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営業マネージャーが最もマネジメントすべきは「自分」である|ベルフェイス清水貴裕氏

セールス マネジメント

目次

・メンバーの数字を管理する方法がわからない
・数字が伸び悩んでいるメンバーのフォローに戸惑ってしまう
・自分は量をやることで質を上げてきたけど、メンバーにはなかなか量を求めにくい ……

などなど、「営業マネージャー」の仕事に悩みはつきません。そこで今回は、営業×マネジメントの大ベテランであるベルフェイス清水貴裕さん@shimizt)にお時間をいただき、新任営業マネージャーが抱えるお悩みにズバリ回答してもらいました。

清水さんからの背筋が伸びる言葉の数々、ぜひご覧ください。

ゼンフォース株式会社 エバンジェリスト / ベルフェイス株式会社 部長 清水 貴裕 氏
ベンチャーから東証一部上場グループと横断して、0→1の立ち上げを中心に事業責任者を歴任し、100社以上の営業支援や仕組み化を行う。その後ベンチャー企業の取締役COOも歴任し、3年で売上5倍、社員数100名規模に育てた。数十社の営業コンサルテイングを行ってきた経験を活かし、2019年現職に。同社の大手向け営業グループのゼネラルマネージャーを経て、アライアンス領域の総責任者として活躍。

メンバーの数字をどう管理すればいいかわからない

―― はじめに、新任営業マネージャーがつまずきやすいポイントと、その解決策をぜひ教えてください。

ベルフェイス 清水貴裕 ゼンフォース

清水:最も多いのは「自分の数字なら組み立てられるけど、メンバーの数字をどう管理したらいいのかわからない」というお悩みです。

「営業力」は人によって差があるので、必要な行動量やパイプラインの積み上げ方は当然メンバーごとに異なります。しかしマネージャーになってすぐは、ほとんどの人が「自分の数字の作り方」しか把握できていません。また、チームの目標数字を設計した経験もないため、「このメンバーにはこれくらいパイプラインを作ってもらわないといけないな」というイメージが頭のなかに湧いていないのです。そんな状態で数字を管理しようとしたって、うまくいくはずがありません。

この解決策はいたってシンプルです。数字を設計・管理した経験がある自分の上司に相談して、手伝ってもらえばいいんです。しかしこれをやらない人がとても多い。みんな「営業のことだし自分でも管理できるだろう」と、どこか錯覚しています。これが「事業の数字管理」や「マーケティングの数字管理」であれば、周りの人に素直に教えてもらおうとするはずなんですけどね。

―― なるほど。営業として成果を出してきた実績があるからこそ、「自分にもできる」と思い込んでしまっている節があるわけですね。

数字が伸び悩んでいるメンバーのフォローに戸惑ってしまう

―― 「自分は結果を出してきたからこそ、数字が伸び悩んでいるメンバーの気持ちがわからず、どうフォローしたらいいのか戸惑ってしまう」という声もよく聞きます。

清水貴裕 ベルフェイス ゼンフォース
清水:たしかに営業マネージャーは、プレイヤーとして優秀な成績を残してきた人がほとんどです。しかし「メンバーの気持ちがわからない」という発言には、正直なところ驕り(おごり)を感じます。自分を基準に考えているんだろうな、と。その時点で、メンバーの気持ちに寄り添うことなんて一生できません。

そもそもマネージャーとは、メンバーがいてはじめて生まれる役割です。メンバーがいなければ、マネージャーはいりません。マネージャーを “やらせていただいている” わけです。となれば、メンバーの立場になって物事を考えるのは当たり前ですよね。

もし「いまの自分は傲慢になっているかもしれない」と感じたら、自分よりもすごい人に会いにいくことをオススメします。「自分なんて全然足りていない」という気持ちがあれば謙虚になれますし、自分を慕ってくれているメンバーのことを「もっと大切にしよう」と思えるようになりますよ。

―― おっしゃるとおりですね。自分のなかにある傲慢さに、つねに敏感でいたいと思いました。

「とにかく量」を求められない時代にどう育てる?

―― 「自分は行動量を増やすことで成果を上げてきたが、このご時世、メンバーに量を求めにくい。どうやって育てたらいいのだろうか?」というお悩みに対しては、清水さんはどのようにアドバイスされますか?

ベルフェイス 清水貴裕 ゼンフォース
清水「量が質を生む」のは、実体験からも間違っていません。ただし、「テレアポ1日100件かけよう」という営業マネージャーがいたとすれば、それは間違っています。1日100件かけようとすると、相手のことを調べる余裕がありませんよね。昔ならそれでも成果が出ていたかもしれませんが、いまはネットで調べればいくらでも相手の情報が手に入る時代です。手当たり次第かけた営業電話なんて、切られて当然です。

ちなみに私は、テレアポそのものを否定したいわけではありません。丁寧な電話であればちゃんとつながります。現に弊社ベルフェイスのBDRチームは、電話を通じてターゲット顧客を開拓しています。

それに「意味もなく量をこなすこと」が嫌がられるだけであって、「これをやることで会社や社会がよりよくなるんだ」という意義があれば、つまり行動することに納得感があれば、若手メンバーもちゃんと動いてくれるものです。「いまの時代にあった “量” を設定すること」「なぜその量をやる必要があるのか、メンバーにきちんと説明できること」がなにより重要ですね。

―― 量質議論はあらゆる場所でよく耳にしますが、清水さんのアドバイス、とても腹落ちしました。

1on1より「意義のある目標」と「一貫性のある指示」を

清水:「なぜそれをやる必要があるのか」をメンバーへ説明することは、あらゆる場面で求められます。

たとえば、売上目標数字しかメンバーにおろさない人は、営業マネージャーとして失格です。数字はあくまで「How」に過ぎません。「会社のビジョンを達成するために、いついつまでに市場でこのポジションをとりたい。そのためには、これだけの売上が必要。それが実現すれば、これだけのお客様を幸せにできる。だからいまこの数字を達成する必要があるよね」と、翻訳することがマネージャーの仕事の一つです。

「マネジメント」というとどうしてもモチベーション管理の話になり、「うちも1on1をやろう」という安易な発想になりがちです。しかし「意義のある目標」と「一貫性のある指示」がなければ、どれだけ1on1をやろうがムダなんですよね。

「ご機嫌であること」は営業マネージャーの役割

―― 清水さんのお話を聞き、営業マネージャーとしてどのような気持ちで仕事に臨むべきか、考えさせられました。そのほかにも、心がけるべきことはありますか?

ベルフェイス 清水貴裕 ゼンフォース

清水:もう10年以上営業の責任者をやっていますが、営業マネージャーって本当に大変です。成果を出さなきゃいけないし、顧客にもメンバーにも寄り添わなきゃいけない。個人では出せていた達成率が、チームになると出せなくなる。とても苦しい仕事です。

でもそんなツラい立場であっても、マネージャーはつねに「ご機嫌」でなければいけません。メンバーは上司を見て仕事をするので、ご機嫌で前向きな人がマネージャーであるほうが、チームの成績が明らかにいいんですよ。だからマネージャーが自分で自分をマネジメントしてご機嫌でいることは、もはや役割なんです。

とはいえ、人間ですから不機嫌になるときもあるでしょう。そのときはどうぞ無理せず、不機嫌になってください。そのあとご機嫌に戻ってくればいいだけですから。私は嫌なことがあると、10分でいいから仕事を離れて、不機嫌なままメンバーの前に出ないよう心がけています。あとは自分がご機嫌になれるスイッチもいくつか用意していますね。どれだけつらいことがあっても、笑顔でいる。これはプロとして当然のことです。

―― 営業マネージャーがマネジメントすべきは「自分」、ですね。しっかりと心に留めておきます。

ベテラン清水氏が語る、営業マネージャーの醍醐味とは

―― 最後に、清水さんが感じる営業マネージャーの「醍醐味」をぜひ教えてください。

ベルフェイス ゼンフォース 清水貴裕
清水営業マネージャーの醍醐味は、「悩めること」ではないでしょうか。悩めるって、私はすごく贅沢なことだと思うんです。ただNetflixを観ているだけでは悩めませんからね。しあわせの形は人それぞれですが、「苦しみながらも人生を変えていきたい人」には、営業マネージャーという仕事は最適だと思います。

それにどんな仕事も、「誰かのなにかを解決すること」じゃないですか。もちろん営業も「なにかを売る仕事」ではなく、「誰かのなにかを解決する仕事」です。だから積み上げてきた売上数字は「お客様のお悩みを解消した数」だと思えば、結構ハッピーな気持ちになりませんか? 今月は100万受注したと思うのか、10人のお客様の悩みを解決したと思うのか。どう捉えるかは、自分次第ですね。

おわりに

「自分をマネジメントすること」は、口でいうほど簡単なことではありません。しかし、「できる or できない」ではなく、仕事の一環として「やる」ことが大切なのだな、と改めて感じた取材でした。当記事が、自分自身の姿勢を見直すきっかけに、ひいては未来のリーダー候補に「営業マネージャーのあり方」を伝えるきっかけになれば幸いです。

著者情報
齊藤 麻子(さいとう まこ)
Mako Saito
1992年生まれ。2014年九州大学芸術工学部卒業後に採用コンサルティング会社へ新卒入社。法人営業から新規事業推進、マーケティング業務に従事したのち、2018年にLIGへ。2021年にマネージャー、2023年にLIGブログ編集長に就任し、現在は自社のマーケティング、オウンドメディア運営に携わる。副業ではライターとして活動中。