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BPaaSとは?市場や事例などをわかりやすく解説

ビジネスプロセス

目次

BPaaSという言葉をご存じでしょうか?日本ではあまり馴染みがない言葉かもしれませんが、海外では既に大きな市場になっております。BPaaSはビジネスプロセス全体を提供するサービスです。似ている概念としてSaaSやBPOなどが挙げられますが、プロセスそのものを提供するという点で大きな違いがあります。

今回は大きな注目を集めているBPaaSについて、事例や市場などを用いてわかりやすく解説します。本記事を通じて、SaaSやBPOの違いや、市場のデータや国外における注目度の高さをご理解いただければ幸いです。

BPaaS(ビーパース)とは

BPaaSとは、「Business Process as a Service」の略語でビジネスプロセスそのものをアウトソーシングするクラウドサービスです。アウトソーシングの対象となるのは、主に人事、財務、カスタマーサポート、給与計算などの「ノンコア業務」が対象です。これらの運用を外部業者に委託することで、企業は自社のリソースを節約し、コストを削減しながら、自社の「コア業務」に専念することができます。BPaaSの特徴は、単純プロセスのみをアウトソーシングするのではなく、クラウド上でシステムまで提供することです。ITツールの活用に慣れていない企業であっても、クラウドシステムによる効率化などの恩恵を受けることができます。

BPaas BPassとは

BPaaS(ビーパース)がなぜ注目されているのか?

BPaaSは、日本では新しい言葉とされていますが、海外ではすでにメジャーな概念となっています。2009年にGartnerが「BPaaS」という用語を提案し、ビジネスプロセスをサービスとして提供するモデルとして注目されました。Kenneth Researchが2021年に発表した調査レポートによると、BPaaS市場は、2022年時の769憶米ドルの市場価値から、2030年末までに1,389憶米ドルに達すると予測されています。

特定の分野の専門家でない場合でも、BPaaSを活用すればビジネスプロセスの構築が容易となります。市場投入までの時間も短縮され、その後のプロセス管理もクラウドサービスで効率的に管理ができるなどメリットがあります。またBPOとは異なり、中小企業も取り込みやすいサービスとしても注目を集めています。従来は、BPOは大規模な発注をかけられる大企業がコスト面での恩恵を受けていました。しかしBPaaSは、アウトソーシングする規模が大きくなくても様々な恩恵が受けられるため、企業数の99%以上を占める中小企業も取り込むことができるのです。こうした理由から、今後大きく伸びる市場としてBPaaSが注目を集めています。

BPaaSとBPO, SaaSの違い

BPaaSと似た概念に、BPO(Bisiness Prosess Outsourcing)やSaaS(Software as a Service)が挙げられますが、どのような違いがあるのでしょうか。BPOとは、アウトソーシングされた業務を「ヒト」の力で進めることです。クライアント企業の業務プロセスをそのまま請け負い、人件費の安い地域などで行うことが一般的です。SaaSとは、業務の遂行をするためのクラウド上のシステムを提供することです。ユーザーはインターネット経由でアクセスし、システムを活用して業務の効率化を目指します。BPaaSは、このBPOとSaaSを組み合わせた業務のアウトソーシングをクラウド上のシステムを用いて行うことを指します。BPOはヒトの力で業務を行うため、業務の効率化に限界がありますが、クラウドシステムを活用することで効率化のスピードが格段に向上します。また、BPOではノウハウの喪失や改善の難しさが課題に挙げられますが、BPaaSでは業務プロセス全体を見直し、SaaSやIT技術を組み合わせて自動化や精緻化を図ることができます。柔軟にシステムを構築し、自社にそのノウハウやデータが残せることも、BPaaSの特徴です。

BPaaS導入のメリット

BPaaSを導入することで、様々なメリットを受けることができます。今回は4つの観点から、そのメリットを解説してまいります。

一元管理による使い勝手の向上

BPaaSを活用すると、「一元管理による使い勝手の向上」というメリットが得られます。複数のサービスやシステムを活用している企業では、管理が煩雑になったり、それが原因でミスをしてしまったりすることがあるかと思います。また、近年はクラウド化やテクノロジー導入を進める企業が増えていますが、既存システムとの連携や業務プロセスの見直しが上手くいかず、業務の効率化が進まないケースもあるでしょう。BPaaSを利用すれば、ビジネスプロセス全体をデジタル化し、関連する業務を一元管理できます。これにより、使い勝手が向上するだけでなく、プロセスを見直してさらなる業務効率改善につなげることが可能となるのです。

コスト削減

BPaaSの活用は「コスト削減」というメリットにもつながります。複数のサービスやシステムに対して個別に費用を支払うと、結果的にコストが増加してしまいます。BPaaSを導入することで、ビジネスプロセスを一元管理し、必要なコストを明確に把握できます。これにより、無駄な費用の発生リスクを低減できるでしょう。また、BPaaSは多額の初期投資を必要とせず、ビジネスが拡大し活用機会が増えた場合のみ支払額が増える仕組みであるため、コスト効率が非常に高いといえます。クラウドシステムを活用するため、自社でサーバやその他のハードウェアを購入したり、それを維持したりする必要はありません。自社に必要な分だけ使用し、ストレージや処理などのシステム・リソースを管理・最適化することで、コストの削減が可能となります。

リスクの軽減

BPaaS活用のメリットは「リスクの軽減」です。BPaaSを提供する企業はセキュリティやコンプライアンスに関する専門知識を有しており、これらのこれらのリスクをプロバイダーに委ねることで、企業は自社でのリスク管理の負担を軽減できます。一般的に、社内のITチームでセキュリティやコンプライアンスの管理を行うよりも、これらの分野に特化したパートナーが運用するほうが、データの安全性が高まります。

データナレッジの共有

BPaaS活用のメリットは「データナレッジの共有」です。従来のBPOでは、業務委託によりデータや暗黙知が自社に蓄積されず、情報の活用が難しいという課題がありました。しかしBPaaSではクラウドサービス上で業務プロセスが行われ、すべての業務データやナレッジがリアルタイムで共有されます。こうしてデータの蓄積と管理が効果的に行われ、必要な情報を自社のビジネスに活用することができます。データやナレッジは、意思決定の質を向上させ、競争優位性を築くために欠かせない貴重な資源です。この貴重な資源を自社に蓄積できることは、大きなメリットとなるでしょう。

BPaaSの成功事例

最後に、BPaaSの成功事例をご紹介いたします。

販売プロセス

BPaaSによって販売プロセスを構築し、営業効率を向上させることが可能です。CRMやSFAを導入する企業が増えてきましたが、なかなか思うように活用できない組織もあるでしょう。販売プロセスのBPaaSを活用すれば、設定から運用方法までを専門家が行い、効率的に営業活動を行うことができます。例えばCRMに情報を登録する際、誤った電話番号や名前を使ったり、「info@」アドレスにメールを送ったりすることが起こるかもしれません。このやり方では効率を損ねるだけでなく、売上げにも影響を及ぼしかねません。BPaaSでは最初から専門家が運用を行うため、こうしたミスを防ぐことができます。また、登録されたメールアドレスにメールを配信し、そのデータを蓄積して営業活動に活用することができます。

人事・採用

人事プロセスもBPaaSによって運用化・自動化することができます。特に、手間を要する採用プロセスには効果的です。自動化ツールを利用することで、求人情報の掲載、最初のリスト作成、候補者のスクリーニング、カレンダーへの登録などが可能となります。しかし自動化のシステムだけでは限界があり、専門家による運用や追加のスクリーニングを行うことで、システムが見逃してしまうかもしれない優れた候補者を見つけ出すことができます。

バックオフィス業務

経理、労務、購買や調達など、バックオフィス業務においても、BPaaSは非常に有効です。従来のBPOでは、バックオフィス業務の中でも単純な作業のみをアウトソーシングすることが一般的でしたが、近年は業務プロセス全体を効率化し、運用まで行うBPaaSが注目を集めています。企業のバックオフィス業務は、組織形態の多様化や雇用形態の変化、法律の改正、コーポレート・ガバナンスの要請など、様々な変化に対応することが求められています。このような状況の中、膨大なバックオフィス業務を社内の人材で対応するか、新たなシステムを導入するか、あるいは外部にアウトソーシングするか、様々な方法が検討できます。バックオフィス業務の効率化は、SaaSの導入などによって対応可能です。しかし、非定型業務や条件分岐が多い業務については、優秀な人材の不足が懸念されており、こうした課題に対処するためには、BPaaSが効果的だといえるでしょう。

保険のアウトソーシング

保険業界は膨大な書類を処理しなければならず、手続きの煩雑さに課題を抱えている企業も多いかもしれません。BPaaSなら、これらの業務を効率的に行うことができます。保険業界は、契約書や重要書類など紙の業務が多くありますが、これが業務の非効率化やブラックボックス化を招いています。また、事務手続きに追われ、顧客との接点を持つ時間を十分に取れないこともあるでしょう。保険業界の多くの企業では、DX化による効率化が必要とされています。しかし保険業界は顧客の重要な情報を扱うため、始めからすべてを自社でシステム運用することはリスクがあります。セキュリティ面の専門知識を持つBPaaSのパートナーに運用を任せることで、事務作業の効率が向上するだけでなく、リスク管理も行うことができるのです。

おわりに

いま注目を集めるBPaaSについて、市場規模や事例などを用いて解説いたしましたが、いかがでしたでしょうか。BPaaSは単にクラウドシステムやプロセスの結果だけを提供するものとは違い、ビジネスプロセスそのものを提供するサービスです。従来のBPOやSaaSの良い側面を組み合わせた画期的なサービスで、多くの需要が予想されています。今後市場が伸びることは間違いないでしょう。

著者情報
荻野 嶺(おぎの れい)
Rei Ogino
米国NY、LAで幼少時代を過ごす。 2015年、伊藤忠商事入社。金属資源部門にて経営企画や事業開発に携わり、赴任先のシンガポールで石炭の三国トレーダーとして、各国の市場を新規開拓。2020年に帰国し、スタートアップ向け人材紹介のfor Startupsに従事。入社半年で最速昇格基準達成、MVT 受賞などの実績を上げ、各有力スタートアップのCEOやVCからの信頼を獲得。 2020年12月にゼンフォース株式会社を創業し、代表取締役CEOに就任。