマインド分析では、「純粋想起率」を横軸に、「助成想起率」を縦軸に設定し、自社と競合の製品を4つの象限にプロットすることで、自社商品の認知の「強さ」と「広がり」を視覚的に把握することができます。

トップオブマインド分析
右上の象限は勝ち組といわれ、商品が既に市場で広く知られており、マインドシェアが高いことを表しています。右下はニッチといわれ、純粋想起をもつコアなユーザーは存在するが、まだ広く認知をとるまでは至っていない「知る人ぞ知る」製品です。自社製品がここに当たる場合、広く認知度を獲得できるマス広告などが有効です。左上にはレガシーといわれ、ニッチとは逆に「知らぬ間に使われている」製品です。リリースから月日がたち印象が薄れている商品や、ネジや釘のように匿名性が高くブランドが意識されづらいカテゴリーの商品が当てはまるケースが多いです。自社製品がここにあたる場合、純粋想起を獲得するためにリブラディングやプロモーション戦略の変更を行い、製品の特徴の認知度を高めて差別化し、サブカテゴリーを形成していく戦略が重要です。

左下の象限はマイノリティといわれ、リリースしたばかりの製品などが当てはまります。市場からまだ認知されていない状態ですので、まずは助成想起を高め顧客の選択肢に入ることを目指すか、特定のセグメントでの純粋想起を高めニッチな製品を目指すか、といった方針を固めるのがよいでしょう。このようにトップオブマインド分析を用いることで、自社の商品やサービスの市場の立ち位置を把握し、自社がとるべき戦略を明確にしましょう。

ギャップ分析で自社商品の強みを発見する

ギャップ分析は認知度調査とあわせて自社製品に対するイメージも調査し、課題を明らかにする手法です。ギャップ分析をするためには、下記のような質問を調査票に入れるようにしましょう。

・「あなたが(製品名)に求めることを選択してください(複数選択可能)」
・「あなたが実際に(製品名)に抱いているイメージを選択してください(複数選択可能)」

前者の質問をすることで消費者が求める理想像を、後者は消費者が実際に抱いているイメージを抽出できます。GAP分析を行う場合もトップオブマインド分析同様に、イメージの重要度と定着度をクロス集計し4つの象限に各選択肢をプロットします。

ギャップ分析
 右上の「重要視され、イメージも定着している」要素は今後も維持できるようマーケティング活動を継続していくとよいでしょう。右下の「重要視されていないが、イメージがある」要素に関しては、競合との差別化要素なのか、それとも単に重要でない”空振り”要素なのかを見極める必要があります。差別化要素であったとしても現状では消費者から重要視されていないので、消費者にとって価値を感じてもらうよう訴求方法を変更する必要があります。左上の「重要視されているが、イメージがない」要素は、短期的な売上改善のために最優先で改善しなくてはならないポイントです。例えば顧客が「機能的でスタイリッシュ」な製品を重視しているのに、認知度調査では「機能的だがデザインが古い」という回答比率が高い場合、まずは製品パッケージのデザイン改善から着手する、といった対応が有効でしょう。

おわりに

本記事では認知度調査の概念的な部分や調査方法、調査ステップや分析方法について解説しました。BtoBにおける認知度調査は、自社製品の市場でのポジションを把握するうえで非常に重要です。認知度調査で得た一次情報を基にマーケティング戦略を見直すことで、より顧客視点でインパクトのある施策が可能になります。今後の戦略の土台となる情報が不足していると感じているようでしたら、ぜひ本記事をご参考に実施してみてください。

著者情報
金子 光 (かねこ ひかる)
Hikaru Kaneko

大学時代にサンフランシスコに留学。卒業後楽天グループ株式会社に入社。モバイル事業部に配属され、40人規模のチームリーダーを経験。その後はWEBメディアのベンチャー企業に就職。マーケティング領域(特にSEO)で活躍中。