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【BtoB企業向け】デジタルマーケティングの成功事例を課題別で解説!

マーケティング

目次

BtoBビジネスのデジタル化が進む中、企業の多くがデジタルマーケティングを活用し、新たな顧客獲得や既存顧客との関係強化を図っています。しかしそれぞれの企業が抱える課題や悩みは一律ではありません。「なぜリードの獲得が頭打ちになるのか?」、「SNS広告を活用しても反応が得られないのはなぜ?」といった具体的な課題を解決する手段は、成功事例を知ることから始まることが多いです。

この記事では、BtoB企業が抱えるデジタルマーケティングの具体的な課題に焦点を当て、それを克服した成功事例を分かりやすくご紹介します。今直面している問題の解決策を見つける一助となれば幸いです。ぜひ最後までお読みください。

BtoBデジタルマーケティングの課題別成功事例

多くのBtoB企業がデジタルマーケティングで直面する課題を解決し、成功を手に入れた事例が数多く存在します。それらの事例を課題別に深堀してご紹介します。どの企業も一度は直面するであろう課題から、実際にどのようなアクションをとり、どのような成果を上げたのか、それぞれの事例から学び取れるポイントも明示しますので、皆様のマーケティング活動の参考として活用してください。

1.新規リード獲得数が停滞している

BtoB企業が新規リードの獲得において頭打ちに直面する際、主な原因の一つは特定セグメントの飽和です。例えば、ある企業が長らく中小企業の特定部署向けにサービスを展開し、このセグメントに特化したマーケティング施策を行っていた場合、そのセグメント内の導入意欲の高い層は既に獲得済みである可能性が高いです。従来の得意セグメントに固執するあまり、新たな市場への適応や展開が遅れることがあります。さらに、新規リードの獲得が停滞するもう一つの要因として、「刈り取り施策」の過度な依存が考えられます。これは、顕在的なニーズを持つ顧客層の獲得に注力し過ぎて、潜在的なニーズを持つ層の獲得・育成(ナーチャリング)が疎かになっている状況を指します。顕在層の顧客は確かに獲得しやすいですが、その数には限界があります。

リード獲得件数を月200件から約2倍にした某IT企業A社

某IT企業A社では一年前にプロダクトをリリースし、月200件のリードを獲得することができていました。一通り、WEBサイト作成、リスティング広告、SNS広告、展示会出展、セミナー開催を行いリードを獲得し、その後も定期的なメール配信によるナーチャリング、インサイドセールスによるリードの見極めや掘り起こしも実施し高い受注率や継続率を維持していましたが、200件以上のリード獲得に苦戦。事業規模の拡大に向けて、リード数獲得が2倍の月400件が必要でした。A社はまずリード獲得数が頭打ちになってしまった理由を検証し、その結果、従来売れていたセグメントが飽和していることと、マーケティング施策に偏りがあったことが判明しました。そこで、A社ではターゲットセグメントの見直しや、マーケティング施策の見直しを実施。本格的な改善施策の開始から2年で目標の月400件のリード獲得にあと一歩のところまできています。

参照:事例で学ぶ BtoBマーケティングの戦略と実践 第7章

この事例のポイント

この事例では、大きく2つの課題に対してそれぞれ施策を行い成果に結びつけています。1つ目はターゲットセグメントの見直しです。この企業ではターゲットセグメントを見直す際、過去の受注企業と失注企業に注目しました。受注企業からは受注数は少ないもののLTV(顧客生涯価値)が高いセグメントがないかを調査。失注企業からは当時は失注はしたものの機能開発が進んだ今ならチャンスのあるセグメントなどを洗い出し、新たなターゲットセグメントとして設定しました。2つ目は顕在層向けの「刈り取り施策」に偏重していたマーケティング施策の最適化です。MarketingSherpa社によると、BtoBリードの70%は長期フォローが必要だと言われています。

BtoB リード フォロー


出典:MarketingSherpa

展示会やテレビ広告、ホワイトペーパーやオウンドメディア運営によって獲得したリードをメールマーケティングやセミナー、インサイドセールスを活用して、ナーチャリングしていく必要があります。本事例では展示会でリードを獲得し、定期的なセミナーの案内と、導入事例コンテンツの定期メール配信によって、継続的なコミュニケーション活動を行い、商談化を実現しています。

2.web広告のCTR、CVRが低い

GoogleやYahooのリスティング広告やディスプレイ広告などのweb広告において、CTRやCVRが低くなってしまう原因は、サイトの構造やCTAの配置などwebサイトの使いにくさ起因するテクニカルな問題であったり、ペルソナの理解不足による訴求不足や広告との一貫性など根本的な課題まで多岐に渡ります。例えば、サイトの訪問数は一定確保できているのに、CVRが低い場合はサイト構造の欠陥を疑うべきです。ファーストビューで情報が伝わっていない、コンバージョンへの行動喚起ができていないなどクリエイティブの問題もあれば、レスポンスが遅い、スマートフォンに対応できていないなどシステムの問題もあります。いずれにしても問題は複数考えられるため、CVRが低くなっている原因を分析することが大切です。離脱箇所や流入キーワード、ユーザーごとの導線などを調査、分析し、課題を特定していきます。google広告であればGoogleアナリティクスなどのツールを利用して分析することも可能です。

ROASを200%を実現したEC企業B社

某EC企業B社は、季節性商材のEC事業を行っており、主にリスティング広告、ディスプレイ広告(主にリターゲティング配信)、SNS広告を運営していました。当初のROAS(広告の費用対効果)は25%しか達成されていなかったため、CVR(コンバージョンレート)の向上を重点的に目指すこととなりました。具体的な課題の把握のため、広告からの遷移先であるLPの各ページ、トップページからカート、そしてフォームへの遷移数を日々詳細に計測しました。この計測から、特定の箇所における改善の必要性が明確となりました。その結果、LPデザインの修正や、よりユーザーに有益な情報、例えば決済方法やクーポン利用に関する詳細をLPに追加することで、CVRの向上を果たしました。これらの改善措置の結果、予想以上の早い段階での完売を達成することができました。そして、広告配信が開始された初週のROASが25%であったものが、継続的な取り組みを経て、目標としていたROAS200%を最終的に実現しました。

参照:MOLTS

この事例のポイント

この事例のポイントは、具体的な課題の把握のため、カスタマージャーニーを数値を用いて分析している点です。顧客がどのようにフォームまで遷移しているのか遷移数を計測し、改善が必要な点を明確にした上で、それぞれ対策を講じております。闇雲にクリエイティブを変更するだけでは思った成果を出すことはできません。本事例は分析から改善という正しい順番で行うことで成果を挙げた好事例と言えるでしょう。

3.SNS広告のCTR、CVRが低い

SNSマーケティングとは、FacebookやInstagram、X(旧Twitter)など、SNSを活用したマーケティングです。SNS広告のCTR、CVR悪化の原因は主に「広告クリエイティブ」「ターゲティング」「ランディングページ」にあるケースが多いです。SNS利用者にとって、基本的には広告はノイズと見られることが多いです。したがって、ユーザーにとっても魅力的な広告クリエイティブでなければ、惹きつけることはできません。また、SNSは利用者の属性に傾向があります。自社のターゲットに合ったSNSを選ばないと、どれだけクリエイティブを頑張っても自社のターゲットにリーチすることはできないため、SNSの選定は重要です。加えて、気をつけるべき点は、SNS広告の内容と遷移先であるランディングページの訴求に乖離がないか注意が必要です。一貫したメッセージでないと、ユーザーに刺さらないばかりか、不信感を抱かれる場合があります。これらはCTR、CVRの低下につながるので見直す際は留意しましょう。

SNS広告の活用で広告クリック率を2.2倍にしたNTT東日本

NTT東日本ではクラウド型カメラサービス「ギガらくカメラ」のサブスクリプションサービスを提供するにあたり、サービスのトライアルでFacebookのリード獲得広告を活用しました。通常のコンバージョン広告を活用したリード獲得では、広告から外部のサイトに遷移して必要な項目をイチから入力する必要があり、ユーザービリティが課題でした。Facebookのリード獲得広告はFacebook内で完結し、ユーザの情報を自動入力できるため、ユーザビリティが高く、離脱率を大きく減少させることができます。A/Bテストの結果、リード獲得広告を使用した場合の「広告クリック率」は従来のコンバージョン広告に比べて2.2倍増加し、「リード獲得単価」は88%低減しました。

この事例のポイント

この事例のポイントは、Facebook広告の特性を活かし、ユーザビリティを改善した点ですFacebookのリード獲得広告を使用することで、外部サイトへの遷移や情報の手動入力といった手間を省略し、ユーザーにとってのストレスを軽減することができています。この事例からはプラットフォーム固有の機能や特性をうまく活用することで、ユーザーエクスペリエンスを最適化し、結果的に広告のパフォーマンスを向上させることができるという教訓を得られます。

4.メールマーケティングの開封率、CTRが低い

メールマーケティングの開封率やCTRに課題がある場合、これもここまで説明してきたweb広告同様に、ユーザー理解の問題とテクニカルな問題があります。これはメールマーケティングに限らず全ての広告で言えますが、ユーザーを理解していないとユーザーニーズにリーチすることはできません。自身のユーザーが今どんな課題を抱えていて、どんなことに興味関心があるのかを理解した上でメールタイトルや文章を構成していく必要があります。また、テクニカルな問題にも留意する必要があります。メールマーケティングはビジュアルではなく、文章で訴求をするのが基本です。例えば、1つのメールに多くのことを書きすぎてしまうと、メッセージが伝わりにくく訴求ができません。その他にも、タイトルの文字数が多すぎる、ボタンの位置が間違っているなど、注意すべき点は多々あります。加えて、送るタイミングも重要です。内容が良くても、タイミングによっては開封されずに終わってしまうことがあります。ユーザーがいま関心を持っているトピックかというタイミングはもちろん、曜日や時間によって開封率が大きく変わることもあります。タイミングについても、どこまで顧客を理解できるかがポイントで、ペルソナの行動パターンや思考をいかに想像するかがポイントです。これらは一発で明らかになることはないため、データを見ながら繰り返しテストを行うことが大切です。

メール1通で260万ドルを集めたオバマ陣営

企業の事例ではなく、特殊な事例ではありますが、オバマ元アメリカ大統領の運営組織のメールマーケティングの成功は参考になる事例です。オバマ陣営はカジュアルなEメールの件名でよく知られています。特に「I will be outspent」という件名のたった1通のメールで260万ドルを集めました。これは単なる偶然ではなく、キャンペーン担当者たちは連続的にテストを行い、1通のメールに対して10以上のバリエーションを試みました。しかし、デジタル分析ディレクターのAmelia Showalter氏は、どんなに成功してもその効果は一時的であり、完璧なEメールは存在しないと指摘しています。つまり、効果的だった手法も時間が経つと再テストが必要となります。これらの成功は厳しいテストと素晴らしいコピーライティングの結果、計画的に作り上げられたものでした。

参照:vero case studies

この事例のポイント

この事例からは多くのことを学ぶことができます。まず、シンプルかつ直接的なメッセージが効果的であることが示されています。これもただキャッチーなだけではなく、顧客の属性を分析した上で、他との差別化を行い読者の注意を引くことに成功しています。また、1つのメッセージやテーマに対して多様なバリエーションを試すことで、読者にとって最も響く内容を見つけ出すことができます。多様なバリエーションを出し、何度もテストをするには手間と労力がかかりますが、これを繰り返すことで心を動かすコピーライティングが可能になります。メールの効果は常に変動するものであり、完璧なメールフォーマットは存在しないため、時代や状況に応じて継続的にテストと最適化を行うことが重要であることも強調されています。

メールマーケティングについてはこちらの記事でも紹介しておりますので参照ください。

5.リードの質が悪く、受注率が低い

リード数は増えているのに、受注率が低く受注数が伸びないのは、リードの質が問題かもしれません。自身のサービスのターゲットがいないチャネルにどれだけプロモーションを頑張っても、受注につながらない質の悪いリードが増えるだけで結果にはつながりません。自身のサービスのペルソナは誰なのか、彼らはどんなチャネルを見ているのかを調査する必要があります。一方、獲得したリードに対して、自社製品の価値を適切に説明ができていない場合も受注率の低下につながります。組織として、マーケティングとセールスが別の部隊の場合、セールスは受注率の低さをリードの質に問題があると転嫁する恐れもあります。これらはリードの質について定量的な視点で評価できる共通認識を持つ必要があります。

リードの質を見直し、パイプラインを25.6%上昇したコニカミノルタ株式会社

コニカミノルタジャパンのマーケティングサービス事業部のマーケティングチームでは3年6ヶ月で創出した総パイプライン(売り上げ見込みの金額)の割合を25.6%上昇させることに成功しています。マーケティング施策を試行錯誤する中で、リードの質についても見直しを実施。まずはターゲットリストを作る上で、「企業」と「人」それぞれで条件を設定し、2軸をクロスした上でどこがメインターゲットなのかを定めました。

コニカミノルタ  デジタルマーケティング

出典:コニカミノルタ Web&デジタルマーケティングコラム

また、質の良いリードの定義を「顧客が欲しいタイミング(フェーズ)で、双方が望むような購買と商談のプロセスに至れるリード」と定めて、関係者間で明文化し合意できるように、細かい条件を定めています。しかし、マーケットの状況や、セールスの肌感覚も大切にしており、条件は適宜見直しをかけていくことと、厳格なルールとしてではなくガイドラインとして運用しています。最後に、ハウスリストと突合し、条件に合致する質の良いリードを保有しているかを判断しています。

この事例のポイント

この事例では、まずはターゲットを定めるところからはじめ、リードの条件に落とし込むことで、自社として明確に「質の良いリード」を定めている点です。このプロセスを経ていないままに、リードの質を緩く定義すると、部門間でのコミュニケーションミスの発生や、マーケティグ施策のブレが起こり、結果的に受注率の低下を招きます。部門間を跨いでのやりとりになるため、ロジックがないといけません。また、この事例は独自のフレームワークでターゲットをプロットし、エリアごとにフェーズごとのフォロー条件を設定するなど、非常に細かい条件設定を行いながらも、セールスの肌感覚を大事にする柔軟性も持ち合わせています。このことで部門間での協力がスムーズに進み、成果につながっています。

6.公式サイトのCVRが低い

特に、BtoBマーケティングにおけるサイトには一定の型があります。CVRが低い場合、まずは型から逸脱していないか、CV導線を見直す必要があります。一般的にはファーストビューにCTAを配置する、コンテンツを読み終わった後にもCTAが設置してあるなど、成果の挙げやすい配置というものが決まっています。こちらの型についてはBtoBサイト勝ちパターンを180のチェックリストとワイヤーフレームにまとめた「BtoBサイトを成功に導く180のチェックリストとワイヤーフレーム」が詳しいです。このチェック表を網羅するだけでも、大幅に改善が見込める可能性があります。また、これらの土台ができた上で、さらにCVRを高めていきたい場合、重要なのはいかに顧客体験に深くリーチできるかが重要になります。ユーザー理解がないと、テクニカルな問題を解消するだけでは成果が出ません。

ネット証券取引口座の入金率を108.43%に改善した株式会社SBI証券

ネット証券を運営するSBI証券では、取引口座開設済みユーザーの中でも、入金・取引に至らない人が多いことが課題でした。ユーザーアンケートを通じて明らかになったのは、投資意欲はありログインして情報収集はするものの、何から始めていいか分からず損をすることへの不安があるため、多くの人が入金をしていないということでした。この分析結果から、証券初心者のユーザーに対してのみトップページの画面を変更する改善を実施。

KAIZEN PLATFORM デジタルマーケティング

出典:KAIZEN PLATFORM

投資信託やロボアドバイザーなど、投資初心者の人でも取り組みしやすいようなコンテンツを中心に訴求するような内容に変更しました。その結果、ユーザーの入金率が向上し、108.43%を達成しています。

この事例のポイント

この事例のポイントは、いきなりテクニカルな問題に焦点を当てるのではなく、UX(顧客体験)全体を俯瞰して、どこがネックになっているのかを特定した上で、改善を行なっている点です。ユーザーアンケートを通じてユーザー理解を深めて、CVRが上がらない真因を突き詰めた上で、どのようにページを改善すれば良いのか、導線はどうすれば良いのかという順番で検討されています。そのため、ユーザーが抱えるペインポイントに刺さったサイトになっています。この事例は既存顧客向けサイトの改善でしたが、新規獲得であっても基本的な考え方は変わらず、ペルソナの理解を深めて、どのようなUXを設計するのかが重要です。

7.社内にデジタルマーケティングの文化がない

社内にデジタルマーケティングの文化がないと、施策を進める上で、予算がつかなかったり、他部門の協力を得られないなど、さまざまな弊害が発生します。デジタルマーケティングの文化がない主な理由は、デジタルマーケティングを推進する組織がなく従来のやり方を変える方向に力が働かない、トップの理解がないなどが理由になります。これらはいずれも組織として成功体験がないことに起因しています。

小さな成功体験を積み上げマーケティングの強い会社へ変革した某製造業C社

某製造業のC社では、これまでの旧態依然とした営業会社であったため、なかなかマーケティングに対してリソースを割り当ててもらえていませんでした。経営陣の理解は得られているものの、営業部門からの協力が得られないことがネックでした。そこで、まず取り組んだのは小さな成功体験を積むことです。比較的短期間で売上に近い成果を生み出すことができる施策を中心に数字を改善していき、実績を社内にアピールしていくことで、社内の関心や期待を集めることができました。本格的にリソースが割り当てられるようになると、次はリードの数や商談の数をKPIにして並行していくつかの施策を実施します。リード数や商談数が増えてきたら分析を行い、自社の勝ちパターンに集中することで実績を出し続けることができるようになります。

参照:事例で学ぶ BtoBマーケティングの戦略と実践 第13章

この事例のポイント

この事例のポイントは、施策実行の順番と選択と集中を行っている点です。まずは与えられた予算内で、社内向けにアピールできる施策に集中することで、低予算でも成果を上げることができます。その次に、質ではなく量に集中することで、自社に合ったチャネルを見つけることができる可能性を高めます。そこで見つけたチャネルにリソースを集中することで、中長期的に成果を最大化することができます。この順番がとても大切です。例えば、成功事例がない中で、いきなり大きな施策をするために予算が欲しいといってもなかなか他部門や経営陣からの理解は得られません。量ではなく、質に最初から拘ると費用対効果の悪いチャネルに投資し続ける事態になりかねません。また、最初は与えられたリソースも少ないので、まずは選択と集中で一点突破していき、成果を出し続けることができれば、それがマーケティグへの期待となり、ひいては文化になっていくのです。

デジタルマーケティングの成功事例に共通する目標達成のポイント

ここまでご紹介してきた通り、デジタルマーケティングの領域にはさまざまな成功事例が存在しますが、その背後にはいくつかの共通点が見受けられます。本章では、これらの事例がどのようにして成功を収めたのか、その共通する要点や手法を3つの主要なポイントとしてご紹介いたします。

1.達成したい目標を明確にする

マーケティング施策を実行する際に、まず最初に意識するべきことは「達成したい目標を明確にすること」です。具体的な目標やKPIが明確になることで、現状とのギャップが明らかになり、どのような課題に取り組むべきかがはっきりします。また、明確な目標を設定し合意することで、組織全体として適切なリソースの配分が実現可能となります。必要な予算や人員、ツールの選定など、効果的な施策実行のために必要なリソースを組織として確保する意思決定を行うことができます。さらに、目標の言語化ができていると、チーム内に共通言語が生まれ、コミュニケーションがスムーズに進むようになります。結果として、施策の実行速度が向上し、マーケティング活動全体の効率が大きくアップします。

2.顧客理解を深める

いつの時代もマーケティングにおいて、最も重要なのは顧客を理解することです。webサイトのコンテンツ、広告の訴求、メールのタイトルや内容など、どんなタッチポイントであったとしても、ターゲットとなる顧客のニーズや考え、行動を正確に把握しないと、彼らに対して響くメッセージやコンテンツを作成することは難しくなります。現代のマーケティングでは多種多様な手法やツールが提供されています。これらのツールを利用することで、顧客の行動や好みを分析し、よりパーソナライズされたアプローチを行うことも可能です。しかし、それらのツールや技術だけに頼るのではなく、マーケター自身が顧客の気持ちや思考性をどれだけ深く考えられるかがポイントです。顧客の立場に立って考え、感じることで、真の顧客理解を深め、効果的なマーケティング施策を計画し実行することができます。

3.費用対効果を考える

目標設定と顧客理解が進んだ上で、どの手法を採用するかを検討する必要があります。その際、費用対効果を考慮して手法を選定する必要があります。費用対効果が高い手法とは、投資に対するリターンが高い、すなわち同じ予算でより多くの成果を上げることができる手法を指します。例えば、広告を行う際、どれだけの費用をかけて一人の顧客を獲得するかを示す指標として「CPA(Cost Per Acquisition)」があります。このCPAは、広告費用を新規顧客数で割ったもので、具体的に顧客1人当たりの獲得コストを示します。

CPA デジタルマーケティング

ただし、ビジネスによってはCPAだけを見て判断するのではなく、その顧客のLTVとのバランスを見ることも求められます。自社のビジネスにあった指標を見つけ、費用対効果を算出することが大切です。

おわりに

本記事では、デジタルマーケティングの成功事例を課題別に取り上げ、その実践例と共通のポイントを詳しく紹介してきました。他社の成功事例から学ぶべきことはたくさんありますが、そのままマネをするだけでは必ずしも自社の成果とは結びつきません。自社の状況やニーズに応じて、最適化された方法を採用することが求められます。成功事例から学ぶのはその本質です。それを理解し、自社の環境や課題に合わせて取り入れ、アレンジすることで、真の効果を発揮するデジタルマーケティングが実現されるでしょう。今後の取り組みに、ぜひ本記事の内容を参考にして、最適な戦略を構築してみてください。

著者情報
田村 佳士(たむら けいし)
Keishi Tamura
2015年に東証一部上場の人材企業に入社し、新規営業、新規事業開発に従事。2018年に機械学習ベンチャーに出向し、AI技術を駆使した新規事業の企画を推進。その後、2020年に転職し、現在は大手IT企業にてAIプロダクトのプロジェクトマネージャを担当。エンタープライズ企業へAIプロダクトの導入プロジェクトの推進やプロダクト企画に勤めている。