ChatGPTが2022年にリリースされてから、世間ではかなりの注目を集めています。この記事をご覧の方もChatGPTに興味を持ち、自社のマーケティング業務に活用できるか模索しているのではないでしょうか。
この記事では、ChatGPTをマーケティング業務に取り入れる方法や活用する際の注意点などを、活用した実例を交えて解説します。紹介した方法を導入すれば、マーケティング業務の時間と労力を削減し、成果の向上を期待することができます。それでは早速見ていきましょう。
ChatGPTとは?
ChatGPTは、OpenAI社が開発した自然言語処理のAIモデル「GPT」を搭載した対話型のAIチャットツールです。2022年にリリースされ、公開から1週間で100万ユーザー、2カ月で1億ユーザーに到達するなど、過去のどのようなサービスよりも早く普及しています。ChatGPTにテキストメッセージを入力すると、それに応じた答えを返してくれます。簡単な質問から小説や詩の創作、英文の翻訳まで多岐にわたる用途がありますが、ビジネスの分野でも活躍が期待されています。例えば、議事録・レポートの作成や文章の要約・チェック・校正など、ホワイトカラーが実施している業務を効率化することができます。
ChatGPTは何がすごいのか
ChatGPTのすごさは、まるで人と会話をしているかのように自然に対話をこなすことです。初めてChatGPTを使用したときに、その自然なやり取りに驚いた方も多いのではないでしょうか。ChatGPTの学習には「人間反応の強化学習(RLHF)」という方法が使われており、大量のデータを記憶し、「後に続きそうな単語をつなぎ合わせること」で文書を作成しています。
吾輩は、
吾輩は、猫である。
吾輩は、猫である。名前は
吾輩は、猫である。名前はまだ無い。
というように、大量のデータの中から文章のパターンを認識して、その後に続きそうな単語を出力しているのです。こうして自然な文章を作成していますが、パターン認識に基づくため、新しいアイデアや創造的な表現を生み出すことは難しいとされています。それでも、ビジネスの分野では議事録の作成や文章の要約など、ルーティンワークの効率化には活用価値があると言えるでしょう。
ChatGPTをマーケティング業務で活用する8つの例
ChatGPTをマーケティング業務で活用する例を、具体例を交えながら8つご紹介します。
1.コンテンツ制作
コンテンツ制作にChatGPTを活用することで、作業の負担を軽減することができます。マーケティング活動においてコンテンツ制作は非常に重要なタスクですが、コンテンツの作成には多くの時間と労力が必要で、常に品質を維持するのは簡単なことではありません。ChatGPTを活用すれば、時間や労力を削減してコンテンツ作成を進めることができます。ChatGPTの活用法を、ブログ記事の作成とビデオコンテンツの作成を例に解説します。
ブログ記事の作成においては、記事の構成やタイトル、さらに記事の執筆まで、ChatGPTの活用ができます。ターゲットペルソナの設定、キーワードをChatGPTに入力すると、SEOに強く、ターゲットが興味を持たれるようなタイトル案や記事構成案を出してくれます。そこから一部修正し、タイトルや記事構成を確定させたら、記事をChatGPTに書いてもらうことができます。加筆や修正は必要になりますが、時間や労力を大幅に削減しながらブログ記事の作成ができるようになるでしょう。
ビデオコンテンツの作成では、スクリプトの作成にChatGPTが役立ちます。短いものから、CMや長編のビデオスクリプトまで生成することができ、スクリプト作成の時間を短縮することができます。長編のスクリプトであっても、指示の出し方を工夫したり、ChatGPTと対話をしたりすることで、高品質なビデオスクリプトを作成することができます。
このように、ChatGPTの活用によってコンテンツ制作における時間と労力を大幅に削減することができます。
2.リードジェネレーション
ChatGPTは、リードジェネレーションにも活用できます。サイト内のチャットボットにChatGPTを搭載することで、顧客を支援するだけでなく、キーワードに応じたトリガーの設定や連絡先など顧客情報の収集も行うことができます。こうしてリードジェネレーションを一部自動化することが可能です。さらに、ChatGPTはMAツールとリードスコアリングシステムに統合して、高品質のリードの特定と優先順位付けに役立てることができます。一般的に、リードスコアリングにはプログラミングが必要ですが、ChatGPTはウェブサイト、ソーシャルメディアまたはチャットボットとの訪問者の相互作用を分析し、マーケティング担当者が望むあらゆる要素に基づいてスコアを割り当てます。
3.メールマーケティング
メールマーケティングは、マーケティング活動で非常に重要な役割を果たしていますが、担当者がコンテンツを考えるのが大変だったり、受信者が広告やプロモーションに飽きてしまったりすることがあるかと思います。ChatGPTを活用することで、そうした負担やリスクを軽減することができます。ChatGPTは、アイデアを出すことが非常に得意です。アイデアを複数提示してもらうだけでも、メールのコンテンツ作成に関する負担が軽減するのではないでしょうか。試しに、「各企業のマーケティング責任者が興味を持ってもらえるようなメールのタイトルを10個挙げてください」とChatGPTに投げてみたところ、すぐに10個だしてくれました。「あと10個追加で出してください」と指示を出すと、最初の10個とは違うタイトルを10個挙げてくれました。
今回は大雑把な指示ですが、具体的に指示を出せば、より効果的なタイトル案が出てくるはずです。また、ChatGPTを活用して顧客の行動や嗜好に基づいたパーソナライズされたメールキャンペーンを作成することができます。具体的な顧客の情報を入力することで、件名の最適化、対象のセグメンテーション、A/Bテストなど、メールを最適化するさまざまな方法を提供してくれます。これらの情報をもとに個別にカスタマイズされたメールを作成し、より高い開封率、クリック率、コンバージョン率を実現することができます。
4.SNSマーケティング
ChatGPTはSNSマーケティングにおいても活用することができます。投稿する文章作成やデータ分析、広告の作成が可能です。ChatGPTはさまざまなプラットフォーム向けの投稿を作成することができます。膨大なデータベースの中からトレンドワードを探し、短く口当たりの良いキャプションや、長い文章をSNSのユーザー向けに最適化することができます。また、データを分析して、消費者の行動、嗜好、トレンドに関する分析結果を提供することができます。トレンドを把握して効果的な戦略を立てることや、自社のキャンペーンに対して最適なタイミングを見つけることができます。
さらにChatGPTは、広告の作成においても役立ちます。このプログラムは、データを分析し、企業のキャンペーンに最適な広告フォーマットやクリエイティブ要素を推奨することができます。ブランドは、これに基づいて最適な広告を作成し、ターゲットオーディエンスにアピールすることができます。
5.1to1マーケティング
お客様との1to1マーケティングでは、パーソナライズされたアプローチが必要不可欠です。ChatGPTを使用すると、お客様の好みや興味に基づいて商品やコンテンツを紹介することができます。この個別に最適化された提案は、顧客を惹きつけ、売上を伸ばすための重要な戦略となります。また、ChatGPTを使用することで、インタラクティブな体験を提供することも可能です。クイズやゲームなどのアプローチを用いることで、顧客がポジティブで魅力的な体験ができるようになります。このような体験はブランドのイメージ向上や顧客との結びつきを強めることに役立ちます。広告も個別に最適化することができます。顧客の好みや興味に基づいて、ChatGPTがそれぞれのターゲットに最適な広告を作成します。広告をパーソナライズすることで、より高いクリック率やコンバージョン率を実現することが可能となります。
6.市場調査
市場調査は、広告チームがターゲット層の興味やニーズを知るために不可欠です。ChatGPTは、市場調査プロセスを効率化することができます。市場調査のためには、アンケートが効果的です。ChatGPTはアンケートの作成ができます。どんなターゲットに、どんな形式のアンケートをすべきかまで回答してくれるため、担当者の負担が軽減できるでしょう。またChatGPTは、その結果を分析し、詳細なレポートを作成することもできます。顧客の好みや認識をより深く理解し、重要なトレンドを把握することを簡単にします。担当者はその情報をもとに、今後のマーケティング戦略を立てることに集中できるのです。
7.SEO
ChatGPTはSEOにとっても非常に有用なツールです。 SEOは現代のマーケティングで必要不可欠な要素であり、ChatGPTがキーワードリストやメタディスクリプションの作成、記事の執筆などを行い、SEOを最適化することができます。ChatGPTは、膨大なデータの中から関連キーワードを抽出し、キーワードリストを生成します。そのキーワードに関する記事を作成することで、キーワードの最適化や検索順位の向上につながります。また、ChatGPTはメタディスクリプションを生成することもできます。メタディスクリプションとは記事の紹介文のことで、検索エンジンの結果ページでのクリック率を向上させるために重要なものです。例えば、記事を書いた後に「クリックしたくなるメタディスクリプションを100字程度で作成して」と指示をだすと、有効的なメタディスクリプションを生成してくれます。またChatGPTは文章を書くことができ、記事の執筆も一部行うことができます。文章は必ず人の手で修正を加える必要がありますが、ChatGPTが一部記事作成をすることで、マーケティング担当者の負担を軽減することができます。
8.データの整理
マーケティングにおいて、データ整理も非常に重要なタスクです。データ整理はエクセルやgoogleスプレッドシートで行うことが一般的ですが、この作業もChatGPTを活用して時間や労力を削減することができます。ChatGPTは、数式の作成ができます。例えば、「B列が部長あるいは取締役という単語を含むsheet2からのすべての行をコピーするGoogle Sheetの数式を教えてください」と指示をだすと、ChatGPTはその数式を生成し、スプレッドシートに適用してデータをさらに整理することができます。ChatGPTはデータを整理するための効率的なツールとして機能します。担当者はデータの整理に時間をかけることなく、コンテンツの作成や戦略の立案に集中することができるのです。
ChatGPTを活用する際の注意点
ChatGPTはマーケティング活動においても非常に有用なツールですが、活用する上での注意点がいくつかあります。
情報が正確でない可能性がある
ChatGPTは正確な情報を回答してくれるのではなく、学習したデータの中から適切だと思われる言葉をつなぎ合わせて回答をします。そのため、間違った情報や信頼性の低い誤った情報を出力する可能性があるのです。ChatGPTに「ChatGPTの回答の正確性は、どのくらい信用していいのでしょうか」聞いてみたところ、以下のような回答がありました。「ChatGPTの回答の正確性については、一般的に信頼性が高いとは言えません。ChatGPTは、トレーニングに使用されたデータに基づいて応答を生成するため、入力された情報に関連する情報を含めることができます。しかし、ChatGPTは人工知能であり、入力された情報が正確である限りにおいて、応答が正確であるとは限りません。
特に、ChatGPTは情報源の信頼性を判断することができず、入力された情報が正確であるかどうかを判断することができません。したがって、ChatGPTの回答を信頼する場合は、他の情報源と照らし合わせることや、専門家に相談することが重要です。」
ChatGPTの言う通り、情報の正確性を判断するためには他の情報源と照らし合わせたり、専門家に相談したりする必要があります。
情報漏洩の恐れがある
ChatGPTをビジネスで利用する場合、情報漏洩のリスクに注意を払う必要があります。質問するために入力した情報は、ChatGPTの学習データに活用されることになっています。もし会社の機密情報をChatGPTに送ってしまった場合、その情報を別の第三者への回答時に使用してしまう可能性があります。実際にAmazonでは、ChatGPTが社外秘の情報に非常に似た回答をしたことを受けて、機密情報をChatGPTに入力しないように社員に通告したことが話題となりました。ユーザーが入力した内容をAIに学習させない「オプトアウト」の仕組みも整えられていますが、情報を入力する以上、情報漏洩のリスクはあると考えましょう。顧客情報や業務で扱うプログラムなどの機密情報は、ChatGPTへ送信しないようにすることをお勧めします。
最新の情報は反映されていない
ChatGPTは大量のデータを学習し、そのデータをもとに回答をおこなっています。このデータは2021年9月までの情報しか入っていないため、最新のデータにアクセス出来ない点は注意が必要です。試しに、ChatGPTに「2023年に日本で起こった出来事を教えてください。」と質問したところ、以下のような回答がありました。
「ChatGPTは、2021年9月までの情報しか学習していないため、現在の2023年に起こった出来事に関する情報を提供することはできません。ただし、私が提供する情報は、最新の情報ではなく、一般的な情報であることをご理解ください。必ず他の信頼できる情報源も参照してください。」
ChatGPTを活用する際は、最新情報が反映されないことを考慮しましょう。
実際にChatGPTを使ってみた
筆者も実際にChatGPTを業務で活用してみました。その成果と、業務で活用する上でのポイントを2つ解説します。
オウンドメディアの執筆業務に活用し、工数が2割減になった
このオウンドメディアの執筆業務にChatGPTを活用したところ、工数が2割減り、業務を効率化することに成功しました。まずは記事構成をChatGPTに流し、記事の文章を作成してもらいます。その後に修正・加筆を行いますが、「0→1」にする負担が軽減され、記事を書くスピードが上がりました。ChatGPTを活用する上でポイントとなるのが、「指示の出し方」と「そのまま流さないこと」です。
指示の出し方が重要
ChatGPTを活用する上では、指示の出し方が非常に重要です。ChatGPTに対する指示を「プロント」と言い、このプロント次第で意図した回答を得られるかが決まります。プロンプト作成のコツは以下の3つが挙げられます。
・ 役割を限定する
・ 回答の条件を指定する
・ 追加で質問する
ChatGPTは膨大なデータから可能性が高いものを出力するため、役割を限定することで、意図した回答を得られる可能性が高くなります。例えば「あなたはプロのライターです」という前提条件の指示を出すと、ライターの立場で文書を書いてくれます。また、「あなたは小学校の先生です」と指示を出すと、小学生にも分かりやすいような回答を出してくれます。次に、回答の条件を指定することも重要です。「箇条書き」、「具体的な案を5つ出す」、「300字程度でまとめる」など、条件を指定することで、その中で回答してくれます。また、「丁寧な表現で」「簡潔に」などの表現方法も指定すると良いでしょう。意図した回答を得るために、条件を指定することは必要不可欠です。最後に、よりよい回答を引き出すために、ChatGPTに追加で質問をしましょう。「他の方法はある?」「具体例を教えて」「なぜそうなるの?」など追加で質問をすることで、ChatGPTとの認識齟齬を解消でき、より回答の精度が向上します。
そのまま流さないことが重要
指示の出し方次第で、ChatGPTは自分が意図した回答をしてくれますが、それでも完璧とは言えません。執筆業務に活用したとしても、人間の手で修正・加筆を加える必要があります。また、将来的にはAIが作成した文書が検知されるようになるとも言われています。そもそも、ChatGPTは大量のデータを学習して生成された文章であり、そのまま公開することで著作権侵害や剽窃の可能性もあります。ChatGPTで生成された文章を参考にしたり、加筆・修正を加えたりするなど、あくまで文章作成の補助として活用すべきでしょう。
おわりに
いま注目のChatGPTを、マーケティングに活かす方法について解説してまいりました。ChatGPTをマーケティング業務に活用することで、時間や労力の大幅な削減が期待できます。自身の業務や自社にとって最適な活用方法を模索し、活用してみてはいかがでしょうか。AIには無限の可能性があり、ホワイトカラーの業務がAIに置き換えられてしまうのでは、と言われることもあります。マーケティング業務においても例外ではなく、仕事のあり方が変わる可能性もあります。現時点では業務を100%遂行できるわけはないので注意が必要ですが、ChatGPTやAIの動向は引き続き注目していきましょう。