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Buying Group Marketingとは?BtoBマーケを成功に導く新しい顧客の捉え方を徹底解説 

マーケティング

目次

顧客自らが情報収集を行うようになったことや、コロナ禍の影響を受けてBtoBビジネスにおいて従来の対面営業から見込み顧客(リード)へ個別最適化したアプローチを行うマーケティング手法を行う企業も増えつつあります。企業の担当者個人を見込み顧客、すなわちリードと捉えて施策を考えるリードベースの手法は複数あります。手法の一つとしてLBMABMなどがあり、施策として実行する企業も多いですが、「商談化や案件化につながりづらい」「顧客個別へ施策を行っても手ごたえがない」という悩むマーケティング部長も多いかもしれません。

それらの課題を解決できる、新しい概念として注目されているのが「Buying Group Marketing(BGM)」です。Buying Group Marketingを理解し導入することで、案件化や成約率の向上といった成果に繋がる可能性もあります。この記事では、Buying Group Marketingの概念や注目される背景、メリットや成功させるポイントを解説します。

Buying Group Marketingとは?

Buying Group Marketing(BGM)とは、BtoBビジネスにおけるターゲットを企業の購入担当者個人ではなくグループとして扱う考え方や概念のことを指します。従来のBtoBマーケティングでは、ターゲットを企業の購入担当者、いわゆる「個人」として捉えて施策を行うことが一般的でした。しかしながら、実際の購入プロセスにおいては役割の異なる複数の部署や人が関わっているため、担当者個人をターゲットとして捉えるのではなく、購入プロセスに関連するすべての担当者に対して、適切なアプローチを行う必要があると考えられます。BGMは、購入に関わるターゲットを「企業グループ」と捉え、グループへのアプローチを行うことが適切であるという考えのもと生まれた概念です。

なぜBuying Group Marketingが注目されるのか

BGMが注目されているのは、リードベースとABMで発生しがちな課題である、アプローチ先の範囲が狭いという問題を解決できるためです。従来の企業の担当者個人に対して行うリードベースのマーケティング手法や、ターゲット先を企業全体を対象とするABMといった手法では、ターゲット対象とする範囲が狭すぎるため、商材や担当者ごとの適切な営業活動が行いづらいといったデメリットがありました。それに対しBGMの概念を用いると、購入に関連する担当者をグループ単位でフォローすることができるようになるため、適切な営業アプローチができ、案件化に繋がりやすいという効果が期待できます。ABM、BGMの概念やターゲット範囲の違いについて以下の表にまとめました。それぞれの特徴の違いについて以下の表を参考に理解を深めてみましょう。

ABM BGM  違い

Buying Group とは何なのか

BGMのアプローチ対象となるBuying Group(購入グループ)とは、「商材の購入プロセスに関わる、役割の異なる複数人のグループ」を指します。またBtoBの商材購入の検討や意思決定の場合は、Buying Groupが関わるケースが多いのも特徴です。Forresterによる収益業務に関する調査では、販売者側と購入者側の両方に対し、BtoB商材の購入決定に関する人数について質問を行いました。調査では、販売者の94%は「3人以上が購入に関わっているグループに販売」という結果が出ています。さらに、38%は10人以上が購入に関わっているグループに対して製品を販売していることが分かりました。5,000ドルを超える商材を購入した購入者側は、84%が3人以上のグループで意思決定を行っていたとの結果が出ています。この結果から、企業の購買行動プロセス内で関わる人数は複数人であることがよくわかるのではないでしょうか。では次に、Buying Groupが持つ役割について以下に解説します。

Buying Group(購入グループ)における役割例

BtoB向けの商材やサービスの場合、上記図の購買行動モデルのように購入に至るまでのプロセスごとに行われる行動が異なります。またその行動やステップごとに関わる関与者が多く存在します。Buying Groupにおける役割は以下の7つの種類に分類されます。それぞれの役割の定義について解説していきます。

Champion

Championとは、特定の製品やサービスに対する熱心な支持者のことを指します。製品やサービスの価値やメリットなどについての情報を積極的に購入グループ内で伝え、他のメンバーに影響を与えるような人たちでもあります。購入グループ内では製品やサービスの推進者で、関係者にプラスの情報を伝えることで購入意欲を高める役割を担っています。

Decision Maker

Decision Makerは日本語でいう意思決定者を指します。購入グループにおいて最終的な決定を下す権限を持つ人です。他のメンバーからの情報や提案を検討し、最終的な決定を下す役割を果たします。

Gate Keeper

ゲートキーパーは、購入グループ内で情報やリソースの流れを管理する役割を担う人たちのことを指します。他のメンバーに対し、情報を提供したり、資料を共有したりする人たちです。また、購入グループの外部からの情報やリクエストをフィルタリングし、適切なメンバーに情報を受け渡す役割もあります。

Researcher

Researcherは主に市場調査をする人のことを指します。市場の動向や競合情報などを調査し、購入決定に必要な情報を収集します。他のメンバーに対し、調査結果やデータを提供するなどを行い、意思決定を支援する役割を担っています。

Thought Leader

Thought Leaderは、知識、洞察力などに基づいて意見やアイデアを提供する役割を果たします。専門知識や経験を持ち、グループ内の他のメンバーに影響を与える存在であり、新しいアイデアや視点を提供することで意思決定プロセスをより明確にするといった役割を持ちます。

Influencer

Influencerは、購入グループ内で他のメンバーに影響を与える力を持つ人物であり、意見や評価を通じて他のメンバーの意思決定に影響を与えます。また説得力があるため、他のメンバーの意見や態度に影響を与えることもできます。

The User

ユーザーは、購入グループが対象とする製品やサービスの実際の利用者のことを指します。製品やサービスの使用体験などユーザーのフィードバックや要望を提供することで、購入グループの意思決定に影響を与えます。企業の規模により関与する人が多いかどうかは変わるものですが、このように商材の購入に関して異なる役割を持つ複数の人がいることから、成約のためにBuying Group単位での適切なアプローチが求められるのです。

Buying Group Marketingのメリット

BGMはBuying Groupの購入関係者が持つ個々の悩みやニーズへ適切なアプローチやフォローを行い案件化率を高めます。その他にも、以下の3つのメリットが得られると考えられます。

1.精度の高いパーソナライズを行うことができる
2.エンゲージメントを高めることができる
3.定着率を高めることができる

それぞれのメリットについて解説します。

1.精度の高いパーソナライズを行うことができる

BGMでは、グループ単位でのターゲティングにより、精度の高いパーソナライズされたアプローチができます。従来のリードベースのマーケティングでは、担当者個人をターゲット対象とし、ペルソナ設定やジャーニー作成を行っていました。しかし、これでは担当者レベルでの情報把握にとどまり、企業としての購入意思ではなく担当者個人としての考え方に依存してしまう可能性があります。また、商材に対して決裁権のある関係者、または購入に関わる他の役割を持つ人物への情報収集や理解にはつながらず、適切なフォローやアプローチができない、というデメリットが考えられます。BGMではターゲットを購入グループとして考えるため、担当者以外にグループ内で役割を持つ人物の情報収集や理解にもつながります。また、ペルソナ設定やジャーニー作成をグループで考えて作成することによりグループ内で発生している個々の悩みやニーズ、購買までの行動を把握をすることもできるでしょう。正確なパーソナライズされた情報理解により、効果の高いマーケティング施策を講じることができることもメリットです。

2.エンゲージメントを高めることができる

グループをターゲット対象とした正確なパーソナライズを行うことにより、顧客エンゲージメントを高めることにもつながります。顧客グループとしてまとめられるのは業務を実際に行う担当者、同僚、そして所属する部門の部長です。グループ内の異なる役割や立場の人たちが個別で抱える悩みやニーズを適切に把握し、適切なアプローチをすることで、各関連人物の課題解決やニーズをフォローできるようになります。その結果、個人単位でのアプローチよりも多くのエンゲージメントを獲得できるため、コンバージョン率の向上にもつながるでしょう。

3.定着率を高めることができる

BGMはグループに属する多くの人と接点を持つ事で、定着率を高められるのもメリットです。従来のリードベースのマーケティングは、企業の担当者を対象とした接点を主としていました。しかしその手法の場合、担当者が仮に異動や退職をした場合には、新しい担当者と最初から関係を構築しなければいけないといったリスクが発生しかねません。新しい担当者への施策やフォローが不適切であると捉えられると、解約のリスクも発生してしまいます。BGMにより購入グループの多くの人とつながりを持てば、仮に担当者が退職した場合でも、グループ内の他の人との接点は継続するため、退職によって起きる解約などの悪影響も受けにくくなります。その結果、定着率が上がるというメリットが考えられるということです。接点を持ち続けることで定着率が上がるだけでなく、アップセルの機会を得られる可能性も考えられます。担当者や部長、同僚などのグループ内の人物それぞれが新しい課題や悩み、ニーズを把握することで、解決のための提案を最適なタイミングで行えます。多くの人物と継続的な接点を持つことは、その分課題やニーズの情報収集量も増えるため、アップセルの提案の機会も多くなり、利益の最大化にもつながります。

Buying Group Marketingを成功させる3つのコツ

Buying Group Marketing BGM

BGMはグループをターゲットとする手法のため、担当者個人を対象としたリードベースでのマーケティング手法とは異なる戦略やコンテンツが前提として必要です。BGMのメリットを最大化させるために知っておきたい、3つのポイントは以下の通りです。

1.購入グループを前提とした戦略を構築する
2.購入グループ内の役割に応じたバイヤーズジャーニーを作成、コンテンツを提供する
3.営業とマーケティング担当領域を再定義する

ここでは、それぞれのポイントについて解説します。

1.購入グループを前提とした戦略を構築する

まずはターゲットを購入グループとして捉えた、マーケティング戦略を構築することからはじめましょう。最初は、購買グループの関連人物それぞれを分類し、商材での意思決定健の有無などでターゲットとする優先順位を付けます。その後各ターゲットへ行う戦略を、販売、検討、商談、成約の流れに沿って構築します。戦略設計を行う際の重要なポイントは、販売プロセスごとに目標とKPIを設定することです。戦略の成果を測定し、必要に応じて改善を行うことで、BGMの成果の最大化につなげられます。

2.購入グループ内の役割に応じたコンテンツを提供する

BGMで成果を出すためには、購入グループ内の役割に応じたコンテンツを作成し、提供することが必要です。グループ内の関連人物それぞれの持つ課題やニーズ、検討や購入に至るまでの行動は異なりますので、その情報把握をします。ニーズや課題を把握するために必要なことは、購入グループ内の役割ごとの、各ペルソナやジャーニーの作成を行うことです。ペルソナやカスタマージャーニー設計により、グループ内の人物それぞれの思考や抱えるであろう課題を想定することができます。それらを理解しながら、課題解決につながる各コンテンツを作成していきましょう。コンテンツを提供するタイミングと提供するコンテンツ内容をしっかり見計らうことが重要です。例えば、課題解決のために情報収集をしている担当者であれば、情報収集ができるSNSやオウンドメディア上で、解決に繋がる情報を提供する、というように顧客の最適な情報を最適なタイミングで行うようにしましょう。コンテンツの提供タイミングがずれると、購入機会の損失リスクも考えられます。ペルソナやジャーニーを元に、購入グループ内の役割に応じたコンテンツを作成し、最適なタイミングでの提供を行うことを念頭におきましょう。

3.営業とマーケティング担当領域を再定義する

従来のリードベースのマーケティングでは、ターゲットの購入検討の段階によってアプローチを分業して行うことが一般的です。たとえばターゲットが情報収集や比較検討フェーズであればマーケティング部門が行い、承認や購買フェーズなどの見込み度合いの高い状態であれば営業部門がフォローを行う、というように役割が分かれることがあります。反対に、BGMではグループ全体をマーケティングと営業部門が連携してアプローチを行います。BGMでは、グループ内にさまざまな購入段階の顧客が混在していることになりますので、マーケティングと営業部門の担当領域を分けるのではなく、両チームで協力しながら成約まで進めることが大事です。現在マーケティングと営業部門で役割や業務が異なり分業となっている場合、それぞれが担当する領域の再定義が大前提として必要です。両チームで目標やKPIの設定、業務上で必要な対応や役割などを具体的に定義しましょう。それぞれの領域や役割、目標など共通認識を持ちながら遂行することで営業成果の向上が期待できます。

おわりに

Buying Group Marketingの概要や重要性、メリットを解説しました。BGMは従来のマーケティング手法をすべて変えるものではなく、ABM戦略と連携することで機能します。ABMでは企業ベースでパーソナライズしたうえでターゲティングを行っているため、BGMを始める際の戦略のベースとして活用することもできます。ABMのデータを元に、購入グループ内に存在する人物、役割、個々が購入へ至るまでの行動や導線を正しく理解することで、各人物へ最適なコンテンツを提供できる、効果的なBGMの戦略構築につながります。すでにLBMやABMを導入していてBGMの構築を検討しているなら、構築支援を活用する方法もあります。たとえばゼンフォースなら、BGM構築をはじめとした営業組織のDX支援を行っています。将来的にBGMの構築を内製化したいときにも、ぜひご相談ください。

著者情報
柳本 瑠衣 (やなぎもと るい)
Rui Yanagimoto
米国の州立大学卒業後、米国にて就労経験を経て帰国。国内のIT企業へ入社後、新規開拓営業と経営企画を経験。パーソルホールディングス株式会社(旧インテリジェンス)にてデジタルマーケティング領域を経験した後に、MAツール開発会社へ入社、インサイドセールス部門責任者として従事。2人目の出産を機に働き方を見直し2022年にフリーランスに転身。現在は営業DX領域のコンサルティングとマーケティング業務支援等を行う。